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第158話 『ヒャッハー式英才教育:ボス戦編《大兎》後編』

本当は……強かったんですよ、大兎

えぇ、まともに戦わせて貰えていれば……

 

 【挑発】を使用した事で大兎のヘイトがサクラに向き、大兎の真紅の瞳は再びサクラを捉える。


 そして、サクラへ狙いを変えた大兎が後脚に力を込めれば……


『ッキュゥ!』


 再び砲弾と化した大兎が、今度こそサクラを仕留めんと突っ込んでくる。


「はぁっ!」


 己を貫かんと砲弾となり突き進む大兎をサクラはあろう事か、避けた。

 今は後ろに誰も庇っていないから問題はないものの、誰かとパーティを組み共に戦っている時にタンクとして行ってはいけない、タブー。


 しかし、現在は守る者もおらず1人で戦っている上、タンク歴が浅くプレイヤーの基準もおおよそ平凡とは言えないヒャッハー共しかいないサクラに取っては、そんな常識は通じない。


 なんの臆面も無く、大兎の予備動作を見て転がるように横にズレてその突進を回避した。


 軌道上からサクラが消えれば、当然代わりに現れるのはつい先程サクラが叩き付けられた木であり、大兎の角はサクラの代わりに木の幹に深々と突き刺さった。


『きゅきゅぅ!?』

「はぁ……はぁ……作戦通り……【ヒール】」


 木に叩き付けられた直後に無理に身体を動かしたために肩で息をしながらも、サクラはトーカ達とは反対方向に大兎から距離を取りつつ【ヒール】を使って自身の傷を癒していく。


 《『回復魔法』のレベルが上昇しました》


「やった」


 サクラはそのバトルスタイル上、戦闘の後半はダメージを受ける事が少なく、結果的に『回復魔法』の使用頻度が少ないため『回復魔法』のスキルレベルの上昇は緩やかだったが、そのスキルレベルが今ようやく上昇した。


 依然危機的な状況という事に変わりはないが、だからと言って嬉しくない訳はなく、小さく呟き心の中でガッツポーズを決める。


「そうだ、かけ直さないと【ガードアップ】」


 喜びは一瞬、心を戦闘に戻したサクラは、再びVITを上昇させる【ガードアップ】を使い守りを固める。


『きゅ、きゅ、ぎゅぅぅぅぅッ!!』


 それと同時、木の幹に角を埋め込んでもがいていた大兎が一層強く大きな雄叫びを上げる。

 その大兎が今何をしようとしているかと言うと、大きく逞しく発達した後脚で木の幹を挟み込み、首に筋が浮き上がる程に力を込めている。


 そして……


『っぎゅぁぁぁぁッ!!』


 木を、砕いた。


 刺さった角を引き抜くのではなく、無理やり首を振って内側から抉るように振り払う。

 ようやく解放され、木の破片を振り払うように2度3度首を振る大兎の目の前では、幹を大きく抉られた木が鈍い音を立てながら倒れて行く。


『きゅふぅっ……きゅぅぅぅぅぅっ!』


 そして、即座にサクラに狙いを定め突っ込む。

 今のところ攻撃パターンは角を活かした突進と発達した後脚による蹴りだけだが、その威力は身をもって知っている。


 今度は押し負けないと気合を入れ、サクラは大兎の突進に真正面から対抗する。


「っぅ……!」


 その戦闘で受けた最大ダメージ以下の攻撃のダメージを減少させる『限界耐性』と戦闘中自身から攻撃しない限りVITとMNDが上昇し続ける『耐久者』のおかげで、今度は押し込まれる事はなかった。


 それでもHPを2割ほど削って行ったのはさすがボスモンスターと言うべきか。


『きゅ……きゅっ!』

「【ブロック】!」


 次いで放たれる2撃目の蹴り。

 ダメージの減少量的にも、突進よりもこの蹴りの方が高威力な事は間違いない。突進を自力で受け、そこに続くであろう蹴りのために取っておいた【ブロック】を使ってダメージを減少させたサクラの判断は間違っていなかった。


