表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/310

第136話 『VS【クラウン】⑨ カレットVSショウキョウ 後編』

異常なまでに筆が乗ってしまった……

書くのは楽しかったけど書き上がったのが投稿の直前とはこれいかに

 

 『巨大展開』によって巨大化させた『光魔法』を限界まで掛け合わせ、混ぜ合わせ、ついに至った一種の極地。

 ショウキョウの切り札にして恐らくはEBO最強の対単体用光魔法であるその一撃の名は、【極光菩薩・滅殺】。


 極光の名に恥じぬ荘厳で美しい光の帯を纏い、されど滅殺の名に偽りなき威力を宿したその一撃は、全力では無いとはいえカレットの【白竜砲】すら飲み込んで見せた。


 極光(オーロラ)を纏った眩く輝く菩薩像が、純白に輝く白龍ごと敵対者を叩き潰す光景は、強大で恐ろしく、それでいて美しかった。


「さぁて、まずは一勝。この調子で勝つぞぉ!」


 この光景を作り出した当の本人はと言うと、なんだか気の抜けた棒読みでそんな事をのたまいながらMPポーションを飲み干す。

 たとえトッププレイヤーであろうと、流石にあそこまで強大で強力な一撃を放てばMPもすっからかんだ。


 うげぇとMPポーションの不味さに辟易しながらも飲み干し、底を尽いたMPを補充したショウキョウは、自身に向かってくる5発の炎の槍(・・・)を見ると、やっぱりかとでも言いたげな表情で呟いた。


「……ってそんな上手く行く訳ないよね。知ってた【五光壁】」


 補充したMPを早速使って防壁を作り風炎槍を防ぐと、極光菩薩が叩き潰した方へと視線を向ける。

 未だもうもうと立ちこめる土煙の向こう側は視認出来ないが……


 カレットの生死など、視認するまでもないだろう。

 土煙を突き破って純白のレーザーが突き進んでくる。


「それでこそ決勝戦で戦うに相応しい強敵だ。【菩薩掌壁(ぼさつしょうへき)】」


 直撃すれば即死とまでは言わないがかなりの大ダメージを余儀なくされるであろう一撃を、しかしショウキョウは満足気にあるいは楽しそうに笑いながら受け止める。


 彼の前に現れた巨大な光で構成された掌は、純白のレーザーをその掌で受け止め、握り潰すと緩やかに空に解けるように消えていった。


「むぅ。いくら最低威力の【貫通型】とはいえ、こうも簡単に受け止められると、クルものがあるな」


 純白のレーザー……【貫通型白龍砲】が空けた穴を起点に急速に霧散していく土煙の向こうから、そんな声が聞こえた。

 落ち込んでいるようなセリフに反して、どこかでワクワクしているような、そんな響きの声の主は……


 当然。カレットである。


「いやいや、ショックなのはこっちだぜ?【極光菩薩・滅殺】(いまのいちげき)、かなり奥の手よ?」


 返すショウキョウも同じように、言葉ではショックだなんだと言っているが、その声はそこまでショックを受けているようには聞こえない。


 お互い、属性を絞ってそれだけを鍛えてきた、その道のスペシャリストである。


 それ故に、己の全力を気兼ねなくぶちかませるこの決勝という舞台は何より(たのし)く、またその全力を受け止めてくれる相手との戦いもまた、同じくらい(たのし)いものである。

 

 そんな最高の舞台に立って、心が躍らない訳が無い。


「【五重光弾】。なぁなぁ、カレットちゃんや。どうやってオレの一撃を耐え抜いたんだい?後学のために教えちゃくれないか?」

「なに簡単な事だ。【白龍砲】が空けた僅かな穴に【風炎卵壁(ふうえんらんへき)】……防御魔法をねじ込んだだけだ」

「あー、なるほどね。白龍砲ごとねじ伏せられたと思ったけど、ダメだったのか」


 なお、カレットの行った【風炎卵壁】とは、圧縮した【風炎嵐】を自身を覆うように……それこそ卵の殻のように展開する事で身を守るという、防御系魔法である【ウォール系】をガン無視したオリジナルの防御魔法の事である。

