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第156話 『ヒャッハー式英才教育:実戦編②』

サクラ編はもうちょい続きそう

終わった後にサクラがどうなってるか……もう作者にも分からんとです

 

「……見つけた」


 なんの前触れもなく、リーシャが呟く。


 一瞬「何が?」と言いかけて、この場合の意味はひとつしかないとすぐに思い直す。

 リーシャの視線の先に目を向ければ、150m程離れた位置には草原を悠々と闊歩する大猪の姿がある。

 リーシャは弓術士としてという理由だけではない、生来の目の良さを活かし、誰よりもはやく標的の大猪を見つけたのだ。


 だが、少し遠い。

 これまでのようにトーカが『投擲』で引き付けるにしても遠過ぎる距離。


「ちょっと遠いな……近付くか?」


 トーカの言葉は疑問形でこそあるが、近付かなければ戦闘を始められない以上、近付くという行動はほぼ確定している。


「それもいいけど……ここは私に任せてくれない?」


 だからこそ、リーシャが任せて欲しいと言い出した事に少しだけ驚いた。

 次いで、リーシャがインベントリから取り出した矢を弓に番えているのを見て眉を顰める。


「分かってるとは思うが、今回はサクラの戦闘がメインだぞ……?お前が弓で倒しちゃ……」

「分かってるって」


 本来なら普通に狩りをしているはずだった所に合流して付き合わせているのはこちらであり、だからこそ多少遠慮気味に、けれど訝しげに声をかけるトーカだが、リーシャは見向きもせずにそう答え、弓を構えて狙いを定める。


「ふっ!」


 そして、数秒で狙いを定め、放つ。

 リーシャが放った矢は、大きく放物線を描いて飛翔しーー標的の大猪すら飛び越えて、さらに奥の地面へと突き刺さった。


 外した?リーシャ以外の全員がそう思った直後……


 パンッ!パンパンッ!


 爆竹をいくつも鳴らしたような大きな音が鳴り響く。


『ブモッ!?』


 かなり離れた位置にいるトーカ達ですら思わず身体が反応する程の音量。それを、至近距離で聞いた大猪の驚きがどれ程のものか、正確に分かる者はいないだろうが、かなりの衝撃だったであろう事は想像に固くない。


