第200話 『もはや狂気』
200話到達!
当初は200話まで続くなんて欠片も思ってなかったなぁ……
そしてサブタイのタイミングよ。別に狙ってた訳じゃ無いんですがね。これも運命か
ここまで来れたのもひとえに読んでくれる皆様がいたからです!
これからもよろしくお願いします!
「……あれ?もしかして座標みすった……?」
真面目な雰囲気を纏って(けれどやはりどこか気だるげそうなのはもはや彼女の個性として割り切るしかないのだろう)作業を始めようと振り向いたマーシャが一瞬固まり、続いて首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「いやぁね……一応こーるくれた人の座標を参照して転移したから、『岩山』えりあに来たはずなんだけど。山なんてないからさ、もしかしてみすったのかなぁって。こーるくれてから移動した?」
どうやら、マーシャはあるはずの『岩山』が無いことに困惑しているらしい。
出てくる座標を間違えたのかと首を傾げるマーシャから、実行犯であるカレットはとても気まずそうにそっと目を逸らす。
しかし、このまま誤解を解かなくては大きなミスが発生しかねない。
「その事なんだが……」
環境破壊願望持ちに全力攻撃を許可し、あまつさえ助力すらしてしまった立場としてトーカがマーシャに事情を説明する。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
たっぷり30秒間固まったマーシャは、震えるような声で1音だけ絞り出す。
どうやら、事態が飲み込めていないらしい。
あるいは、理解を脳が拒んでいるのか。
AIとは思えないほどに、その仕草はいちいち人間くさかった。
「詳細はログを見てもらえれば……」
「へぇ……?ログを、ねぇ……」
百聞は一見にしかずと言うが、トーカにはこの惨状を口で説明して信じてもらえるとは欠片も思っていない。
だからこその発言だったが、趣味が『面白ログ集め』なマーシャにとってその発言はある種の挑発のように聞こえたらしい。
あまりの驚愕に呆けた表情が貼り付けられていた顔が一転、見定めるような表情に切り替わる。
眠たげな表情のまま不敵な笑みを浮かべるという地味に器用な様子で、これ以上言葉はいらないとばかりに手早くマーシャがログを遡り始める。
リーシャ的にはすぐにでもメイのログを追って欲しかったが、そのためにもメイの未知の素材採掘の理由に『岩山』消滅が関わっている以上、マーシャを急かすことは出来ない。
結果、なんとも歯がゆそうな表情で目を瞑りログを遡っているマーシャを見つめるしかリーシャに出来ることはなかった。
もっとも、他人から見れば睨み付けていると思われても仕方ないほどにリーシャに余裕は無いのだが。
「ほんほん…………やっぱり試練で……えっ?いやいや。えっ?なにこれ?え?こんな事って……でも、不正は無い……ならどーやって……?構成は……え?これ……特定の魔法にだけ特化しすぎてるよ……。うわぁ……リアから聞ーてたけど……【カグラ】こわぁ……」
ものの十数秒でログを読み終えたらしい。
記録閲覧の速さはさすがAIと言ったところか。
妖精達はあまりに人間くさい仕草をするが、やはり処理スペックは人間とは段違なのだ。
結構ボロクソに言われていた気はするが、そこは気にしない方針で行くことにヒャッハー達は無言の満場一致で決めた。
「分かってくれたか?」
「うん……うん。いや、うん」
マーシャの語彙力が低下している。
「えっと、とりあえず。このログは保存。良い拾い物をした」
落ち着くために趣味に走った。
「すぅぅぅ、はぁぁぁ。すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ」
深呼吸をし始めた。
「うん。こーなった経緯は分かった。加減知らずだけど、面白いからいーと思う」
そして、諦めた。
「でも、これを一般ふぃーるどでやるのはさすがにだめだよ?私達が過労死しちゃう」
「安心しろ。さすがにやらせないから」
過労死という事は、もしや致命的に破損したフィールドの復元も妖精の仕事なのだろうか。
ふとそんな事を考えたトーカだが、本人も環境破壊の実績がある以上下手に踏み込むと薮蛇になりそうなので黙っておくことにした。
「それで、メイは!?」
「……あ」
「……あ、って何よ!?メイどうなったの!?」
「今から見てくるから待っててね……?」
「なんなのよコイツ……!」
『岩山』消滅のログがあまりにも衝撃的過ぎて忘れていたらしい。そんなマーシャに、リーシャはイラつきを隠せない。
