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第18話 そうだ、洞窟に行こう!

 

「メッセージで言った件なんだけど……」

「頼みたい事があるけど大丈夫か?ってやつですよね?」

「あぁ、それで頼みってのがカレットの杖を作って欲しいんだ」


 そう言ってカレットを指さす。するとカレットがストレージから『初心者の杖』を取り出し続きを伝える。


「私が今使ってるのがこれなんだが……」

「えっと……って初心者装備じゃないですか!」


 カレットの武器を見てメイが驚きの声を上げる。部屋の中なので外に音は盛れないのが幸いしたな、結構な大声だったぞ。


「まだ初心者装備使ってるの!?」

「あぁ。変えようとは思ってるんだが店売りのだとあまり性能が変わらないのでな……」

「言ってくれればすぐに作ったのに!」

「ってことはお願い出来るか?」

「もちろん!ボクに任せて!……と言いたい所なんだけど……」


 メイが胸を叩いた後に急激に声のトーンを落とす。あたかも引き受けたはいいが重要な何かを思い出した、と言った感じだ。


「やっぱりダメか?」

「いやいや!そんな事は無いんだけど、素材切れで……」

「それぐらいなら俺達で取ってくるぞ。何が必要なんだ?」

「洞窟で採取出来る鉄鉱石が足りなくてね……杖だから最悪無くても大丈夫なんだけどそうすると強度が下がっちゃうんだよね」


 《EBO》の武器には目に見える数値での耐久値という物は設定させていない。ただし使い込んだりして武器が傷んで来ると傷が入ったエフェクトが出始め、その段階で手入れすれば平気なのだが無茶して使い続けると武器が壊れてしまう。

 初心者装備は壊れない設定になっているので使い続ける事が出来るがやはり火力不足に頭を悩ませる事になる。


 ちなみにだが俺の使っている亀甲棍は流石ドロップアイテムと言うべきかまだ大丈夫なようだ。まぁ最近あまり使ってないと言うのもあるかもしれないが。


「あちゃぁ、鉄鉱石かぁ。俺達採取して来なかったな」

「ここでサッと出せればカッコよかったのにな……」


 リクルスとカレットが先程洞窟に行ったばかりと言うこともあって落ち込んでいた。


「今日はもうダメだが……明日にでも取りに行くか」

「おおっ!流石トーカ!私が今言おうとしてた事をさらっと言った!」

「よっしゃ!イベントに備えてのレベル上げも兼ねて洞窟行くぜ!」


 俺が言い出すと2人もスグに乗ってきた。特にカレットのやる気が凄かった。まぁ、自分の武器の為だしやる気も出るよな。


「あっ!じゃぁボクもついて行っていいかな?」

「それは構わないが……いいのか?」


 確かメイは生粋の生産職でジョブは錬金術師と採掘師だったはずだ。一応洞窟は遺跡に次ぐ見つかっている内の高難度な場所なのだが……


「むしろこっちからお願いしたいくらいだよ、戦闘はあんまし出来ないけど採掘師だからね。採掘効率はいいんだよ」

「そうだったな、ならメイが採掘してる間の護衛って感じになるのか」

「おおっ護衛か!何だか面白そうになってきたな」

「リクルス、今日は行かないからソレ(武器)しまえ」

「へーい」

「カレットも杖構えるな、ここで魔法使ったら大変な事になるから」

「流石に町中じゃ使わないぞ!?」


 興奮する2人を抑えながらメイと日程の打ち合わせをする。

 結果午後7時からと言う事になったのでテンションがハイになってる2人を落ち着かせ(デコピンし)てそれを伝える。


「なぬっ!?今日行かないのか?」

「えっ?明日なの!?」

「だから話を聞けと……」


 その後少し雑談してから解散となったのでメイが帰るのを見届けてからログアウトしようとする。ログアウトの後はしっかりと寝るように2人に釘を指しておくことも忘れない。するとリクルスが「ハイッ!」と挙手をしてカレットが面白そう「はい、リクルス君」と指名した。


「何してんだお前ら……」

「せっかく宿屋に泊まった事ですし寝落ちに挑戦してみませんか!?」


 寝落ちか……確かに面白そうではあるが。


「明日の準備は?」


 シュン(リクルスがログアウトする音)

 シュン(カレットがログアウトする音)


 〜〜♪(呆然としている間に流れるBGM)


 ティウン(カレットがログインする音)

 ティウン(数秒遅れでリクルスがログインする音)


「「してある!」」

「今してきたんだろ!」


 急にログアウトして戻ってきて何してきたんだと思ったら……そんなに寝落ちしたいのかよ……

 俺?俺はしっかり準備して「もう寝れる」って状態にしてからログインしてるから大丈夫だ。


「まぁいいか。で、ベッドはどうすんだ?」

「あっ」

「?」


 幼馴染とはいえ年頃の男女が同じベットで寝る訳にも行かないだろう。何故かカレットが頭に『?』を浮かべているが……お前が一番そういうのは警戒しろよ!