 事実、その音に驚いた大猪は音源の真反対……即ち、トーカ達がいる方目掛けて走り出している。


 その様子を目視して、この状況を意図して作りだした人物……リーシャは、自慢げに語る。


「どうよ、メイ特製の爆竹矢の威力は。攻撃力は殆ど無いけどこうやって獲物を追い立てるにはもってこいよね」

「あぁ……凄いな。使いこなすにはかなりの弓の腕が必要だが、そこさえ解決すれば距離が出せる分幅広い用途に使える」

「よせやい照れくせぇ」

「作ったのは僕なんだけどね」


 自慢げなリーシャをトーカが手放しで称賛すれば、漫画か何かに感化されたのか、鼻の下を擦って江戸っ子風に答えるリーシャ。

 そんなリーシャにメイが茶々を入れるが、聞こえていないのかあえて無視しているのか、リーシャが反応を返すことはなかった。


『ぶももっ!?ぶもぉぉぉぉぉぉッ!!』


 と、そんな茶番劇を繰り広げている間も時間が止まっている訳ではなく、今この瞬間も普通に大猪は走り続けている。


 そして、進行方向にトーカ達の姿を認めると、正体不明の爆音から逃げるためだったその走行は、目の前にいる敵を吹き飛ばすための突進へと、明確に変化した。


 だが、いくら大物であるとは言っても所詮は「最初のエリアの中では」と但し書きが付く程度の存在。

 大猪のその行動はトーカやリクルス、カレットにリーシャというバリバリの戦闘系の4人は当然の事、自他ともに認める非戦闘型のメイですら気付いているレベルだ。


 だが、5人はあえて行動をしない。


 トーカとリーシャ、メイはくだらない茶番劇こそ辞めたものの迎撃姿勢を取るわけでもなく、リクルス、カレットと共に狙われているにも関わらず傍観を決め込んでいる。


 5人が放つ無言のメッセージ。

 しかし、それが何を意味するのかを考える前に、それどころか5人のその行動が目に入る前に、既にサクラは動き出していた。


「【ガードアップ】!【ブロック】!」


 自前の『付与魔法』(神官の能力)で自身のVITを上昇させ、ダメージを軽減する【ブロック】(タンクの能力)でさらに防御力を上昇させる。


そして、魔法やアーツと言った特殊な能力で万全の体勢を整えながらも身体を動かし、5人の前に出て大盾を構える。


 サクラが目指す、神官タンクとしての基本的な動き。

 初心者ながらも、サクラは自身の目指すプレイスタイルの根幹となる動きをスムーズに行って見せた。


『ぶもぉぉ、おぉぉッ!!』

「っぅ……!」


 直後、鈍い轟音が響く。


 サクラの構えた大盾の中心に、大猪の突進が突き刺さる。いや、この場合はサクラが大猪の突進を大盾の中心でしっかりと受けたと言うべきか。


 とはいえ、サクラのレベルは2。

 どんなにスムーズに行動を取ったとして、根本的なステータス差は覆しようがない。


 現に、大猪の突進に吹き飛ばされこそしなかったものの、サクラの身体は数歩分押し込まれ、HPも3割ほど減少している。


 だが、サクラの行動はそこで終わらない。


『ぶももっ!』

「っふ!【仕返し(カウンター)】セット!」

『ぶももぉぉぉッ!!』

「ぐぅ……っ!」


 突進の反動で大猪が弾かれ、僅かに距離ができる。その隙に、素早く【仕返し(カウンター)】を起動させる。


 その直後に衝撃から立ち直った大猪の突進がサクラを襲う。

 その先程と全く同じ攻撃を、今度は素直に受けるのではなく僅かに軸をずらして受け流すような形で大盾でいなす。

 だが、それでも威力を殺し切れず、HPは2割ほど削れてしまっている。


 HPが5割を切り、サクラのHPバーが危険色の黄色へと変わる。普通なら意識的か無意識かは分からないが危機感を感じる状態だが……


 サクラが初心者であるという事がここではプラスに働いた。

 HPバーが黄色になってしまっても、無知ゆえにそこまで危機感を感じずに……言い換えれば、焦りを感じずに冷静に行動が取れる。


「ぅっ!くふっ!」


 そこからさらに3度、大猪の突進をいなす。


 戦闘中徐々にVITとMNDが上昇する『耐久者』と、1度受けた攻撃の同等以下のダメージを減少させる『限界耐性』の効果によって受けるダメージは最初よりも減ってはいるが、HPは既に1割を下回りHPバーは真っ赤に染まっていた。


 ここまで来ればさすがに初心者と言えど焦りを禁じ得ないが……サクラにはまだ手札がある。


「【ヒール】!」


 トーカのようにINTに重点的にSPを割り振っていないため、1発で全回復とは行かないものの、その魔法は既に死に体だったサクラのHPを8割近くまで回復させる。


「っ……?あれ、なんか楽になってきた」


 その後も幾度となく大猪の突進を喰らい続けるたサクラだが、時間をかければかけるほど硬くなる『耐久者』と『限界耐性』、さらにいざとなればHPを回復できる【ヒール】のコンボ、更には慣れも加わって次第に大猪の突進を楽に受け流せるようになっていた。


 そしてついに……


「あ、もうダメージ殆ど受けてないや」


 3倍にまで上昇したVITと、コツを掴んだのか上手くなった受け流し、さらに地味に効いている『限界耐性』によって、最初は完璧に受けてもHPの3割を削られていた大猪の突進で殆どダメージを受けなくなった。


