第146話 『祝勝会と妹の来訪』
お久しぶりです……
リアルでちょっと精神的にくる出来事があり、投稿が遅くなりました
次に掲示板回をやってこの章は終わりですね
「ふぃー!疲れた疲れた」
「疲れたな……だが、私達はやり遂げたぞ!」
「………………」
あの後、景品交換も終わり、【島】探索については後日予定を詰めるという事で最終決定として【カグラ】のメンバーは解散した。
疲れもあったし、時間も時間という事でそのままログアウトしたトーカ達だったが……
「当然のように俺の部屋に集まるのな」
ログアウトしてマシンを片付けたタイミングで、瞬と明楽が護の部屋を訪れて来たのだ。
事前に打ち合わせでもしていたかのようなスピーディーさに、呆れや感心が入り交じったなんとも言えない表情でそう呟く。
「……?当然だろう?」
「……?なんかおかしい所あったか?」
そう答える2人の顔には、何を当然の事を改めて言っているのだろう?という疑問の表情が浮かんでいた。
「あー……うん、もういいや。それで、何時からにする?」
よく考えなくても、2人が何かある度に俺の部屋に来るのはいつもの事だったし、突然の来訪にはもう何年も前に慣れた。
それよりも、このタイミングで来たということは、用件はひとつだろう。
「ッ!?護、まさかお前テレパシーを!?」
「さすが護!話が早い!でもここまで早いといっそ不気味だな!」
「ったく……どうせ祝勝会をやろうってんだろ? 何年保護者やってると思ってるんだ。そんくらい分かるわ」
「おぉー!幼馴染に別のニュアンスが込められてる気がしなくもないがいつもの事だな!」
「さっすがまもちゃん!」
「瞬は帰るらしいから参加者は俺と明楽だけだな」
「冗談冗談!じゃすきりーん!」
護がさらっと瞬だけを視界から外そうとすると、すぐさまその気配を察知した瞬が視界に収まるように素早く動く。縦横無尽に動き回る軽戦士らしい俊敏さだ。
絶対に視界から外れないとか……君、そういうホラゲーの怪物か何か?
「当然、《EBO》内でメイやリーシャ、リベットも一緒に【カグラ】全員での祝勝会も盛大にやるぞ!だが、その前にリアルでも祝勝会をやろうじゃないか!」
「あぁ、リアルで会えるのは俺達だけだもんな。いつかオフ会みたいなのもやってみてぇよなぁ」
「楽しそうではあるが……アイツらがどこに住んでるかも分からないし、そもそもネットの知り合いと現実で会うのを嫌がる人も多いからなぁ。無理は言わないようにな」
そんな話をしながら、外出する準備を済ませる。
別に、外出と言ってもどこかのレストランに行くとかそういった事ではない。
結局、祝勝会と言ってもやる事はいつものように俺の部屋に集まってわいわいやるだけのささやかな物なのだ。
わざわざ外の店を利用する訳でもないし、そもそもそんな事は2人も望んじゃいないだろう。
当然、これから行くのもただの買い出しである。
お菓子類も多少は家にもあるが、プチパーティーを開くならそれでは心もとない。
なので、スーパーやコンビニで、お菓子やらジュースやらを買い込みに行くのだ。
「そうそう、お前らは夕飯どうするんだ?時間的に今から買い出し行くとちょうど夕飯時になるが」
「私はどっちでもいいと言われているな。まぁ護の所で食べるなら一報入れろとは言われたが」
「あー、まぁ俺は特になんも言われてないけど、護ん家で食うって連絡入れとけば大丈夫っしょ」
「適当だな」
そんな訳で、明楽と瞬も家で夕飯を食べていく事になった。
んー、メニューはどうすっかな。
そうだ、優勝祝いだし、ちょっと奮発するか。
「んじゃ、適当に肉買って焼肉パーティーにでもするか?」
「「焼肉!hooooooooo!!」」
「うるせぇ!」
「うぎぃ!」「ひぎぃ!」
焼肉と聞いて雄叫びを上げ始めた2人を、拳骨を落として黙らせる。
