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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
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第204話 『軽視してたツケが回って来た』

鳥居にダイナミック入店ぶちかましたヒャッハー達の運命や如何に!?

 

「げほっ!げほっ!……あ?」


 じゃりじゃりとする口の中の不快感に何度か咳き込んでから、トーカは自分が気を失っていた事に気が付いた。


「ここ、は……」


 リクルスの馬鹿が暴走させたバギーカーが泉に突っ込んだ所で、トーカの記憶は途切れている。

 ふらつく頭を抑えながら立ち上がり、辺りを見回す。


 そこは、砂漠だった。


 つい先程まで『砂漠』エリアにいたのだから砂漠にいる事自体は何らおかしい点は無い。

 しかし、その『砂漠』の中でもヒャッハー達はオアシスにいたはずだ。正確には、オアシスに突っ込んだはずだ。


 しかし、周囲にはオアシス(それ)らしいものは見当たらない。否、何も無い。


 つい数秒前までのトーカと同じ様に気を失っているのだろう。あの時バギーカーに乗り込んでいた他の6人が周囲に倒れている。


 だが、それだけだ。先程までいたはずのオアシスはおろか、サボテンも小動物も、積もった砂の勾配すらない砂の平面。

 それが、この世界の全てだった。


「どういう、事だ……?」


 バギーカーでオアシスの泉に突っ込んだら何も無い砂地にいました。

 そんな理解不能な状況に、寝起きということもあって回転の鈍いトーカの脳は回答を見いだせずにいる。


「……とりあえず、みんなを起こすか」


 同じバギーカーの車内にいたからだろうか、トーカも含めた7人は重なり合う程ではないがそれなりに密集して倒れていた。

 なので、とりあえず順々に全員を揺すって起こしていく。


 原因のクセに「あと5分〜」などと抜かしたリクルスにデコピンが打ち込まれた以外は特に問題もなく、スムーズに全員が意識を取り戻す。


 バギーカーの事故の衝撃で気絶していたのだろう。どのくらいの時間気絶していたのかは不明だが、もう少し長く気を失っていたら寝落ち判定でログアウトしていた可能性がある。


