第138話 『VS【クラウン】⑪ リクルスVSアッシュ 中編』
お待たせしますた
スマホの登録変更でしばらくネットが使えない環境にいたもので、遅れる旨のお知らせすら出来ず……
本当に申し訳ない
「あ゛ぁ゛ッ!【空蝉】ッ!」
胴体にめり込む致死の一撃。
それを無かったことにする。
これまでも何度もリクルスの命を繋ぎ、勝利を手繰り寄せてきたこの【空蝉】。
1戦につき1度だけ、あらゆる攻撃を無効化出来る、シンプル故に強力な能力だ。
リクルスの胴体を泣き別れさせた大剣の一撃も、それによって消し飛ぶはずだったリクルスのHPも、全てが無かったことになる。
そうすれば、目の前にいるのは武器を振り切った体勢で、胴体ががら空きな敵の姿があるだけ。
「いまだァァッ!【天討】ッ!」
そのがら空きな胴体目掛けて、リクルスは己が使える最強の一撃を叩き込む。
それは、純粋なアーツだけの威力ならば、トーカの切り札たる【リトルメテオ】と同等の威力を誇る、致死の一撃。
「ッ!オラァッ!」
しかし、さすがはβ最強。
腕力に物を言わせて無理矢理に大剣を引き戻すと、リクルスの拳と己の胴体の間にギリギリで差し込み、その一撃を大剣の腹で受ける。
だが、当然その程度ではリクルス渾身の一撃は止まらない。
【天討】を受けた大剣は盛大な音を立てて砕け散り、直撃こそしなかったものの、その衝撃波はアッシュのHPを少なくない量削り取った。
「武器が無きゃぁいくら兄貴と言えどお終いだな!」
武器を失ったアッシュに、ここぞとばかりにより一層過激に連撃を叩き込む。【乱牙】の効果もまだ切れていないので、もはや気軽に振るわれるただの拳すら必殺の一撃と言うべきモノになっている。
「あっはっはっはっは!あんまり見くびってくれるなよリクルス!武器がアレだけな訳ねぇだろぉ!?【チェンジNO.0】!」
そんな一撃必殺の乱打を紙一重で回避し続けるアッシュが使ったのは、リクルスもよくお世話になる『早着替え』だ。
その効果によって、一瞬でアッシュの装備が切り替わる。
根元から砕け散りもはや柄しか無くなっていた大剣の残骸から、先程まで使っていた大剣よりも明らかに質のいい大剣へと入れ替わる。
これが本来の彼のメイン武器なのだと、ひと目でわかるような、そんな威圧感を纏った、圧倒的業物。
しかも、大剣の種類にろくすっぽ詳しくないリクルスでも、大剣の中でもかなり大きい部類だと推測出来る程に、その大剣は大きかった。
大剣という枠組みにある事を前提に見ても、なお言葉を失う程に大きな、そんな、巨大な大剣ーーー
「はっ?ちょ、えっ?……はぁ!?なんだそれ!?おかしいって!それは明らかにおかしいって!」
「んだよ、見りゃ分かんだろ。さっきまで伏線は出してやってたろ?」
「いやいやいやいやいやいや!にしてもそれはおかしい!なんだよ大剣二刀流って!」
ーーーそれが、二振り。
常人ならひとつ持つのでも精一杯だろうその超巨大な大剣を、まるで棒切れか何かのように軽々と片手に1本ずつ構える。
そんな冗談みたいな最強の姿がそこにはあった。
「んじゃ改めて。双大剣。これが俺の本気だ。リクルス、すぐに死んでくれるなよ?」
「ちょっ……!」
瞬間、爆ぜる。
一瞬前までリクルスがいた場所を通り抜けた大剣が地面に当たり、次の瞬間には地面が、冗談みたいに吹き飛んでいく。
一振につき1発。
爆弾でも爆発したように、散乱した羽毛に息を吹きかけたように、一瞬前まで地面だった土塊が宙を舞う。
武器を持ち替えただけ。
ただそれだけの事で、完全に流れが傾いた。
反撃に出る余裕などある訳が無い。
こんなの、カスっただけでも即死だ。
リクルスには、全神経を集中させて回避に徹する以外に出来ることはもはや何も無かった。
避ける避ける避ける。
ただひたすらに避け続ける。
アッシュが振るう双大剣は、地面を砕き空を裂き、小回りの効かないだろう大剣を、しかしアッシュは器用に振り回し、リクルスの命を狙い続ける。
【乱牙】の効果を切らさないためにも、大剣の側面を叩いて軌道を逸らすこともあるが、それだけの事をする度にあまりの重さにビリビリと腕が痺れる。
真っ向から立ち向かった訳でも、無理な軌道変更をさせようとした訳でもなく、ただ少し軌道をズラすだけでもこの重さ。
しかもその連撃の波は止まる気配を見せない。
