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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ヒャッハー共、【島】に行く
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第178話 『100万コインの【島】』

やっとこさ【島】に行くヒャッハー達

100万コインも払って買ったのに放置される景品があるらしい

 

 サクラのロックゴーレムソロ討伐から数日。

 トーカ、カレット、リクルス、メイ、リーシャ、リベットの【カグラ】の面々にサクラを加えた7人は、第2回イベントのPvP大会の賞品として交換した【島】に訪れていた。


「来るのが交換から半月経ってからとはな」


【島】の一部である『草原』で心地よい風に吹かれながら、リクルスがしみじみと呟く。

 彼の言った通り、【カグラ】が……正確にはトーカがこの【島】を入手してから、既に半月近い時間が過ぎていた。


 100万コインという、大番狂わせの優勝劇を繰り広げ、なおかつ自身の優勝(と【クラウン】の準優勝)に全財産(コイン)を賭けていた【カグラ】以外誰も手が届かないような高額な賞品である【島】だが、交換した時は全員大会直後で疲れ果てていてそのままスルー。


 その後もなんだかんだと運悪く全員の予定が合わずにいるうちに、さらにそのままサクラの《EBO》デビューと重なってずるずると放置気味になっていたのだ。


 そもそもの話、即座に強化に繋がる個人で選んだ賞品に比べ、『とりあえず交換出来るだけの額はあって、交換出来るのは恐らく自分達だけ』という状況で『なら交換してみよう』という、ある種の好奇心によって交換された事もあり、この【島】は極論あってもなくても変わらない(もの)だったのだ。


 それ故に興味こそあるものの探索を急ぐ理由もなく、加えて『全員で勝ち取ったものだから探索するなら全員だよね』という認識によって今の今まで放置されていた。


 そんな中で、サクラの《EBO》慣らしも終わったし、ちょうどいいからという事で、やっとこさ彼等は【島】をそろって訪れていた。


 ちなみに、【カグラ】として大会に出ていなかった(そもそもその時は《EBO》をやってすらいなかった)サクラも着いて来ているのは、既にサクラも彼等の仲間として認識されている程度には関係性を築いてきているという証拠だ。


「まぁ『探索』じゃなくて『来る』だけならちょっとは来てたんだけどな。主にサクラのタンク特訓で」


 現に、サクラを含めてここにいる全員が初めてこの島に来たという訳では無い。

 デフォルト設定で【島】に行く際の転移地点がこの『草原』という事もあり、実はちょこちょこ訪れていたりしたのだ。


 1番の使用目的はトーカが言うようにサクラのタンクの特訓として【カグラ】のメンバーと模擬戦をする時だ。

 ゲームシステムに用意されている《決闘》システムよりも、実践……実際にフィールドで敵相手に立ち回るのに近い環境でできるということもありよくこの『草原』にはお世話になっていた。


