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第123話 『VS『魔導研究会』⑤』

 

 殺意(いかり)に支配されたカレットは、瓶を割った魔道士ちゃんをまるでロックオンするかのように睨み付けると、事前にカレットに渡していた味のしない方(味付きを渡すと試合とは関係無いところで飲んでしまう可能性があったからだ)のMPポーションを、目を爛々と血走らせながらひと息で飲み干す。


「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも【六重(ファイアボール)火球(・セクステット)】許さない許さない許さない許さない許さない許さない【風炎乱舞】焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす」


 そして、件の魔道士ちゃん目掛けて先程ノルシィに放った計36発の魔法群が一斉に襲い掛かる【風炎乱舞】を放つ。


 だが、その魔道士ちゃんは小柄な体格を活かしてちょろちょろと動き回り、【風炎乱舞】をどうにかこうにか回避していく魔道士ちゃんの奮闘は凄まじかった。


「ひゃぁ!また風の刃が頭の上通り過ぎたぁ!」


 素早く飛び交う火と風の刃は屈んだり飛び跳ねたりして紙一重で躱し、


「あっ!この状況経験した事ある!この前のドッチボールだぁ!」


 前から後ろから、右から左から、縦横無尽に襲い来る火と風の球は妙に熟れた動きで避け、


「うっへぇ!ローブにかすった!あっちぃ!」


 途中で合流して威力が増した火と風の槍をも転げ回りながら回避する。


 飛んで跳ねて叫んで転がって、どうにかこうにか火と風の魔法群を避けていくその姿は、素晴らしくもあり、哀愁を誘うものでもあった。

 なんというか、道化師の失敗芸を見ているような感じにさせられる。


 だが、そんなものは殺意(いかり)に支配されたカレットには何ら関係無い。

 避けるなら避けられなくなるまで、耐えるなら耐えられなくなるまで、ただひたすらに【風炎乱舞】を操り続ける。


 さらに、殺意(いかり)に支配されていても、あるいはだからこそカレットは最適手を取っていた。


 全ての【風炎乱舞】を魔道士ちゃんへと向けるのではなく、一部をノルシィ含めた他の魔道士の元に送る事で魔道士ちゃんへの助太刀を阻止しているのだ。


「焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす」


 護衛の関係上、俺はカレットのすぐ側に控えているのだが、小声でブツブツと血走った目で焼き尽くすと連呼しながらそれを実行しようとしているカレットの姿はもはや恐怖以外の何物でもない。


 俺に出来る事と言えば、カレットに刺激を与えないように上手く立ち回りつつ、足止めを抜けて飛んできた魔法を打ち落とす事だけだ。


「ぬっひゃぁ!うへぇあっ!らすとぉ!どっせぇぇぇぇい!」


 と、そんな事を考えている間に魔道士ちゃんの回避ショーもフィニッシュを迎えたようだ。

 最後の【風炎槍】を地面をゴロゴロと転がる事で回避し、生き残った事に歓喜の雄叫びを上げている。


 魔道士ちゃんすげぇ……カレットの【風炎乱舞】を避け切ったよ。


 かなりハードな回避運動ばかりしていたから息も絶え絶えと言った感じでぜぇはぁぜぇはぁと肩で息をしているが、それでもあの大量の魔法群を見事に避け切って見せたのだ。


よし(・・)動きが止まったな(・・・・・・・・)。じゃあ死ね」


 だが、カレットの攻撃はそこで終わりでは無かった。


 むしろ、先程までの【風炎乱舞】はあくまで動きを止めさせるための牽制であり、ここからが本番だったとすら言っていいだろう。


 覚えているだろうか?最初に放った六発の【ファイアボール】の事を。

 それが、まるで魔道士ちゃんに狙いを付けるかのように上空に待機している。


 先程までの【風炎乱舞】に、今なら確実に当てられる!というタイミングがあったにも関わらず一切参加せず、誰にも気付かれないようにひっそりと、魔道士ちゃんを中心として円を描くような位置取りで空中に浮かび続けていたのだ。


「【白龍砲:六頭(むつがしら)『囲い撃ち』】」


 そして、カレットの合図を受けて、いっせいに

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 【ファイアボール】を起点として放たれた【白龍砲】は、まるで虫眼鏡によって集められた太陽光のように一点に集中する。

 その先は、当然【風炎乱舞】を避け切って肩で息をしている魔道士ちゃんだ。


「うへぁっ!?あっあっぶな!」


 しかし、魔道士ちゃんは【風炎乱舞】を回避しまくった事で勘が冴えているのか、一点に集められた【白龍砲】が魔道士ちゃんを射抜く直前に横に転がる事でそれを回避する。


 実に見事な危機察知能力だ。


 だが、魔道士ちゃんの奮闘もそこまで。


 地面を撫でるように横へスライドした【白龍砲】によって魔道士ちゃんは真っ二つに焼き裂かれてしまう。

 上半身と下半身が泣き別れした魔道士ちゃんはもう助からないだろう。


 だが、まだ死んでいない。たとえ死が確定していたとしても、今はまだ死んでいない。


「くそぅ!こうなったら……1発ぶちかましてから死んでやらぁ!【ウィ


 そこから先は続かなかった。


 魔道士ちゃんが死に際の最期の一撃を放つより早く、再びスライドして来た【白龍砲】によって、頭部を消し飛ばされたからだ。


 これによって、胴体が泣き別れした事でかなりの速度で減少し続け、それでもまだ3割近く残っていた魔道士ちゃんのHPが全て消し飛ぶ。程なくして残っていた胴体も光となって溶け消えていった。


「焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす焼き尽くす」


 それでもバーサークカレットの殺意(いかり)は収まらないらしい。次なる獲物を求めて、虚ろに燃える瞳が闘技場内を彷徨う。

 今のカレットにはブレーキが存在しない。故に、後先考えずただひたすらに焼き尽くす事だけを考える焼却マシーンとなってしまっている。


 それではさすがにノルシィに勝てるとは思えない。どうにかしてカレットの正気を取り戻させなければならないのだが、どうしたものか……


「ストーップ!」


 トーカが悩んでいると、救世主が現れた。


 インベントリからポーションを取り出して何度も執拗に確認していたメイが、今度こそしっかりと味付きの美味しいポーションを持ってバーサーク状態のカレットに背中から飛び付き、その口にポーションの瓶をねじ込んだのだ。


「もがぁ!?……んぐっんぐっんぐっ」


 突然口に異物をぶち込まれたカレットは条件反射でそれを吐き出しそうになったが、口の中に美味しい味が流れ込んでくるのを察知すると素直に飲み始めた。


 瓶の中身が減って行くのと比例して、カレットの瞳に理性の色が戻る。そして、ポーションを飲み干す頃には、カレットは完全に憑き物が落ちたかのような清々しい表情に戻っていた。


「ぷはぁ! 美味いっ!」


 ポーションによって生まれ落ちたバーサークカレットは、これまたポーションによって退散したのだった。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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