第154話 『ヒャッハー式英才教育:中間結果』
称号回兼実戦編②だと言ったな?
あれは嘘だ
「なぁにこれぇ……」
ステータス画面を開いた数秒後、初レベルアップでウキワクしていたつい先程までの表情から一転、サクラは嬉しいは嬉しいけど喜ぶに喜べないとでも言いたげな、なんとも言い難い微妙な感情を浮かべている。
「どうしたサクラ。変な称号ゲットしたトーカみたいな顔して」
「えっ、俺いつもそんな顔してんの?」
「『よく分かんねぇけど名前からしてまともな称号じゃないんだろうなぁ。なんだこれ貰ってもいまいち喜びにくいぞ……』とでも言いたげな顔ならちょくちょくしてるぞお前」
マジか……
「そ、それで。どうだった?」
表情から何が起こっていることは察したが、あえてそれを見なかったことにしてサクラに話しかける。
経験上、訳が分からない称号を貰った時はそれをネタに笑えた方がすっと受け入れられる。
「……えっと。うん。SPはとりあえず全部VITに振ったんだけど……ちょっと称号って言うのに変なのがあって」
((やっぱりか……))
「そ、そうか。なんて称号なんだ?」
「えっと……この『生還者』と『耐久者』はまだ分かるんだけど」
「へぇ、どっちもタンクっぽい称号じゃないか。俺も変な称号はいくつか持ってるからもしかしたら同じのもあるかなぁなんて思ったが……」
「『非道』と『処刑人』ってのがよく分からなくて」
「あ、片方持ってたわ」
そうか……『大盾ギロチン』も『ど根性ウサギ』も『非道』判定が入るのか……いや、よく考えれば普通だわ。
入って然るべき戦法だったわ。
「称号ならその部分をタップすれば詳細情報が出るから、それで確認してみるのが1番早いんじゃないか?『非道』については持ってたからある程度は分かるが、他はさっぱりだ」
「え……トカ兄……『非道』持ってたって……そんな酷いことしてたの?」
「うん。それ言うならお前も今持ってるからね?」
冗談めかして言ってきたサクラにそう返してやると、サクラは半笑いで露骨に目をそらす。
おい、現実から逃げるんじゃない。現実を直視するんだ。
逃げても称号は消えてくれないぞ。
「えーっと、称号の効果効果……」
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『生還者』
圧倒的威力の攻撃を受けて生き残った者に
与えられる称号
即死攻撃に対して耐性を得る
また『根性』と『限界耐性』を取得する
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「へぇ、即死耐性は嬉しいな。どんなに硬くても即死攻撃食らったら死んじまうからなぁ」
「え、そんなぽんぽんと即死攻撃が飛んで来るの……?」
それじゃタンクの意味……と明らかにサクラの顔が曇る。
だが、それは杞憂という物だ。してくる奴はしてくるが、大半は即死攻撃なんて持ってない。アレはアレで実はかなり希少な種類の攻撃だ。
「まさか、そこまで頻出するような気安さじゃないさ。いざって時のお守りになるなって話で。俺が知ってるのだと、リーシャと……リクルスが最後に一騎打ちしてたカザキくらいだな」
「まぁ即死級の攻撃は上に行けば行くほど割と飛んでくるけどな。しかもそれには耐性なんか無いから自分が強くなって耐えるか避けるかしなきゃだ」
「え゛」
「ほら、トーカの攻撃とかまさにそれの最たるモノだぞ」
「あぁ……納得」
一瞬前に物凄い表情をしていたとは思えない程のスッキリとした納得顔を見せるサクラ。
その納得のされ方はなんか納得行かないんだが……
「「そんな事より称号の効果で貰ったスキルを確認しよう」」
「こんな時だけ息ぴったりに合わせやがって……」
表情から読み取ったのか、本能かは知らないが、息ぴったりに話を進めてこの話題を打ち切るリクルスとサクラ。
こう言う所を見るとやっぱり兄妹なんだなって思うよな。
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『根性』
HPが0になる攻撃を受けても1度だけHP1で耐える
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「わかりやすいな」
「わかりやすいね」
「分かりやすく耐久スキルだなぁ。『回復魔法』の【フルヒール】さえ覚えれば1回までならやられても仕切り直し出来るしな」
とはいえ、リクルスのような小ダメージを重ねてくるような相手には相性がいいとは言えない。
HP1で耐えて即座にその1を削られる未来が容易に見えるぞ。
これは俺みたいな単発が重い敵が相手だと本領を発揮するヤツだな。
「分かりやす過ぎて掘り下げる事も無いし次行くか」
「う、うん」
「『限界耐性』……聞いた事ないスキルだな。一体どんなスキルなのやら」
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『限界耐性』
その戦闘中に受けた最大威力以下の攻撃を
『スキルレベル×5』%軽減する
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「……強くね?これMAXの10で半減って事だろ?」
「……強いな。即死級の一撃を『根性』で耐えて【フルヒール】で回復すれば残機が減る代わりに常時ダメージ半減状態になれるし……」
「えっと……よく分からないけど、強いって事?」
「強いって言うか……ウザい?」
「ひどいっ!」
本当によく分かってなさそうな様子でサクラが首を傾げつつ質問してきた内容にリクルスは『ウザい』と返したが、正直完全に同意見だ。
声に出しては言わないが、確かにウザい。
強い事には違いないが、それはタンクとしての強みであって一般的なイメージにおける『強い』とは少しズレるだろう。
それに、単体で見ただけでもタンクとして超強力なスキルな上、先程上げたコンボを決められると俺のような初手確殺型やリクルスのような小ダメージを重ねて削り切るタイプとしてはやりづらい事この上ない。
今はまだサクラ本人のレベルが圧倒的に低いからこそどうとでもなるだろうが、これでサクラが同レベル帯にいたら……
絶対に敵に回したくないな。
「あーっ!トカ兄もそんな顔してる!」
「そんな顔ってなんだよ」
「『声に出しては言わないが、確かにウザい』って顔!」
……エスパーかな?