 よって完全に初見という訳じゃない。

 とは言ってもこの『草原』くらいしかまともに見て回ってないが。


「とりあえず探索するなら……この『草原』から行けるのは『森』と『岩山』、『海岸』と『砂丘』だな」


 ここで、今の彼らの周囲の状況について説明しよう。

 今現在彼等は『草原』にいるが、ちょこちょこ来ていた事でこの『草原』は特に何も無いただの草原だということが既にわかっている。


 そして、草原から東方向には『森』が、西方向には『岩山』が、南方向には『海岸』が、北方向には『砂丘』がそれぞれ広がっている。


 東方向の『森』は、ある程度木々が生い茂っているから『森』と称したが、規模的にはそこまで広い訳ではなく、また川が流れ込んでいるのを確認している。


 西方向の『岩山』は、ごつごつとした岩肌の露出している山で、険しくはないがそこそこの高さがあり山頂まで準備無しで行くのはなかなかに苦労しそうだ。


 北方向にある『砂丘』は、一面砂だらけのまさに砂の丘であり、所々に勾配があるためこちらも何も考えずに突っ込んだら大変だろう。


 南方向にある『海岸』は遠目で見た限りでは砂浜ではなく岩石海岸のようになっていて、ザパンザパンと音を立てて波が打ち付けている。


 もうお分かりだろうが、この【島】は海に囲まれているのだ。

 いや、島なのだから水に囲まれているのは当たり前ではあるのだが。そういう意味ではなく、プレイヤーが(恐らく)干渉可能なエリアとして海が存在しているのだ。


 少なくとも今までに《EBO》内で池や湖はあっても海が確認されたことは無い。

 つまり、ほぼ間違いなく【カグラ】が最初の海の発見者なのだ。


 まぁ『大会の交換賞品の曰く顔見せの100万コインの個人所有の土地』という異例中の異例のエリアでの発見であり、【カグラ】以外のプレイヤーが訪れる事は出来ないのだが。


 そして、いくつか追加の情報として、これらのエリアは草原との境目が不自然な程にはっきりとしているが、これがゲームとしての仕様なのか別の理由があるのかは不明。


 また、昼夜の概念はあるようだが、常に晴れであり未だに雨や雪等の天候の変化や敵性モンスターの出現は確認されていない。


 なお、これらの情報は草原から特訓がてら眺めた限りの情報ではあり、他のエリアに実際に足を踏み入れるのはこれからである。

 眺めただけなのにかなり広い範囲の情報がわかっているのは、純粋にスキルの力だ。

 視認範囲の広くなる『遠見』や俯瞰視点で確認出来る『鷹の目』等のスキルによって行かずともある程度の情報は拾えるのだ。


 ちなみに、『何故この【島】の持ち主なのに全容を把握していないのか』という疑問については、運営も探索を前提にしているのかマップが殆ど白紙になっているため地形を把握出来ていないというのが答えになる。


 今いる、そして初期地点である『草原』エリアに関してはある程度埋まっているが、他はまだ真っ白だ。


 ちなみに、【島】のマップ自体はこの【島】に来ている間はプレイヤーなら誰でも確認でき、【島】の所有者であるトーカは【島】に来ていない時でも確認出来る。

 さらにこのマップは自由度が高く、実際にその場所に行くことで自動記入(マッピング)される情報以外にもプレイヤーが任意で書き込みが可能となっている。


 そして、ここでも『招待』と同じく所有者の強権があり、『招待者』の中から書き込み可能な者を指定出来る上に書き込みされている情報を誰が書き込んだか確認し、またその書き込みを消す事が出来るのだ。(他の許可された者は自分の書いた情報のみ確認、編集可能)


 恐らく今後この【島】のような、《土地システム》とでも言うべき個人所有の土地が実装されるのだろう。

 恐らく第2回イベントでの賞品交換一覧に出てきたこの【島】はその匂わせ兼万が一購入者がいた場合はテスト用と思われる。

 そんな買わせるつもりのない【島】を買って絶賛テスター中なのが【カグラ】なのだが。


 ……と、話がそれたが、現在見えている範囲で行ける場所はいまいる『草原』を除けば『森』『岩山』『砂丘』『海岸』の4箇所である。


「どこに行きたいとかあるか?敵の存在は確認してないけどこの先にいないとも限らないし、この島もそこそこ広そうだ」

「だよなぁ、さすがに今日一日で全部探索し尽くすのは無理だろうし。どこ行くか決めた方がいいわな」

「この『草原』は殆ど見て回ったんだっけ?迷走して『機動力のあるタンクを目指せ!』とか言ってサクラちゃんがリクルス追っかけてる時に」



 未だ空白が殆どの【島】の地図を眺めながらトーカがそう切り出せば、リクルスが何かそれっぽいことを言ったようでその実何も言っていない言葉で返す。

 そんなやり取りをスルー気味にリーシャが言ったように、殆ど【島】の探索は終わっていないが、それでもこの『草原』に関して言えば話は別である。


 サクラの特訓時の待機組が暇潰しがてら行った無計画の散歩(散策して歩く)によって、この『草原』だけはマッピングが終わっている。


「んー、特に要望はないが、『岩山』と『砂丘』に行くならある程度の準備は必要だろうな。《EBO(こっち)》じゃどうか分からないが、登山も砂丘を歩くのも準備無しで……いや、準備があっても長時間はキツい」

