第169話『ヒャッハー式英才教育:ボス戦編《池の主》⑤』
しばらくぶりでございます……
めちゃくちゃ忙しかった期間を乗り切った反動が来たのか、ココ最近執筆意欲が全く湧かず……
さすがに音沙汰なしでこんなに空けてしまうと不安にさせてしまうだろうと何とか投稿しました
しばらくは投稿ペースが不安定になるとは思いますが、ゆっくりとお待ちください
「しゃおらぁ!歯ァ食いしばれ!【振壊】ッ!」
リクルスは無防備な姿を晒している池の主の懐まで『縮地』を駆使して一瞬で駆け寄ると、そんな恨み言を吐きながら思いっ切り拳を振るう。
「んぁ……?」
だが、硬いような柔らかいような不思議な打撃感にリクルスの口から半ば無意識に声が漏れる。
硬質な氷の鎧を失った池の主の身体はさぞ柔らかいのだろうと思いきや、弾性に富んだ鱗によって覆われていたらしい。
水の入った風船を殴り受けたようななんとも言えない、だが音だけは大きいその衝撃音に比べて、リクルスの怒りの一撃はそこまでのダメージを与えなかった。
『キシュァァァァァァァッ!!』
そして、ノコノコと至近距離まで近付いて来たリクルスに、自爆特攻が癪に触ったのかより一層激しい咆哮を上げて池の主は全力でアギトを広げて、噛み砕こうとした。
そう。噛み砕こうとした。
つまりは、噛み砕けなかった。
「黙れ。【アースクラッシュ】」
『シュァッ!?』
リクルスを噛み砕こうと大口を開けた池の主の頭部を、『縮地』と『跳躍』を駆使して池の主の真上に移動したトーカが白銀ノ戦棍を叩き付けたが故に。
リクルスもだが、妹分であるサクラを喰い殺されそうになった事にトーカも、池の主に少なくない敵意を覚えているのだ。
トーカは、戦闘において攻撃を仕掛けることが悪とは思わないし、それは自分もしている事だから糾弾しようとも思わない。
だが、だからと言って何も感じない訳では無い。
大切な妹分を害されそうになったのなら、ウチの可愛い妹分に何してくれとんじゃワレェ!?と言う気分にもなるというものである。
「ナイストーカ!【墜鎚】ッ!」
トーカの追撃によって致命的な隙を晒した池の主に、リクルスが大きく振りかぶったカカト落としを叩き込む。
これは『体術Lv.7』で使用可能になる、発動前後で大きな隙が出来てしまうというなかなか使い勝手の悪いアーツだ。
ただし、その分威力は申し分ない。
それこそ、『体術』の単発技に限って言えば最強アーツである【天討】の次に高い威力を持っている。
トーカに殴られ地面に叩き付けられた上に、リクルスの追い討ちを喰らった池の主はその巨躯に見合うだけの轟音を響かせながら地面に叩き付けられた。
そして……
「カレット!俺ごと行け!」
「全力でな。【マジックポイントギフト】」
「え゛」
トーカとリクルスが作り出した絶好のチャンス。
既にバフガン盛りの状態のカレットに、いつの間にかバフで消費していた分のMPを回復させたトーカが【マジックポイントギフト】でカレットに自身のMPを全て分け与える。
「了解だ!【白龍砲:六束】ッ!」
「え゛」
今一度【白龍砲】について語ろう。
カレットが編み出したこの魔法は、各魔法属性Lv.10で使用可能になる【ブレス】系の魔法である【ファイアブレス】と【ウィンドブレス】を掛け合わせた、言わいる合成魔法である。
そして、『多重詠唱』というスキルによって、現状のカレットはひとつの魔法を同時に6発まで発動できる。
これにより、現在の【白龍砲】は1発で【ファイアブレス】【ウィンドブレス】各6発ずつの力を内包している事になる。
それを、『魔法合成』という魔法の使用パターンを登録できるスキルで登録した物がカレットの切り札である【白龍砲】なのだ。
しかも、『相性のいい魔法を組み合わせると威力が上昇する』と言う隠し要素があるため、単純計算で各6発分の威力に収まっていない。
オブラートに包まずに言えばアホみたいな威力になっている。
そして、今回の【六束】はそんな【白龍砲】を『多重詠唱』で6発発動し、それらを手動で合成している。
つまりは、6倍濃縮である。
単純計算で【ファイアブレス】と【ウィンドブレス】が各36発分。
それらが相乗効果で威力を高め合っているのだ。
スキルや称号、装備品で『火魔法』と『風魔法』の消費MPをガッツリと減少させてなおMPが足りないため単独では使えず、トーカのMPも合わせてようやくギリギリ発動できる。