「私は別に同じベッドでも構わないぞ?」

「カレット……いくら幼馴染とはいえ流石にそれはダメだろ」

「仮にも年頃の女の子がそういう事簡単に言うもんじゃないぞ」


 今回は珍しくリクルスもこっち側(宥める側)に付いたの様だ。流石にリクルスにも最低限の判別は付くようだ。


「なんか酷いこと言われた気が!?」

「気の所為キノセイ」


 そんなやり取りをしているとカレットが不思議そうに首を傾げる。


「別に大丈夫だろう、この前も一緒に寝たじゃないか」

「何年前の話だよそれ……」

「小二の頃のお泊まりの時の話だが?」


 ダメだコイツ、早くなんとかしないと……幼馴染とは言え多少の警戒心は持ってもいいんだぞ?

 まぁカレット(明楽)相手に変な事しようとか考えた事も無いけど。


 その後は女子を小さなベットに追いやって野郎2人で一緒に寝るとか言うとある意味危険な行動に出る訳にも行かずに、俺が「俺は普通にあっち(現実)で寝るわ」と言ってログアウトしようとする。

 すると、流石に2人きりは堪えるのかリクルスもログアウトすると言い出し、カレットも1人は嫌なのかログアウトすると言い出した。結局寝落ちの話は今度もっと広い部屋を取った時にという事に落ち着き、3人ともログアウトした。


 翌日、約束の時間に集合した俺達は4人で昨日も訪れた洞窟に向かう。その途中、リクルスが「少し先行って確認してくる!」と言って駆け出して行ったので少し増えてきた岩の一つに3人で腰掛け、リクルスを待ちながら休憩する事になった。


「そう言えばメイってレベル何なんだ?あぁ、言いたくなかったら言わなくていいぞ」

「別に大丈夫だよ。確か……この前14になったばっかりだったはず」

「あれ?結構高いんだな」


 休憩中にふと気になりメイにレベルを尋ねてみる。するとステータスを確認しながらメイが教えてくれた。


 14って意外と高いな。カレットも同じ事を思ったらしく疑問の声を上げる。


「メイは生産職なんだろう?なんでそんなにレベルが高いんだ?」

「生産でも経験値は貰えるんだよ。生産ばっかやってたから戦闘はからっきしだけどね」


 エヘヘ、と笑いながら高レベルのカラクリを教えてくれる。へぇ、生産でもレベルって上がるのか。


「じゃあ私の杖も凄いのを作ってくれるのか!?」

「運要素もあるから断言は出来ないけど努力はするよ」

「頼もしいな!」

「カレット、盛り上がるのもいいけどあんまりプレッシャーかけすぎるなよ?」


 カレットは自分の武器を新調出来ることが相当嬉しいらしく先程からテンションが高めだ。無いとは思うが万が一の時にカレットがメイに強く当たらない様に釘を指しておかないとな。


「みんなー!見てきたぞ!」


 俺達が後方で話していると先に様子見をしに行ったリクルスが帰ってきた様だ。普段は滅多に居ないが極たまに洞窟の近くに大きなクマが居ることがあるのだ。


 そのクマはフィールドボスの【ロックゴーレム】程ではなくとも相当に強く、大亀や大兎なんて目じゃないほどの戦闘力を誇っている。始めて洞窟に行った時に見事に出くわしてなんとかHPを4割ほど削るもジリ貧で負けてしまった。