明楽はともかくとして瞬も裏声を使ってまで高音で叫ぶな。
「突発的だから大量にって訳には行かないが、冷蔵庫にも少しあるしそこそこの量は行けるだろ。あぁ、あと父さんから送られてきた無駄にでかいステーキ肉もあったな。それも焼くか」
「「ステーキ!hoo(以下略)
先程と全く同じパターンの行動を繰り返した後、買い出しに向かうため、玄関に移動する。
そして扉を開けると……
「「「あっ」」」
「へっ?……あっ」
ちょうどそのタイミングでインターホンを鳴らそうとしている少女がいた。
護達は扉を開けたら人がいたという驚きで、少女はインターホンを鳴らす直前に家主が出てきたという驚きで、お互いに一瞬硬直する。
そして、先に動いたのは少女の方だった。
「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!」
そう叫びながら(近所迷惑にならない程度の叫び声なのは少女の良心なのだろう)、少女は護に抱きついてきた。
護はその少女の突進にも近い勢いの抱擁を、驚きながらも優しく受け止めるとーーー
「…………うん。違うよね。俺じゃないよね」
そう言って、そっと少女をリリースした。
「あはは、スキンシップだよスキンシップ。じゃあ改めて……お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「妹ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
護にリリースされた少女は照れ臭そうにはにかむと、方向転換して明楽に抱き着く。
一方の抱き着かれた明楽はと言うと、抱き着いてきた少女に負けず劣らずの勢いで少女を抱き返す。
玄関の目の前で2人の少女が叫びながら抱き着き合うというかなりシュールな光景を前に、半ば義務感のような物に背中を押されて護はツッコミを入れる。
「うん。明楽でもないよね。あとシンプルにうるさい」
「あたっ」「あいたっ」
護に軽くチョップを入れられて静かになる明楽と少女。
しかし体勢は抱き着き合ったままなので、なかなかになかなかな絵面だ。少なくとも自分の家の敷地内で見るような光景じゃない。
「えー……」
そんな状態のまま、護でもない明楽でもないと2回に渡って否定された少女が、チラリと残った瞬を見る。値踏みするようなその視線に、瞬は「な、なんだよ」と居心地悪そうにしている。
数秒後、少女が明楽に抱き着いたままボソリと呟く。
「チェンジで」
「おい!さすがに傷付くぞ!」
「えー、なにぃ?まさか、お兄ちゃんも抱き着いて欲しいの?」
真顔&ガチトーンでのチェンジ要請に瞬が反応すると、少女はしてやったりとでも言わんばかりのニヤニヤ顔で瞬を煽る。
「え、いやだ」
しかし、間髪入れずに瞬の真顔の否定が入る。
これにムッとした様子の少女は瞬に向かって「こっちから願い下げですよぉ〜」と小憎たらしくべぇっと舌を出と、対する瞬もそんな少女を「へっ」と鼻で笑う。
瞬と少女の間に不穏な空気が流れ始め……
「はいはい、兄妹喧嘩は後でやってくれ」
「あたっ」「ヘグァッ!?」
すぐさま護の介入でその空気は霧散した。
少女は再び軽いチョップ受け、瞬はデコピンを食らった額を抑えて蹲る。
「ッ〜〜〜!俺だけ威力おかしくね!?」
「瞬なら行けるかな〜って」
「なんじゃそりゃ……」
「んで、どうしたの舞桜」
瞬の相手もそこそこに、護は訪ねてきた少女……ここまで来れば分かるとは思うが、護でも明楽でもなく、瞬の妹である米倉 舞桜に尋ねる。
舞桜は、きょうだいのいない護と明楽にもとても可愛がられており、2人にとっても妹のような存在である。
幼馴染3人組程常に一緒にいる訳では無いが、それでも昔は瞬とセットだったためよく4人で遊んでいたのだ。
最近は学年のズレや各々の予定などもあり、絡みも少なくはなっているが、それでも会えばこうやってふざけ合う程度には仲がいいままだ。
