第132話 『VS【クラウン】⑤ リーシャVSウィシャルネ 前半』
「……」
ヒュン!ヒュン!
「こうか?いや、この角度では完璧ではない」
パシャッ!ピシュン!パシャッ!
「…………」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「ならばこれならどうだ?うーむ。顔は完璧だが私の美しい金髪が隠れてしまっているな」
パシャッ、パシャッ、ピシュン!
「……………………」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「ふむだったらこれは……いや、しかし……なら……やはりダメか。では…………」
パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャシャシャシャ、パシャッ。
……ピシュン。
「…………………………………………」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「あー、レディ?君の矢が映り込んでしまって見栄えが悪いんだ。少し待ってくれないかな?」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!なんなのアンタ!?なんで試合始まってるのにずっとスクショ撮ってるの!?しかも自撮り!それでいて私の矢は全部避ける癖に一々的確な狙いで射ってくるからなおタチが悪い!」
「どうしたんだいレディ。そんなにかっかして。カルシウムが足りてないんじゃないかい?小魚でも食べるといい」
「ア、ン、タ、が、原、因、じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
決勝戦開始早々に決まった【カグラ】の策により、どうにか【クラウン】のメンバーをバラけさせる事に成功した。
そして、【クラウン】の弓術士であるウィシャルネの相手を、同じ弓術士であるリーシャが受け持ったのだが……
何を思ったのかウィシャルネは自身の姿をスクショで撮って自撮りを始めたのだ。しかも完璧を追求しているのか撮っては消して撮っては消してを繰り返している。
当然、その間もリーシャは容赦なく矢を射続けてはいるのだが……ウィシャルネはうざったらしいほどキラキラしたステップでその矢を避け、自撮りを続ける。
それにイライラしたリーシャは、手数こそ多くなったものの1発ずつの狙いは甘くなり、より避けられやすくなってしまう。
ならば数に頼らず、落ち着いて狙いを付けて狙撃しようと1箇所に留まると、これまた無駄にキラキラしたフォームでウィシャルネが完璧に狙いを付けて射撃してくるためそれも出来ない。
ウィシャルネのそんな精神攻撃(リーシャ談)にリーシャは翻弄されっぱなしだった。
「ふぅむ。そうは言ってもだねレディ。ショウキョウの奴も言っていたが決勝戦なんて舞台もう二度と無いかもしれないんだよ?なら……この場で最高の1枚を目指して何が悪い?」
全く悪びれる様子もない……と言うか本当に何も悪いことをしていないと思っている様な爽やかさでウィシャルネはキラキラと尋ねる。
「対戦相手に悪いだろぉ!なんかもうさぁ!2つ名はなんか他と方向性違うし、栄えある決勝戦で戦うのがこんな奴だなんてさぁ!もうさぁ!色々……おなかいっぱいだよ!」
そんなキラキラした感じも言葉もなんなら自身につけられた2つ名もなんかもう全てがリーシャの神経を逆撫でしていく。
「おいおいレディ。そんなにかっかして。カルシウムが足りないんじゃないかい?こざ……」
「天丼は要らねぇんだよぉ!なんかもう……なんかもう、なんかもうさぁ!」
もはや涙目になりながら地団駄を踏み吠えるリーシャ(それでも射撃は続ける)と相も変わらずキラキラし続けているウィシャルネ(それでも自撮り時々射撃は続ける)の2人の戦いは、他のグループの戦いと比べてあまりにも異質だった。
「あぁぁぁもぉぉぉぉ!死ねッ!死ねッ!自撮りしたまま死ねッ!」
「おいおいレディ、そんな物騒な言葉は使うもんじゃないぞ?」
「▽※ゞ々ヽ▽◇〜ッ!……………………っふぅ」
言葉にならない程の怒りが1周まわって逆に冷静になったのか、リーシャの目が据わり、無言で淡々と矢を放ち始めた。
そんな連射を繰り返せば、本来ならすぐに矢が尽きるはずだが……そこはリーシャの称号である『無限射手』によって自動で矢が回収されるので弾切れの心配がない。
さらに称号の『乱射魔』によって射てば射つほど1発ごとの威力は上昇していく。故に、段々と、その威力は桁外れなものになっていく。
リーシャの放つ矢の1発1発が空を裂き地を抉る。これには流石のウィシャルネも危機感を覚えたようだ。
「おいおいレディ、さすがに乱暴が過ぎるんじゃないかい?」
「………………」
ウィシャルネが語りかけるが……リーシャはもう反応しない。
それどころか、ウィシャルネの言葉が耳に入っているのかすら怪しい。
「おや、これは本気で怒らせてしまったようだな。美を追求する者としてこの素晴らしい舞台で最高の1枚を撮りたいと思っての行動だったが……ふむ。些かやり過ぎてしまったらしい」
ウィシャルネはイラッと来るほどに優雅な動きで額を抑えやれやれと首を振ると、スクショのために開いていたメニューウィンドウを閉じ、弓を構えてリーシャに向き直る。
「さて、レディ。謝罪の意味も込めて……最初から私の全力をお見せしよう!【スコールショット】!」
ウィシャルネの放った【スコールショット】は『弓術Lv.8』で取得出来るアーツであり、『スキルレベル×5』発の矢を豪雨のように降り注がせるアーツである。
同系統のアーツに【レインショット】があるが、そちらが降り注がせる矢の量は『スキルレベル×2』発であり、その差は歴然である。
とはいえ、その分【スコールショット】の方がCTが圧倒的に多いので一概にどちらが優れているとも言えないのだが。
そして、そんな【スコールショット】を放つウィシャルネの『弓術』のスキルレベルは当然MAXの10であり、都合50本もの矢がリーシャ目掛けて降り注いだ。
「…………ッ!」
1発でも当たって動きを止めてしまえば、矢の豪雨によってたちまちHPを全て持ってかれてしまうような極限の状態の中、リーシャは持ち前の運動神経と『縮地』を駆使して紙一重で交わしていく。
それどころか……
「死に……晒せぇ!」
異端闘弓を横薙ぎに構え、ウィシャルネに突っ込んで行った。
この行動に、自身も弓術士であるが故に弓術士は遠距離攻撃が真骨頂だと考えていたウィシャルネは反応し切れなかった。
「なっ…………」
「【閃】ッ!」
リーシャが弓で放った横薙ぎの一閃は、ウィシャルネの胴体を深々と切り裂いた。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!