第210話 『供給過多』
ちなみに、擬人化【試練の獣】達に獣耳と尻尾は生えてません
【蛇】と【鴉】には耳も尻尾も無いのと、【狼】に試しに生やして見たら脳内イメージが完全にプリコネのマコトに固定されてしまったのが理由ですね
でも多分獣耳尻尾付きの【狐】は間違いなく可愛いからどこかで出したいなぁとも思うのです
まぁ、今生えてないだけでキャラ達が勝手に生やす可能性はあるので参考程度に考えていてくだしあ
糸目の男は、自分達があの【試練の獣】だと言った。
「ウチが【蛇】でこのガサツそうなのが【狼】。ちっこいののうち騒がしい方が【鴉】であんちゃんの事見つめまくってるのが【狐】。覚えてくれな。んで、今後もウチらは【島】に住み続けるから、よろしゅうな」
驚愕に、あるいは警戒を強めて、あるいは嫌な予感が当たった事に、それぞれの理由で絶句しているヒャッハー達にお構い無しに糸目の男……【蛇】は続ける。
白髪で糸目の奥から黒い瞳を覗かせる着流しの青年が【蛇】で黒髪金眼の褐色の少年が【鴉】。黒髪赤目のボーイッシュな女性が【狼】で白髪蒼眼の座敷童子が【狐】。
言われてみれば、確かにそれぞれの【試練の獣】と髪色(体色)や瞳の色が同じだ。
「まぁ、そうじゃ無いかとは思ってたよ。目と髪の色が同じだったし、存在感……って言うのか、雰囲気が何となく似てる気がしてたからな。それに、【狐】っぽい子にはめちゃくちゃ睨まれてたし」
「なんや、気付いてたんか。ほな、『先に言わんでくれてありがとな』って言った方がいいやろか?」
「なんじゃお主は開き直ってからに!妾の試練を台無しにした罪は軽くないぞ!」
トーカの受け答えに気に入らない部分があったのだろうか、アンバランス座敷童子の【狐】が遠くからきゃんきゃんと吠えている。
それでも近付いて来ないのは【蛇】が代表として話しているからなのか、あるいは近付きたくも無いほど嫌われてしまっているのか。
さすがにそこまで嫌われるのは悲しいが、正直そうでも仕方ない程度の事をやらかした自覚があるトーカは苦笑いを返すしかなかった。
「むきぃーーー!!!なんじゃその幼子の癇癪を見守るみたいな顔は!」
「まぁまぁ、今のアンタの見た目だと幼子の癇癪としか見えねぇから落ち着きなって」
そんなトーカの行動がやはり癇に障る様で、【狐】はてしてしと足で地面を踏み付ける。そんな、地団駄と言うには迫力の足りていない足踏みをしている【狐】の頭を【狼】がぽんぽんと撫でて慰めている。
「ふーーっ!ふーーっ!」
言っていて悔しさが再燃したのか、【狐】はぷるぷると震えながら和服の裾を握り締め、涙目でトーカ睨み付ける。
その様子は完全に拗ねた幼女であり、とてつもない能力を持つ【試練の獣】には見えない。
これ以上刺激しないようにトーカが視線を逸らせば【狐】はそれにも反感を抱いたようで、もはやトーカのあらゆる行動が癇に障るのだろう。
「まぁまぁ、これ以上は話が進まんから無理矢理にでも進めさせて貰うで?」
こうなってはどうしようもないと感じたのか、【蛇】が多少強引に話を進める。
「本当ならここでちょいとひと手間挟むんやけど……お嬢ちゃんのおかげで手間が省けて良かったわ。まぁ【祭壇】様は大分混乱しとったみたいやけどな」
けらけらと胡散臭い笑みを浮かべてそう語る【蛇】の指す『お嬢ちゃん』とは、間違いなくメイの事だろう。
より正確に言うなら、『本来行けないはずの場所に侵入して特殊なアイテムを採ってきた』メイの。
「お嬢ちゃんが持ってる霊脈結晶……っても分からんか?黄色い水晶が今後のこの【島】で重要になるんや。ま、物は試しってことで【祭壇】の核水晶、あのでっかい水晶の近くで砕いて「分かった!」み?」
