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第142話 『51.2×21365』

とりっくおあとりーと!(遅い)

 

 凶悪極まりない威力を孕んだリクルスの【天討】がカザキを捉え、カザキの身体が弾け飛ぶ。

 HPバーを確認するまでもない。カザキが即死した事は火を見るより明らかだろう。


 それでも、何があるか分からない。リクルスは警戒を解くことなく臨戦態勢を維持したままだったがーーー


『WINNER 【カグラ】!』


 勝利を告げるファンファーレと共にそんなウィンドウがデカデカと出現する。


『きまったぁぁぁぁぁぁっ!まさかまさかの大番狂わせ!決勝戦の勝者、つまりは今大会の優勝チームは【カグラ】だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


 ーーうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 ーーうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 エボ君がそう宣言すると共に、会場は歓声と悲鳴に包まれた。


 前者は純粋にダントツの優勝候補だった【クラウン】をほぼノーマークだった【カグラ】が下した……ジャイアントキリングを成し遂げた事への純粋な歓声。

 後者は安牌だからと【クラウン】に全額ベットしていた連中の叫びだろう。


 当事者にして決勝戦唯一の生き残りであるリクルスは、一瞬よく分からないと言ったように硬直していたが、すぐに実感が湧いてきたのか、嬉しそうに身体を震わせると、右腕を真上に突き上げる。

 俗に言う、ウィナーポーズと言うやつだ。


 ーーうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!


 そうすれば、会場に響く歓声はより一層強くなる。

 先程は悲鳴を上げていた者達も、開き直ったのかやけっぱちになったのか、盛大な歓声を上げていた。


 その後、最後に残ったリクルスが、見栄え重視の転移で光に包まれるようにして退場したのを確認すると、エボ君が観客席にいるプレイヤー達に語りかける。


『はいはーい、この後に掛け金の配当があるからねー、当てた人はうっはうは、外した人も使用分の1割は貰えるから、安心してね』


 エボ君が言い切ったのに合わせて妖精ちゃんが続ける。


『そしたらお待ちかねの景品交換タイムだよ〜!この後配られる配当コインで色んなアイテムやスキルブックが交換できちゃうよ〜!もちろんいい物になればなるほど値段は高くなるから……ね?』


 わざとらしい含み笑いで締める妖精ちゃん。

 そんな愛らしさとウザったらしさの入り交じった妖精ちゃんの様子に、会場は可愛い〜とニマニマする者やうぜぇ!と殺意の波動を放つ者などで溢れかえった。


『あっ、そうだ!個人間での配当コインの移動は出来ないからね〜間違っても誰かから無理矢理回収しようとはしないように!もちろんアイテムに変換した後の受け渡しでも簡単に足は付くから……やるなら相応の覚悟を決めてね?あっ、でもチーム間で共有して大きな買い物をするとかは出来るよ〜、まぁそれは参加者の特権ってやつだね』


 妖精ちゃんがそう注意を付け加える。

 そして、エボ君と妖精ちゃんが声をハモらせて宣言する。


『『それじゃあ!第2回イベント【《EBO》トーナメント大会】これにて閉幕!』』

『え?閉会式?正直みんな早く配当コインでお買い物したいでしょ?ってな訳でこれが閉会式って事で!最終的な順位とかは後で公式サイトに出すからね〜』


 とまぁ、妖精ちゃんがそんな事を付け加えて、適当な感じで行われた、なんとも締まらない閉会式をもって、第2回イベント【《EBO》トーナメント大会】は終わりを告げた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「〜〜〜〜〜〜ッ!優勝だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」」

