第182話 『抱えた謎』
今回は大蛇戦のリザルト回と書いてるうちに字数が多くなったため独立した息抜き回です
大蛇がノイズとなって消滅した直後、大蛇に殺されたはずのトーカ達は何事も無かったかのように復活した。
しかも、ただのリスポーンではなく、リベットの槍も噛み砕かれたリクルスの装備も全てが元通りに修復されており、まるで初めから大蛇など存在しなかったかのようにきれいさっぱり、本当に何事も無かったかのように全てがリセットされているというおまけ付きで。
「なんだったんだ……?」
「まさか……夢、でも見ていたのか?」
「ちょっとほっぺたつでででででで!」
と、そんな会話が繰り広げられたほどだ。
しかし、そんな『夢』疑惑もすぐに解消された。
その原因は、いつの間にかサクラのインベントリに入っていたとあるアイテム?にあった。
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説明文が文字化けしていて読めない上に、取り出してみても拳大のノイズの塊で外観も分からないという、何も分からないがそこにあるだけで異常性を示すこのアイテム?の存在によって、あの悪夢のような大蛇との遭遇が決して夢幻では無い事が証明されたのだ。
一応、こんな文字化けだらけのある種の危険な物体が存在してて大丈夫なのかと運営に報告したのだが、数分後に『あー、あー。うん。そっかぁ。まぁそうだよね。うん。まぁ、平気だから気にしないでね!』と、もはやわざと不安を煽っているのかと思うような書き方での大丈夫だという旨の返信が届いたので、この異常な状態で正常らしい。
ちなみに、文の最後に『感心したような引いたような複雑でなおかつウザイ』というらしいといえばらしい表情をしたデフォルメ妖精ちゃんの顔が付いていたため、この文を作成したのは妖精ちゃんということもわかった。
なんというか、妖精ちゃんの仕事の範囲が広い。
今やイベント時の説明役としてエボ君と共に出てきたりしているが、元はGMコール担当用AIな妖精ちゃんは今もしっかりそっちの仕事(というか本職)にも駆り出されてるのだ。
ちなみに対応用AIの総数は10人で、『妖精』というのは正確にはGMコール担当用AI全員の事を指す。その中でさらに個別名が設けられているため、呼び分けるなら『妖精ちゃん』ではなく個体名で呼ぶべきなのだとか。
まぁ『妖精ちゃん』といえば初登場時の自己紹介やイベントやらで顔出しが多いことやらでリーリアの事を指すのが《EBO》内での共通認識だし、どの担当用AIでも『妖精ちゃん』であってるのも間違いない。
さらにいえば、対応用AI10体の性格は全員違い、それぞれにファンがついているのだとか。
その上、GMコール時にどの対応用AIが担当するかはランダムらしく、よく出てくる子や滅多に出てこない子がいて一種のガチャ要素になっているらしい。
そのため掲示板や妖精ファンなどの一部の界隈ではGMコールの事は担当用AIガチャと呼ばれている。
GMコールする為に様々な問題を探して回る『風紀委員』やら『異常探検隊』やらと呼ばれる勢力が一定数存在しており、この世界の治安維持に一役買っているとか。
ちなみに、掲示板情報によると現状でのGMコール時の出現率は1位がリーリアの34.8%で1番出現率が低い子が2.3%、他の子はある程度の差はあれど同じくらいらしい。
どこかで『うーん。ブラック!』と叫ぶ妖精ちゃんがいたとかいないとか。
閑話休題
あの大蛇との戦闘が夢でもなんでもない実際の出来事だと確認したトーカ達は、各々が各々の形で悔しがっていた。
「くっそ……もっと強くならねぇとなぁ。あのバケモンにも勝てるくらいには」
「むぅ……私は不満だぞ!【白龍砲】を撃たせて貰えなかった!」
「一気に色々ありすぎて反応が遅れちまったなぁ……もうちょい視野を広く持てるようにしないと」
「私も鍛え直しかなぁ」
「全然ダメだったからな……武器の強化もだが、俺自身のスキルをもっと伸ばさないと」
まぁ、大蛇になすすべなく蹂躙された直後で落ち込むでもやさぐれるでもなく、こんな会話が平然と出てくる辺りがヒャッハーがヒャッハーたる所以なのだろうか。
「でも……あれって本当にただの敵だったのかな……?」
