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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
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第181話 『謎だけを残して』

ちなみに、前話から使ってる文字化けですか、一応しっかり元文を書いてからそれを文字化けさせています

完璧に復元はできないっぽいですが、そういうサイトなんかを使えばそこそこの精度で復元できるかと

 

「【槍演乱舞・(ながし)】ッ!」


 既に【カグラ】の4人を屠った大蛇の一撃を、リベットは『鷹の目』を駆使して動きを捉え、逸らす。


 ちなみに、リベットの扱う【槍演乱舞】は、いくつかの『型』を元に舞うように槍を振るう『槍術』スキルの特殊派生スキルである。

 特殊派生スキルとは、通常の派生スキルとは違い、条件を満たした状態で元となるスキルをレベル10まで鍛えた時にだけ取得出来るスキルの事である。


 扱いの難しい『鷹の目』を使いこなし広い視点を持ち、親友にして生産職であるウォルカスによって作成された彼の為だけに作られた槍をセンスと努力によって十二分以上に扱うリベットは、槍を振るうあらゆる動作がまるでひとつの演舞のように洗練されている。


 彼が【槍演乱舞】を取得出来たのは、そういった背景があるからこそと言える。


 話題がそれたが、そんな【槍演乱舞】の『型』のひとつである【(ながし)】は、その名の通り受け流しの『型』である。


 目を凝らし、相手の攻撃を見切り最適なタイミングで合いの手を入れるように槍を添えて攻撃の軌道を流す。


「おっらぁ!」


 リベットの槍によって逸らされた尾の一撃が大地に叩き付けられ、【島】を揺らす。

 地面にくっきりと尾の跡が付くほどの威力だったが、リベット本人への被害はゼロだ。


 僅かにでも力の向きに逆らえばその瞬間に武器諸共粉砕されるような圧倒的な力を相手に、1歩も引かずに攻撃を受け流す。

 そんな、針に糸を通すような正確さが要求される技を成し遂げられたのは、行ったのがリベットだったからこそだろう。


 リクルスの様に避けるでもなく、サクラの様に耐えるでもなく、リベットの防御の基本形は『受け流す』だ。

 それには、相手の攻撃を見切る目と逆らわず流されず、力の向きを把握して誘導しきる感覚の良さ、そしてそれを実際に行える技術が必要不可欠なのだ。


 生来の『目』の良さに加え、『鷹の目』による視点補助、そして《EBO(この世界)》でヒャッハー共を初めとした様々な強者を相手に培って来た槍の腕。


 それら全てをフルに活用して、リベットはヒャッハー4人を葬り去った大蛇の攻撃を凌いでみせた。


 しかし、所詮それは無造作に放たれた尾の1発に過ぎない。


「っ!くぅ……!うっ……らぁ!」


 2発、3発、4発と、次々と振るわれる大蛇の攻撃は、無造作に技もなく『とりあえず振り回した』だけのような雑な攻撃であると言うのに、ただ純粋な力によって振るわれるという1点だけでそれらを圧倒的な脅威へと押し上げていた。