そう言って【祭壇】の中にある人間大の水晶を【蛇】が指差す。
その瞬間には既にメイは【祭壇】に向かって駆け出していた。ステータスの関係でそこまで速度は出ていないが、スタートダッシュだけならリクルス以上の機敏さだったのではないだろうか。
むしろ、若干フライングしてるまである。
「早いなぁ。あ、霊脈結晶はそこまで硬くないから心配は要らんと思うけど、もし砕けなかったら霊脈結晶同士を叩き付け合えば簡単に砕けるから安心してな」
「大丈夫!噛めば砕けるのは分かってるから!」
「……え?お嬢ちゃん、霊脈結晶噛み砕いた事あるん?」
未知のアイテムの使用法が判明するということで、メイはワクワクが隠せないようだ。【祭壇】に向かう足取りが軽い。
一方のヒャッハー達は、宝石(正確には水晶)を砕くと聞いてバギーカーの超加速装置を思い出したのか無言で距離を取っていた。トラウマが隠せないようだ。【祭壇】から遠退く足取りが早い。
「……?あんさんらはなんでそんな距離取ってんのや?」
そんなヒャッハー達の心情は知る由もない【蛇】が首を傾げている。『宝珠』の状態でも試練の内容は確認出来る【試練の獣】だが、それ以外の部分に付いては確認出来ないので【蛇】はメイの超加速装置の仕組みを知らないのだ。
今はいわば、『宝珠』を全て捧げると開放される【島】の真の力とやらのチュートリアルなのだろう。
なのでそこまで警戒する必要は無いはずだが……それでもやはり警戒してしまう。
ちなみに、警戒の内訳は【島】の真の力『0.5』:メイのやらかし『9.5』である。
前科持ちは疑われるのだ。
「じゃあ砕くよー!」
何が起こるのか楽しみで楽しみで仕方ないらしいメイは、遠巻きに眺めるヒャッハーと【試練の獣】達に対してブンブンと霊脈結晶を持った手を振っている。
「おーう。やらかすなよー」
「メイー変な事はしないでねー」
そんなメイに手を振り返しながら、ヒャッハー達は大盾を構えたサクラの後ろに隠れる。
【試練の獣】達はそんなヒャッハー達の様子を疑問に思った様だが、何か声をかけるより先にメイが霊脈結晶を噛み砕いた。
それはもう一切の躊躇いなく、せんべいでも食べるかのようにガブリと齧り付いていた。
メイの歯によって砕かれた霊脈結晶は、メイが言っていた様にすぐさま気体となって霧散していく。名前的には気体と言うよりはエネルギー体の方が正しいのだろうか。
それはともかく、水晶体としての形を失った霊脈結晶のエネルギー体は【祭壇】に浮かぶ人間大の水晶(【蛇】曰く核水晶)に吸い込まれていく。
すると、それに呼応するように核水晶がほのかに発光し、下の方が明るくなっていく。まるで器に水を注ぐように、あるいは水が湧き出す様にじわじわと底の方から核水晶に光が満ちて行く。
今回砕いたのはメイの拳大の霊脈結晶1つだけだが、それでだいたい全体の5%程が光で満たされている。
つまり、核水晶を全て光で満たすには今と同じサイズの霊脈結晶が19個は必要になる。
そして、その19個をメイが持っていないかと聞かれれば、そんな訳が無い。
「なるほど、もっと必要なんだね!まだまだあるからどんどん行こうか!」
目をキラキラさせたメイは次々と霊脈結晶をインベントリから取り出しては齧り砕いて行く。
そして、止める間もなく核水晶がレモン色の光で満たされる。
半分程光が溜まった辺りで【蛇】がストップをかけようとしていたが、メイには聞こえていないようで光が完全に満ちるまで霊脈結晶を砕き続けていた。
そんな【蛇】の反応を見て、当然ヒャッハー達はより一層防御を固めたのは言うまでもないだろう。