つくづく緊急事態の空気に合わないマーシャであった。
「ほんほん……あー、なるほど?消し飛ばしたからふらぐがおかしくなって……うん。で、うんうん。…………え?いや、え?見つけてない?えぇ……自動修復ぶち抜く速度ってなに……?どーやったらそんな……え、正気?この子、一切戦う気ないの……?」
リーシャに急かされてログを追ったマーシャは、先程の『岩山』消滅のログに勝るとも劣らない困惑っぷりを見せている。
おそらくメイのステータスも確認したのだろう。
その困惑ぶりはヒャッハー達にも手に取るように分かる。
Endless Battle……終わらない戦いを謳うこの世界において、戦闘を切り捨てて生産だけに力を注ぐメイは運営側から見ても異端のようだ。
「あー。うん。結論から言ーと、正規じゃないけど正常な挙動してるから大丈夫」
「メイは無事なの!?」
「あんま未探索の部分については言っちゃだめなんだけど、まーいっか。無事無事。むしろ元気過ぎて【島】の方が心配なくらい」
「そ、そう……」
「じゃ、もう平気そーだから私は帰るね。このログもまとめたいし」
いまいち公私を分けられていない事を言いながらマーシャは去っていった。
(そうだ、帰ったら【カグラ】周りのログ漁ってみよ。面白そうだし)
最後に小声で呟かれた言葉は、聞かなかった事にした。
「……とりあえず、想定外の想定内っぽいな。いや、『岩山』まるまる消し飛ばすなんて想定されてても怖いけどさ」
「気にはなる……けどまぁ無事なら良いわ。バグで動けなくなってるとかじゃない限り、メイなら適当になんか作って解決するでしょ」
先程まではあれ程心配してたというのに、無事だとわかった瞬間リーシャの顔から不安の色が消える。
呆れの色も混じっていたが、それは間違いなく信頼の証だ。
「いや、いくらメイでもさすがに……いや、ゴーレムがあるのか……素材もメイならかなりの量を常備してるだろうし」
「そういえば前に火属性宝石を使った爆弾のプロトタイプが完成したとか言っていたな。あれは良い爆発だった」
「桜吹雪のメンテナンスお願いしに行く度にメイさんの工房は色んなアイテムが増えてたからね……」
「マーシャも言っていたけど、心配なのは【島】の方だな。今のメイにはストッパーがいないぞ」
リーシャどころか、もはや誰一人としてメイの安否を信頼している物はいなかった。
むしろ、【島】の方が心配される有様だ。
「さて、どうするか」
「んー、ここで待っててもいつ戻って来るかなんて分かんないし、『砂丘』の探索しに行く?」
「それでいんじゃね?メイはメイで『岩山』……山か?まぁここの探索し続けてるだろうし、役割分担ってことで」
「それに、マーシャの反応を見る限りどうもイレギュラーな侵入方法で別のエリアに行ってるっぽいからな。探索を進めればそのうち合流できるんじゃないか?」
少し話し合いの場を設け、いつ戻って来るか、そもそもここに戻って来るかも不明なメイを待って時間を潰すよりはメイの捜索を兼ねて探索を進めた方がいいだろうという決論に落ち着いた。
「そういえば、『砂丘』は砂漠とは何が違うのだ?規模か?」
「大雑把に言えば地形か環境かの差だな。まぁゲーム内でそこまで区別されてるかは分からないが」
「ついでに言えば、『砂丘』……ってかこの【島】のエリアは俺達が見たまんま適当に呼称してるだけだしな。今はもう無い『岩山』は運営側も『岩山』エリアって認識だったようだが」
「ま、行ってみりゃ分かるだろ!」
そんな雑談を交わしながら、ヒャッハー達は少し前まで『岩山』だった場所を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻
『????』エリアにて
「ここ……どこ?熱中し過ぎてどうやってここに来たか覚えてないや……。とりあえず、みんなと合流しな……何あれ!?僕あれ知らない!!採っていいの!?採るよ!?採ったよ!!あ、あっちにもある!ここも天国だったのかぁ!」
聞き届ける者のいない声が、響いていた。
200話も積み重ねればキャラにも歴史が出来るというもの。
という訳で、皆様の好きだ!という登場人物をぜひ感想で教えてください
人気の多いキャラだからどうこうという事はありませんが、作者がキャラが愛されてる実感を持ててニヨニヨします
感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます
あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します




