第213話 『班決めは開始前から始まっている』
幕間という名のリアル編です!
まぁそこまで長くはならない予定は未定であって決定ではない
「はい、じゃあとりあえずてきとゲフンゲフン自由に班組んでね〜」
「基本は男女混合の5〜6人の班を作ってね。あ、でも一応男子だけの班とか女子だけの班でもいいって話だから」
ヒャッハー達が【島】の探索を終えた後のある日。
《EBO》の中では無く現実世界のとある高校の教室にて。
担任に変わって教卓に立っているクラス委員(女)が適当に言い放ち、クラス委員(男)が細かい説明を付け足す。
護、瞬、明楽の3人が在籍するこのクラスでは、近々行われる学年遠足の班決めが行われている真っ最中だ。
「班って5〜6人だろ?残りどうする?」
背もたれを抱き抱える様に座って後ろを向いた瞬が護と明楽に尋ねる。
ちなみに、この3人が組むことは確認すら無く3人の中で既に決定している。例えくじ引きだったとしても間違いなく3人はグループになるのだからあまり関係の無い話ではあるが。
「ならば私の友人を誘おう!」
眠たげにぐでぇーと護の机に倒れ込もうとして背もたれに引っかかっている瞬を横目に、明楽はそう言うや否や少し離れた位置にいた2人組の女子に話しかける。
「みほりん!あきのん!私の班に来ないか!?」
「あっきーの班かぁ、嬉しいお誘いだけどもうあたし達の班決まっててね〜」
「あ、でもあっきーの班ってことはもれなく鷹嶺くんのお弁当が付いてくる!?くぅ……!声かけてくれるのが3日早ければ……!」
「むぅ……残念だ。だが護の弁当はやらんぞ!なんせ私の分が減るからな!」
女3人寄れば姦しいとはよく言ったもので、明楽を含めた女子3人がきゃいきゃいと楽しげにおしゃべりをしている。
明楽の中で既に護の弁当が自分の胃に入る事になっているが、それは分けてもらうつもりなのか自分の分の弁当も作ってもらうつもりなのか。
恐らく、どっちもだろう。
「あ、じゃあ俺の分もー」
机に突っ伏す事は諦めて背もたれから垂れる様にぐでぇーっとしていた瞬ものそりと起き上がって弁当を要求する。
ごく自然に幼馴染2人の弁当も作る事が決定した護はと言うと、慣れた顔で今夜の夕飯の献立を考えていた。
聞こえていない振りとも言う。
だが、結局は家に帰った後で改めて依頼が来るだろうから確定した未来の先延ばしに過ぎないが。
実際は1人分も複数人分も変わらないし別に作っても構わない……っていうか結局こういう行事の時っていつも俺が作ってるよな……と思っている護がそれでも一旦は返事を保留にしているのは、本来弁当を作ってくれるはずの2人の母親の事を考慮した結果だ。
ちなみに、弁当を護が作る話を2人の母親にした場合むしろウェルカムと言わんばかりにお願いされるのでやはり究極的には先延ばしに過ぎない。最低限のマナーとしての側面しかないのだ。
「むぅ……ならば!た……」
「神崎さん。その命名法則で私の事呼んだら絶交して縁切った上で今後一切無視し続けるから」
友人2人を上手く引き込めなかった明楽が次に声をかけたのはクラスの代表として班決めを(面倒くさそうな表情を隠そうともせずに)見守っていたクラス委員(女)だ。
だが、クラス委員(女)は絶対零度の瞳と抑揚の無い恐ろしい声で明楽の勧誘を最後まで聞かずに途中で遮るどころか敬語&苗字+さん付けの他人行儀で絶縁予告すらぶちかました。
「す、すみません紫波さん……」
そこには、普段から騒々しく滅多な事では静まらない明楽をして縮こまり思わず敬語&苗字+さん付けで謝罪してしまう程の圧が込められていた。
同じ敬語&苗字+さん付けであっても絶縁予告に用いるのと謝罪で用いるのには込められた意味合いに大きな差がある。
何がそこまで彼女を駆り立てたのかと言うと……
(確か紫波の下の名前は環……いや、これ以上はよそう)
護は賢明だった。
声に出さなかった事もさることながら、途中で思考を止めたのが素晴らしい。《EBO》で日々強敵を相手にしている経験から身に付いた危険回避本能だろう。
だから決して紫波がハイライトの消えた瞳で見詰めて来ている事になんて気付いていない。気付いてないったらないのだ。だって護は今週一週間の朝昼晩3食の献立を考えるので忙しいのだから。