「あはは……凄い盛り上がりだね」

「「「うぇぇぇぇぇぇぇあぇぇぇあぇぇぇ!」」」

「まぁ、仕方ないだろ。あの【クラウン】を下しての優勝だ。テンション上がるなって方が難しい」

「「「ヒャッハァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」」」

「にしてもはしゃぎすぎじゃないか?なんかもう狂喜ってよりただの狂乱になってるぞ」


 決勝戦終了後、控え室に戻って来た【カグラ】の面々は配当コイン配布までの間の時間を思い思いに過ごしていた。


「おいおいおいおいおいおい!トーカもメイもリベットもテンション低くねぇか!?」

「そうだぞ、そうだぞ!こんなめでたいのにバカ騒ぎのひとつもしないでどうする!」

「そうそう!ここにゃ私たちしかいないんだし、好きなだけ騒げばいいじゃない!」

「「「いや、まぁ……うん」」」


 一見するとリクルス、カレット、リーシャが盛大に騒ぎ、トーカ、メイ、リベットがテンションについていけず置いてかれているようにも見える。


 とまぁその解釈であながち間違いでもないのだが……


 より正確に言うならば、最後に控え室に戻って来た……つまりは最後まで生き残っていたリクルスがとてつもないハイテンションで帰って来て、カレットとリーシャはそれに張り合うように騒ぎ始め、他3人はあまりのハイテンションぶりに一瞬呆気に取られたままテンションを上げるタイミングを見失ってしまったのだ。


 もちろん狂乱していない3人も、優勝の実感を得て奇声のひとつも上げたいような喜びに満たされているのだが、それはそれとして周囲にそれ以上に狂乱している者がいる事で逆に冷静になってしまっている。

 感覚としては自分より慌ててる人を見ると逆に落ち着くアレに近いだろう。


 と言っても発露するタイミングを見失っているだけで3人もハイテンションはハイテンションなので、なにかきっかけがあれば爆発するだろうが。


「おっ!配当金の配布が来たぞ!」

「確か1位【カグラ】2位【クラウン】の倍率は50倍だったっけ?」

「いいえメイ!正確には51.2倍よ!私たちの総掛け金は21365枚!50倍と51.2倍には約2万5千の差があるわ!」

「まぁまぁ熱くなるなって。それよりも、早く確認しようぜ」

「まぁ待てリベット!ここはせーので見るんじゃなくて代表者による発表方式で行こう!なんかその方が盛り上がる!」

「おおっ!いいな!そんじゃトーカ!発表頼む!」

「いやなんで俺?ここはリーダーのお前じゃないのか?」


 配当金の配布に伴い、抑え気味だった3人のテンションも漏れ出てきたようだ。声こそ荒らげていないものの、溢れ出る興奮が声色に現れている。


「まぁ、いいや。んじゃ代表して先に失礼」


 実際の【カグラ】のリーダーはカレットなのだが、トーカの戦闘においての司令塔的な立ち位置や、カレットの猪突猛進と言うか行き当たりばったりな性格などによって、実質的なリーダーになっていたトーカに白羽の矢が立ったという訳だ。


 そんなトーカが先んじてチーム全体の配当金を確認するとそこには……


 ======================

【配当金額】

 51.2×21365=1,093,888


【優勝賞金】

 10000×6=60000


 ======================


 という数字が載っていた。


 掛け金も倍率も把握していたため、ある程度の予想はついていたが、実際にこう見せられるとやはり100万超というのはインパクトが大きい。


 というか、個人に1万コインずつ……つまりは、動きの確認の為に最高効率のボスに挑みまくっていた【カグラ】のイベント開始時の総獲得量の半分という、本来なら破格の金額のはずの優勝賞金が配当金の多さに飲まれてそこまで高く見えなくなっちまってるじゃねぇか……


「トーカ〜まだか〜?」


 と、少し固まってしまっていたらしい。

 待ちきれないと言った様子のリクルスに声をかけられて我に返ったトーカは「お、おう」と生返事をしてから、1度咳払いして仕切り直す。


「んじゃ大方予想はついてるだろうが……発表するぞ」

「「「いぇぇぇぇぇぇい!」」」

「い、いぇぇぇぇぇい?」

「無理にあの3人のテンションに合わせなくてもいいんだぞ?」


 いかにテンションが上がっていると言っても元々大人しい性格のメイにはリクルス、カレット、リーシャのハイテンショントリオのノリはついて行くには少しばかり過激過ぎるようだ。

