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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
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第192話 『おやつは300円まで』

 

 リクルスとカレットの行き先をかけた仁義なき戦い(ジャンケン)は、3勝2敗33引き分け(あいこ)でカレットの勝利となった。


 5連続グーあいこが続き、睨み合いの状況であと一歩待てなかったリクルスがチョキを出し、長きに渡る決闘(ジャンケン)の幕が降りたのだった。


「さぁ『岩山』に行くぞー!」


 勝利を勝ち取ったカレットは激戦直後と言うこともあり興奮気味にこぶしを突き上げてひとりエイエイオーをしている。


「なんでカレットは『岩山』がいいんだ?」


 そういえば、といった雰囲気でリベットが気になった事を尋ねる。

 リクルスとカレットは即座に案を出したので理由を聞いてなかったと、今更ながらトーカ達も気が付いた。


「え、リクルスとカレットの行動に理由とかあるのか?」

「お兄ちゃんとカト(ねぇ)の行動に理由が?」


 というか、トーカとサクラはリクルスやカレットの理由もない突発的な行動の数々を知っているせいで『突発的な行動は大抵理由が無い行動』という思い込みから、無意識にその可能性を排除していた。


「さすがに酷くない?」

「そこまで考え無しではないぞ!?」

「すまんすまん。お前らは突発的な行動とか多過ぎて理由があると思わなかった」


 リクルスとカレットには、小学校くらいの時に突発的な思い付きのイタズラで教師に怒られた時に『理由がない行動なんてありえない。こんな事した理由があるはずだ』と言われたが、マジで理由がないので答えられなかった……みたいなエピソードがごろごろあるのだ。


 そんな幼馴染漫談を挟んで、カレットがリベットの質問に答える。


「私が『岩山』を選んだ理由は単純明快!頂上でやっほーと叫びながら【白龍砲】をぶっぱなしたいからだ!」


 安定の魔法中毒(マジックジャンキー)だった。


 また、リクルスが『砂丘』を選んだ理由は昨日テレビで砂漠特集を見たからだった。どっちもどっちだった。


「カレット、止めはしないが間違っても下に向かって撃つなよ?あとその為に【サクリファイス】は使わないからな?」

「なぬっ!?むぅ……無強化(プレーン)で我慢するか……」


 無意味なぶっぱのためにトーカの【サクリファイス】まで使うつもりだったらしいカレットは、ガックリと肩を落とす。

 それはともかく、さすがに『岩山』の頂上から【島】に向かってぶっぱなすつもりは無かったようなので一安心だ。


 だが、カレットは森を燃やしてみたいとか【サクリファイス】込の【白龍砲】を普通フィールドで撃ちたいとか言い出す辺り広域破壊の魅力に取り憑かれている節がある。

 今回もいきなり気が変わって【島】にぶっぱなさないか気を付けなければ。


 などと考えているトーカだが、彼も彼で1回でいいから全身全霊の【グラビトンウェーブ】を遠慮無しに使ってみたいと考えているので、五十歩百歩だろう。


 むしろ、被害範囲だけを考えればトーカの方がタチが悪い。


「さて、じゃあ『岩山』に行くか」

「登山となると本来は色々な準備が必要なもんだが、昨日の『森』を見るとそこまで専門的な道具は要らなそうだな。どちらかと言うと、ほぼ間違いなくいるであろう【島の獣】をどうするかが問題だ」


 現実でも登山経験と森歩き経験があるらしいリベットの言葉に、明らかに登山セットと思われるリュックサックを取り出しかけていたメイがしょんぼりした様子でインベントリにしまい込む。