「ほぉ!詳しいな。リベットはリアルでも登山や砂丘歩きの経験があるのか?」


 他の人に比べ、実体験も含まれているだろうしっかりとした意見を出したリベットに、カレットが感嘆した様子で尋ねる。


「まぁな。これでも趣味は旅行なんだ。《EBO》を始めてからはこっちでも出来る分リアルでの頻度は減ったが、今でも色んなところに旅行に行ってるんだぜ」


 そんなカレットの純粋な眼差しに、リベットは少し照れくさそうに鼻頭を掻きながら答える。

 確かに、《EBO》はフルダイブ型で尚且つオープンワールドであるが故に、ゲームとしてよりも、この世界その物を見て回るというプレイスタイルを取る者も少なくない。


 そう言った、ゲームとしてではなく観光をメインとしたスタイルのプレイヤーは、【旅する者(トラベラー)】と呼ばれる。

 トーカ達の周りにはそう言ったプレイヤーはいないが、リベットは旅好きという事もあってそう言った知り合いも多いらしい。


 そして、そう言ったプレイヤー達は様々な場所を見て回る関係上、かなりレベルが高かったり色々なことを知っていたりと、下手なゲームメインのプレイヤーよりもよっぽど強いのだとか。


「経験者が言うなら素直に従った方がいいな。今日はガッツリ探索に使えるとはいえ、山登りの準備も砂丘歩きの準備もしてないし」

「はいっ!」


 なんだかんだ【カグラ】のリーダー役に収まっているトーカが、そうまとめると、それに合わせたように元気のいい挙手の声が響く。


「はいどうぞ!」

「僕は『森』に行きたいです!」

「おぉ……メイにしては珍しく主張が激しいな」


 カレットの呟きから分かるように、何故か学校の挙手スタイルで意見を出してきたのは、普段は割と大人しめなメイだ。


 正確には『大人しい』という訳ではなく、食指がズレているというか立ち位置が違うというかであまりこう言った場所で自分の意見を出す事が少ないだけだが。

 実際、メイは素材調達の時などは嬉々としてみんなを振り回す。


「メイ君。それは何故ですか?」

「はい。森にはいっぱい素材があると思われるからです。『草原』は見てわかる通り特に素材は無く、『砂丘』も恐りゃく同じと思われます。『岩山』は鉱石系の素材が取れるかもしれなせんけど、それならそれで準備が必要で、『海岸』も未知のエリアである以上採取には時間をかけなきゃいけめせん。その点、『森』なら手軽に幅広い種類の素材を採取できます。また、通常フィールドなら様々な種類の素材が取れる『森』タイプのエリアで素材が取れるか否かで、この【島】自体で素材が採取可能かどうかの判断材料になります。以上の理由から、僕は『森』に行くことを提案します」

「おぉ……思ったより結構ガチな答えが返ってきた……」


 突如始まった学校風応答に、それっぽい口調でしかし興奮が隠しきれず早口で答える(その弊害か所々噛んでた)メイに学校風に聞いた本人であるリクルスが気圧されたように後ずさる。


「確かにその通りだな。というか、低ランクでもこの島で素材が取れる可能性があるなら生産職(メイ)としては確認しない訳には行かないよな」

「そういう事!」


 フィールド散策ではいつに無く張り切っている(工房ではこれくらいのテンションは3回に1回くらいの割合で見られる)メイの意見を採用して、【島】探索最初の1歩は『森』エリアに決定した。


断言します。

【島】関連で1番のヒャッハーするのはメイです


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1ヶ月近くも、放置プレイをされてた島さんえぇ〜 機動量の有るタンクだと……まぁ、教えてがヒャッハーだしね、そうだね、そうだね…一般プレイヤー諸君、強く生きろよ(`・ω・´)ゞ
[一言] ヒャッハー!!ではなくうひゃらひゃほーい!なのでは?
[一言] メイちゃん噛みっ噛み…可愛い(確信)
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