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第166話 『ヒャッハー式英才教育:ボス戦編《池の主》②』

眠れるヒャッハーが真の力を解放する的な回

 

「ふむ……【収束型白龍砲:双束(ふたつたばね)】ッ!」


 遂に姿を現した池の主を見て、最初に攻撃を放ったのは、カレットだった。


 1度防がれているというのに、あるいはだからこそ再び【白龍砲】で池の主に攻撃を仕掛ける。


 先程放ったような咄嗟の【白龍砲】ではなく、狙いを定め、例え防御されようともそれごとぶち抜く【収束型】の【白龍砲】。

 MPの関係で2発分を合成しただけの【双束(ふたつたばね)】になってしまったのは、彼女的に歯痒い部分なのだろう。


『キシュァァァァァァァァーーーッ!』


 だが、相手も負けていない。

 カレットの【白龍砲】に対して、池の主は甲高い咆哮を上げながら大地を踏み付ける。


 そうすれば現れる分厚い氷の壁。

 それが、5枚。


 最初の2枚は一瞬でぶち抜いた。

 次の1枚で僅かに勢いが減衰し、続く1枚でさらに威力が削がれる。

 そして、最後の1枚を半ば程抉った所で【白龍砲】は消滅してしまった。


「むぅ……!」

「カレット、そんなつもりは無いかもしれないが、アレは初心者エリアにいるからと言って侮っていい敵じゃない。【白龍砲】は小分けにするより纏めてデカいので行け」

「んぐっんぐっんぐっ、ぷはぁ!了解だ!」


 メイのタイミングバッチリのポーション補給でMPを回復させつつ、カレットはトーカの言葉に力強く頷く。


 そんなカレットの姿を見てトーカは満足気に頷くと、同じくメイから受け取ったMPポーションを呷る。


「はいはーい。【スコールショット】!」


 2人がMP回復をしているタイミングに合わせてリーシャが放った【スコールショット】によって生み出された50本の矢の豪雨が池の主を襲う。


『キシュァァッ!』


「うっへぇ……やっぱアイツ防御寄り?」


 リーシャの【スコールショット】による豪雨を、池の主は身体に氷の鎧を纏う事で防ぐ。

 50本の矢の内の数本は氷の鎧を突き抜け池の主に突き刺さり、HPを削るが、そのHP総量から見れば微々たるものでしかない。

 HPバーも、ミリ動いたかどうかというレベルだ。


 その光景を見てリーシャがボヤく。

 だが、その気持ちも分かるというものだ。


 極僅かな交戦時間でも、池の主の防御能力が高いことはよく分かる。

 自在に生み出される氷によって殆どの攻撃が弾かれてしまい、本体にまで届かない。


 僅かに届いても、そのHPの多さによって有効打になりえない。

 しかし、僅かにでもダメージを与えた事でヘイトを稼ぐ事には成功したようだ。


『キシュァァァッ!』


 池の主が、リーシャ目掛けて巨大な氷柱を放つ。

 数で仕掛けたリーシャに対して、強力な一撃を持って返す……池の主がそこまで狙っているとは思えないが、どうしても対極的なその攻撃を見てるとそう思えてしまう。


「当たらん当たらん」


 リーシャもリクルスと同じく当たらなければ痛くない的思考の持ち主。そして、見えている攻撃を避けられない彼女ではない。

 大きく余裕を持って氷柱砲を回避する。


 氷柱咆が彼女がいた場所の背後に生えた木々を薙ぎ払って突き進む様子を視界の隅に捉え、リーシャがうへぇ……と嫌そうな顔をする。


 軽装の彼女ではこんな物に当たったらひとたまりもないだろう。

 まぁ、当たればの話だが。


「いつまでも寝てるなよ?【リザレクション】【ハイヒール】」


 リーシャが池の主を引き付けている間に、トーカは不意打ちで食い殺されたリクルスを蘇生し、回復する。


 1度死んでも終わりじゃないのが、神官のいるパーティの強みだろう。


「ふっかーつ!サクラは……よし、死んでないな。せっかく助けたのにすぐ死んでましたじゃ報われないからなぁ。んじゃいっちょお礼参りに行きますか」


 トーカが蘇生すれば、リクルスはすぐに池から飛び出してくる。

 その時にサクラの姿を認め、軽口を叩きながらすぐさま池の主に向かって駆け出していくリクルスの表情には、死ぬ直前にみせた気配は感じられない。


「ヒャッハーッ!やってくれたなコノヤロォ!【狂化】ァッ!」


 脳味噌空っぽにして殴りまくるリクルスの戦法をそのまま現したかのようなINTを下げてSTRを上昇させるスキルによって、自身を強化したリクルスは、1度殺されているというのに、一切の躊躇なく池の主に殴り掛かる。