 まぁ、それも、この3人が異常にハイテンションというだけなのだが。


「チーム全体としての総獲得量は……109万3888コインだ!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」

「ひゃくっ……!」

「ほぼ110万じゃねえか。とんでもねぇ大金だな。これ、割とガチで俺らが1番コイン持ってんじゃねぇか?」


 所詮開始前にしていた皮算用が現実の物となり、というか端数によってそれ以上の金額になった事でトーカの発表を聞いた5人は興奮を隠しきれないと言ったふうに「やべぇ……」とか「なんでも交換できちゃうよ……!」と騒いだり、あたふたしたりしている。


 だが待って欲しい。

 まだトーカのターンは終わっていない!


「まぁ待て。まだ終わっていないぞ」

「なっなにぃ!?まだ何かあると言うのか!」

「はい、いい反応をありがと。カレットのそういう所好きだぞ」

「っても掛け金×倍率の結果は出たんだからもう他になんもないべ?」

「おいおい、忘れたのかリクルス?俺たちは優勝したじゃないか。なら……当然貰えるよな?」

「「「……?」」」


 トーカの思わせぶりなセリフに、しかしハイテンショントリオはぽかんとした表情を浮かべている。あまりの配当金の多さに、それ以外の考えが全て吹っ飛んだようだ。


「……あっ!」

「あぁ、なるほど」


 逆に、メイとリベットは気付いたらしい。


「察してる人もいるだろうが……そう!優勝賞金だ!」

「「「なっ、なんだってーッ!?」」」

「やっぱり!」

「賞金か……いくらくらいなんだ?」

「1人1万コインだな。これも配当コインだ」


 賞品じゃなくて賞金なのは自由度の高い《EBO》だとプレイスタイルによって欲しい物が全く違うから個人で欲しいのを選べるようにという事だろうか。


「って事は賞金合わせて1人当たり19万2314コインか!1人約20万!」

「リクルスお前、本当にそういう計算早いよな……脳内に金勘定専用の電卓とか埋め込んでたりしない?」

「してねぇよ!」


 そんなトーカとリクルスのやり取りを経て、ようやく狂乱していた3人も落ち着きを取り戻したようだ。

 あるいは約20万という大金に呆気に取られているだけかもしれないが。


「んじゃここで交換しちまうか。さすがにずっと居座り続ければ追い出されるだろうが、まだ控え室にいてもいいみたいだしな」

「そうだな、それじゃあ交換タイムにしようか」

「「「「「おーっ!」」」」」


 そうして、配当金を分けて余った4枚は仁義なきじゃんけん大会でメイが総取りし、個人個人の景品交換タイムへと突入した。


「ふぅん……色々あるな」


 トーカが交換景品一覧のウィンドウをスクロールさせながら呟く。

 安い物は1コインから、高いものならそれこそどこまでも高価になって行く。

 それほどまでに交換出来る景品は多く、石ころや水など、とこでも採取出来るようなアイテムもあれば特殊な効果を持ったアクセサリーなど、選択肢は多岐にわたる。


「っと、これで最後か」


 長かった景品一覧のスクロールも終わりを迎えたようだ。

 記念すべき最後の景品……つまりは今大会最高額の交換可能景品は……


 ========================


  【島】 1,000,000コイン


 ========================




 …………………………………………………………島?


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 個人、ペア部門:参加者0人だからトーナメント戦ないよ(´・ω・`) 流石に話の流れ的にトーナメント同時進行じゃなさそう...
[気になる点] 108話の時にチームリーダーは鼓舞の都合上トーカと言ってなかったっけ?
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