第184話 『海という未知の世界』
幼馴染組が自由に動いてると書きやすいですね
リクルスとカレットの2人はトーカがいると精神年齢が下がってる気がする
あと【島】に来てからメイが暴走しっぱなし
「いやぁ、満足満足」
メイ達はしばらくの間釣りを続け、釣り組と素潜り組合わせて延べ3桁近い量の魚を確保した辺りでようやく当初の目的を思い出したらしい。
メイ達が魚捕りに夢中になっている間に、お腹が満たされた上に心地よい気温だった事もあってうとうとしていたサクラを暖かい目で見守ってたりもしたが無事に探索は再開され、一行はようやく『森』の探索を終えた。
イレギュラーとの邂逅や寄り道などもあったが、様々な果物が実るフルーツエリアや大量の花が咲き誇る天然の花畑、大量の虫が溢れる場所や薬草の群生地など、最終的にこの『森』だけでも【島】を交換した意味はあったとメイが断言する程の成果を彼らは得ていた。
「いっぱい採ってたもんねぇ。この様子なら他のエリアにも期待出来そう?」
「そうだね!『岩山』なんかはもしかしたら鉱脈とかあるかもしれないし、この島の周りにある『海』で新しい素材も見つかるかもしれないし!楽しみで仕方ないよ!」
そして、この『森』も【島】の一部に過ぎないという事実に、メイのテンションは際限なく上昇し続けている。
「次は……現在地的に『海岸』かな?思ったより時間もかかりそうだし、『岩山』と『砂丘』は明日に回した方がいいな」
「さんせー。明日も休みだし一日中行けるぜ!」
「私は徹夜でも構わ「それは俺が許しません」
マップを確認しながら一行を代表してトーカが進路を提案すると、即座にリクルスとカレットが同意する。
カレットは徹夜しそうな勢いだったが、今は別にそこまで【島】の探索を急ぐ必要も無いので保護者から却下された。
「えー」
「えー、じゃありません」
この2人のノータイム賛成は一見トーカが発案してくれるから自分はいいやと思考放棄しているようにも見えるが、その実色々と考えた上で『トーカに任せる』という方針を取っているため、本人がそれは違うと思えば普通に反対したりもするのだ。
「ふふっ。前から思ってたけどトーカと2人って親子みたいだよね」
「あー、何となくメイの言ってること分かる気がする。今のお兄さん、弟相手にしてる時のお母さんと同じ顔してたよ」
「お父さんじゃなくてお母さんなのか……」
「サクラを相手にしてる時もだけど、トーカって保護者みたいな雰囲気あるんだよな。まぁサクラ相手の時はお母さんってよりはお兄ちゃんって感じだけど」
今のやり取りを見ていたメイが微笑ましげに笑い、リーシャもそれに同調する。さらに「俺の方が年上だと思うんだけど、俺よりよっぽどしっかりしてるよ」とリベットも続き、少しの間この話題で盛り上がるトーカ達であった。
「さて、んじゃ改めて。次の行先は『海岸』でいいか?」
「おう。俺も賛成だ」
「『森』からだと崖になってて無理すれば降りられはしそうだけと戻るのは無理そうだったもんね。私もそれでいいと思うよ」
「僕も賛成!……ふふふ、海の素材……どんなのがあるのかなぁ。やっぱ魚?海藻とか貝類とかも……そうだ、海水も採れるかも?そしたら塩とか!他にも……」
生産職として数多くの未知の素材を求めて作り出していく立場ゆえに未知の素材の気配に恍惚とした表情を浮かべているメイを見なかった事にしつつ、一行は次なるエリア、『海岸』エリアへ向けて出発した。
なだらかな下り坂になっている地面は、初めは『森』同様に土の地面だったのが、進むにつれて段々ゴツゴツとした岩肌に変化していく。
さらに進むと、岩肌の地面がさらにでこぼことし始め、足場が悪くなっいく。
そして、足場の悪さに比例するように微かにざぱんざぱんと波の打ちつける音と共に磯の香りが漂い始める。
「おぉ……だんだん波の音が大きくなってきてるな」
「スンスン……潮の香りもするようになってきたな!」
「2人とも、足場が悪いんだから間違っても走り出したりするなよ?」
海が近付いてきてテンションが上がっていたリクルスとカレットがギクリとわざわざ口に出して言う姿を見て、やれやれとばかりにトーカはため息をつく。
「うーん。テンション上がる2人の気持ちも分かるけど確かに足場は酷いねぇ。海の近くまで行って波が強かったら映画のオープンムービーごっこできそう」
「岩石海岸……って言うんだったか。砂浜みたいなバカンス気分を味わえるような海岸じゃないな。俺は結構こういうのも好きだが」