 そんな苦い思い出があるので洞窟に行く際には1度、リクルスが確認しに行くのが恒例になっているのだ。


「その調子じゃ大丈夫そうか?」

「あぁ、クマは居なかったぞ」


 そのままリクルスの先導で洞窟へ向かっていく。段々と足場が草原から岩肌に変わって行くのを靴底で感じながら歩く事数分。洞窟の入口に辿り着いた。


「うわ〜、おっき〜」


 メイが洞窟の入口を見て感嘆の声をあげる。入口は軽く高さ3mはあるのだが中に入って数分もすれば真っ暗になる。


「メイは来たこと無いのか?」

「ここは初めてかな。ボク戦闘出来ないからいつも浅い方でコソコソ採取してるんだよね」


 今のメイの発言からも分かるだろうが洞窟はこの1箇所だけじゃない。今俺達が来ている方は中も広く出てくるモンスターも強い、その代わり取れる素材も多かったり質が良かったりする。一方メイがいつも行っているという「浅い方」は比較的弱いモンスターしか出ない変わりに採取ポイントなどが少なくあまり量は取れない。


「じゃあ初チャレンジか!そういう事なら安心しろ!しっかり守ってやる!」

「リクルスの言う通りだ!私の火魔法が火を噴くぞー!」


 無駄にテンションが高い2人を戦闘に支障が無い程度に落ち着かせてから洞窟へ踏み込む。

 まだ1歩しか踏み込んでいないというのに空気がガラッと変わり、洞窟特有のひんやりとした風が肌を撫でる。


「メイは暗視は?」

「浅い方にはちょこちょこ行くからね、一応持ってるよ」

「なら多少は大丈夫か」


 洞窟内は暗視が無くてもうっすらとは見える仕様になっているので例えLv.1でも暗視があれば視界には事欠かない。なのでリクルスとカレットの2人にもしっかりと暗視を取ってもらった。


 初めて洞窟に入った時は暗視を習得するまでは大変だったな……何かにつけてはリクルスとカレットがギャーギャー騒ぐせいで敵が集まって来る上に視界が悪い中で敵から必死に逃げ回ってた。


 洞窟内を少し進むと外からの光が無くなり視界が急激に暗くなる。


「2人とも大丈夫か?」

「おう、普通に戦う分には平気だぜ」

「私も大丈夫だぞ」

「了解。リクルスは索敵持ってたよな、使っといてくれ。カレットもいつでも魔法撃てる様にしといてくれよ」

「りょーかい」

「いつでも準備OKだぞ」


 2人に軽く指示を出しながら奥へ進んで行く。今回のメインの目的は鉄鉱石の採取なので出来るだけ戦闘は避けていく方針で行く。まぁレベル上げもしたいしそこまでガッツリ避けていく訳では無いが。


「近くにいるぞ」


 索敵に反応があった様でリクルスが立ち止まる。そのままゆっくりと進んでいくと道の向こう側から黒いオオカミが3体飛び出してくる。


「メイは後ろに!カレットは真ん中と左に魔法!リクルスは右を牽制(けんせい)!」


「「了解!」」

「わ、わかった!」


 メイはスグに俺の後ろに隠れリクルスが右のオオカミに向かっていく。俺は鼓舞を発動し、カレットに【マジックアップ】、リクルスに【アタックアップ】を掛ける。


「【ファイアボール】!【ウィンドボール】!」


 カレットの放った【ファイアボール】は真ん中のオオカミに、【ウィンドボール】が左のオオカミに当たりHPを2割ほど削る。


「すまん、2割しか削れなかった」

「大丈夫だ、2匹が怯んでる内に片方にランス頼む!」

「了解した!【ファイアランス】!【ウィンドランス】!」


【ファイアボール】を受け若干HPの減りが多い方のオオカミにカレットがLv.3で使用可能になるランス系の魔法の【ファイアランス】と【ウィンドランス】を放つ。


『グルぁっ!』


 炎の槍に貫かれた直後に風の槍の追い打ちを喰らったオオカミは吹き飛ばされる。狭い洞窟内で吹き飛ばされればどうなるか、答えは単純。


『グガっ!』


 壁に勢い良く打ち付けられたオオカミはその衝撃で2発のランスを受けほんの少し残っていたHPがカラになり、光となって溶け消えてく。


 一方のリクルスはと言うと飛びかかってきたオオカミの攻撃をバックステップで難無く回避し着地した直後のオオカミに回し蹴りを見舞う。アイツそろそろ『非道』くらい取ってもいいと思うけどな……