「っぁ……今、だっ!」


 そして、5発目。

 ここまで凌ぎ続けたリベットに、千載一遇のチャンスが訪れた。


 これまでの攻撃と比べて僅かに大振りの一撃は、威力こそ高いものの攻撃後の隙も大きい。


 ピシリ、と嫌な音を立てながらも、5発目の攻撃を受け流したリベットを前に、大蛇が初めて隙らしい隙を見せる。


「せめて一撃!ただ殺られるだけじゃねぇだよ!【槍演乱舞・(かすみ)】ッ!」


 その隙を逃さず、リベットは果敢に攻めに転じる。

 彼の戦闘スタイルは受け流しによる耐久型だが、決して耐久一辺倒のタンクという訳では無い。

 むしろ、隙を伺って、あるいは作り出してそこにカウンターを叩き込む反撃系のスタイルである。


 そして、今がまさにその反撃の時。

 リベットの繰り出す、穂先が霞んで見える程の高速の突きが大蛇目掛けて襲いかかる。


 だが、尾の戻しが間に合わなくとも大蛇の攻撃手段はそれひとつでは無い。リクルスを葬った時のように、鋭い牙の生えたアギトでリベットを迎え撃ち、噛み殺すーーー


「ハッ!それはもう見たぞ!」


 かのように見えた。


 だが実際は、噛み付かれたリベットの姿が揺らいで掻き消え、その一歩後ろ、つまりは大蛇の顔の目の前にリベットの姿が現れる。


 【槍演乱舞・霞】。この技は、確かに穂先が霞んで見える程の高速の突き技でもあるが、その本質は『惑わし』。

 自身の立ち位置を僅かにズラして認識させ、ズレた技の方をあえて迎撃させることで隙を作り出すというもの。

 攻防どちらにも使えるため、リベットのお気に入りの『型』のひとつだ。


 明確な隙を晒した大蛇の右眼に、リベットの槍が突き立てられーーーリベットの槍が、耐え切れずに砕け散った。


「なっ!?マジかよ……!」


 鱗に阻まれたのならまだ分かる。

 何度か打ち合って、この大蛇が纏う鱗が規格外の硬さを持ってる事は既に分かっている。

 だからこそ、その超硬質な鱗に槍の方が耐え切れなかったと言うのならーー親友の作ってくれた槍の負けを認めるのは癪だがーー納得も行く。


 だが、今回リベットの槍が捉えたのは眼球である。

 どの生物にも共通する弱点のひとつである、いわば最も弱い部分であるはずの眼球にすら、歯が立たない。


 明らかな規格外である大蛇の攻撃を5発も耐え、攻撃に転じる事が出来た槍が凄いのか、無造作に振るった雑な攻撃5発でトップクラスの性能を誇る槍が自らの攻撃の衝撃に耐えられないほどに消耗させる大蛇が凄いのか。


 ともかく、たった5発と1発。それだけが、大蛇相手にリベットが行えた抵抗だった。

 時間にして3分にも満たない僅かな時間とはいえ、リベットは、規格外の存在である大蛇を相手に生き延びて見せたのだ。


 だからどうしたと、そう言われればそれまでなのだが。


『邏�譎エ繧峨@縺�€�縺�縺後€�驕輔≧

 縺昴l縺ッ縲∵�縺梧アゅa繧九b縺ョ縺ォ縺ゅi縺�』


 どこか、今までと雰囲気が違う……ような気がする『聲』と共に、リベットへ大蛇の尾が振るわれる。


「クソ……サクラ、すまん」


 大蛇を相手に少しの間とはいえ凌いでみせたリベットは、しかし続く6発目の攻撃に、カウンター直後の崩れた体勢で、さらに武器を失った彼が出来ることは何も無かった。


 バチュンッ。と、深紅のエフェクトを撒き散らしながら、彼もまた、あっけなく死んだ。


「これは……どう、しよう」


 この場に残ったのはサクラだけ。

 正確に言えば、この場に残った戦闘能力のある者はサクラだけだ。

 木の後ろに隠れているメイもいるにはいるが、彼女はゴーレム等に頼らない限りそこいらの雑魚相手にすら苦戦を免れない程の戦闘能力の低さを誇っている。


 そして、そんな彼女の頼みの綱であるゴーレム達だが、今は使えない。


 この前の池の主戦からさらに改良(まかいぞう)を重ねている途中のゴーレム達は彼女の個人所有の工房に仕舞われており、今この場で彼女が使えるのはその何段階か前のゴーレムだけ。


