第140話 『VS【クラウン】⑬』
台風凄かったみたいですね
作者はこの三連休風邪で寝込んでたので(おかげで執筆がほとんど進んでません……感想返しだけは何とかやりましたが)ほぼ実感はありませんでしたが……避難警報はガンガンなってましたが、住んでる場所がよかったのかどれも範囲外でしたし
「……ふぅ」
アッシュを下したリクルスは、大きく息を吐くと辺りをゆっくりと見渡す。
しかし、その視界内には誰の姿も映らず、絶えず激しい戦闘音が鳴り響き、あれだけ騒がしかった闘技場内はしんと静まり返っている。
「残ったのは俺だけ、か」
リベット、メイ、リーシャ、カレット、そして……トーカ。
誰も彼もが死力を尽くして戦い、その果てに散って逝った仲間を思う。
と、そこで違和感に気付く。
普段なら勝敗が決したら……つまりはどちらか片方のチームメンバーが全滅したら、すぐにエボ君と妖精ちゃんが勝ち名乗りを上げるはずなのに。
まだ、それがない。
ということは、まだ試合は終わっていなーーー
「っぅ!?……クソがッ!」
と、リクルスがそこまで考えた所で、リクルスの影からぬるりと現れたソレが、無音で寸分違わずリクルスの心臓を穿つ。
咄嗟のことに一瞬反応が遅れたものの、リクルスも負けじと振り向きざまに裏拳を放つ……が、その一瞬のせいで容易く避けられてしまう。
影から現れたソレが距離を取ったことで、ようやくその姿をおがむことが出来た。
「おま、えは……」
その正体は……
「なんだよ、その面は。デカブツに不意打ちでぶん殴られた俺が生きてんのがそんなに不思議か?」
メイを殺し、条件を満たしたことによって出現したメタルゴーレムのお礼参りパンチによって死んだはずの、カザキだった。
◇◇◇◇
『擬死』というスキルがある。
それは、言ってしまえば高レベルの死んだフリなのだが、こう言った周囲確認が疎かになりやすい状況ではこのスキルは最高以上の効果を発揮する。
メタルゴーレムに殴り飛ばされたカザキは、その瞬間に『空蝉』を使いその一撃を無効化すると、吹き飛ばされた先で『擬死』を発動。
その効果によってカザキの身体は一時的に光の粒となって解け消える。『擬死』というスキルは『スキルレベル』分間死んだフリを継続できる。
リクルスやネルと違って軽戦士特有の身軽さを活かしての不意打ちなどを得意とする、どちらかと言うとフィローのような忍者ないし暗殺者タイプの軽戦士であるカザキは、当然このスキルのスキルレベルをMAXの10まで上げている。
そのため、『擬死』によって10分間の死んだフリが可能になっているのだ。
また、本来『擬死』の使用中は発動地点からの移動は出来ないのだが、スキルレベルが10になると移動が可能になる。
この効果を使い、発動地点から任意の地点へと移動し、最高のタイミングで不意打ちの即死技を叩き込む。
これが、カザキの得意戦法である。
事実、この戦法を使って彼は既に、カレットを始末している。
そう、ショウキョウに勝利し、仲間の救援に向かおうとしたカレットを襲った謎の人影、それこそが、カザキだったのだ。
カレットを始末した後、そのまま戦線復帰はせずに息を潜め続け、リクルスがアッシュと戦闘をしている最中……具体的にはトーカが【サクリファイス】を使う直前の、選手観客含め全員の意識がトーカに向いている瞬間に『隠密』を駆使しリクルスの背後までたどり着くと、『隠密』の派生スキルのひとつである『潜影』を使用し、リクルスの影に隠れたのだ。
そして、アッシュとの戦闘が終わり、リクルスが勝利を確信し油断した一瞬の隙をついて心臓に一撃を叩き込んだ。
また、この時使用した【核穿】という『暗殺術』のアーツは、心臓(あるいはその生物の核となる部分)にこの攻撃を食らわせることで、一定確率で即死させられるというものだ。
このアーツと『殺業』、そして彼の装備している即死確率上昇系の装備の組み合わせによって、この一撃による即死率は8割近くになっている。
ーーーーのだが。
「あっぶねぇ……トーカの力が無かったらここで死んでたな」
リクルスは生きている。
たとえ即死しなくても心臓への一撃はかなりのダメージになるはずだが、それも無いとすると恐らく【プロテクション】で防がれたのだろう。
「見た事も無い能力だが……あの神官の力をほぼ引き継いでるっぽいな。【サクリファイス】という名称からしても、自死を発動条件に仲間に自身のステータスを分け与えるとかそういった所か?」
カザキが立てた予想は、完璧とは言えないものの未知の能力であるはずの【サクリファイス】の特徴をほとんど言い当てていた。
バレたからと言ってどうと言う訳でも無いが、だからこそ馬鹿正直に訂正してやる必要も無い。
「へっ、ペラペラこっちの手の内話す訳ねぇだ……ろッ!」
リクルスは鼻で笑うと、カザキ目掛けて急加速し、拳を振り抜く。
ヒュンッ!という、拳が出すにしては鋭過ぎる音を鳴らしてその拳は空を切る。
そう、空を切る。
カザキはリクルスの放つ致死の一撃を、紙一重で回避している。
たとえどんなに強大な破壊力を誇ろうと、当たらなければ全て無駄である。それは、当たらなければノーダメージを信条としているリクルスだからこそよく理解している。
そのまま2度3度と拳を振るうが、カザキは全て紙一重で交わしてしまう。
トーカのステータスを統合した事で全体的に強化されたリクルスだが、それでも速度だけ見ればカザキの方が上らしい。
「チッ、ちょこまかと避けやがって」
「バケモン級2人分のステータスを持った奴と真正面から殺り合えると思う程自惚れちゃいないさ」
その宣言通り、カザキは一向に仕掛けてくる気配がない。
ただひたすらにリクルスの攻撃を避けて避けて避け続ける。
反撃の隙を伺っているのか、何か罠でもしかけているのか、はたまた【サクリファイス】の効果切れを狙っているのか。
残念ながら【サクリファイス】は1度発動すればその戦闘中永続なので、最後に関しては待つだけ無駄だと言わざるを得ないが……
軽戦士として素早い一撃と無数の手数で敵を殴り殺し続けてきたリクルスの猛攻を回避し続けるカザキの目は、まだ死んでいない。
神経を擦り減らすような紙一重の回避をし続け、連撃の切れ目はしっかりと一撃を叩き込む。
当然その一撃はリクルスの身体を捉える事はなく、しっかりと防がれてしまうのだが、だからこそカザキもリクルスも負ける気はサラサラない事が分かる。
殴る、避ける、殴る、避ける。
事態は、この決勝戦を通して何度目かの膠着を見せていた。
ギリギリまで水を注いだコップに1滴ずつ水滴をような、ほんの些細な切っ掛けで全てが終わりかねない極限の綱渡りのような状態が続く。
先に仕掛けたのはーーーカザキだ。
あるいは、満を持してと言うべきか。
キラリ。
リクルスがソレに気付けたのは偶然だったか必然だったか。
極限状態で研ぎ澄まされた神経か、あるいは本能か、とにかくリクルスは何も無いはずの空間に浮ぶ、小さな兆候を見逃さなかった。
リクルスは慌てて身体を捻りーーー
その直後。リクルスの右腕が吹き飛んだ。
終わったと思った?
残念!カザキ君でした!
という訳で、もうちっとだけ、続くんじゃ。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
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