 地味に(たまご)の「らん」と(あらし)の「らん」をかけていたりする。


 と、そんな会話をしながらもショウキョウの放った【五重光弾】は、晴れかけている土煙の向こう側にいる人影……カレット目掛けて正確に飛んでいく。


 避けるか相殺するか……カレットなら相殺するんだろうなぁ、なんて考えながら、次弾の準備をしていたショウキョウは、今まで最高峰の魔道士としてカレットを見ていた観客達は、度肝を抜かれることになる。


「ふんっ!」


 なんと、カレットが【五重光弾】を()()()()()()()()()のだから。


「うはぁ、マジかよ」


 ショウキョウは語尾に『ww』が付きそうな、驚愕と面白さが綯い交ぜになったような、そんな声を上げる。


 魔弾を地面に叩き付けた衝撃で完全に晴れた土煙の向こうから現れたのは、確かにカレットである。

 しかし、その剣カレットの姿は普段のメイお手製の緋翠(ひすい)色の魔道士姿ではなく……つまりはいつものカレットではなかった。


 ストレートで腰まで伸ばしていた長い緋色の髪の毛は、ひとつにまとめたポニーテールになっており、メイお手製の『火・風魔法』特化のローブは極限まで重量を落とし心臓などの急所を僅かに守るだけの軽装に、そして緋翠の魔道杖は両腕に付けた緋翠の籠手へ。


 それは、どこから見ても軽戦士の装いだった。


「おぉう。カレットちゃん、ちょっと見ない間にイメチェンした?」

「あぁ、そうだな、男子三日会わざれば刮目して見よと言うだろう?」


 カレットは男子じゃないし三日も経ってないだろ。


 トーカかリクルスがこの2人の戦いを外から見ていたら、そう突っ込んでいたであろう。トーカなら、そもそも意味が違うだろ、くらい付け足したかもしれない。


 しかし、今この場にいるのは決勝の熱気に押されてハイテンションになっているカレットとショウキョウの2人だけである。


 そんな無粋とも言えるツッコミを入れる者はいない。


「はっはっはっ!知らなかっただろう知らなかっただろう、私が魔道士だけでなく軽戦士であるということを!なんせつい最近まで私ですら忘れていたくらいだ!」


 カッコつかない事を堂々と言ってのけるカレットの威勢の良さに、爽快に笑うとショウキョウは錫杖を構え直す。


「自分のジョブを忘れるってのはどうかと思うが、忘れてたんならしょうがないな!それよりも、って事はまだまだ戦いはこれからだって事だな!?だったら楽しもうぜ!【閃光群(せんこうぐん)】!」


 そう言って振るわれるショウキョウの錫杖から放たれるのは、無数の光弾。1発1発は弱くとも、その速度と数は十分驚異に値するだろう。


「【風炎纏身(ふうえんてんしん)】!いいだろういいだろう!むしろそう来なくってはなぁ!【風炎斬脚(ふうえんざんきゃく)】!」


 しかし、そんな弾幕を前にしてもカレットは僅かに怯んだ様子もなく、暴風と猛火をその身に纏って燃え上がり、弾幕に向かって駆け出していく。


 その速度は、とても魔道士としてステータスを割り振っていたプレイヤーのものとは思えないくらいに素早く、一瞬で弾幕に接近すると、猛火と暴風を纏った鋭い蹴りでまとめて薙ぎ払う。


【風炎纏身】とは、『体術Lv.5』と『攻撃系魔法Lv.5』を習得する事で使用可能になる、その属性の魔法を身に纏って自身の身体能力を増幅させる身体強化系の能力である【纏身】という技の強化版である。


 通常の【纏身】ーー『火魔法』なら【炎纏(えんてん)】、『風魔法』なら【風纏(ふうてん)】であるーーは自身の攻撃にそれぞれの属性を付与し、また火なら攻撃力、風なら速度、水なら身体操作、土なら防御力を上昇させる程度の物だが、それらが『攻撃系魔法Lv.10』になると、【纏身】はその真価を発揮する。


 タダでさえジャンルが真逆な軽戦士と魔道士は両立しづらく、たとえしていたとしてもどうしても軽戦士メインで育てるプレイヤーが多いため、この【纏身】の真価に気付いてる者は少ない。


 魔道士をメインで育て、最近になって軽戦士の存在を思い出し、さらに身内に軽戦士のプロフェッショナルがいたカレットだからこそ真価に気付く事ができたと言っても過言ではない。


