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第148話 『慟哭とヤケ食い、そして遭遇』

初心者、ヒャッハーと遭遇するの巻

 

「おぉー!」


 舞桜ことサクラが降り立ったのは、《EBO》プレイヤーなら誰しもが最初に訪れる始まりの町【トルダン】。

 今や大半の《EBO》プレイヤーが見慣れ、先へ進み、過去とした石造りの町並みを眺めながら、サクラは感嘆の声を上げる。


「えーっと……待ち合わせは噴水広場って所だっけ。そうだ、地図地図……」


 しばらくの間きょろきょろしていたサクラは、この世界に自分を誘ってくれた兄達を待たせている事を思い出し、集合場所へ向かおうとする。


 初めての土地で土地勘なんてある訳はないが、そこは便利なゲーム世界。この町の地図(マップ)なら路地裏以外なら最初から全域を確認する事が出来る。


「地図は確か……」


 慣れないウィンドウ操作に戸惑いながら地図(マップ)を探していると、先程作成したばかりのステータス画面が目に入る。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


  『サクラ』


 ジョブ:重戦士


 サブ:神官


 Lv. 1


 HP:200/200

 MP:100/100


 STR:5

 VIT:20

 AGI:0

 DEX:0

 INT:5

 MND:10

 LUK:0

 SP:0


【パッシブ】

 なし


【スキル】

『盾術Lv.1』『挑発Lv.1』『守護Lv.1』

『回復魔法Lv.1』『付与魔法Lv.1』


【称号】

 なし


【装備】

 右手

『初心者の大楯』

 左手

『初心者の短刀』

 頭

『見習い重戦士の兜』

 上半身

『見習い重戦士の鎧』

 下半身

『見習い重戦士の鎧』

 腕

『見習い重戦士の篭手』

 足

『見習い重戦士のブーツ』

 アクセサリー

『なし』

『なし』

『なし』

『なし』


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「これが……」


 兄達の話を聞き、どうせならあまり被らないようにしたいな〜などと考えながら作成した、この世界を生きる自分の姿。

 それを見て、本当にゲーム世界なんだ……と、当たり前の事を改めて実感する。


「って!お兄ちゃん達と合流しないと!」


 少しの間感慨にふけっていたサクラだが、相変わらず兄達を待たせている事を再び思い出し、メニューウィンドウから何とか地図(マップ)を見つけ出す。


 そのまま地図(マップ)とにらめっこをしながら約束の場所である噴水広場に向かうと……


「どぼじで()でないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 天下の往来で蹲って絶叫する、見覚えのあるような人物を見つけてしまった。


(……うわぁ)


 紫を極限まで濃くしてほとんど黒にしたかのような色のちょっと長めの髪を首の後ろ辺りでまとめて短いしっぽを作ったような髪型の、知り合いであって欲しくないような行動を取っているアレが……恐らく、兄なのだろう。


 ……チェンジで。


 え?ダメ?どうしても?……ケチ。


「俺の方が速いはずなのに!なんで俺の攻撃は当たらんくて!お前の攻撃は当たるん!?なんで俺の動きを完璧に先読み出来るん!?チートか!?チートなんか!?」

「そういや、前もこんな奴いたなぁ……。挑んで来て負けてチートだって喚く奴」


 そして、恥晒しの前では、狐面を頭に付けた白髪赤目の和風ファンタジーの陰陽師のような服装の、こちらも見覚えのある男性が遠い目をしながら何かを呟いている。


「もっもっもっ、んぐっんぐっんぐっ、ぷはぁ!」


 よく見れば、なおも何かを喚く恥晒しと遠い目をした狐面の奥には、噴水の縁に腰掛けて焼き鳥の様な物をかっくらい、丸底フラスコに入った液体をラッパ飲みしている、見るからにヤケ酒チックな行動を取っている全身を赤……いや、緋色?に固め、所々に翡翠色をアクセントにしている、またまた見覚えのある涙目の女性の姿もあった。


 つまるところ、カオスだった。


 そんなカオス100%な空間に、サクラがどう反応していいか分からず(カオス100%とカカオ100%って似てるよね。もしかしてここはチョコレートだった?)などと現実逃避しながら棒立ちしていると……


「ん?」


 狐面の男性がこちらに気が付いた。


 ◆◆◆◆◆


 舞桜がキャラメイクを終えるまでの暇潰しとしてリクルスが「負けた方が勝った方にジュース1本奢るってルールで決闘やろうぜ!」と言い出し、お祭り騒ぎ大好きなカレットもそれに乗り、突発的に対戦が始まったのが1時間ほど前。


