第14話 妖精ちゃんがやり過ぎな件
総合PVが200000突破!加えて日間、週間ランキング共に1位をいただきました!読んでくれる皆様、本当にありがとうございます!
またアイディアをくれた方々もありがとうございます!目に見える所だけとは限りませんが積極的に取り入れさせて貰います!
20200815
リーリアの描写を変更
髪色を金から黄色に、瞳を翡翠色から緑に
亀甲棍を構えたトーカが金髪テスターに向かって駆け出す、自分はβテスターだと驕りトーカを舐め腐っていた金髪テスターは全く反応が出来ていなかった。
「なっ!?」
「反応位出来ると思ったんだけどな。喰らえ【スタンショット】」
今出来るあらゆる強化を掛けたスタンショットを打ち込む、一撃粉砕やその他強化の補正が掛かった一撃が金髪(ryに叩き込まれ悶絶する。更にスタンショットの効果により追い打ちのスタンが金髪に課せられる。
「がはっ!」
一瞬のスタンの合間を縫って金髪の後ろに回り込む。一撃喰らった衝撃とスタンによって俺の動きに気を配る余裕が無かったらしく発動した隠密の効果も相まって完全に俺を見失ったようだ。
「クソッ!ってアイツどこ行きやがっ」
「後ろだバカ野郎【インパクトショット】!」
「なっ!?うし……ガッ!?」
俺を見失った金髪の頭部に全身全霊の【インパクトショット】をお見舞いする、しかも今回はアーツに体の動きを丸投げせずに自分で体を動かしブーストを掛けてみた、初めての試みだったが無事成功したようだ、まぁこれで威力がどうなるのかは分からないが。
頭部と言う人間共通の弱点への攻撃に加えしっかりと発動した外道、不意打ちにより通常の6倍の威力の【インパクトショット】が炸裂する。
なんかもう普通に外道が発動する様な攻撃をする様になって少し落ち込みそうになるな……
ちなみにだが《EBO》では実際に攻撃を受けたら危険な場所、例えば頭部や喉などの人体の急所に受けるダメージは多くなる仕様になっている、流石に短剣で喉を掻き切ればどんなプレイヤーでも死ぬかと言われれば流石に即死はしないがそれでも相当大きなダメージに加え出血や詠唱不可などの色々なデバフが掛かるといった具合に急所狙いはダメージが高くなる。そして今回は頭部攻撃なのでダメージが1.5倍になっている。
「今回はたまたま上手くいったけどアーツに合わせて動くのは要練習だな。さて、あの金髪はっと」
殴り飛ばした金髪の方を見れば流石と言うべきか腐ってもβテスターと言うべきか、豪語するだけはあってHPがまだ1.5割ほど残っていた、そんな金髪は血走った目でこちらを睨みつけてきていた。
「クソがァァ!不意打ちで攻撃決まったからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「なんかもういっそ哀れに思えてきたぞ……」
「何ブツブツ言ってんだクソ野郎が!ぶっ殺してやる!」
金髪は怒りのあまり顔を鬼の形相に変えて走り寄ってくる、そして距離が半分ほど詰まると剣を振りかぶる。
「絶対に殺すッ!【ソードライン】!」
【ソードライン】って確か剣術Lv.2で使えるようになる突進系のアーツだったか?
振りかぶった剣を前に思いっきり突き出すと同時に金髪の身体が加速する、アーツによるシステムアシストにより残り半分ほどあった距離が一気に詰められる。
「なっ!?」
「今更後悔しても遅せぇんだよ!」
俺が上げた驚愕の声に更に金髪が調子付く、しかしそんな金髪の声も俺には届いてはいなかった。
(これがβテスターの攻撃……?遅すぎないか?)