「とりあえず。リクルスは人の話を最後まで聞け」

「メイも……ね?作んなとは言わないけどああいう危険なヤツをテストもしないで使わせないようにね?」

「「はい……」」


 トーカのガチめの説教とリーシャの諭すような言葉に、リクルスとメイがしょんぼりと頷く。

 さすがにやらかしたと思っているのだろう。2人のテンションが目に見えて低い。だが、事が事なので他の面々もフォローがしにくい。


「それでだ。ここはどこなのだ?」


 そんな空気を変えようと、カレットが辺りを見回して尋ねる。


「……さぁ?」

「分からないな……」


 しかし、ここに来る時には気絶していた上にヒントも何も無い現状で、ヒャッハー達の中でその質問に答えられる者がいる訳がなかった。


 ならば誰が答えるのか。

 当然、知っている存在(もの)が答える。


『ようやく目覚めたか』


 ヒャッハー達と砂以外に何も無い更地に、鈴を転がす様な声とはこういう事を言うのだろうかと、そう思える程に美しく荘厳な声が、『聲』が響く。


「っ!?」


 姿は見えず、『聲』だけが聞こえる。【祭壇】の時や【鴉】がフライングをした時と同じような状況に、ヒャッハー達の反応は早かった。


 瞬時に武器をかまえ、前の反省を活かし上も含めた全方位を警戒する。

 だが、依然として姿は見えず『聲』だけが辺りに響き続ける。


『さぁ、我で最後だ。歓迎しよう。愛しき挑戦者達よ』


 姿を見せぬ『聲』がそう言うと、ぐにゃりと周囲の景色が歪む歪んだ空間の奥からは、大小様々な無数の鳥居が現れる。


 今この場に出現したのか、元からあったのに認識出来なかったのか。それは分からないが、事実として目の前に鳥居が現れた。


「歓迎しようったって、何をどうすりゃ……へ?」


 ヒャッハー達が無数の鳥居を前に動けずにいると、瞬きの間にひとつを残して全ての鳥居が消え失せる。


 次の瞬間にはそれも消え、別の場所に現れる。


 次の瞬間にはそれも消え、別の場所に現れる。


 次の瞬間にはそれも消え、別の場所に現れる。


 次の瞬間にはそれも消え、別の場所に現れる。


 鳥居は現れては消え、消えては現れるを幾度となく繰り返す。


「なになに!?どういうこと!?」

「分からねぇよ!なんだこれ!?」

「おちおおちおちおちちおちつけ!ここれはこれこは罠だ!」

「まずはお前が落ち着け!焦るな、今のところ移動してるだけだ、実害は無い!」


 ヒャッハー達の誰もが、度合いの差はあれど混乱していた。


 これが試練なのか。ならばこれはどういう試練なのか。そもそも試練を課す【獣】が姿を見せていないし、お決まりの前口上も無い。


 気が付いたら見知らぬ場所にいて、訳の分からない状況下に置かれている。

 これで混乱するなという方が無理があるだろう。


 数秒か、あるいは数分か。

 鳥居が幾度目かの消失を迎える。

 次はどこに鳥居が現れるのか、そう視線を巡らせるヒャッハー達を裏切る様に、嘲笑うようにソレは現れた。


「んなぁ!?」

「心臓に悪いぞ!燃やされたいのか!?【白りゅ……」

「やめろバカ!」


 消えた鳥居の代わりにヒャッハー達の前に現れたのは、1匹の大きな【狐】だった。


 これまでの【島の獣】のように見上げるほどの巨躯では無いが、それでも人間よりは一回りも大きいその体躯。

 砂埃舞う砂漠に佇むにも関わらず一切の不純物の無い美しい純白の毛並みに鮮やかな蒼穹の色を宿す瞳。


 砂の大地に座り込む【狐】の見透かすような瞳に、ヒャッハー達の緊張感も高まっていく。


2対2(にーにー)でカラーリング分けてるのか?」


 緊張に飲まれないようにするためか、リクルスがそんなどうでもいい事を口に出す。

 確かに【狼】と【鴉】は黒く【蛇】と【狐】は白い。だが、だからどうしたというのか。


 当然、試練を課す【島の獣】である【狐】がそんな事に答えるはずもな


『言われてみれば、そうだな。だが、関係の無い事だ』


 答えてくれた。

 もしや、【島の獣】は話が出来る相手なのか。


『我が望みは【覚醒】。

 夢幻(ゆめまぼろし)に惑わされぬ確固たる心。

【覚醒】を示せ。見極めよ』


 だが、だとしてももう関係の無い事だ。

 試練が、始まったのだから。


 恒例の口上を述べた【狐】の姿がまたしても掻き消え、別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。


       別の場所に現れる。


 別の場所に現れる。   別の場所に現れる。



 無数の【狐】が平面の砂地を満たす。


 360度どこを見ても【狐】【狐】【狐】。


 埋め尽くさんばかりの【狐】の群れが、無数の瞳が、ヒャッハー達を見定めるように見据えていた。


「……ッ、【覚醒】とはまた、かっこいい名前の試練だな」

「で、本物を探せって事?」

「だと思う。これなら僕も役に立てそう……!」

「うむ、【覚醒】。かっちょいいな。それで、まとめて焼き払えばいいのか?」

「カレット、お前しばらく【白龍砲】禁止な」

「何故だ!?」


 これまでの試練は全て、試練の名前と前口上である程度内容が推し量れるものだった。

 その例に従うのならば、この無数の【狐】のほぼ全てが幻覚であり、本物の【狐】を探し出せということだろう。


 恐らく、MNDによってこの幻覚はある程度緩和する事ができるのではないだろうか。


 となると、問題になるのはヒャッハー達のほとんどがMNDにSPを振り分けていないという事だろう。

 まだ魔法系の攻撃をしてくる敵が少なく、PvP要素もあまり多くない《EBO》では、MNDのステータスはそこまで重要視されていない傾向にある。


 それに加え、ヒャッハー達は揃いも揃って特定のステータスに特化した尖ったステ振りをしており、その上で誇張抜きで《EBO》最高の生産職の作る装備をつけている。

 その装備には保険としては十分過ぎるほどのMND補正がかかっているため、余計にMNDにSPを振り分ける事がなくなっていた。


 よって、メイ製の防具を使っていないリベットとタンクであるサクラを除いた5人のヒャッハー達は素のMNDの値がかなり低い。というか、0である。


 一方、メイ製の防具を使っていないためMNDにも多少は振ってあるリベットではあるが、その分装備のMND補正はメイ製の防具ほど高くない。


 唯一まともにMNDにもSPを振り分け、なおかつメイ製の防御特化の防具でを使っているサクラは、悲しいかなヒャッハー達の中で1番レベルが低い。

 そのため、《EBO》に存在する明文化されていないが確かに存在する『レベル差が大きいほど相手の能力に影響されやすくなる』という法則の影響をモロに受けてしまっている。


 結果として、なんとも残念な事に全員見事に【狐】の幻覚に囚われてしまったのだ。

ここら辺のステ振り云々の話は多分ガチのMMOプレイヤーから見れば頭おかしい案件なんだろうなとは思いつつこれがヒャッハー達なんだよ!と


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[気になる点] MNDで回復量上がるわけでもないのに上げるわけがない VITの魔法版ってだけならタンク以外意味ある? 割とステ振りは普通じゃね?その役割に合ったステ振りをしてる 異常なのは称号でしょ
[良い点] なんかとても凄い間違い探し感がする…何故だろう。 オアシスも多分幻影かなにかだったんだろうなぁ。
[良い点] 「待て」ができたのですね、カレットさん(・・;) [気になる点] 毛皮のコート、作れますか? [一言] 幻影を解く方法 ①…周囲一面を力任せに吹っ飛ばす。 ②…強力な光、或いはライトで照ら…
感想一覧
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