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第141話 『VS【クラウン】⑭ 決着』

長らくお待たせしましたッ!!

ちょっとリアルが死ぬ程忙しかったのと、プロット的にカザキくんはゴーレムパンチで死ぬはずだったのに作者も知らない隠し技で生き残ってしまったのでそこら辺練り直してたりと色々あって遅れてしまいました……

 

 リクルスの右腕が吹き飛ぶ。


 正体不明の謎の攻撃によって吹き飛ばされた右腕は、深紅のエフェクトを撒き散らしながらくるくると宙を舞い、次第に光の粒となって溶け消えて行く。


「これは……糸か!やってくれたな、てめぇ……!」

「……まぁ、そう上手くは行かねぇか」


 《EBO》の細かさというべきか、ご丁寧にリクルスの右腕を吹き飛ばした時に付着した深紅のエフェクトが謎の攻撃の正体を暴いてくれた。


 その正体は、そこにあると知っていて、それでもなお目を凝らして見なければ気付かない程に細い、それでいて信じられないくらいに高い硬度を持った、透明な糸。


 それを、リクルスが拳を振るうタイミングに合わせて進行方向に滑り込ませ、リクルス自身の勢いを利用して右腕を切り飛ばしたのだ。


 糸や針といった、本来武器では無い物を武器……より正確には暗器として扱うスキルである『暗器術』。


 それが、カザキの切り札だった。


 あらゆる隠密系能力と『殺業』を合わせた、認識外からの即死攻撃。

 カザキは当然それも得意としているし、なんならメインと言っても過言では無いが……中にはそれが通じない相手というものも存在する。


 今回のリクルスがいい例だろう。

 そんな敵を相手にする時の為に、ひっそりと鍛え続けて来た、仲間である【クラウン】のメンバーですら全容を把握していない真の奥の手。


 カザキは手首の動きだけで糸に付着した深紅のエフェクトを振り払うと、再び不可視に戻った糸を振るいリクルスを刻みにかかる。

 1度手の内を見せた以上、もう不意打ちは通じない。だったら、こちらから攻勢をかけた方がいい。と、そんな考えなのだろう。


「くっそ、やりにくい……!」


 そして、それは正しい判断だったと言える。

 1度右腕を切り飛ばした成果に縋って不意打ちのための待機を続ければ、そのうちリクルスの目は不可視の糸に慣れ、糸の位置を正確に捉え始めるだろう。


 逆に、今攻勢に出られると、まだ目は糸に慣れ切っていないためその存在を捉えにくい。

 如何にその存在を知ったとしても、そもそも高速かつ不規則に動き回る細い糸を視認するなど至難の技だ。その上、その糸は透明と来た。


 いくらステータスが強化されているとはいえ、動体視力などの感覚器系の能力は元のままだ。そんな簡単に認識できるものでない。


「…………フッ!」


 相当鍛えていたのだろう。

 扱いにくいはずの糸を、カザキはまるで自分の手足のように自由自在に操ってみせる。

 相当な訓練の跡が伺える、熟練の手際で振るわれる高速かつ不規則な透明の糸に、リクルスは面白いように翻弄され、思う様に攻撃を加えられずにいた。


「クッソがぁ!」

「ふん。吠えてもどうにもなんねぇよ」


 リクルスは、僅かな反射すら見逃さないように全神経を集中させてカザキの振るう糸を凌いでいく。


 いくら超硬度の糸と言えど、さすがにリクルスの籠手までも切り裂く事は出来ないようで、籠手ならばその攻撃を何とか防げはするものの、それだけだ。


 カザキは『隠密』を駆使して動きや気配に緩急を付ける事でリクルスの動きを撹乱し、リクルスの目が糸に慣れないように上手く立ち回っている。

 カザキにしてみても、この糸が見切られたら詰みだ。早く勝負を終わらせたいのはカザキも同じだろう。


 リクルスの目が慣れるのが先か、リクルスが刻まれるのが先か。


 お互いにチーム最後の生き残りとして、1歩も引かない究極の意地の張り合いとなっていた。