彼の名誉……は守る必要は無いがまだ見ぬ他のβテスターのために言っておくと金髪の動きは遅くは無い、と言うよりプレイヤーの中では上位に入るだろう、ただしルガンと戦った直後のトーカに取っては余りにも遅すぎた。
本来ならルガンはレベル10そこそこのプレイヤーが勝てる様な相手では無いはずだった、たまたま称号効果やスキルなど色々な要因が重なり本当に運良く勝てたに過ぎない。
そんなルガンの近距離攻撃の速度に必死で食らいついていたトーカだからこその反応なだけだ。
「死ねぇぇ!」
「ほいっと、そしてくたばれ【ハイスマッシュ】!」
そんなこんなで突進してくる金髪の攻撃を難無く避けたトーカはアーツが切れた直後で反応できない金髪の顔面に思いっきり亀甲棍を叩き込む、使ったアーツは【ハイスマッシュ】そのまま【スマッシュ】の強化版だ。ちなみに【インパクトショット】と【スタンショット】は絶賛CT中で使えない、CTはそのままの意味でアーツや魔法の再使用可能までの時間のことで強い攻撃程CTは長くなる。
「ぐはっ!」
2度目の顔面アタックを喰らった金髪の残り1.5割ほどだったHPが余さず消し飛ぶ、どうやら決闘ではHPがカラになっても爆散はしないらしい。
決闘が終了してすぐに決闘用フィールドから元の噴水広場に転移した。勝利の余韻に浸る時間は無いのか、別に要らないけど。
俺は早速、目の前で倒れている金髪に声をかける。
「決闘は俺の勝ちのようだな。さぁ全財産寄越せ」
「ふざけんな!βテスターの俺様がこんな奴に負ける訳がねぇ!どうせズルしたんだろ!こんなの無効だ!」
勝者の権利に従い全財産を要求すると金髪が喚き出した。
「いやお前がっつり負けたからな?現実見ろよ」
「ふざけんな!こんなん無効だって言ってんだろ!」
「あのなぁ、いい加減にしろよ」
「いい加減にすんのはテメェだろ!運営にチーターだって言いつけてやる!」
いや、チーターじゃねぇし。そもそもそんな簡単にチートなんて出来るもんじゃねぇだろ。でも運営に連絡するってのはいいかもな。
「じゃぁ俺もGMコールするか、自分から決闘吹っかけた挙句負けて喚き散らす害悪プレイヤーが居ますってな」
「出来るわけねぇだろ!このチーターが!」
「はぁ……えっとGMコールはここだな」
いつの間にかアイツの中では俺はチーターになっているらしかった、野次馬に集まった大勢の中でも「チーターってどういう事だ?」みたいな発言が飛び交っている、もはや俺の独力では収拾が付けられなくなったので運営に頼るべくGMコールをする。
『はい、こちらをGMコール対応受付です。いかがされましたか?』
「決闘を吹っかけてきた挙句負けたら負けたで人の事をチーターだって罵り始めた害悪プレイヤーが居るんですが……」
『少々お待ちください。……今から対応者を送りますので後はそちらにお願い致します』
対応者?運営側の人が実際にここに来るのか?
GMコールが終了して数秒後、目の前が歪んだと思った瞬間そこが光りだした。
「うおっ!?」
光が収まるとそこには身長20センチ程の大きさの人影が浮いていた。
「なんだあれ?……妖精か?」
「えっ?何あれ?」
「なんか出てきたぞ?」
「えーなんかちっちゃくて可愛いー」
妖精……確かにその通りの見た目だった。小さい身体に透き通った羽が生えているが羽ばたくでも無くぷかぷか浮いていて、緑色の瞳と黄色の髪をポニーテールにした耳の尖った小さな女の子の見た目をしている。羽がなくて人間程の大きさだったら『妖精』ではなく『エルフ』のイメージを持たれていただろう。
「確かに妖精みたいだな……」
突然現れた妖精に一瞬何事かと思ったが恐らく彼女が先程言っていた『対応者』というやつだろう、まさかいちいち運営側の人間が来るとは思わなかったがまさか妖精とは……
『えっと、GMコールしたのはあなたですか?』
「あっあぁ、俺だ、内容は……伝わってるか?」
『あっ、はい。内容は聞いています、それで……そこのプレイヤーが害悪プレイヤーとやらですか?』
「あ゛ぁ゛!?俺様のこと言ってんのか!?害悪はチーターのソイツだろうが!」
「……あれです」
『うっわぁ……確かに害悪っぽいですねぇ』
喚き散らす金髪を見てあからさまに顔を顰める妖精、これ中に人間が入ってるのか?だとしたらこんな小さいアバターでよく動かせるな。
『あっ、自己紹介が遅れましたね、人が多い様ですし丁度いいですかね。えーっゴホン!《EBO》をプレイ中の今この場にいる皆様!はじめまして、GMコール対応用AIの『リーリア』と申します、気軽にリーリア、又は妖精ちゃんと呼んでください!他にも対応用AIはいますがよろしくお願いします!』
あぁ、AIでしたか、確かにこんなんいちいち人間が対応してられないよな。