 ややこしい事に、【纏身】は取得してから攻撃系魔法のレベルを上げてもスキルレベル5の時と比べ、スキルレベル6〜9の時には全く効果に変化が生じないのだ。

 だからこそ、【纏身】を取得した所で育成を肉弾戦メインに切り替えるプレイヤーが多い。


 しかし、【纏身】は『攻撃系魔法Lv.10』となった途端に効果が爆発的に跳ね上がるのだ。


 そしてカレットは『火魔法』と『風魔法』のふたつの攻撃系魔法をスキルレベル10にしている。そのふたつを同時に発動した場合の凶悪さと言ったらない。


 無数に張られる『光魔法』の弾幕を、カレットは【風炎乱牙(ふうえんらんが)】を使用し、残りは持ち前の運動神経で全て薙ぎ払って行く。


「ひゃぁ、緋色と翡翠色の鮮やかなコントラストが美しいねぇ。ウィシャルネなんかが好きそうだ。ま、猛威を振るっているアレが俺を殺しに来てるとなると味わいもまた変わってくるか」


 猛火と暴風をその身に宿し、緋色と翡翠色の帯を引いて縦横無尽に動き回るカレットの姿は、対戦中であるはずのショウキョウが見蕩れるのも仕方ない程に美しかった。


 しかし、傍から見れば美しくともソレが自分に向かって来るとなれば脅威でしか無いものなどこの世に多々ある。

 カレットも間違いなくその中のひとつにカウントされるタイプの美しさであり、その標的になっているショウキョウは冷や汗ものだろう。


「【閃光乱群(せんこうらんぐん)】。【五光壁】。さぁて、あのカレットちゃんをどう仕留めようか……うん。やっぱこれだよね」


 シャランッ!と錫杖を振り、無数の閃光をカレットに向かって飛ばしながら自身の周りにも防壁を展開すると、そう言ってショウキョウはMPポーションを呷る。


 そして、再び『巨大展開』によって巨大な魔法陣を展開していく。

 

「ふんっ!させるものか!【白熱化(ヒートアップ)】ッ!」


 新たに増えた閃光をものともせず、リクルス直伝の体捌きで閃光の群れを蹴散らすと、カレットの身体を【白龍砲】と同じ純白の閃光が覆っていく。


 これこそが【纏身】の真価であり、最高峰の身体強化能力である【暴魔解放(フルバースト)】である。


 この【暴魔解放】は、強化倍率はさらに跳ね上がるが、1秒ごとに最大HPの1%ずつ、戦闘終了まで回復不可能のスリップダメージが入るという、大きなデメリットも抱えている。


 つまりは1度発動すれば、たとえHPが満タンであろうともたった100秒で死亡する、諸刃の剣なのだ。


 カレットの【白熱化(ヒートアップ)】は、この【暴魔解放(フルバースト)】を【炎纏】と【風纏】で同時に行い、さらに強化倍率を跳ね上げている、まさに超攻撃形態。

 この状態のカレットは、毎秒最大HPの2%ずつをスリップダメージとして受けており、1度発動した段階でカレットはもうこの試合では後50秒しか生きられなくなっている。


 それでもカレットが【白熱化(ヒートアップ)】を使用したのは、もちろん絶対に負けられない、負けたくないという思いもあったのだろうが、大半の理由は『楽しいから』という、刹那的な理由だ。

