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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
202/310

第188話 『下準備』

ちょっと話が長くなったので分割


 

 ヒャッハー達が『森』で【蛇】と、『海岸』で【狼】と戦い、謎だけを手に入れた翌日。


 彼らは残りの探索を進めるために再集合していた。

 集合場所は【島】ではなく、始まりの町【トルダン】の噴水広場である。


 トーカがログインすると、既にリクルスとサクラがログインしていて、トーカを待ち構えていた。


「まもっ……トーカ。俺は今とても魚が食べたいです」

「ごめんねトカ(にぃ)。お兄ちゃんが昨日からさかなさかなうるさくて……」

「急にどうした?」


 話を聞けば、昨日の魚捕りで魚が食べたくなった(リクルス)だったが、その日の夕飯には残念ながら魚は出なかったらしい。

 それだけならまだ良かったが、その日はたまたま夢見が悪く、魚料理を食べようとしては直前で消え失せるというのを繰り返す悪夢を見たらしい。


 その結果、今のリクルスは限界と言っていいほど魚に飢えているのだとか。


「食いしん坊かよ」

「違うんだ!普段は別にカレーの口になっててシチューでしたされてもそこまで引きずんねぇよ。ただ……夢見が悪くてな」

「分かった分かった。だいぶ前にメイから貰った、どこでも使える設置型の調理台と調理道具一式があるから刺身くらいなら作ってやるよ」

「さっすがトーカ!愛してる!」

「料理中に抱きついてくるな。包丁で刺すぞ」

「武器チョイスに嫌なリアリティを感じるぅ!」


 と、相当早くログインしていたのだろう、リクルスが耐えきれん!と急かすので、魚に飢えたリクルスとついでにサクラにも即席の刺身を振舞う。


「うめぇ……うめぇ……」

「大袈裟だなぁ……って言いたいけど、本当に美味しいね」


 と、こんなように昨日確保した【島】産の海魚は、2人に大好評だった。


「俺が一番乗りかと思ったらもう3人もいたか。おはようさん……って2人とも良いもん食ってんな」

「おはよう。リベットも食べるか」

「お、悪いね。お願いしようかな」


 数分後、トーカの刺身に舌鼓を打つのか1人増えた。


「カト(ねぇ)遅いね?」

「メイとリーシャもまだ来てないな。一応もう集合時刻なんだけど……」

もぐももぐんもぐも(まだ寝てるんじゃね)?」

「刺身頬張りながら喋るなよ……」


 と、刺身をつまみつつ【トルダン】の噴水広場前で待っていると、2分ほど遅れてカレットが現れた。


「すまん。遅れた。…………ふへぇ」


 遅れた事はの謝罪をしつつも、なんとも脱力しきった締りのない顔をして。


「……ごくん。カレットが全力でバカみたいな顔してっけど、どうしたんだ?」

「いやぁ……今日は夢見が良くてな!夢の中でも【白龍砲】を撃ってきたのだ!しかも好きなだけ!」

「……魔法乱射魔(マジックハッピー)かよ」


 頬張っていた刺身を飲み込んでまで問うたリクルスだが、トーカは既にその答えを知っいてた。正確には予想が付いていた。


「一晩経ってもまだそうなってんのかよ」

「仕方ないだろう、それ程までに気持ち良かったのだ。リクルスはこんな物を独占していたのが……」

「俺ぇ?独占……って事はもしかして【サクリファイス】か?」


 要領を得ないカレットの発言に、幼馴染としての付き合いの長さからか、リクルスは正確に発言の意図を読み取った。

 そして、確認するのはカレット本人ではなくトーカな辺りにも、経験則が垣間見れる。


「あぁ。そうだ。昨日、飯食った後に変なスイッチが入ったのか、どうしても【サクリファイス】を体験したくなったらしくてな。あまりにもしつこいから練習と称してロッ君相手に使ったんだよ」

「最っっっっっ高だったぞ!有り余るMPと限界まで盛ったバフ、そして何より圧倒的なステータス!この状態で使った【白龍砲】と来たら……!ロッ君どころか地面の一部すら昇華してクレーターが出来たぞ!」


 ロッ君が「しゅっ」と小さな音を立てて足元の地面諸共消え失せるあの光景を、手応えを、カレットは生涯忘れる事は無いだろう。

 それ程までに素晴らしい体験だった。この体験が、カレットを更なるマジックジャンキーにしたのは疑いようもない。


「うわぁ……オーバーキルが過ぎるだろ……」

「あぁ、正直過剰火力にも程があると思う。ボス戦用のフィールドで撃ったからいいものを、普通のフィールドで撃ったら大変な事になると思うぞ」

「私としては森とか山とか目掛けて撃ってみたいのだが」

「それを最後に《EBO》から追放されかねないから止めとけ。どうしても撃ちたいってなら空に向かって撃つしかないだろうな、それでも掲示板でだいぶ話題にはなると思うが」