「ママが急用出来たから今日は外で食べて来て〜ってお金くれて。お兄ちゃんは護兄の所だろうから食べに行くついでに渡しとこうと思って」
そう言いながら、明楽から離れた舞桜が瞬にお金を渡す。
「そりゃサンキュ。って事は肉の量が増えるな!」
「へ?お肉の量って?」
「これから祝勝会だかんな、焼肉パーリーじゃい」
「祝勝会……ってなんかで優勝でもしたの?確かみんな部活とかは入ってなかったよね?」
瞬の言葉に、舞桜が首を傾げる。
そりゃ祝勝会とか言ったら現実の大会か何かで優勝したと思うよな。
さて、舞桜は別段ゲームに理解がない訳では無い……というか普通にゲームをしたりする人間だが、ゲーム内の大会イベントで優勝したと言ってすぐに伝わるだろうか。
「いんや、リアルでじゃねぇよ。俺達は《EBO》……ゲームの中の大会で優勝したんだよ」
「いーびーおー……あぁ、エンドレス・バトル・オンライン、だっけ?最近話題になってるヤツだよね。お兄ちゃん達、やってたんだ」
と、そんな懸念は杞憂だったようだ。瞬がそう答えると、舞桜は納得!と言わんばかりにぽんっと手を打つ。
だが、直後に舞桜は眉をひそめ、むむむむむ……?と何か考え込むように腕を組む。
そして……
「あれ?それって凄くない?」
「うむ!凄いぞ!トップランカー達がひしめく中での優勝だからな!」
「さっすが明姉と護兄!あとついでにお兄ちゃん」
「扱いが雑!」
舞桜が瞬を蔑ろにし、瞬がそれにツッコミを入れる、という恒例になっている一連の流れをこなした後、舞桜が「なら……」とつぶやく。
「どうした?」
「護兄達がやってるなら私も始めてみようかなって、《EBO》」
「なんだ?舞桜も持っていたのか?」
「うん。ちょっと前に雑誌の懸賞で本体ごと当たって。でもVRMMOってよく分からないし、不安だったからまだ触ってないんだよね」
「あー、前にお前宛てに届いた荷物がソレか」
「そうそう」
「俺らは買ったってのに本体ごと当てるとは……運の良い奴め」
「やっぱお兄ちゃんと違って普段の行いがいいからね」
「んだとこら」
瞬は俺らって言ったけど、実は俺も買ってないんだよな。俺が持ってる本体と《EBO》も瞬と明楽の2人が誕プレにって買ってくれたヤツだし。
今更ながらかなり大きなプレゼントを貰ったもんだ。どこかしらのタイミングでお返しができればいいが。
「っと、買い出し行くならそろそろ行かないとだな。そうだ、せっかくだし舞桜も参加するか?」
「おぉ!それはいいな!」
「えっ?護兄達の祝勝会なのに私も参加していいの?」
「別にいいっしょ。ま、友達とどっか食いに行くとか予定あんなら無理しなくてもいいけど」
「じゃあ、お招きされようかな」
部外者の自分が祝勝会に呼ばれることに少し遠慮気味だった舞桜だが、瞬の後押しもあり参加する事になった。
「よし!肉が増えるぞ!」
「……お兄ちゃん。最初からそれが目的だったりしない?」
「アハハソンナワケナイダロ」
「お兄ちゃん!」
そんな兄妹のじゃれあいを微笑ましそうに見つめる護と明楽の視線がこそばゆかったのか、瞬が「冗談冗談。それに、《EBO》始めるかもってんなら色々と《EBO》の話するチャンスだしな。それより早く買い出し行こうぜ!」と会話を切ってスーパーに向かう。
そんな瞬の後ろ姿を、護と明楽は某ネコ型ロボット的暖かい目で眺めていた。
その後行われた祝勝会は、《EBO》の話を肴に肉やお菓子を食べる、急遽予算が増えた事で豪勢になった焼肉パーティーとして盛大に盛り上がったのだが……それはまた、別のお話。
という訳で新キャラの舞桜ちゃんでした
次章は新キャラ(舞桜)編ですかね
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!