「それより次の称号見るぞ」
「あっ!話逸らした!」
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『耐久者』
反撃もせずただただ攻撃を耐え続けた者に
与えられる称号
戦闘中、自ら攻撃をしない限り
VITとMNDが上昇し続ける(MAX3倍)
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「やっぱ純粋なステータス強化って正義だよなぁ……」
「頭空っぽにして殴り続ける【狂化】持ちが言うと説得力があるなぁ」
「いやいや、脳味噌まで筋肉どころか脳味噌を筋肉にしてる『撲殺神官』さんには敵いませんよ」
「ちょっと2人とも!」
笑顔のままでリクルスとメンチを切り合っていると、サクラに止められた。
別に本気でキレていた訳では無いが、様式美としてやっておこうかなと……
「と、そうじゃなくて。攻撃出来ないって制限はあるにせよ最大で防御系3倍は強いな」
「これさ、さっきの『限界耐性』と合わせると時間かければかけるほど倒しにくくなるやつじゃ……」
「だな。単体ならいいけど仲間がいた場合かなりやばい事になる」
「あぁ、あとはこの『自ら』の判定に『仕返し』が引っかかるかどうかだな。ここは確認しておいた方がいい」
「凄い……さっきまで笑顔(のような何か)でメンチ切り合ってた人達とは思えない……」
「なんの事か分からないけど次行こうぜ次」
「そうだな、次だ次」
「また逃げるぅ!」
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『非道』
小型モンスターを酷い方法で討伐し続けた証
非道な攻撃のダメージが1.5倍
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「「知ってた」」
「うーん……そんな、非道なんて言われる程の事したかなぁ」
「ナチュラル非道!?」
「えぇ……妹にそんな事言う……?」
リクルスの言葉にサクラがジト目を向けると、同じ『非道』仲間であるトーカからも助け舟が出る。
「まぁ本来戦う事を想定されてない大盾での戦い方となると、使えるモノは何でも使う系の戦法になりやすいからな。真っ当な戦闘方法とは言い難い」
「そうかぁ?」
だが、リクルスはよく分からんとばかりにしかめっ面になる。攻撃スタイルとしては正統派な軽戦士であるリクルスには、本来戦闘職では無い者が無理矢理に戦う時の思考パターンが理解しにくいらしい。
「それに、このゲームでの『非道』の判定って『倫理観的にどうかと思うような攻撃』という面も確かにあるけど、どちらかと言うと『必要以上に相手を痛め付けるような攻撃』に判定の重きを置いてるらしいんだ」
「どういうこっちゃ?」
「なんというか……同じ首を落とすにしても剣で切り落とすのと大盾の重さと地面の硬さを利用して潰し切るのじゃぜんぜん違うだろ?重さと面の広さを利用して叩き潰すのだって大型のウォーハンマーを使うのと大盾で押し潰すのは色々と意味合いも変わってくるしな。そんな感じで、『本来想定されてない戦い方による攻撃』ってどうしても無理矢理感が強くなって『非道』判定に引っ掛かりやすいって事だ」
「よく分からないけど仕方なかったって事だね!うん!私は悪くない!」
「そんないい笑顔で言い切られるといっそ清々しいよな。『非道』認定された事に変わりはないけど」
「そんな事言わないの!それより次!」
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『処刑人』
処刑系攻撃で一定数以上敵を倒した者に
与えられる称号
自身の即死攻撃の成功率が上昇する
特定の種類の攻撃時に確率で即死させる
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「……ほら、サクラ。何か申し開きは?」
「………………トカ兄!」
「ノーコメント」
処刑系攻撃ってなんだよ……初耳だよそんな攻撃属性。
察するに『大盾ギロチン』がその処刑系攻撃に分類されるんだろうが……
「前半の2つはともかく後半2つはタンクとしては殆ど役に立たない称号だね……」
「ホントだよなぁ……じゃあ何で取ってるんだって話だけど」
「それはお兄ちゃんがそういう攻撃ばっか考案するからでしょ!」
「『大盾ギロチン』はそうだけど『ど根性ウサギ』はたまたまお前がコケて目の前にいた角兎を押し潰したのが始まりだろ!」
「そうだけど!それはそうだけど!!」
「「ってなんでトーカ(トカ兄)はそんな微笑ましいものを見るような顔をしてるんだ(の)!」」
ぎゃーぎゃーとじゃれ合う兄妹を仲がいいなぁと眺めていたら、目をつけられてしまった。
なんだかんだ言ってリクルスとサクラ……瞬と舞桜の喧嘩ともじゃれ合いともつかない行動は今まで沢山見てきたからどうしても微笑ましさが湧いてくるんだよなぁ……
「っておお、リーシャじゃないか」
「やっほ〜」
と、仲良くじゃれ合う兄妹を微笑ましく眺めていると、リーシャが現れた。
他の場所ならともかく、今は殆ど人の居ない過疎地となってしまったこの長閑な草原で会うとは思わなかったが、ナイスタイミングと言えばナイスタイミングだ。
サクラを紹介するいい機会だろう。
あっれれぇ〜?おっかしぃぞぉ〜?
何でタンクのはずのサクラちゃんが『非道』と『処刑人』とかいうタンクに似つかわしくない称号を取ってるんだ……?
サクラちゃんが攻撃(仕返し等カウンター系は除く)も出来るタンクになる事は無いです(予定)
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
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