「腕1本無いのがものっそい辛れぇ……!」


 となると、不利なのはリクルスの方か。

 タダでさえ神経擦り減らす防御側な上に、相手の攻撃はほぼ不可視と来た。縦横無尽に襲い来る不可視の斬撃を、左腕1本で防ぎ切る。


 それは、如何に『体術』主体でずっと戦ってきた軽戦士であるリクルスにしても、いつミスしてもおかしくない程の鬼畜仕様である。


「くっそ……マジどうする……?トーカのアホみてぇな攻撃力があるっても当てらんなきゃそもそも話になんねぇし……!」


 リクルスは誰にともなく呟く。

 それは、間違ってもその言葉に返事など求めていないし、それどころか自分が呟いたことすら気付いていない、無意識の呟きだった。


『ったく。お前は俺をなんだと思ってんだよ……神官だぞ?完璧に使いこなせとは言わねぇけどよ、もうちょっと上手く使えよ。さっきだって俺が事前に【プロテクション】をかけて無かったら死んでただろ』


 だが、そのつぶやきに返事があった。


「ッ!?トーカ!?」


 予想外の返事にリクルスは驚愕の表情を浮かべ、『縮地』を使ってカザキから距離を取るとキョロキョロと周囲を見渡す。

 この時も常に視界からカザキを外さないようにしているのは流石と言うべきか。しかし、周囲にはリクルスとカザキ以外には誰もいない。


「どういう……ってあぁ、そういうことか」


 間違いなく死んだはずのトーカの言葉が聞こえ、困惑していたリクルスだが、すぐに自己解決したらしい。


 トーカから事前に、【サクリファイス】を使用した場合こういう事があると伝えられていたのだ。

 これは、【サクリファイス】に内包されている効果で【生贄】となった者がその戦闘中に1度だけ、【依代】となった者に声を届けられる『死者の助言(ウィスパーボイス)』という能力である。


 それによって、トーカの火力だけに目がいって神官としての能力を完全に忘れているリクルスにトーカがそれを思い出させる為に語りかけたのだ。


「ったく。急に話しかけて来んなよ……ビビるだろうが」


 そうぼやきながらリクルスが左肩を回して1度解すと、ため息をつきながら魔法を発動させる。


「そうだよな……そういやお前神官だったわ。【リペア】」


 もう既にトーカからの返事は無いが、何となく『やっと思い出したか……』と呆れたように呟くトーカの姿が容易に想像出来て、少しおかしくなって軽く笑ってしまう。


 魔法を発動すれば、カザキに吹き飛ばされたはずの右腕がみるみる再生していく。これは、トーカのステータスを統合した事でリクルスも使用可能になった『回復魔法』のひとつで、部位欠損を回復する魔法だ。


「チッ……自己再生する高機動力高火力の人型のバケモンとか……ゲームバランスどこ行きやがった」

「おいおい、人をバケモン扱いしてんじゃねぇよ。自己再生も高火力もトーカの能力だ。俺はまともだよ」

「ハッ、どうだか」


 お互いにナチュラルにトーカをバケモン扱いしているリクルスとカザキが、再び向き合う。


「あぁ、そういやこんなのもあったな。【バフセット:リクルス・ソロ】」


 それを発動した瞬間、かつてない上昇率でステータスが跳ね上がるのを感じる。


 これは、事前にトーカが【バフセット】に登録していたセットのうちの一つ。【サクリファイス】を使用した場合に使う用にカスタムしていた超高密度のバフの塊。


 それは、トーカ1人ではMPの関係上使えず、誰かと【サクリファイス】でステータス統合して初めて使えるようになる程のハイレベルなバフをふんだんに盛り込んだセットであり、【サクリファイス】時の切り札になりうる一手だ。


 アッシュ戦では使う余裕も無く、またカザキの不意打ちによって普段使わない補助系の能力の事をすっかり意識の外に追いやっていたリクルスは、その切り札をようやく切る事が出来た。


「さぁ、これで打ち止めだ。後は……お前を殺すだけってな!」

「抜かせ、死ぬのはテメェだ」


 キュリィンッ!