 リクルスの【狂化】のスキルレベルはMAXの10。

 それはつまり、INTを100%減少させ、代わりにSTR100%上昇させるという、真の意味で脳味噌まで筋肉な効果だ。


「元気いっぱいかよ。【バフセット:リクルス】。ま、好きに暴れろ」


 だからこそ、脳筋リクルスをトーカがさらに強化する。

 彼専用にカスタマイズした、STRとAGI強化に振り切ったバフ。


「シャオラァッ!【破豪(はごう)】ッ!」

『キシュァァァァァッ!?』


 その効果は凄まじく、一段と加速したリクルスの振るった拳はいとも容易く池の主が纏う氷の鎧の一部を砕き割り、少なくないダメージを与えた。


「ごくごく……ふぅ。【バフセット:サクラ】【バフセット:メイ】」


 すぐに消費してしまったMPを再びポーションで回復させながら、今度はサクラとメイの2人に専用のバフをかける。

 少し方向性は違えど、どちらも防御面を重視した専用バフによって、彼女達の耐久力は跳ね上がる。


 ちなみに、サクラ用のバフセットはサクラの泥試合中に戦闘内容を見て、気が早いとは思いつつ見繕っていたのだ。

 結果的には気が早くて良かったと言ったところか。


「メイ、軍団(・・)を頼む」

「うん。分かった」

「サクラは……取り敢えず、生き残る事を考えててくれ。アイツは俺達が何とかする」


 メイとサクラにバフをかけ終え、さらに何かをメイに頼んだトーカは次に、僅かに口篭り、躊躇いがちに、それでもしっかりとサクラに告げる。

 それは、トーカからサクラに対する事実上の戦力外通告だった。


 彼等がいる場所と、自分のいる場所ではレベルが全く違う。

 初心者エリアのボスとだって1人で渡り合えると言っても、所詮はそれだけ。

 今日始めたばかりの自分では、彼等が本気にならざるを得ないあの池の主相手するには足でまとい以外の何物でもない。


 そんな事は分かっている。


「……うん」


 だけど、そんな事は分かっていても。

 悔しくて、仕方なかった。


「サクラ……」


 そんなサクラに、トーカは何が声をかけようとして、その言葉を飲み込んだ。

 慰めの言葉も、激励の言葉も、サクラの悔しさを薄める物にはなりえない。だからこそ、トーカはそれ以上何も声をかけることはなかった。


「【バフセット:セルフ】【チェンジ:NO.0(オリジナル)】」


 自身に専用カスタマイズしたバフをかけ、さらに装備を支援特化の物から攻撃特化の物へと切り替えたトーカは、少し離れた場所で激戦を繰り広げる3人の元へ駆け付けて行った。


 サクラは、その背中をただ見送る事しか出来ない。

 と、そんなサクラの横で、この場に残ったもう最後の1人……メイが、動いた。


「数は……詳しい能力も分からないし、様子見でまずは10体、かな。来たれ!【魂無き軍団(ドール・レギオン)】!」


 彼女の声を受け、メイとたまたまメイの隣にいたサクラを取り囲むように突如現れる大きな人影達。


 その数、宣言通りの10。


 それら全てが、メイに従う魂無き軍勢、メイが生み出した、メイに従う強力なゴーレム達。


 平時から自分は戦闘能力ゼロだと言ってはばからない彼女は、確かに戦場では彼女個人の戦闘能力は無いに等しい。


 だが、戦場でなければ彼女は《EBO》最高の生産職であり、さらなる成長を遂げた彼女は戦場において、自身は戦えず、されど戦う力ある人形達を率いる王となる。


 人形遣い(ゴーレムマスター)


 それが、メイの戦場での新たな姿である。


大会の決勝では【魂無き軍団】は間に合わなかったのでお礼参り自爆ゴーレム君はリソースを一体につぎ込んだ結果的な感じのアレです


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?亀さんは?
[良い点] 戦力外通告か……分かってても、改めて言われるとこう、何と言うか心に響くと言うか、とりまサクラちゃん、レベル上げていつかリベンジだよ(*´∀`*)尸"ファイト ヒャッハーの真祖さんがアップを…
[気になる点] 【魂無き軍団】ってAIによる操作ですか?もしくはマニュアル操作ですか? [一言] ……もしマニュアル操作の場合、さすがに千体操作とか出来ませんよね、ね!
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