 長年幼馴染(ほごしゃ)として2人を一歩後ろから見守り続けてきた俺にとって、限定状況下でならリクルスやカレットの行動を予測するなど容易いことだったのだが……


 やり過ぎてしまったのだろう。

 行動予測からの完封試合をしてしまったせいで、それにムキになった2人が「もう1回!」「もう1回!」と再戦を仕掛けまくってい来たのだ。


「なぁ……大丈夫か?もうお前ら2人合わせて俺に58本ジュース奢る事になってるんだけど。そんなに貰っても飲みきれねぇよ」

「うっうっう……うう……うわぁぁぁぁ!」


 もう何度目かも分からないこの言葉を投げかけた時、なんかもう、心が折れたのだろう。


 カレットは涙目になりながらインベントリから蛇焼き串と味付きポーションを取り出すと、まるでヤケ酒のように暴飲暴食を始め……る前にすかさず味付きポーションを回収してただのジュースを渡す。


 さすがにこんななんでもない所で(量産できるとは言え)貴重な味付きポーションを消費されてはたまらない。


 すると、素直にジュースを受け取ったカレットは勢いを衰えさせる事無く暴飲暴食を始める。


 と、それと全く同じタイミングでリクルスが膝から崩れ落ちる。


「どぼじで()でないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 そして、慟哭が迸る。

 悔しさと疑念とが入り交じった衝動に背を押され、魂を吐き出すような悲痛な声が、噴水広場に響き渡る。


 今やとある道具屋に通いつめる変態紳士達を除いて訪れるプレイヤーも減り、周囲には人影はないとはいえ天下の往来でうずくまって叫び声を上げるこの姿は……哀れで惨めだった。


 こんななんでもない所で出していいような声じゃない気がするが……まぁ減るもんでもないしいいか。


「俺の方が速いはずなのに!なんで俺の攻撃は当たらんくて!お前の攻撃は当たるん!?なんで俺の動きを完璧に先読み出来るん!?チートか!?チートなんか!?」


 こうなったリクルスは変に宥めるよりスッキリまで叫ばせた方が復活も早いし放置でいっか、などと考えながら、この光景にふと既視感を覚える。


「そういや、前もこんな奴いたなぁ……。挑んで来て負けてチートだって喚く奴」


 あれは確かカノンの父親との突発的戦闘の後にこの噴水広場で2人を待っていたら決闘を吹っかけられたんだったか。

 直前に戦った、カノンの父であるルガンより弱かったので無事勝つ事が出来たが、その後にチートだチーターだと喚いてきて不快だったのを覚えている。

 そういや妖精ちゃんを初めて見たのはこの時だったか。


 ある種の懐かしさを感じながら当時の光景を思い出していると……


「ん?」


 視界の隅にこっちを見て立ち尽くしている人影がいることに気付いた。

 ドン引いて、あるいは現実逃避しているように見えるその少女は、よく見れば見覚えのある見た目をしていた。


 現実では肩にかかる程度だった黒髪を、ピンク……と言うには少し薄い桜色に染め、長さも耳を覆い隠す程度にまで短くしているが、間違いなくリクルス……瞬の妹である舞桜だろう。


 舞桜は背が低い方では無いが、それでも全身を鎧に包まれているその姿を見ると、どうしても小さく見えてしまう。


 軽戦士はあんなに鎧を着込まないし、騎士にしても初期装備としてはゴツすぎる。という事は、あの初期装備からして舞桜のジョブは重戦士だろうか。


 そこまで考えてふと、この場の惨状に気が付く。

 リクルスは俺の前で蹲り未だ愚痴り続けていて、俺は遠い目をしている。そして、その奥で噴水の縁に腰掛けたカレットは涙目で暴飲暴食を続けている。


 ……なんというか、かなり情けない姿を見せている気がするな。


サクラの役割どころかその理由すら当てた人がいて驚きました


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第30話:荒ぶる神官でトーカの咆哮が挑発or威圧に進化とあるのですが、サクラは初期から挑発を持っていてもいいのでしょうか?ジョブごとに初期スキルも変化したりとかする設定ですかね?
[一言] 泣き虫 泣くほど強くなる 魔喰い 魔法を食べる なんでいのはどうでしょう?
[気になる点] 最近になってまた1話から読み直しているのですが、事故物剣を渡してきたのってリガンドじゃなくてルガンだったような… そして、リガンドって害悪βテスターの名前だったような気がします!!
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