周囲のプレイヤーも名乗りを聞いて納得したようだった、ただ今度はなんで出てきたのかの憶測が飛び交っている、金髪のチーター発言が原因じゃないかという意見が多い様だ。
まぁそうっちゃそうだよな、チーター発言の後にGMコール対応用AI、つまりは運営側の干渉があれば普通はそう思うよな。
「えっと妖精ちゃん、いいかな?」
『あっどうぞ、初めての出動だったので名乗らせていただきました』
「まぁそれは構わないけど」
『じゃあ本題に入りますね、今回は……決闘を吹っかけて負けた挙句チーターだと喚き散らす害悪プレイヤーが居る、でしたっけ?』
「あぁ、そうだ」
『チーターですかー、ちょっと失礼しますよー』
妖精ちゃんの掌から何かキラキラしたものが出てきたと思ったら俺に纒わり付く、疑問に思って何かと質問すると「まぁ軽い調査です」と返された。
『ふおっ!?』
「なっ!?どうしたんだ!?」
『い、いえ……特に不正は見当たらなかったんですが、随分特殊なステータス構成だなぁと思いまして』
「それはまぁ……自覚してる」
『っと検索の結果特に不正は見当たらなかったのでチーター云々はそこのプレイヤーの言いがかりですね』
「はぁ!?ふざけんな!ソイツがチーターじゃねぇ訳ねぇだろ!じゃなきゃβテスターの俺様が負けるわけねぇ!」
運営側が不正は無いって言ってんのになんでこいつはまだ喚くかねぇ、そろそろβテスターβテスターしつこいぞ。
『うーんちょっと待ってくださいね〜』
妖精ちゃんはそう言うと目をつぶり瞑想をし始めた、何してるんだ?
『えーっとログを洗ってみた所……普通にあなたの負けですね、チート云々は全く関係ありません、素直に全財産支払ってください』
「はぁ!?ふざけんな!そんな訳ねぇだろ!」
なんだこいつ、同じ様な事ばっか喚きやがって、いい加減にして欲しいな、純粋に負けたんだから認めろよ……
『うーん、これは酷いですねぇ……うん?あぁっと了解です』
「どうしたんだ?」
『あぁいえ、ちょっと連絡があっただけです、少しうるさいのでプレイヤー『リガンド』の音声をミュートにしてっと』
「…………!」
妖精ちゃんが何かをいじるような動作をすると散々喚き散らしていた金髪の声が突然聞こえなくなった。こんな事も出来るのか、すげぇな。
『さてと、仕方ないので強制的に実行しますね、プレイヤー『リガンド』の全財産をプレイヤー『トーカ』に移行……完了』
妖精ちゃんが呟くと同時に目の前にウィンドウが現れそこには金髪の全財産が俺に贈与された旨の内容が書かれていた。
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・58600トラン
・鉄の剣+3
・皮鎧(上)+2
・皮鎧(下)+2
・βリング
・その他素材系多数
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そう、金銭だけに限らず文字通り『全』財産が俺に送られてきていた。
「ちょっ!これはやり過ぎ!やり過ぎ!」
『あれ?全財産と言う話では?』
「いや、そうだけどさ、お金だけじゃ無いのか!?」
『いやぁだって全財産ですよ全財産、所持金はもちろん装備や素材も財産の内ですよねぇ、あぁ!経験値やステータスも財産と言えますよね、いります?』
「いらん!流石にそこまで求めてねぇわ!」
『分かりました〜。とは言ってもですね、このプレイヤーはβ時代から迷惑プレイヤーとしてGMコールが多くあってですね、警告も何回かしてたんですけどねー流石に今回の件で上の人の堪忍袋の緒が切れたらしくアカウント停止処分が決定されたんですよ』
「わーお、結構ヤバイ奴だった……」
「…………!!」
β時代からGMコール常連とか本当にただの害悪プレイヤーじゃねぇか……アカウント停止処分が下るとか何やらかしたんだよ……
害悪金髪が何か喚いているが『ミュート』のせいで音が全く伝わらないので無視、こういうやつは無視安定だ。
『まぁそんな訳で受け取っといて下さい、要らなかったら売っちゃって良いんで』
「お、おう……」
うーんなんか大事になってきたな、幸い周りには会話は届いてはいない様ではあるが……
『えーこの場に居るプレイヤーの皆様〜当ゲームのシステムは強固な保護が施されているのでチートなどさせません!また今回はプレイヤー間の問題ですので野次馬の皆様はお引き取りくださーい』
なんか言葉の後半にトゲがある様な気もするが……これは一応俺のチーター疑惑へのフォローもあるんだろう、そういう事にしとこう。
妖精ちゃんの宣言を聞いたプレイヤー達はぞろぞろと解散して行く、その後は妖精ちゃんが『今後もなにかあったらよろしくお願いしま〜す』と言って害悪金髪を強制ログアウトさせた後に去っていた。