「むぅ……」


 と、そんな他のプレイヤーが聞けば耳かチートを疑う会話をしながらも、約束時刻を過ぎても現れない2人にトーカ達が疑問を持っていると、カレットのログインから10分程遅れてメイがログインしてきた。


「ごめん!ジオラマ作りしてたら遅れちゃった。あと、リーちゃんがちょっとバーゲンに付き合わされて1時間くらい遅れるから先行っててって」

「あー、俺の母ちゃんも良く荷物持ち兼人数増やしで俺の事引っ張ってくわ……あれ大変なんだよなぁ……なむなむ」

「私は結構楽しんでるけどね」


 リーシャのさらに遅れる報告に、良く母親にバーゲンに付き合わされるリクルスとサクラが苦笑する。


「へぇ、メイってジオラマ作ってんのか」

「リアルでも物作りが好きなんだな」

「うん!むしろリアルで物作りが好きだからこっちで生産職になったってくらいだよ!……まぁそれで今日みたいに約束の時間に遅れちゃったりする時もあるから、あんまり自慢気に言うことでも無いんだけどね」


 自分の好きな物の話だからか一瞬声の調子を上げ、しかしそれに伴う悪癖を今回も発揮してしまった事に対してバツが悪そうな顔をする。


「ま、注意は必要だけどそこまで気にする事もないさ」

「メイが作るジオラマか……なんか、凄そうだな」

「あはは、所詮は趣味だから、そんなに凄い物でもないよ」


 もしここにリーシャがいたら、全力で否定しただろう謙遜をしたメイだが、この場にメイが作っているジオラマを見た者はいないため、そこにツッコミが入る事はなかった。


「さて、1時間くらい……か。【カグラ】で勝ち取った【島】だし、1人だけ仲間はずれってのも可哀想だよな」

「うむ。全然待つぞ!」

「まだ刺身もあるしな。メイも食うか?」

「お刺身?あっ、そっか昨日の魚!食用にもなるんだ……もちろん食べるよ!」

「よし来た!トーカ!」

「まるで自分が作るみたいな言い方しつつ俺に頼むのな。まぁさっき多めに作ったからまだあるし全然構わないけど」


 そう言ってトーカが取り出したお刺身に、メイも舌鼓を打つ。

 リベットは先程から黙々と味わって食べているし、リクルスとサクラもなんだかんだ食べ続けている。


 そんなに美味いのかとトーカも1口食べてみれば、様々な種類の魚を組み合わせたような、間違いなく美味しいけどどう美味しいかと言われれば上手く言語化出来ないような味がした。


「さて……ちょっと時間が空くならルガンさんのところの道具屋に顔出してくるか。『うちの天使(カノン)考案の新商品が発売したから買いに来い(要約)』って連絡があったし」


 ルガンとカノンとは、トーカが初日に出会ってクエストを攻略してからもちょくちょくと交流が続いてる。

 最初は視線だけで殺しに来そうだった彼も、なんだかんだトーカのことを認めてくれたのか新商品が入荷するとわざわざ連絡をくれたりするほどの仲だ。


 トーカは自分以外にNPCからわざわざ個人的な入荷連絡が来るようになってるプレイヤーを知らないので、これはかなり珍しい状況だと思っているが、実はこれもシークレットクエストの完全攻略(パーフェクトクリア)報酬のひとつだったりする。


 カノンもカノンで(Y)(L)(N)(T)をメインに看板娘として店の集客に一役買っている。

 彼らがこの道具屋に落とした金を全てかき集めれば城が建つと言われる程に通い詰め、結果がルガンの道具屋だけが始まりの町に不釣り合いな程に発展しているのだ。


 その後、彼らは各々の方法で時間を潰す。


 リクルスとリベットは刺身を食べ続け、メイはカレットとサクラと一緒に装備の微調整を。


 そして、トーカはルガンの道具屋に向かい、ヒャッハーと交流があるカノンが考案しただけあってなかなかクセのある新商品を買い、(Y)(L)(N)(T)に物陰から殺意の籠った目を向けられたりした。


 そして、宣言通り1時間後、謝りながらやって来たリーシャと共に、一行は再び【島】へ移動するのだった。


今回はなんの進展もない息抜き回でしたが、次回からはある程度話が動きます


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[良い点] メイの作るジオラマ…凄いの作ってそうだな、例えば、内装も綺麗に作っていて、明かりもつく様に作っていても何も不思議がないね、メイだし(´・ω・`) いつか、ゲームの中でも小さいジオラマの街…
[一言] 久しぶりにカノン登場
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