「じゃあそろそろ……【仕返し(カウンター)】!」

『ぶもぉっ!?』


 そして放たれる、サクラの持つ唯一の攻撃手段。

 今まで耐え続けていた大猪の突進数十発分の威力を孕んだ大盾が大猪を横薙ぎに殴り付け……


 大猪のHPは消し飛んだ。


「やったー!初めてまともな手段で敵を倒せた気がする!」

「よっ!『処刑人』!」

「よーし、次の敵はお兄ちゃんだね!」

「おっ?やろうってのか?」


 初めての(まともな)勝利に諸手を挙げて感激するサクラに茶々を入れるリクルス。触れられたくない所に触れられたサクラがアルカイックスマイルで大盾を構えれば、リクルスもファイティングポーズを取ってサクラを挑発する。


「馬鹿か。レベル差を考えろよ」

「あだぁっ!?ダメージ判定無いからって人の頭をソレでぶっ叩くか普通!?」


 そんな大人気ないリクルスの脳天に、トーカの白銀ノ戦棍が叩き込まれる。そこまで勢いをつけていた訳では無いが、その質量故衝撃はかなりのものだろう。

 まぁ、このゲームはPK非推奨なので、リクルスが言っていた通りHP的な損害はまるでないのだが。


「そうだ、レベルと言えば、またレベルアップしたよ!」

「おぉ、それはおめでとう」

「おめでとー」

「おめおめー」


 頭を抑えて蹲るリクルスの姿に溜飲を下げたサクラが、一転して嬉しそうにレベルアップを伝えてくる。


 分かるぞその気持ち。レベルが上がると無性に嬉しくなるよな。


 おっ、そうだ。いい事思い付いた。


 お祝い……と言うと変だけど、タイミングもいいしサクラにコレを渡しとこう。


「サクラ」

「どしたのトカ(にぃ)?」

「レベルアップのお祝いって程でも無いけど、お前にピッタリなアクセを持ってたのを思い出してな」


 そう言って、ぽかん顔をして首を傾げているサクラに亀の甲羅を模したペンダント……『亀のお守り』を手渡す。


「これは……?」

「結構前に俺が手に入れたアクセサリーでな、VITを+10してくれるんだ。サクラにとってはドンピシャだろ?」

「凄い……!けど、本当にいいの?」

「あぁ、VITを上げても正直俺のプレイスタイルにはあんまり合わないしな。俺よりもサクラの方が役立ててくれるだろ」

「わぁ……!ありがとう!」


 満面の笑みを浮かべるサクラに、トーカの顔も自然に綻ぶ。

 こんな嬉しそうにしてくれるとあげた甲斐が有るってもんだ。


「……なんか、凄い微笑ましいものを見た気がする」

「いつもの2人に対する態度とはまた違った……なんだろ、お兄ちゃん味が凄い」


 そんなサクラとトーカのやり取りを見て、メイとリーシャがそんな事を呟いていたが、2人が気付くことはなかった。


利用するだけ利用して用無しになったら殴り殺したけど、まだ大丈夫……今回使ったのはただのカウンター……タンクが普通に使える攻撃技だから……

用無しになった敵を始末するのはジョブ関係なくプレイヤーとして当然の行動だし……まだ大丈夫……


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しませもらってます〜!これからも頑張ってくだされー!w [一言] アイデア 今のところと関係なく、島に探索に言った時に狐型モンスターをテイムする的な何か(うまく説明出来なくてすいませんー…
[一言] アイデアー 『カウンタースライド』(仮) 『自分が受け流した分のダメージ』÷二分の一の数値分、味方、もしくは自分の攻撃力をアップする …これ使えたらトーカさんがもっと凶悪になってしまう(歓…
[良い点] 針がいっぱい付いた盾で押し潰し、仕留め損ねたら針に仕込まれていた状態異常の効果により色んな状態異常を受けてじわじわと死を感じるんですね(敵が)分かります。(処刑人だモンネ、そんぐらいテキに…
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