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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
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第203話 『それ、後回しにできなかったの?』

大変遅くなりました……

リアルがちょっと大変なことになってましてね……しばらく更新ペースがガッツリ落ちてしまいます

 

 メイが『地下洞窟』で発見した謎の黄色水晶については、現状ではどうしようもないという事で今は気にしないという方針で行くことになった。


 メイ曰く、この黄色水晶はよく分からないまま来たエリアで見つけたほぼ無限に採れる未知の素材らしく、可能な限り取り尽くしてきたとのこと。

 なんでも、倉庫型のゴーレムに大量に詰め込んであるらしい。

 全部でどれくらいの量があるのかは、夢中で採掘していたため本人にも分からないらしいが、少なくとも倉庫型ゴーレム10体は黄色水晶タンクになっているとか。


 なので、メイと合流したヒャッハー達は黄色水晶関連の事は後回しにして『砂漠』エリアの探索を再開することにしたのだ。


「うひょー!快適快適!」

「さっすがメイ!最高ねコレ!」

「なんというか……さすがだな」

「あはは、急造だから特定の場所でしか使えないけどね」

「いや、それでも十分過ぎる程にありがたいよ」


 そうして改めて『砂漠』エリアの探索を再開したヒャッハー達の気分は明るい。

 メイの行方不明という問題が解決した事もあるが、メイが合流した事でヒャッハー達を苦しめていた『暑い・歩きにくい・風で飛んでくる砂がウザイ』の3つの問題が全て解決したからだ。


「ひゃっほー!最高かよコレ!」

「うぉぉぉぉ!速い!速いぞ!なんだこれは!」

「ヘイヘイヘイ!かっ飛ばすわよ!しっかり掴まっててね!」


 ヒャッハー達の歓声を纏って砂の海を駆け抜ける影がひとつ。


 直径1メートルにもおよぶ巨大な4つの車輪と窓も屋根もないフレームだけのボディ。10人は同時に乗り込めそうな程の大型バギーカーが、砂の海を突き進んでいた。


 これまでの経緯を聞いたメイが失敗作である異形モグラを改造して出来上がったこの即席バギーカーは、『砂漠』でしか使えないがその代わりに『砂漠』ならば最上の性能を発揮するように作られている。


 このバギーカー異形モグラ(試作型ゴーレム)に搭載されていた自動稼働機能を排除したため、搭乗者による完全マニュアル操作……運転が必要だ。

 だが、その代わりにゴーレムとしての稼働能力を全て運転の補助に回しているため、大雑把な運転でもスムーズに稼働するようになっている。


 さらに、風属性宝石(エメラルド)水属性宝石サファイアを装飾ではなく性能目的で惜しげも無く使い、窓も天井もないほぼフレームだけのボディにも関わらず飛んでくる砂粒を弾く風の膜が展開され、さらに風の膜の内部を冷却する機能も搭載されている。


 極めつけは、土属性宝石(トパーズ)とトレントからごく稀にドロップするゴムを無理やり合成したメイお手製の特殊素材で作られた、土属性と高い親和性を持つ特殊なタイヤだ。

 この特殊なタイヤが、砂地をがっちりと掴んで離さない。


 その結果、砂漠であっても舗装された道を走るようなスムーズさとオープンカーであるにも関わらず気温や飛来物などとは無縁な『砂漠』特化型のバギーカーが出来上がったのだ。