リーシャとリベットの2人は地面を足で軽く小突いたりキョロキョロと辺りを見渡しながら周囲の散策を始めている。
ちなみに、メイはとっくのとうにトリップ状態で色々と漁り始めていた。
結局出遅れた形になったリクルスとカレット、トーカもそれに続き散策を開始する。
「見ろトーカ!でっかい蟹がいるぞ!私の掌と同じくらいだ!でっかい!しかも私とお揃いで真っ赤だぞ!」
「おっ!トーカトーカ、見ろよ、ここに水が溜まって……うぉ!ナマコがいるぞ!」
「おーい、カレットは調子乗って蟹にちょっかい出すなよー?毎年同じようなことやって指挟まれてるだろ?リクルスはナマコ握ってキュビエ器官出そうとするな!」
「カト姉もお兄ちゃんも何やってるの……」
まるで幼子のようなカレットとリクルスの行動に、トーカはカレットには呆れ半分の微笑ましげな声を、リクルスには切実な叫びを飛ばす。
サクラは純度100%の呆れ声だ。
ちなみに、『森の中の池』には若干のトラウマがあるサクラだが、別に水辺は平気なようで平然としている。どうやら水全般がトラウマの対象にはなっていないようで、トーカはこっそりと胸を撫で下ろした。
「お兄さん保護者してるねぇ。っと、それより……これ案外簡単に海まで行けちゃいそうだね。もしかして普通に海の中にも入れたりする?今度メイにダイビングスーツ作ってもらおっかな」
「ここ、かなり足場が悪いな……この先足場が安定しない場所での戦闘を想定して訓練に使える……か?」
「うーん。この【島】にも満潮と干潮の概念はあるみたいだし……多分今は干潮だね。岩のくぼみの所々に海水が溜まって魚とかが取り残されてる。ふふふ……しかも全部見た事ない魚だ!間違いなく海産の種類!今まで釣りが出来た川とか池じゃ採れないタイプだよね?さすがに【島】を交換した人限定の素材ってのはありえないだろうから、近々海ないし海産物が入手可能なエリアが解放されるのかな?あ、2人とも、それもう要らないなら貰うね」
指を挟まれたカレットから蟹を、必死に握り締めて握りつぶしかけていたリクルスからナマコを(メイが)回収しつつさらに進んでいく。
そして、トーカ達は一定の位置で見えない壁があって進めない……と言ったような事もなく、割と簡単に海のすぐ側にまで行けてしまった。
「うーみーはー!」「ひろいーなー!」「「おおきーいーなー!!」」
「お前ら……よく飽きないよな……」
「あの2人、毎年やってるよね……」
毎年海に行くたびに繰り返されるリクルスとカレットの声出しはゲームの中であっても有効だったようで、山に登ればやまびこを試すように大声で海に向かって2人が叫んでいる。
「リクルスもカレットも人生楽しそうだよねぇ。お兄さんとサクラちゃんはやんないの?」
「……昔は一緒になってやってたなぁ」
「今は……さすがにちょっと、ね」
「さすがに俺も海に向かって叫ぶのはやらないけど、山登ったら『やっほー』は今でも言うなぁ」
トーカは呆れたように、サクラはちょっと恥ずかしそうに、リーシャとリベットは楽しそうに、リクルスとカレットの微笑ましい行動を見守っている。
「これは……結構しっかり海になってるね。このまま海にも入れちゃいそう。だとしたら……いや、そもそもこの【島】はどこにある扱いなんだろう?どこかしらのフィールドと繋がってるのか、所有者ないし招待者しか行けない異空間にあるのか。繋がってるなら招待者以外もこの【島】に来れちゃう?異空間にあるとしたら海はどこまで行けるの?うーん。疑問が尽きないね」
「なんか、素材集めが一周してメイが1番深いレベルでこの【島】の調査してるね」
そんな6人の事は気にも留めず、メイは海のギリギリまで行ってしゃがみこみ、ちゃぷちゃぷと海水を手で掬いながら呟くメイを見て、トーカ、リーシャ、リベット、サクラの4人は顔を見合わせて苦笑する。
「はは、そうだな」
「任せっきりはダメだもんね」
「これは負けてられないな」
「私達もしっかり探索をーーー」
そして、4人も改めて探索に取り掛かろうとしたその時。
いつの間にか海に叫ぶ行為を終えていたリクルスとカレットの焦ったような叫び声が聞こえてきた。
「やべぇやべぇ!向こうにでっかい狼がいるぞ!」
「さっきの蛇と同じでなんかヤバそうな感じだ!」
【蛇】に続き【狼】の登場です
それはそうと、ナマコの飛び出す内蔵ってキュビエ器官って言うんですね
初めて知りました
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