めちゃくちゃに豪快に振り回しているように見えて、その実計算され尽くした繊細な剣技。
僅かにも反撃の機会を与えない、嵐を凝縮したような乱舞は、否応無くリクルスに死のヴィジョンを押し付ける。
(あークッソ。ダメだこれ。凌ぐだけで精一杯、反撃とかしようとした瞬間ミンチ一直線だろ……)
避けて避けて避けて、逸らして避けて。
闘技場の広さを利用して、付かず離れずの距離を維持して避け続ける。近付き過ぎてミンチなんて論外だが、離れ過ぎて【乱牙】を切らしてしまってはいざと言う時にアッシュの一撃を逸らすことすら出来なくなってしまう。
他に注意を配る余裕などない。ただアッシュの振るう大剣だけに全神経を集中させてーーー
「あっ……」
ーーーアッシュの大剣が抉った地面に足を取られ、リクルスは転倒してしまう。
やらかした。
そう、瞬間的に理解した。
ほんの一瞬、油断という程でも無い。
目の前に迫る、1発1発が即死級の大剣乱舞という大きな危険に気を取られ、小さな危険を見逃しただけの事。
しかし、ここは戦場であり、甘えは許されない。
ただそれだけの事でも、均衡は崩れ、勝負は決まる。
「っそがァ!」
もちろんリクルスも無様にコケただけではない。
完全に知覚外のトラブルだっただろうに、後転の要領でしっかりと受け身をとり、一瞬の後にはもう既に立ち上がり始めていて。
「あぁ……」
迫り来る死を見た。
目の前で振るわれるは二振りの巨大な大剣。
腕をクロスさせ、まるで居合のように二振り同時に引き抜かれ振るわれたその一撃は、巨大な鋏に見えた事だろう。
リクルスとて、この世界では最高クラス猛者である。
故に分かってしまう。
この一撃は避けられないと。
自分はここで死ぬと。
本能で死を理解し、死を受け入れ生を諦め、それでも最期まで足掻いてみせる、決して目を逸らしてなるものかと、間に合わないと知りながらも必死に身体を動かし、死神の鎌ならぬ死神の鋏を睨み付ける。
「諦めんなバカが!」
と、そんな声と共に、後ろに引っ張られる感覚がリクルスを襲う。
直後、リクルスの身体は既に後方へと投げ飛ばされていて、そこで見た。
一瞬前まで自分がいた場所に、別の人物が立っていることを。
それは、見間違えようもないリクルスの幼馴染。
EBOが誇る最堅のタンクたるドウランと戦い、彼の【悪足掻き】、自爆に巻き込まれてしまったはずのトーカの姿が、そこにはあった。
後ろ手に物を放り投げたようなトーカの体勢に、ようやく自分がトーカに投げ飛ばされていている事を理解したリクルスは、しかしそれ故に新たに浮かんだ疑問を飲み飲まず、そのまま吐き出してしまう。
「っ……!何やってんだよトーカ!んな事したらお前が!」
「お前しかアッシュに勝てる奴がいねぇんだよ。お前が戦え」
余程焦っていたのだろう。投げ飛ばしたリクルスの方を見ることも無く、いつもより厳しめの口調と一切余裕の無い声でトーカはそう言い捨てる。
しかし、トーカのこの言葉は紛れもない事実である。
というより、アッシュが双大剣を取り出した時点で既に【カグラ】の中でアッシュにタイマンで勝てる可能性があるメンバーはリクルスしかいなくなっていたのだ。
アッシュが大剣1本のままならトーカでも勝つことは不可能ではなかっただろうが、2本になってしまっては手数で押し負けてしまう。
いくら馬火力モンスターのトーカと言えど、アッシュレベルの一撃となるとそうポンポン弾けるものでは無い。
トーカの武器はひとつしか無いので、1本の大剣を相手にしている間にもう片方の大剣で斬り飛ばされて終わりだろう。
しかし、リクルスは手数が多くあらゆるバフによってその一撃一撃が、どうにかアッシュの攻撃をいなせる程には強化されている。
これによって、なんとかアッシュと真正面から打ち合えるようになっているリクルスだけが、双大剣の猛撃を切り抜けてアッシュ本人に一撃を叩き込む可能性を残している唯一の存在なのだ。
「っ……!」
「【サクリファイス】」
それでもなお、何かを言おうとするリクルスに先んじて、トーカが魔法を発動する。
直後、アッシュの振るう双大剣がトーカの身体を引き裂いた。
筆が乗ると当初の予定からがんがんズレていく謎現象。いや、書いてる方は楽しいんですけどね?
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