「で、どったの明楽ちゃん。何か分からない事でもあった?質問ならそこの里塔君がクラス委員としてしっかり答えるけど」
とてつもない圧を感じさせるブラックモードも数秒の事、けろりと普段の様子に戻った紫波は全力で仕事を押し付けていくスタイルだ。
「紫波さん?君もクラス委員なの忘れてないかな?」
「うむ!たまっきー、私達の班に来ないか?みほりんとあきのんには振られてしまってな……」
「「ごめんってー」」
「そーいうことね。おっけーおっけー。クラス委員してると日程分かっちゃうから先に班組みするのズルっぽくてまだ班組めてなかったのよねー助かるわー。あ、鷹嶺の絶品弁当ご馳走様です」
いつの間に紫波にまで作る事になっていた。
さすがにそれは明楽の分から徴収してもらうことにしよう。
そして真面目にクラス委員をしている里塔の正論は無視された。
いつの時代も正論は力を持たないのである。そして力を持った正論は暴力と呼ばれる。
そこまで重く考える程の内容でもないのだが。
「あ、なら一守も来いよ!どうせクラス委員だからって最後まで残って微調整用に自分使おうとか考えてまだ班組んでないんだろ?」
と、適当な紫波のフォローをいつもしている里塔に瞬が声をかける。
瞬の言っていた内容が図星だった様で、里塔はバレたか……とでも言いたげなバツの悪そうな顔でポリポリと頬を掻くと教室を見渡し、班決めが順調そうなのを確認すると「あはは……じゃあ混ぜてもらおうかな」と頷いた。
「これで5人か。周りもぼちぼちメンバーが固まってきたみたいだし、これで決まりかな」
「あ、忘れてた。班員決まったらメンバー記入の用紙渡すから来てねー。うちの班は鷹嶺くん書いといて!もちろん班長は私以外で!」
前半はクラス全体に向けて、後半は護に向けた言葉だ。
どこか気の抜けた、しかしだからこそ聞きやすい雰囲気を持つ彼女の言葉は自由な班決めでザワザワしている生徒達にもしっかりと届いたようで、既に班が決まった所からチラホラと代表の生徒が用紙を受け取りに来ている。
これも一種のカリスマということだろうか。
「紫波は本当になんでクラス委員やってるんだってくらい適当だよな……まぁそこが紫波の良い所……なのか?実際不満も出てない訳だし」
「よせやい。そんな褒めるなよ」
「褒めてない……ことも無いけど基本的に褒めてない。お前はもっと里塔の負担を減らしてやれ」
「あはは、こういう裏方作業とか結構好きだからそんなに気にしてくれなくて大丈夫だぞ。それとすまん、鷹嶺。記入頼んだわ」
「おーう」
そんな中身のないやり取りをしつつ紫波から用紙を受け取って班員の記入を進めていく。どうやら護達の班は3班のようだ。だからどうした。
「班員記入……瞬と明楽に班長は無理だし、こっから誘っておいて里塔を班長にするのはさすがに酷いよな……紫波も班長にするには不安が……仕方ないか」
なぜか班員の配役割り振り権を与えられていた護は少し考えてから用紙に班員の名前を書き込んでいく。
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『学年遠足班員表③』
班長:鷹嶺 護
副班長:紫波 環
班員:里塔 一守
班員:米倉 瞬
班員:神崎 明楽
班員:
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とりあえず、紫波は副班長に押し込めておいた。
後日、勝手に修正されて里塔が副班長にされていた事が発覚した。
実は新キャラじゃないですよクラス委員
昔昔その昔に出演していたのです
興味があったら探してみてください
ここらで少し短編というか、小話を挟みます
なぜって?ヒャッハー達がそう動いてるからだよ!
なので、こんな話が見てみたいな〜みたいなのがあればリクエストいただければ、書くかも知れません
ヒャッハーが気に入れば勝手に動き出すので書きます
感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます
あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します