 砂漠を爆走するバギーカーという一画面だけを切り取れば、全く別のジャンルのゲームに見える事だろう。


 そんなバギーカーも、現在は運転席に座ったリーシャがテンション高めで乗り回し、リクルスやカレットが後部座席で順番待ちをしている。

 少し前に見つけたオアシスの事など、ヒャッハー達の頭には既に無いようだ。


 高速移動手段を手に入れたヒャッハー達は、『砂漠』マップを埋めるためにとにかくバギーカーを乗り回し爆走している。


「たぁぁぁぁのしぃぃぃぃぃぃ!!!」


 右の足元のレバーを踏み込んで加速。左の足元のレバーを踏み込んでブレーキ。ハンドルを回して方向転換。ハンドルについてるボタンを押し込みながら回してドリフト。

 この4つの機能しか搭載されていないとの話だが、ゲーム内の自作移動ツールとしてはこれで十分だろう。


 だが、メイ本人は満足行っていないらしく、真剣な顔で改善点のメモや各種データを取っている。

 ガチの車でも作るつもりなのだろうか。作るつもりなのだろう。


「ふぃー、楽しいわこれ。他の場所でも使えるようになったりしない?」

「まだまだ試作段階だからね。機能も使用場所も絞ってこのサイズだから、出来ることを増やそうとしたらもっと大きくなっちゃうよ。ちょっと現実的じゃないかなぁ」


 無駄に鋭いドリフトを決めてからバギーカーを停止させたリーシャが普通のフィールドでも使えるようにならないのかと尋ねると、メイは小難しい顔でメモを見たままそう答える。


「あ、でもパンダカーみたいなやつでいいなら多分できるよ?作ろっか?」

「いや……さすがにそれはちょっと……」

「爽快感の欠片もねぇや」

「プライベートな場所ならいいのだが、一般フィールドではさすがに恥ずかしいな……」


 他のプレイヤーがいる一般フィールドで意気揚々とパンダカーを乗り回す自分の姿を想像して、頭を使わない方のヒャッハー達が苦笑いしながら遠慮する。


「まさか本気じゃないよな……?」


 その反応からして、もしこのバギーカーが汎用性を得たら一般フィールドで乗り回すつもりなのだろうか。そうならば先に釘を刺しておかなければと思うトーカであった。


「んじゃ次俺なー」

「あっ!待て、私も運転したいぞ!」

「へっへーん。早いもん勝ちー」

「ガキかお前……らぁっ!?」

「うびゃぁ!?」


 先んじてリーシャと交代で運転席に乗り込んだリクルスがカレットを煽りつつワクワクした顔でアクセルを踏み込む。


 ヒャッハー達が乗っている車体は、見た目こそバギーカーであるが実際はゴーレムである。

 一瞬で最高速度まで加速したバギーカーの車内で、くだらないやり取りに苦笑していたトーカやリクルスに抗議するために腰を浮かせていたカレットが慣性に振り回されて悲鳴をあげる。


「リ・ク・ル・ス〜〜〜?」

「ひぃぃぃぃ!ごめんって!」


 車内の安全確認を怠った危険運転に静かにキレたトーカがぽんっといっそ穏やかな手付きでリクルスの肩に手を置く。

 だが、リクルスにはそれが死神に肩を叩かれたように感じたことだろう。それでも、恐怖で手元が狂っているリクルスが運転するバギーカーはゴーレムとしてのアシスト機能で蛇行しつつもしっかりと進んでいた。


「ったく、もうちょい落ち着きをもーー」

「おっ、なんだこのボタン!メイ!これ押してもいいやつ!?」

「あ、うん。大丈夫。ハンドルの中央についてる黄色と黒のしましまラインに囲まれたガラスケースに保護されてるドクロマーク付きの真っ赤なボタンでしょ?押してもいいけどそれは……」

「こういうボタン押すの1回やってみたかったんだよなぁ!」


 まだメイが説明してる途中だろ!


 とか


 なんでそんなあからさまに危ないボタンを押していいと思ったんだよどう考えても自爆系のボタンだろ!


 とか


 メイもメイでなんでそんなボタンを付けたんだよってか押していいのかよ!


 とか、トーカだけでなくリクルスとメイ以外の全員がそう言いたかった。


 言い()()()()


 つまり、言えなかった。


「がしゃぽちー!」


 リクルスは、メイが「大丈夫」といった瞬間にはもう腕を振り上げて、「押していい」と言った瞬間には振り下ろしていたのだ。

 あからさまな危険物に対して躊躇いが無さすぎる。


 ガラスケースが砕け散り、その下に隠していたあからさまなボタンが押し込まれる。


 効果は一瞬で現れた。


「んぉわ!?」


 冗談のような速度で車体が急加速する。

 今までの最高速度の数十倍はゆうに出ているだろう。

 外の景色が流星のように流れていく様子を、ヒャッハー達は襲い来るGに耐えつつ視界の隅に捉えていた。


「メイ!?なにこれ何なの!?」

「ターボだよ!さっきのボタンを押せば1回だけ使える超加速!火属性宝石(ルビー)風属性宝石(エメラルド)みたいな属性の宝石を勢いよく砕くと内包された力が暴発するんだ!その原理を利用してるの!この二種類の宝石を後方側だけ壁を薄くしてある格納庫に大量に積んであるんだ!あのボタンは格納庫にある宝石を一気に砕く仕掛けの起動ボタン!使う度に宝石の再装填と格納庫の修理が必要だしコストはバカにならないけど!結果的にこれだけの速度が出るよ!でも制御はまだできないよ!ごめんね!」

