第145話 『トーカ闇堕ち禁止令』
感想欄で頂いたアイディアを1部使用させて頂きました!
アイディアをくれた方、ありがとうございます!
「お?ってことはリーシャも取ったのか?」
「いんや、一瞬惹かれたけど私のプレイスタイルにはあんまり合わないかなぁって思ってパスしたよ」
「へぇ。じゃぁリーシャは何取ったんだ?」
「私?私はねぇ……」
リクルスの素朴な質問に、リーシャはわざとらしく言葉を切るとそんな必要も無いのにゴソゴソとポケットを漁り始める。
「てーれってれー」
そして、わざわざ自分で効果音を付けてポケットから引き抜いたリーシャの手には、暖かな赤と冷ややかな水色が混ざり合わずに混在しているような、なんとも不思議な色合いの宝石と、色の違う2つの指輪が置かれていた。
「正直プレイスタイル強化という面だと、超遠距離射撃が出来る『扇射ち』ってスキルだけで十分だったからね〜、ネタに走ってみたよ!」
そう言ってリーシャがそれぞれのアイテムについて解説をしてくれた。
まず、不思議な色合いの宝石は『虚数熱域』というアイテムで、その効果は『火属性の温度を反転させる』というもの。
氷属性という訳では無いが、これを装備していれば『凍る炎』というよく分からない、存在から矛盾しているような現象を引き起こせるらしい。
なんとなく、使うならリーシャよりもカレットの方が良さそうな気もするが、リーシャが言うに既に声をかけてフラれてしまったとの事。
私はド派手に煌々と燃え盛る火魔法が好きなのであって熱系統ならなんでもいい訳ではない、とか何とか。
アイツにもアイツなりの美学があるらしい。
それでも自分も火矢を使ったりするため、凍る炎とはなんぞやと興味を惹かれて交換したらしい。
「本人が乗り気じゃないから無理にとは言わないけど……いつかカレットにも使ってみて欲しいね」とリーシャは言っていた。
そっちが本命じゃないだろうな……?
そして、2つの指輪だが、片方は何の変哲もないシルバーリングで、もう片方は一切の光沢が無い、光を吸い込むような漆黒の指輪だった。
「宝石の方は分かったけど……これは?ペアリングって訳じゃないだろ?」
「ふっふっふっ……よくぞ聞いてくれた!」
聞いて欲しそうな顔をしていたので、改めて聞いてみると、嬉しそうな顔でノリノリで解説を始めた。
「これはねぇ、シルバーリングの方が『2Pカラーリング』で、黒い方が『闇堕ちカラーリング』っていうアクセサリーなのだよ」
「2Pカラーに闇堕ちカラー?」
「なんだそりゃ」
いや、2Pカラーも闇堕ちカラーもそれ自体の意味は分かるのだか、その名を冠したリングの効果が分からない。
何が2Pカラーで何が闇堕ちカラーなのか……黒い指輪の方は確かに闇堕ちカラーっぽくはあるが……まさかそれだけか?
「ちっちっちっ。そんな訳ないじゃない」
疑問が顔に出ていたのか、リーシャがわざとらしくウザったらしい雰囲気で人差し指を立てて指を振る。
おーう、うっざーい。
「このリングはどっちもほんのちょっとだけINTとMNDを上げてくれるけど……本命はステ上昇じゃないのよ」
「と言うと?」
「なんだ?2Pカラーとか闇堕ちカラーになれんっ゛!?」
何かを言いかけたリクルスの鳩尾をリーシャが目にも止まらぬ速さで殴り付ける。なるほど、これが拳で黙らせると言うやつか。
この反応は……リクルスの予想で当たりっぽいな。
「なんとこのリング……装備すると2Pカラーや闇堕ちカラーになれるのよ!」
「お、おぉ……!」
「おぉー!(やっぱりか……)」
言い切った!
リクルスの正解を無かった事にしてそのまま言い切ったぞ!