 そして、それではあの不条理の塊のような大蛇相手には毛ほども役に立たない事は明らかすぎるほどに明らかである。


 つまり、この場がどうなるかは完全にサクラに託された形になる。


 初日に池の主と戦い、その少し後にこんな不条理と対面する。これを素質と取るか不運と取るかは人によるだろう。


「とりあえず……『根性』で1回は耐えられるからやれる所までやるしかないよね。そもそも、逃げられないだろうし」


 半ば諦めの混じった顔で、サクラは大盾を握り締めて大蛇を見据える。


「えっ……?」


 そして、気付く。


 悪い事は重なるというのか、不条理な存在がより理解不能になったというのか。


 リベットの槍を砕きつつも間違いなく眼球に一撃受けたはずの大蛇には、HPバーが存在していなかった。


「どういうこと……?さっきの攻撃でもHPが減る程のダメージにはならなかった?それとも、元からHPが存在しない?」


 目の前にいる『HPの存在しない敵対生物』という、得体の知れない存在に対してじわじわと蝕むような恐怖がまとわりついてくる。


 未知のモノ、理解出来ないモノを恐れる時のような、得体の知れない漠然とした恐怖と、実害をもたらす存在に対する明確な恐怖が混ざりあった異質の恐怖に、足が竦む。


 幸運だったのは、サクラが自ら動く必要のないタンクだったこと、そして無意識的にでも防御反応を取るようになるほど過酷だったこの半月を経験していたことだろう。


「っ!【ブロ、ック】ぅあぁぁ!」


 大蛇の尾が、サクラの構える『大盾【桜吹雪】』を捉える。

 その時の衝撃を、可能な限り正確にサクラが語るならば、『初日に受けたトカ(にぃ)の一撃より少し強い威力』だろうか。


 威力もさることながら、その衝撃が凄まじい。

 メイが作成した、池の主との戦闘中に作り上げたとは思えないほどの高性能の盾である『千年桜の鎧』の持つ【不動の大樹】が無ければ、初日よろしくとてつもない距離を吹き飛ばされていたことだろう。


 時間が足りずフルではなかったとはいえ、かなりの防御力を誇るサクラのHPがかつてない程の速度で減少し、3()%()程残してようやく減少が停止した。


「耐え……られ、た?」


 とてつもない衝撃に痺れる腕に必死に力を込めるサクラからは、驚きと不信、そして微かな喜びの気配が感じられた。


 それがこの現状を打破しうるものではなく、ただ『この理不尽な威力の攻撃を相手にしても一撃死しない程度の耐久力はもう既にある』という事が証明された故の喜びであり、状況は何ら好転していない。


 何せ大蛇が放ったのは無造作に振るういわば弱攻撃のようなものでしかないのだから。


「気休めにもならないけど一応……【ヒール】」


 次なる攻撃に備え、自身で言っている通りほぼ気休め程度にHPを回復させるサクラを大蛇をしばしの間その何も読み取れない黒い瞳で見据えていた。


 そしてーー


『隕倶コ九€りヲ倶コ九〒縺ゅk縲ゅし繧ッ繝ゥ繧医€�

 豎昴�謌代↓縲蝉ク肴サ�€代�迚�ア励r遉コ縺励◆縲�

 謌代′譛帙∩縺ッ縺薙%縺ォ譫懊◆縺輔l縺溘€�

 豎昴r隶�∴繧医≧』


 サクラを見つめ、そう『聲』を発したかと思うと、身体を丸め()()()()()()()()()


 ザザッ、ザザッ、と高度な仮想空間であるこの世界では聞き馴染みのないノイズ音と共に大蛇の纏うノイズ激しくなっていく。


 そして、ついには大蛇の身体そのものがノイズとなって消滅した。


何も分からず突然現れて突然消えた大蛇くん

やっぱこの作品の蛇にろくな奴いねぇな……


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >『大盾【桜吹雪】』の持つ【不動の大樹】が無ければ 【不動の大樹】は盾じゃなくて鎧では?
[一言] 社建てようずぇ!
[良い点] この状況で、言う事じゃ無いけど、サクラちゃん…防御力ヒャッハー化を着実にしてますね(´◦ω◦`) ヘビの一撃が、初日に食らったトーカの攻撃のちょと強いか……並一般のプレイヤーは弾け飛ぶな…
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