「なんでそんなの許可したのよ!?」


 超加速の加圧に耐えながらも嬉々として秘密兵器の解説をするメイ。完全に得意分野について質問されたオタク特有の早口だが、自慢したくなるのも分かるほどの超加速だ。


 ひとたび発動すれば減速も方向転換も効かず直線でぶっちぎるしか出来なくなる暴走っぷりと発動時に車内を衝撃から保護する機能が無いのが玉に瑕だが。

 ……普通は安全装置を先につけるのでは無いだろうか?


 暴走するバギーカーは砂の海にタイヤ痕を残し突き進み、盛り上がった丘をぶち抜きサボテンと小動物を踏み潰し、それでも止まらずただひたすらに真っ直ぐ突き進んでいく。


「あばばばばばば!あぁ!?あれ、あ、オア、オアシスぅぅ!前に!オアシス!突っ込む!このままじゃ、オアシスあばっ、やばっブレッ、ブレーキ!ブ……あ!?ペダルが無い!?」

「ターボ中はアクセルペダルとブレーキペダルは引っ込むようになってるんだ!」

「なんで!?」


 自ら地獄の扉を開いた(ターボをONにした)にも関わらず運転席にいるせいで1番の恐怖体験をしているリクルスが必死にバギーカーを止めようとするも、そんな機能は備わっていないらしい。


 ターボの速度に満足しているのか楽しげなメイを除き、バギーカーに搭乗している6人は半ばパニックに陥っていた。


「変にブレーキつけると吹っ飛ぶからね!でも大丈夫!溜め込んだ力を放出しきったら勝手に止まるから!」

「おれもうへんなぼたんぜったいにおさねぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 そして、そのまま速度は衰える事無くオアシスに到達すると、大地の緑に痛々しい線を残し、僅かに生える木々を薙ぎ倒し、中心の泉へとバーサーカーは突き進む。


「あっ!?」


 泉のほとりに落ちていた大きな岩を踏み付けたバギーカーが宙を舞う。

 もしこの岩が無ければ、そのまま泉に突っ込んで宝石の暴発によるジェットを消火してバギーカーは停止した事だろう。


 しかし、岩によって跳ねてしまった。

 よって、泉の水による強制停止がかからない状態で泉の上空を突っ切り……


「うぎゃぁぁぁぁ!!!!」「のわぁぁぁぁぁ!!!!」『ぬわぁぁぁぁぁ!?!?』「うひゃぁぁぁぁ!!!!」「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」「うおぁぁぁぁぁ!!!!」「ぐおぁぁぁぁぁ!!!!」「うっへぇぇぇぃ!!!!」


 誰もが自分の事に精一杯で気付かなかったが、泉の中心に厳かに鳥居が立っていた。


その鳥居に、全員の悲鳴を纏ったバギーカーが狙い澄ましたように突っ込んだ。

メイちゃんったら想定外(失踪)からの想定外(モグラゴーレム)にさらに想定外(ゴーレムバギー)を重ねて来るヒャッハーの鑑(死んだ魚の目)


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[良い点] リクルス、こんな事言っているけどまた変なボタン押すんでしょ、私知ってる。 [一言] 遅くなっても大丈夫ですよ。 気長に待ってますから。
[一言] >「うぎゃぁぁぁぁ!!!!」「のわぁぁぁぁぁ!!!!」『ぬわぁぁぁぁぁ!?!?』「うひゃぁぁぁぁ!!!!」「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」「うおぁぁぁぁぁ!!!!」「ぐおぁぁぁぁぁ!!!!」「うっ…
[良い点] メイさん大暴走からの脱出からの大爆走……ってなんでやねん!とツッコミしてみました。 次回も押す場面があったら一言言ってから押してください。 「ニ〇ロオン!」(有名な婦警コンビの改造ミニパト…
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