現実で喰らったら悶絶ものだろう鳩尾パンチも、ゲームの中じゃ痛くないはずだが、精神的に痛いのだろうか、鳩尾を抑えながら、リクルスが驚きの声を上げる。
当然俺も驚きの声を上げる。ノリって大事。
「例えばねぇ、2Pカラーリングを付けてみると……」
そう言ってリーシャが自身の右人差し指に2Pカラーリングをはめる。
そうすると、リーシャの亜麻色の髪は綺麗な茶髪に染まり、深緑色の瞳は赤紫へと変わっていく。
また、迷彩柄をイメージしていて、全体的にくすんだ緑系のカラーリングだった装備品の色も鮮やかなオレンジ色主体のカラーリングへと変化して行く。
「ふっふーん。どうよ?」
「おぉ……かなりガッツリ変わるんだな」
「あぁ、なんか新鮮な感じだな」
「でしょでしょ?んで、闇堕ちカラーの方は……元が白っぽいしトーカの方が分かりやすいかな?ってな訳で着けてみ着けてみ」
「うおっ」
そう言って、2Pカラーのリーシャが、言われてみれば禍々しい雰囲気を纏っているようにも見えなくもない漆黒の指輪を投げ渡してくる。
不意打ちのパスに多少慌てつつも、何とか指輪をキャッチしたトーカは、受け取った指輪をリーシャに習って右手人差し指に填め「あ、闇堕ちの方は左中指ね」……左手の中指に填める。
位置指定あるのかよ。しかも無駄にややこしいし……
と、そんなことを考えたのもつかの間、変化はすぐに現れた。
まるで色素が抜けたように真っ白だった髪が濁った黒に侵食され、鮮やかな紅色の瞳はより鮮やかに妖しげな光を帯びる。
メイが手塩にかけて作成した渾身の逸品である白銀に輝く衣は、禍々しい雰囲気を放つ漆黒へと染まり、白銀の生地を彩っていた紫紺の紋様はまるで血が乾いたような赤黒い痕へと変貌していた。
更に、忘れられがちだが戦闘時にトーカが装備している(つまり戦闘直後の今も装備している。さすがにずらしていはいるが)白い狐面も、口の辺りを重点的に、所々赤黒い染みを付けた黒い狐面へと姿を変えていた。
ならばと白銀ノ戦棍を取り出してみる。
これまでの例を見るに、さぞ赤黒い染みが大量についているだろうと思われた戦棍だが、逆に戦棍は混じりっけのない完全な漆黒を保っていた。
「うーん。どうだ?個々の変化は分けるけど全体像となるとお前らに聞いた方が早いだろうし、どんな感じになってる?」
「……ちょっと、さ。そのお面しっかり被ってみて」
闇堕ちカラーリングを填めたトーカがそう訪ねると、なんとか絞り出したようなトーンでお面を付けるように要求された。
なので、言われた通りにお面を着ける。
すると……
「うっわぁ……これ、ヤバい奴だ。絶対勝てないタイプの敵だ」
「分かる。絶対に手を出しちゃいけない系の裏ボス感半端ないわ……」
そう呟いて、リクルスとリーシャが恐れ戦くように1歩後退る。
そんな2人の反応に、ふと悪戯心が湧き上がってくる。
悪戯心に突き動かされるまま2人の方へ向かってゆっくりと1歩踏み込むと、ビクッ!と震えて素早い動きで2人は更に1歩後退る。
踏み込む。後退る。踏み込む。後退る。踏み込む。後退る。
「ストップストップストップ!やめてお願いしますほんとマジで!ゆっくり1歩ずつ近付いて来ないで!本気で死を感じてるから!」
2人の反応を見ているとなんか楽しくなってきて、ついそれを続けていると、軽く涙目になったリーシャが叫び、リクルスが物凄い速さで首を縦に振る。
……そんなにヤバいのか?
と、そんなに騒いでいれば同じ部屋にいる他の奴らが気付かないはずもなく、リーシャの叫び声に反応した他の3人が何事かと振り返り……
「んー?どうしたのだぁッ!?ななななななな何事!?何奴!?敵か!?敵なのか!?まだイベントは終わっていなかったのか!?」
「どうし……うきゅぅ……」
「んー?ん゛ん゛ッ!?」
三者三様の反応を見せる。
カレットは軽くパニックになりながらも即座に杖を抜き戦闘態勢に移り、メイは目を回して倒れ、リベットは目を見開いて驚愕している。
……どうやらかなりヤバいっぽいな。
心の中でそう呟くと、事態を収拾させる為にトーカは闇堕ちカラーリングを指から外し、元の姿へと戻るのだった。
この日以降、トーカの闇堕ちカラーリング装着は禁止される事になったのは、言うまでもないだろう。
ネタに走ると筆が走る走る
一応、予定では次にリアル回をやって、その次に掲示板回をやってこの章が終わりの予定です(予定は未定であって決定ではない)
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