 位置関係の問題でリベットにはその動作は見えなかったが、バッチリ目撃してしまったトーカはどこかいたたまれない気分になった。


「遭遇したらトーカがバフかけて解除されなかったヤツからパターン割出せばいいんじゃね?」

「防御、速度と来たら次は攻撃だろう!つまり全力攻撃だ!」

「お前もしかしなくても【サクリファイス込の白龍砲】を撃ちたいだけだろ」

「当然だ!」


 ぐっ!と清々しいまでの笑顔でサムズアップするカレット。

 もはや彼女の欲望は留まるところを知らない。


「んー、ていうか。『権限付与』で『聲』が理解出来るようになったら普通に試練内容分かるんじゃないの?」


 顎に人差し指を当てて首を傾げながらリーシャが呟く。

 その時に、メイが(えっ、なにそのあざと可愛い仕草。すごく似合ってない……)みたいな顔でリーシャを見つめていた。


 その後は、リベットから「おそらく必要は無いと思うが

 一応な」と登山のレクチャーを受け、ヒャッハー達は『岩山』へ行く準備を終えた。


「あぁっ!トーカ!大変だ!」


 はずだったが、カレットから声が上がる。


「どうした?」

「私達はとんでもないミスを犯している……!」

「ッ!そうだった!クソッ!やらかした!」

「なに?どういうことだ!?」


 いつになく真面目な顔のカレットが絞り出すような声でトーカに、否、トーカだけでなく、この場にいる全員に訴えかける。

 その言葉を受けて、真っ先に何かに気が付いたのはリクルスだった。


 信じられない。信じたくない事実を突き付けられた様に、2人の声は悲痛に歪んでいる。


 そんな2人の様子に、つい先程まで探検前のわいわいモードだったヒャッハー達の意識も戦闘時のように引き締まる。


「なんだ……何に気が付いたんだ……?」


 代表して、2人と付き合いの長いトーカが問いかける。

 その声が僅かに緊張に震えているのは、長年保護者をやっていた彼からしても2人の反応は異常だという証拠だ。


 ゴクリ……と、生唾を飲み込み、重大な秘密をカミングアウトする時のような真剣な声でカレットとリクルスが声を合わせて言う。


「「持っていくおやつを決めていない!」」

「よーし準備はいいな?『岩山』にいくぞ」


 所詮奴らは頭を使わない方。

 心配するだけ無駄だった。


「せんせーバナナはおやつに入りますか?」

「バナナの供給を確保してから言え」


 そして、悪ノリする頭を使わない方その3(リーシャ)


 だが、途中から察して合わせたリクルスや、こうやって合いの手を入れるリーシャは分かっていて悪ノリしているが、言い出しっぺのカレットに関していえば天然でやっているところがある。


 どちらの方がマシなのかは、トーカには分からなかった。


「実はバナナは『森』で見つけたから供給はあるんだよねぇ。『森』の中の果物の木がいっぱいあるエリアの奥の方に生えてたんだ」

「あるのかよ……」


 悪ノリーシャを適当にあしらったつもりのトーカだったが、リーシャは勝算(バナナ)を持っていたようだ。

 くだらないところで用意周到なのも、頭を使わない方の特徴だろう。


「わかったわかった。『料理』のレベル上げように作ってた串焼き肉やるからそれおやつにしとけ」


 カレットとリクルス、そしてリーシャにこれで話は終わりだとばかりに串焼き肉を5本ずつ押し付ける。


「さて、改めて『岩山』に行くぞ」

「「「「おー!」」」」

「「もー!」」


 カレットとリクルスは早速串焼き肉を1本頬張っていた。

 仮にもおやつならこの場で食うなと言ってやりたかったトーカだが、これ以上話が逸れるのを危惧して無視する事にした。


「やっぱりだな。ある程度山道が用意されてるっぽい」


 ようやく『岩山』に登り始めてすぐに、先頭を歩いていたリベットが気付く。

 素人目にはどこも変わらぬ岩肌にしか見えないが、経験者(リベット)曰く結構ハッキリと登山道のような物があるらしい。


 そう言われて改めて観察してみると、確かに今歩いている道は地面のでこぼこも少なく、長い坂道を歩いている感覚になる程度にはしっかりと道になっていた。


 現実での登山経験が無いリベット以外は、言われるまでまったく気付かなかった。


「多分これが正規ルート……と言うより、無難な道なんだろうな。技術と道具があれば強行軍も出来るんだろうが……」

「そんなルートが!」

「めっちゃ興味ある!」


 難しいショートカットルートと言われて、頭を使わないヒャッハー達が即座に反応する。


「その状況で【島の獣】と戦うのは無理だ。登山中に登山以外のこと……しかも激しく動く必要のある戦闘とか絶対無理。こればっかりは技術不足とかじゃなくて、登山のプロでも絶対無理だから諦めろ。どうしても行きたいなら俺が補佐してやるから【島の獣】が片付いてから改めて来るぞ」


 登山の怖さも十分に知っているのだろう。

 リベットから、ガチトーンの注意が入った。


 さすがに何か感じ取ったようで、頭を使わない方のヒャッハー達はしょぼん……とうなだれながら、しっかりとリベットの後について行く。


 ちなみに、この【島】に来て意外な調査の才能を見せたメイは目を輝かせて鉱石の採掘ポイントが無いか探していた。

 今はまだ見つかっていないようだ。

学校行事で遠足の話が出る度に「バナナはおやつに入りますか」って聞く奴はいてもガチでバナナ持ってくる奴は見たことないなぁ


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勝算=バナナは吹きました [一言] 高校生になっても、勝算(バナナ)を富士山に持って行く奴がいた・・・。
[良い点] 考えずに行動して、「なぜそんな事をしたんだ」と聞かれるのは1番面倒臭いよね。 バナナはおやつだと、私は思いますよ(´∀`*)ウフフ
[一言] 僕は持っていったよ
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