そんな、超高コストでその分超高威力な【白龍砲】をまともに喰らったら、フィールドボスクラスのHPや防御力を持ってしても防ぎ切れないだろう。
それを、リクルスが自分で言ったとはいえ、カレットは容赦なくリクルスを巻き込むルートでぶっぱなした。
プレイヤーなんぞ直撃どころか掠っただけで即死不可避の超大技をだ。カレットに幼馴染を巻き込む事への躊躇は無いらしい。
「うぎゃぁぁぁぁっ!【蜃気楼】ぅぅぅっ!」
『キシュァァァッ!』
だが、リクルスは【白龍砲】に巻き込まれる直前に、前回のイベントで獲得した自身の当たり判定を消失させるというトリッキーな効果を持つスキルである【蜃気楼】を発動し、難を逃れた。
自分で言い出したからには最初からこうするつもりだったのだろうが、あまりにも躊躇いのないスムーズな魔法発動に演技とは思えない必死さが垣間見える。
そして、本命である池の主だが……
さすがは超強力な隠しボスと言うべきか、直前に2発、頭部に重い攻撃を食らっているにも関わらず、危険を察知し回避行動を取った。
前に【白龍砲】を防いだ時のように氷の壁を出現させなかったのは、タイミングがギリギリでそんな事をしている余裕がなかったのか、あるいは前回と今回の威力の、次元の違いを敏感に感じ取ったのか。
その際に地面から氷の柱を突き出し、それに後押しさせると言うなかなかテクニカルな行動をしていたりしたのだが、そんな奮闘虚しく【白龍砲】から完全に逃れる事は出来なかった。
だが、悪あがきとも言える池の主の行動はまるっきり無意味という訳でもなかったらしい。
カレットの放った全力の【白龍砲】は、池の主の右側の脚2本を背後の自然ごと消し飛ばすだけに収まった。
直撃していれば即死は免れなかったであろうダメージも、ギリギリの回避行動によってHPを4割ほど消し飛ばされるだけに収まっている。
『ギシュァァァァァァァァァァッ!?シィィィィッ!キシュッ、シュァァァァァァァッ!』
右前脚と右後脚を根元から消し飛ばされた池の主は、半ば狂乱したようにのたうち回りながら残った脚や尾を地面に叩き付ける。
攻撃動作では無い。
あまりのダメージに狂乱しているだけの、見ようによっては無様な姿だが、攻撃の意思が無いとはいえ巨大な身体を持つ池の主がそんな事をすればそれだけで厄介な乱撃となる。
意図しての事ではないだろうが、脚や尾を叩き付けた場所から氷が無造作に突き出してくるのだから尚更だ。
「あっぶねぇ!【蜃気楼】なかったら消し炭すら残んねぇよこれ!?」
「『精霊結晶』のおかげでさらに一段と手が付けられなくなってるな【白龍砲】……火と風だけじゃなくて俺の支援もかかってるから実質『精霊結晶』3つ分だろ……?」
「うーわぁ……みんな聞いた?威力と派手さに反して発動した瞬間は理科の実験とかで試験管に詰めた水素燃やした時みたいな『ポパッ』って割と可愛い音出してるんだけど」
しかし、そんな厄介な乱撃も、相手が攻撃の意思を持ってやっているのならともかく、ダメージにのたうち回る狙いの付けられていない無造作なモノではトーカ達を巻き込む事は出来ない。
それこそ、適宜回避行動を取りながらそんな雑談を交わす余裕がある程に。
リクルスは一歩間違えたら即死していた恐怖に震え、トーカは後押ししただけとはいえ自身の力を使って生み出された破壊の威力に戦き、リーシャは発生源に近かった故に気付いたどうでもいい発見に呆れ返っている。
そして、当の本人であるカレットはといえば……
「あぁっ!快っ感!」
自分自身を抱きしめながら自らの魔法の威力に身悶えていた。
頬を赤らめくねくねするカレットは、正直言って気持ち悪かった。
「あー、なんだ。ほら、カレット。ポーション飲んどけ」
最近輪をかけて酷くなった幼馴染のマジックジャンキーぶりに、保護者的立ち位置であるトーカはどうしたものかと頭痛を堪えるように眉間を抑えて頭を振る。
この破壊(とカレットの醜態)を生み出した【白龍砲】にまだ4段階も上がある事を想像し(そしてその時には間違いなく自分も1枚噛んでいる事も)どうにかしようと考えて……
「まぁ、これ以上変な方向に進みそうになったら止めればいいか……頑張れよ未来の俺」
結局は、未来の自分に丸投げした。
完全体【白龍砲】をお披露目する日は一体何時になるのやら……
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
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