 そして、その『楽しいから』は時として何よりも大きな力となる。


 心做しか龍のように見えなくもない純白の閃光を纏ったカレットは、瞬き程の間に【閃光乱群】を一掃すると、凄まじい速度でショウキョウに接近していく。


「ひゃぁ、白龍姫(ふたつな)に恥じない勇ましい姿だなぁ!【菩薩掌(ぼさつしょう)・乱発】!」


 接近してくるカレットに向けて放たれた、超高密度に圧縮された光魔法で作られた掌底。それも、一発や二発ではなく、乱発の名に偽りなく無数の掌が乱れ飛ぶ。


 その1発1発が、喰らえばタダでは済まない高威力である事は嫌でも分かる程に神々しく眩い掌底だが。

 しかし、それでも正真正銘の白龍姫モードのカレットには通じない。


【風炎纏身】の【白熱化(ヒートアップ)】を使用した上に【乱牙】を発動したカレットの一撃は、超破壊力の掌底をそれ以上の威力で打ち消し蹴散らし突き進む。


「マッジかよ!くっそ不味いポーションがぶ飲みすんのも辛いのよ!?」

「はん!それはご愁傷さまだ!ウチのポーションは美味しいから何杯でもドンと来いだ!」

「んだよそれずるくねぇか!?」


 魔道士の永遠の課題(Mポクソマズ問題)を既に乗り越えたカレットとその他の魔道士の間には、決して埋められない深い深い、それはもう深淵のように深い溝があるのだろう。


 この試合1番の負の感情を撒き散らしながら叫ぶショウキョウは、それでもしっかりとMPポーションをがぶ飲みしながら『巨大展開』を使用し巨大な魔法の準備をしている。


 「はあっ!【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝け……っ!ぬぁっ!無理だ!」


【菩薩掌・乱発】を乗り越えて間合い内に踏み込んだカレットは、これまたリクルス直伝の【連衝拳】によって【五光壁】をぶち破るが……リクルスのように【連衝拳】を無限に続けらるような事はなく、3回ほど続いた辺りで途切れてしまった。


 リクルスがいとも簡単にやっている事が自分には出来ないと少しブルーな気持ちになりながら、しかし次の瞬間には気を取り直してさらに一歩踏み込む。


 さすがにこの距離は不味いと距離を取ろうとするショウキョウだが……


 「逃がさん!【風炎嵐】!」

 「くっ……!」


 カレットの放つ火と風の嵐が2人を中心に展開され、周囲に渦巻き始める。まさに、風で勢いを増した炎の壁に閉じ込められているような状態だ。


 「お前は今ここで倒す!【風炎破豪(ふうえんはごう)】!」

 「ははっ!ついに決着を付けようって訳か!いいだろう!【極光観音(きょっこうかんのん)確殺(かくさつ)】!」


 渦巻く炎のリングの中で、純白の龍を纏った戦姫と、極光(オーロラ)を纏った超高密度の観音像が激突する。


白熱化(ヒートアップ)】を発動した状態での【乱牙】で威力を限界まで底上げした、現状カレットに打てる最強の一撃と、先程の対単体攻撃とはいえ相手を丸ごと飲み込むような【極光菩薩・滅殺】とは違い、攻撃範囲を超狭範囲に絞る事でその場所に確実な死をもたらす【極光観音・確殺】。


 そのふたつがぶつかり合い、辺りは光に飲み込まれた。


 そしてーーーーーーー



 「はぁぁぁぁあぁっ!」

 「ぐふぅっ!」


 カレットの拳が超高密度の光で形成された観音像をぶち抜いてショウキョウを殴り付ける。

 ステータス構成は魔道士タイプとはいえ、それでも限界まで強化されたカレットの拳は同じく魔道士タイプであり物理防御にはあまり意識を割いていない構成のショウキョウにはとても耐えられたものでは無い。


 純白の閃光となったカレットの拳は、ついにショウキョウのHPを焼き尽くした。


 「あぁあ、負けちまったかぁ……悔しいねぇ……いつか、必ずリベンジするからな……!」


 最後にそう言い残すとショウキョウは光の粒となって溶け消えて逝った。


 「うむ、私の勝ちだ!もちろん次も私が勝つぞ!」


 溶け消える光の粒(ショウキョウ)に向かってそう言うと、カレットは他の仲間の加勢に行くために駆け出す。


白熱化(ヒートアップ)】の使用によって死が確定しているカレットだが、まだ十秒程の猶予はある。

 せめてその間に、誰かしらに背後から不意打ちの1発でも叩き込めれば後は仲間がどうにかしてくれるだろう。


 そう考えたカレットだったが……


 「……えっ?」


 それを実行に移すことは出来なかった。


 駆け出す直前。


 首筋にヒヤリとした物を感じたと同時に、まだ2割程残っていたHPが一気にゼロになった。

 死亡した事で体の力が抜け、地面に倒れ消える直前。


 背後に、人影が見えたーーーーような気がした。


第2回イベント編ももうすぐ終わりですね

とは言っても予定は未定であって決定ではない、そんな作者ですし、明確なことは分かりませんが


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 効果が跳ね上がる、効果が跳ね上がる、だけで詳しい効果が書かれていないから分かりづらい。正確な値を書いてほしい。
2021/07/17 08:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