「む?そういえばサクラが最後まで残っていたのか。そういえばどうやって倒したのだ?」
突然の大蛇との遭遇。即死。何事も無かったかのように復活。いつの間にか増えていた意味不明のノイズの塊。と、様々な事件が一気に重なったせいでスルーされかけていた事柄……そもそも大蛇との決着がどうなったのかをカレットが最後まで生き残っていたサクラに尋ねる。
本来なら《EBO》で死亡した場合、一定時間いわゆる幽霊状態でその場に留まる蘇生可能時間があり、その間は現在の状況を干渉出来ないだけで把握は出来る。
しかし、今回大蛇にやられた時に蘇生可能時間はなく、PvP大会の時のような死者部屋に隔離されていてどう決着が付いたか確認出来ていないのだ。
「えっとね、そもそも倒せてないんだ」
「……?倒せてないなら逃げられたのか?いや、でもそうしたらあの訳の分からんノイズの塊に説明がつかないが……」
「リベットさんがやられてからこんな事があってね……」
そうしてサクラから事の顛末が語られる。
……とは言っても、せいぜいが『リベットのカウンターを受けてもHPバーすら出現しなかった』『大蛇の攻撃をギリギリ耐えたら何か言って消滅した』といった、何も分からないということが分かる情報しか無いが。
「なんだそりゃ……?」
「HPも無く、1発耐えたら消えた……?そういうイベントだったのか?」
「『攻撃に耐えられたらクリア』みたいな条件の突発的なイベントで、あのノイズの塊は報酬だったってことか?」
サクラからの情報を元にトーカ達が考察していると、あのノイズ塊を見てからずっと何か考え込んでいたメイがかぶりを振って呟く。
「多分そう……なのかな。あんなノイズの塊みたいなアイテム、僕が見た事が無いから多分相当特殊なアイテムだと思うよ」
「うっへーメイが見た事無いんじゃそうだわ。だってメイって《EBO》にある発見済のアイテムなら全部把握してるでしょ?」
メイの知らない発言に、リーシャが心底意外そうな、そして厄介事を抱えたとでも言いたげな顔になる。
しかし、そんなリーシャに対してすぐにメイから訂正が入る。
「いやいや、まさか。発見数が極小数でしかも発見者が情報を秘匿してるようなのはさすがに知らないよ?」
「裏を返せばそれ以外は全部知ってるって事になるんだけど……?」
ほとんど、訂正の意味は無かったが。
ちなみに、なぜ知らないのに『発見者が情報を秘匿しているような素材』があると彼女が考えているのかと言うと、メイもちゃっかり秘境鉱床の『聖銀』やエンシェントトレントの『古代樹の銘木』、その他多数の超有用かつ希少な素材の存在や獲得方法を秘匿していたりするからだ。
つまりは、自分がやっているのだから他人もやっているだろう理論である。
メイは生産狂で《EBO》でも最高峰の職人だが、その道に関して言えば優しくも無ければ聖人でもない。
むしろかなり厳しい方であり、自分の腕に自信があるからこそ技術の安売りはしない。そういうタイプなのだ。
トーカ達が気軽に装備作成や強化等を請け負って貰えているのも、友人であり貴重な戦力であるからこそ……つまりはコネがあるからなのである。
ヒャッハー達が心置き無くヒャッハー出来ているのも、メイという最高のサポーターとの深い繋がりがあるからというも大きな理由の一つなのだ。
「まっ!悩んでても仕方ない。どうせこの【島】関連のなんかだろうし、探索してればそのうち分かるって!」
「ま、そうだな。気を取り直して、探索の再開と行くか」
「「いぇーい!」」
「そうだね!【島】の、少なくともこの森では素材採取が出来ることが分かったし、他の場所でも出来るか確かめたいし」
「こんだけ色んな地形が重なってるなら、現実では見れない絶景とかもありそうだしな」
袋小路にハマりそうだった思考の流れをリーシャがぶった切りトーカがそれに続いた事で、今回の大蛇関連の一件はとりあえず様子見する事に決まり、中断していた【島】の探索が再開された。
ヒャッハー達は『ナンカヤバイモノ』を手に入れた
この一連の文字化けのタネ明かしが出来るのはいつになるかな……?
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