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第125話 『VS『魔導研究会』⑦』

 

「滾る、滾るぞぉ!消し飛ばせ!【収束型白龍砲:六頭(むつがしら)】ッ!!!」


 万物を焼き払う純白の咆哮が放たれる。


 耐える事など不可能。耐えようと考える事すら烏滸がましい。

 そう思わせる程の、純然たる破壊の力を前にして、しかしノルシィはいつものふんわりとした笑みを崩さずにいた。


「【転写:鏡写(かがみうつし)】」


 次の瞬間。

 闘技場は純白に塗り潰された。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「けほっ、けほっ」


 あまりの衝撃波に巻き上がった粉塵のせいでメイが咳き込んでいる。トーカは、余波から身を守る為に仲間全員の前に張った『結界』の内側でその様子を見ていた。


 カレットが【白龍砲】を放ち、それが直撃する直前。

 ノルシィから全く同じ魔法が放たれたのをトーカは見逃さなかった。


 当然それはカレットもはっきりと目撃していたのだろう。

 驚愕を通り越し、呆然としているカレットの様子が、ヒビだらけの障壁越しにもよく見えた。


 ったく……余波だけでこの有様だ。いったいどれだけの破壊力を秘めていたのやら……


「『鏡魔法』。最大MPの100%を消費して、他人の魔法をコピーする魔法よ〜」

「そんな、魔法(もの)が……」

「攻撃魔法六属性全部をレベル10にした時に『自然魔法』と一緒に覚えたのよ〜。私の切り札(おくのて)のひとつね〜」


 カレットだけの白龍砲(まほう)。その絶対性が崩され、ある種のアイデンティティの崩壊とでも言うのだろうか、カレットが虚ろな様子で一歩後退る。


「何落ち込んでんのさ!まだ次があるでしょ!ほら、トーカも!」


 と、そこでメイの声が聞こえて来た。


 カレットに1()1()()()のポーションを手渡し、俺に1()2()()()のポーションを投げ渡してくる。


「どういうことかしら〜?もうあなた達はポーションを使い切ったはずでしょう?」

「そうだね。使い切ったよ。()()()()()()()!」


 口調こそいつもと変わらないが、本気で困惑している様子のノルシィに、悪戯が成功した子供のような笑顔でメイが答える。


 そう。これこそがメイが持つ切り札のひとつであり、メイの生産一筋のプレイスタイルがたどり着いた究極形。


 『常在工房』


 その能力は実に単純。“あらゆる場所での生産活動を可能にする”たったこれだけだ。

 だが、たったこれだけの能力でも、メイが持つ事で化ける。


 あらゆる場所、つまりは戦闘中であっても平時と変わらず生産活動が行えるのだ。

 つまり、材料さえあれば今この場でポーションを作る事など、メイにとっては造作もない事である。


 そして、当然メイは大量の材料を持ち込んでいる。あとほんのひと手間加えるだけのポーションの前段階の液体を大量に持ち込む事で、実質『カグラ』においてポーションの持ち込み上限は意味をなさなくなっているのだ。


 闘技場へのポーションの持ち込みは本数制限がされているが、素材の持ち込みは制限されていないし、ましてや闘技場内での生産活動も制限されていない。


 これこそが戦闘がまるで出来ないメイがこのチームにいる理由であり、カレットが躊躇無くポーションを空けていた理由である。


「ズルい。なんてレベルじゃ無いわねぇ。MP残量は私達魔道士にとって死活問題だって言うのに……」

「私一人ならまだノルシィには勝てないだろう。だが……これはチーム戦だ。仲間がいるなら、誰にだって負ける気はまるでしないぞ」


 ノルシィに杖をビシッと突き付けてカレットが高らかに宣言する。

 こういう小っ恥ずかしい事を躊躇いなく言えるのがカレットのいいところだ。


「ふふっ、それは怖いわねぇ。でもぉ、強力な攻撃には長いクールタイムが付き物。ちっさい魔法ならいくら撃ってきても負ける気はしないわよ〜?」

「だから言っただろう?仲間がいる。と」


 ほんの僅かな会話の切れ目。長年共に過ごして来たからこそ分かる。これはカレットがわざと作った空白だ。


「【アクセプト】【マジックポイントギフト】」


 だからこそ分かる。

 勝負を決めるなら、ここだ。


 カレットに対して2つの魔法を使用する。


 ひとつは、つい先程も使ったMPを譲渡する【マジックポイントギフト 】。


 そして、もうひとつは、別のスキルないしアーツのクールタイムを代わりに請け負う『付与魔法』の【アクセプト】。

 この魔法の効果で、カレットの【白龍砲】のクールタイムを代わりに請け負う。


 これによって【アクセプト】に超長時間のクールタイムが課されるが、もうこの試合中に再びこの魔法を使う事は無いので関係無い話だ。


「さぁ、お膳立てはしたぞ」

「あぁ、確かに受け取った。【収束型白龍砲:六頭(むつがしら)】ッ!」


 広範囲を焼き払う【拡散型】とは違い、狙いを一点に絞る事で威力を跳ね上げている【収束型】がノルシィへ放たれる。


「っ……そうねぇ。『付与魔法』にはそんな魔法もあったんだったわねぇ。もちろん、だからって簡単に殺られてはあげないわよぉ!【混色竜咆(こんしょくりゅうほう)】!」


 だが、ノルシィも何もせず消し飛ばされるなんて事はしない。


 カレットとトーカがMPを回復しているのと同タイミングで回復していたMPの全てをつぎ込んで、六属性全ての【ブレス】を混ぜ合わせた彼女の持つ最大威力の魔法を放つ。


 どこまでも澄み切った純白の咆哮と、なにもかもを綯い交ぜにした混色の咆哮が両者の中心でぶつかり合う。


 その時に発生した衝撃波によって、僅かに残っていた障壁は跡形もなく消し飛び、それだけに留まらず両チームのメンバーを吹き飛ばした。


 衝撃波に揉まれ、吹き飛ばされる最中(さなか)、全員が目にした事だろう。


 立っていられない程に衝撃波が荒れ狂う中で、意地の張り合いのように両の足で台地を踏みしめているカレットとノルシィの姿を。


 永遠にも思える一瞬の拮抗。


 そして、【白龍砲】が【混色竜咆】を喰い破る。


 【白龍砲】は勢いを緩める事なく【混色竜咆】を飲み込み、喰らい尽くし、ノルシィへと到達。

 そのまま、満足気(くやしそう)に微笑むノルシィを消し飛ばした。


 広く深くのノルシィと、狭く超深くのカレット。


 その深度の差が、勝負を分けたのだ。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 素材を持ち込めるからこそトーカが舐めプしてるのが判明して複雑.... 小石めっちゃ持っとくだけで低耐久相手に理不尽押し付けられるのに あくまで真っ当に戦おうとしてる 魔法使わせるだけで…
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