「はぁ、目立っちまったな……」
噴水の縁に腰掛け呟く。
金髪のせいで変に目立つ結果になってしまった、今後変な事に巻き込まれなければいいんだが……
「兄ちゃん、ちょっといいか?」
これからの心配をして俯いていると声が掛けられた、顔を上げると短い茶髪の見た目20代前半位の皮鎧に身を包んだ男性だった。
先程のこともあり少し警戒しながら返事を返す。
「俺に何か用か?」
「まぁそんな警戒すんな……ってのもさっきの後じゃ無理だろうな、それを踏まえた上でなんだが少し話いいか?」
「……別に大丈夫だ」
「じゃぁまずは自己紹介からだな、俺はアッシュ、一応βテスターだ」
アッシュと名乗った茶髪の男性はβテスターらしい、否が応にも警戒心が沸き上がってくるが一応俺も名乗る事にする。
「俺はトーカだ、それでβテスター様が何のようだ?」
「ハハッ、やっぱ警戒しちまうよな。まぁ俺は別にお前に危害を加えようって訳じゃねぇ、純粋にお前に興味が湧いてな」
「俺に興味、ね」
「さっきの金髪いただろ?アイツは性格はともかく実力は確かだった訳よ、それが初心者に負けたってもんだからよ、ちょっと気になってな」
「アイツで結構な実力者なのか、まぁ運が良かったってのもあるだろうけどな」
運が良かったと言っても金髪との戦いでではない、亀甲棍や兎脚靴、???の短剣などの素晴らしい装備に出会えた事に対してだ。
「運が良かった……か、兄ちゃん言うじゃねぇかβ上がりに運だけで勝てりゃ苦労しねぇわな」
「何が言いたい?」
「お?警戒させちまったか?そりゃすまんな、別に変な事考えてる訳じゃねぇぞ?」
「そうか、それで要件はそれだけか?」
「まさか、んじゃ本題に入るが……俺達とパーティー組まねぇか?」
まさかの勧誘でした、軽く話した限りじゃさっきの害悪金髪みたいに頭沸いてる訳じゃなさそうだな。ただ……
「うーん、誘いは嬉しいが実はリアルの友人と一緒に遊ぶ事になってな」
「ありゃ、そりゃすまねぇな。んじゃ素直に諦めるとしますか」
「やけにあっさりしてるな」
「そりゃな、先約がいるのに無理矢理、なんてしたくねぇしな。じゃ、俺はお暇しますかね」
「あぁ、またどっかであったらよろしくな」
「おうよ。そうだ、最後にフレンド登録いいか?」
アッシュが言いながらフレンド申請を飛ばしてきた、悪い人じゃ無さそうだし構わないかと考え申請にOKを返す。
「あぁ、大丈夫だ」
「ありがとな、んじゃ今後もよろしくな」
「あぁ、こちらこそよろしく」
「おーい!アッシュさーん!行きますよー!」
「あぁ!すぐ行く!」
アッシュはフレンド登録が終わると呼ばれた方へそのまま立ち去って行く。
「βテスターも十人十色なんだな。まぁあれが例外なだけだろうが」
平穏を取り戻した噴水広場で俺は2人を待つがてら先程勝ち取った全財産の装備品を確認してみる。
確か装備品は『βリング』『鉄の剣+3』『皮鎧(上・下)+2』だったな。
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『βリング』
βテスター特典のアクセサリー
β時代の最終レベルまで経験値2倍
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『鉄の剣+3』
鉄を鍛えた剣
STR+13(10+3)
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『皮鎧(上・下)+2』
皮で作られた鎧
VIT+7(5+2)
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綺麗に全部使えないな……βリングは俺βテスターじゃないから何の恩恵も無いし剣は使えないし鎧も装備できない、+が付いてるから多少強いのだろうが……完全に宝(という程でもないが)の持ち腐れだな。
ちなみにだがジョブによって装備できる武器がある様に防具も装備出来るものと出来ないものがある、例えば俺は神官と狩人だがそのジョブ構成だと皮鎧の一部を装備するのが限度だ、そして今回奪っゲフンゲフン勝ち取った皮鎧は全身を守るタイプの皮鎧だったので装備はできない、俺が装備出来るのはせいぜい胸当てなどの一部パーツだけだ。そもそもあの金髪の装備なんか着たくない、なのでリクルスに押し付けよう、そうしよう。
害悪金髪はβ勢の中でも最悪の部類の人物です、運営も流石にキレました。
そして次話からようやくタイトルにある幼馴染み達が絡み始めます、なんか色々盛り込んでく内に合流が遅れた……
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!