「あー、うん。ちぃとやり過ぎな気もするけど……まぁ、ええわ。んじゃ次はお嬢ちゃん……じゃダメやな。白いあんちゃんが核水晶に触れてみてや」
「……爆発したりしないよな?というか、このままメイじゃダメだったのか?」
「大丈夫やって。他はいいんやけどこればっかりはこの【島】の所有者であるあんちゃんじゃなきゃダメなんや。まぁ次からはあんちゃんが許可出せば誰でも良くなるから、最初だけ堪忍してや」
そんな言葉で送り出されたトーカは核水晶の目の前で立ち止まると、改めて核水晶を見る。人が1人くらいならすっぽり入ってしまいそうな巨大な水晶が、淡いとはいえ発光している様子は実に幻想的だ。
トーカは直前まで抱いていた緊張も忘れ、誘われる様にそっと核水晶に手のひらを当てる。
その瞬間。
「きゃぁ!」「のわっ!?揺れるぞ!?」「おわッ!?地震!?」「うわぁ!?」「なっ!?」「なにが……!?」
地面が大きく揺れ始める。
「……?……あ!?揺れてる!?」
約1名、霊脈結晶を両手に持って食い入るように核水晶を眺めていて気付くのが遅れた人物がいた気がするが、そんなことはお構いなしに地面の揺れは激しさを増していく。
「なんだなんだ!何が起こってるんだ!?」
激しい揺れに転びそうになったリクルスが【蛇】を問い詰める。
「まぁ悪いようにはならんよ。揺れもすぐに収まるから安心してな」
「んな事言われたって……って、ホントだ。収まっぁぁ!?」
確かに【蛇】の言う通り揺れは収まった。
しかし、次に待っていたのは上からのしかかられた様な物理的な重圧。
体にかかるGに小さな呻き声を上げつつヒャッハー達が空を見上げれば……
「空が……降ってきてる……!?」
遥か上空にたゆたっていたはずの雲が目と鼻の先にまで近付いて来ていた。
杞憂という故事成語があるが、実際に空が落ちて来ていたら意味は変わっただろう。恐らく、『いくら心配してもどうしようも無いものはどうしようも無い』と言うような意味に。
「んー、惜しいなぁ。けどハズレはハズレや」
しかし、慌てているのはヒャッハー達だけであり【試練の獣】達は特に焦っている様子はない。むしろ、焦っているヒャッハー達を見て楽しいんでいる節すらある。
だが、罠にはめようとしていると言った嫌な雰囲気ではなく、どちらかと言うとサプライズの仕掛け人がターゲットに向ける様な楽しげな雰囲気だ。
「……あ、え、もしかして……この【島】、飛んでる!?」
そんな雰囲気を察したのか、はたまた別の要因か、信じられないとでも言いたげな引き攣った声音でメイが叫ぶ。
「お、正解や。これでわかったやろ?この【島】の真の力ってのはな、霊脈結晶のエネルギーを使って飛べるちゅう意味や」
そして、それは正解だったらしい。
「まぁ、本来は初期起動やからきっかけ作る程度の少量のエネルギーで良かったんやけど……お嬢ちゃんが満杯までエネルギー込めてしもたから想定外レベルで吹っ飛んどるけどな」
そう言いながら耐衝撃体勢を取る【蛇】を筆頭に、衝撃に備える【試練の獣】達。今更ながら、ヒャッハー達の顔がさぁっと青ざめていく。
「メ、メ、メイ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
遥か上空に向けて上昇する【島】に、リーシャの全力の叫び声が響き渡った。
本来なら初期起動のチュートリアルには霊脈結晶1つで十分だったはずなのに……
何も考えずに満タンまで燃料ぶち込むからこうなるんや……
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