 カザキの振るう不可視の糸を、リクルスの拳が弾く。

 別段、先程のバフによって視力が強化されたという訳では無いが、プラシーボ効果とでも言うのか、かつて無い程のステータスを手に入れ、肉体的にも精神的にも絶好調なリクルスは死などと言った危険に敏感になっていた。


 有り体に言えば勘が冴えていると言うやつだ。即死さえしなれば、部位欠損は【リペア】で治せると知ったリクルスは思い切りも良くなり、結果としてカザキの振るう不可視の糸に反応する事が出来たのである。


 当然、勘だけで全ての攻撃を弾けるほど相手も甘くは無いが……それでも、ある程度は応戦出来るようになっている。


「……そこだッ!」

「チッ、反応し始めやがったか……!」


 となれば当然、不利なのはカザキの方だ。

 なにせ、自分より数段上のステータスを持つリクルスを相手にするにはそれこそ不可視の斬撃のような仕掛けが必要になる。


 それでも、諦める気はさらさらないとでも言わんばかりに糸による縦横無尽に振るわれる斬撃は激しさを増していく。


 しかしーーーー


 「シャオラァッ!【揺鳴震波(ようめいしんぱ)】ッ!」


 地面にヒビを入れる程に強く踏み込むと、まるで倒れ込むかのように、急激に姿勢を低く落としたリクルスが、勢いもそのままに地面を殴り付ける。


 瞬間。


 比喩でもなんでもなく、地震が起こった。


 リクルスが今放った【揺鳴震波】は、『体術Lv.10』かつ『棍術Lv.10』かつ最終的なSTRが2000を超える場合のみ、打撃武器装備時に使用可能になる、打撃点を震源として地震を引き起こすという、打撃系武器の奥義とも言うべき技である。


 この【揺鳴震波】は、【グラビトンウェーブ】によく似た、「震源を決める一撃の威力によってその後引き起こされる地震の震度や規模が変わる」という性質を持っている。


 地震そのものに直接的な攻撃力は無いが、規模によって転倒やスタン、目眩や恐怖状態など、様々な状態異常を広範囲かつ無差別に引き起こし、また範囲内の破壊可能オブジェクトにもかなりのダメージを与えるという、まさに災害規模の威力の一撃である。


 また、余談ではあるが、地震と表現したように、今回の場合だと相手が空中にいるなどで地面と直接的間接的問わず接していない場合はまるで効果は無い。

 ただし、【インパクトシェル】の要領で大気や水中をも起点に出来るため応用範囲は広い。

 しかも、これで相手を直接殴り付ければ、その相手そのものを震源として全てのエネルギーを叩き付ける最凶最悪の直接攻撃とする事すら可能である。


 システム的にエリア分けされている為、観客席には被害は無いが、それでも揺れは伝播する。

 地震という災害規模の現象すら引き起こして見せた激しい戦闘に、観客のテンションも天井知らずに跳ね上がって行った。


 「これで決めるッ!【アクセプト】ッ!かぁらぁのぉ!【天討】ッ!」

 「ッ……!」


 【アクセプト】でCTを受け持つ事で短時間での再使用が可能になったリクルス最強の一撃。

 トーカのステータスを統合した事で更に凶悪度が跳ね上がった、まさに天すら討ち取る至上の一撃がカザキの胴体に突き刺さり……


 パンパンに空気を入れた風船に針を突き刺した時のような、とんでもない勢いで、カザキの身体が弾け飛んだ。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


感想などを貰えると、作者が泣いて喜びます


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 10秒あれば余裕で最大グラビトンウェーブ出来ると思うんだけど、そんなゆっくり跳躍するのかな? 苦戦したのは自分の持ってる能力を把握してないからだった気がしてならない [一言] 圧倒的…
[一言] はーーーーーーーっ!!!カグラとクラウンまじかっけええええええええ!!!作者さんすげーーー!!えぇ、もう愛読させていただいてます!!次話更新までにかっこいいとこ読み直そうって思ってこのページ…
2020/06/07 08:22 退会済み
管理
[気になる点] 抜粋  「これで決めるッ!【アクセプト】ッ!かぁらぁのぉ!【天討】ッ!」  「ッ……!」  【アクセプト】でCTを受け持つ事で短時間での再使用が可能になったリクルス最強の一撃。 誰…
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