 それでも衝撃を殺しきれず多少押し込まれてしまうが、最初のように吹き飛ばされる事はない。


 だが、それが仇となった。


 僅かに距離の空いたサクラに対して、大兎が飛び付くように追随し再び蹴りを叩き込む。間髪入れずに再び強力な蹴りを受けて、サクラのHPがごっそりと減少する。

 またしてもノックバックで僅かに距離が開くが、大兎は同じような動きで再び追随し蹴りを連続で叩き込む。


 そんな行動が数度続き、残りHPが1割を切った本当にギリギリのタイミングで【ヒール】のCTが終了し、再び使用可能になる。


「【ヒール】っ!」


 サクラはすかさず【ヒール】を使って自身のHPを回復させる。


 だが、それはあくまでHPを回復させただけの延命措置に他ならず、大兎の連続蹴りを打開する一手にはなりかねない。


 そして、それまでと全く同じ、連続蹴りを受けてはギリギリで回復させ、また連続蹴りを受ける。そんな一連の流れが、幾度となく繰り返される。


 蹴りを受ける度に乱数の関係で毎回違う、しかし確かな量減少するサクラのHPバーと、時折挟まれる【ガードアップ】のかけ直しがなければ、ループ映像に見えたかもしれない。


 それ程までに代わり映えのない光景が続く。完全にパターンに入っていた。


 1回攻撃を受ける度に、すなわち時間が経過する度に僅かに受けるダメージは減少して行くが、それでも無視出来ない量のダメージがサクラに蓄積していく。


『っきゅぅ!』

「くぅ……っ!」


 そのループが始まって、どれほど時間が経っただろうか。

 ついに、【ヒール】のCTが終わる前にサクラのHPが尽きる。


 正確にはまだ僅かに残っているのだが、この残量ではどれだけ上手く受けたとしても次の一撃を耐える事は出来ないだろう。


 そんな悪い予感に確信が持てるほどに、ほんの僅かな厚みをだけ残し真っ赤に染ったHPバーは、まるで命の灯火が消えようとしているかのようにほのかに明滅している。


『きゅきゅぅ!』


 抗う手段もなく、もはや死に体になったサクラに変わらず大兎の蹴りが放たれる。


 今までの少ない経験からでも、この攻撃は決して耐えられないだろうと分かる。

 それを確信したサクラのとった行動は、諦めて受け入れるでも、無駄と知りながら大盾を構えるでも、間に合わない回避行動を取るでもない。


「っ……あぁぁぁぁッ!!」


 己を奮い立たせる鼓舞の咆哮とも、やけくそ気味に叫ぶ悲鳴ともつかぬ絶叫を迸らせながら、サクラは防御を捨て、大兎目掛けて大盾を振りかぶる。


 手負いの獣。間違っても少女を表現する言葉にはなりえない、そんな言葉が似合ってしまう程に、その姿は迫力に満ちていた。


『きゅうっ!きゅぅぅぅぅぅッ!!』


 そんなサクラに応えるように、同じく全ての力を振り絞ったような咆哮を轟かせ、大兎の蹴りが炸裂する。


 間違いなく今までで1番の威力を持っているだろう大兎の全力全開の一撃。


「【仕返し(カウンター)】ッ!!」

『きゅうぅぅぅぅぅッ!!』


 両者の全力を振り絞った一撃が交叉する。


 そしてーーー


大兎の読みは《おおうさぎ》です。《たいと》ではありません(だからどうした)


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 同じレベルとステータスならサクラの動きはドウラン以上かもしれないな、ヒャッハー特訓すごい。 [気になる点] 地形運用して敵をコントロールと無駄ダメ食らわない(避ける)も立派なタンクの仕事(…
[一言] どこぞの防御全振りを思い出しますね 贖罪の盾(サクラ専用〕 自身が受けたダメージ/自身が与えたダメージ(初期値1)×0.01%のデバフを敵全体にかける。最大で50% 毎分受けたダメージの5…
2020/01/27 00:44 チーズどりあ
[良い点] これが本当の「窮鼠猫を噛む」ってね。 サクラちゃんやってのけちゃったよ、ソロでボス討伐…ヒャッハーが加速した。
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