『グルぁっ!』


 リクルスに蹴り飛ばされたオオカミは着地後スグに飛びかかろうとする。しかしリクルスが剣で切りつける方が早かった。


「遅い遅いィ!」


『グガぁっ!グル……グラぁっ!』


 しかし野生の根性かオオカミは切りつけられても怯まずにリクルスに体当たりをかます。切りつけた直後で体制が不安定だったリクルスはいとも簡単に吹き飛ばされてしまう。


「やっばッ!」

「【ファイアボール】!」

「カレットナイス!【ヒール】!」


 地面に転がったリクルスにオオカミが追撃しようと駆ける。しかしカレットの【ファイアボール】によって失敗に終わった。

 俺はカレットが【ファイアボール】を撃った直後にリクルスに【ヒール】を発動する。


 リクルスは「当たらなければどうということはない」派の人間なのでHPにはSPを振っていない。そのせいでオオカミの体当たり1発でHPの半分程を持っていかれるが先程と同じ理由で俺の【ヒール】1回でHPが全回復する。


「さんきゅっ!」


 HPが回復するや否やオオカミ目掛けてリクルスが駆け出す。不意打ちの【ファイアボール】で怯んでいたオオカミの残り少ないHPを短剣でしっかりと刈り取る。


「一匹ィ!」

「分かったからラスト行け!」

「余韻に浸らせろよぉ!」


 カレットに遠距離からちょこまか魔法を撃たれ、そちらに意識が向いていた最後のオオカミは駆け寄ってくるリクルスに気付かない。

 至近距離まで近付いたリクルスがオオカミの胴体を剣で突き刺す。


『グガァッ!?』


 突然の衝撃に身を(よじ)り首を既に飛び退いたリクルスの方に向ける。その直後オオカミは真正面から飛来した【ファイアランス】に貫かれその身を光に変えた。


「「いぇーい!」」

「2人ともお疲れさん。メイも平気だったか?」

「うん、大丈夫。それより、3人とも凄いね!」


 戦闘が終わりリクルスとカレットがハイタッチをし、更に俺にも両手を構えジリジリと迫ってくるのでハイタッチをする。メイも興奮した様子で両手をバタバタ振っていてリクルスとカレットも得意気だ。


「リクルスはそろそろHPにポイント振った方がいいんじゃないか?」

「トーカの言う通りだな、リクルスがやられたら一気に瓦解するんたぞ」

「それは……さっさぁ!素材集め再開するぞ!」


 逃げる様に前に進み始めたリクルスを後でしっかり話をしようと決め追いかける。


 その後オオカミの群れとの戦闘を3回ほど行った所でカレットのレベルが上がった様だ。


「おっ、レベル上がったぞ」

「おめっとさん」


 リクルスは追い付かれた事が少し悔しかったのかいつもより投げやりな返事だ。リクルスは昔から悔しいとあからさまに態度に出るからな。カレットと2人でニヤニヤしながら見ていた。


「あっ!ここで採掘出来そう」

「おっ、そうか。じゃあメイは採掘頼む。俺達は見張りでもやってるよ」

「ありがとう!」


 メイがストレージからツルハシを取り出し採掘を始める。

 すると当然、カーン!カーン!と音が響き渡る。浅い方では採掘音にモンスターが反応する事は無い様だがこっちではそうも言ってられない。


『グロロロ……』


「来たぞ!」

「分かってる!」

「メイは採掘続けてくれ!」

「分かった!」


 音に反応して寄ってきたのは灰色の身体を持つ大きなトカゲ。単体の戦闘力は洞窟内最強と名高いモンスター《ケイブ・リザード》だった。


「【マジックアップ】!【アタックアップ】!【ディフェンスアップ】!」


 《ケイブ・リザード》との戦闘に備えカレットに【マジックアップ】リクルスに【アタックアップ】と【ディフェンスアップ】を掛ける。2人も臨戦態勢に入り敵を見据える。


 そしてリクルスがいざ駆け出そうとした瞬間ーー《ケイブ・リザード》が勢い良く逃げだした。


「「「えっ?」」」




今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします

ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!

今後も当作品をよろしくお願いします!

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[気になる点] 依頼料の話が出てこないのが気になる 三馬鹿みたいにリアフレでも、気心知れた長い付き合いのネトフレというわけでも無いんだし フレだからor自分の経験値にもなるから無料でいいとか、依頼料代…
[気になる点] あとがきで指摘ok付いてるので書いておきます 以前にも書いたベット→ベッド 始めて洞窟に→初めて ついでに前話の バットエンド→バッドエンド
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