第115話『VS『異端と王道』②』
いつの間にか500万PVを超えていた……
ありがたや……ありがたや……
俺がタンクを消し飛ばした直後、ゾクリと背筋に冷たいものが走った。死の予感とでも言うべきか、その感覚に導かれるように即座に武器を構えて振り返る。
「ドドさんの敵!【アースクラッシュ】ッ!」
そこには、『縮地』を使ったのか一瞬で距離を詰めて来た神官の少女……ルーティが身の丈程もありそうな巨大な戦棍を振りかぶって迫っていた。
「ッ……!【ハイスマッシュ】ッ!」
間一髪振るわれる戦棍に打ち付けるようにして【ハイスマッシュ】を叩き込む。だが、不安定な体勢な上にアーツそのものとしても相手の方が威力が上の攻撃を完璧に防御する事は出来ず、吹き飛ばされてしまう。
「さすがにこうも一瞬でドドルが落とされるのは予想外だったよ……!
2つの自動蘇生手段(後で聞いたが、あの鈴の音は『呼び戻しの鈴』というとあるクエストのクリア報酬アイテムなのだとか。効果はHP全損時に1度だけHP1での自動蘇生だそうだ)で保護していたタンク(ドドルと言うらしい)を開幕数秒で落とされた事でリトゥーシュの顔に若干焦りの表情が浮かぶ。
「【リヴァ……っと!」
それでも、ルーティによって俺が吹き飛ばされた瞬間……つまりは目下の脅威が去った瞬間にリトゥーシュは同じ神官として惚れ惚れするような的確な動きでタンクを蘇生しようと蘇生魔法を唱えようとする。
そんなリトゥーシュ目掛けて、容赦なく火球と矢が飛んでくる。
カレットとリーシャがリトゥーシュの動きを妨害すべく攻撃を放ったのだ。
ダメージを与える事を主眼に置いていないその攻撃は、当然簡単に避けられてしまうが、それでも僅かに時間を稼ぐ事は出来た。
「トーカァ!こいつは任せろい!」
その一瞬でリクルスが『縮地』を駆使してリトゥーシュのすぐ側に潜り込み、拳を振るう。リトゥーシュ自身も最低限自衛ができる程度には戦えるようだが、やはり本職相手は分が悪いらしく防戦一方に押し込まれてしまう。
リクルスの目にも止まらぬ連撃を、杖を使って凌ぐ事に精一杯で、とてもでは無いが仲間のフォローに回る余裕があるようには見えない。というか、リクルスの攻撃を神官が1人で凌げるというという事に驚きだ。
リクルスとしてもリトゥーシュが1番厄介だということは分かっている。なので、無理せず確実に、仕留めると言うよりはリトゥーシュを自由に動かさない事を目的としているとはいえ、リクルスの連撃の過激さを知っている身として感服する他ない。
「クソッ!アイツをリーダーから剥がさねぇと!」
「あっちの神官もルーと同じってのは聞いてたがよ!ルーが相手にいると恐ろしい事この上ねぇのな!ドドルを一瞬で落としやがった!」
そう叫びながら『異端と王道』の軽戦士と剣持ちの騎士がリトゥーシュからリクルスを剥がそうとリクルスに攻撃を仕掛ける。
さすがに2人から攻撃を受けながらリトゥーシュの動きを止め続けるのは、いかにリクルスと言えど不可能だろう。
もしそれが、この場にいるのがリクルスだけだったらの話だがな。
「おいおい!俺も忘れてもらっちゃ困るぜ。【嵐舞:瞬】ッ!」
同じく『縮地』を利用してリクルスに追い付いたリベットが、リクルスに向かっていた2人の間に瞬時に割り込み、言葉通り瞬く間に振るわれた槍で各々一撃を弾き返す。
ウチには頼れる槍使いがいるんだ。彼がリクルスだけに3人も押し付ける訳ないじゃないか。
予選や前回のイベントでもそうだったが、彼の本質は攻めよりも守りにある。もちろん攻撃の面で見ても優秀だが、彼の真価は守りに徹する時にこそ発揮される。
騎士の上段斬りを穂先で軌道を逸らすことで受け流し、そのままの流れで槍を振るい軽戦士の持つ短剣を石突きで弾く。かと思いきや隙を見て鋭い三段突きを放つ。
防御に徹するだけでなく、時に鋭いカウンターを織り交ぜることで相手も迂闊な動きは取れなくなり、事態はより降着していく。
「えっえっ!?みんな大変そう!?じゃあルルちゃんだけであの二人止めるの!?それなんてイジメ!?」
そう言いながら涙目でカレットとリーシャに向かって各2発ずつ、4発の【ウォーターボール】を放つ『異端と王道』の魔道士。
泣き言のような事を言ってはいるが、一言も「無理」とは言ってない辺り彼女もトッププレイヤーの一角という訳か。
「はっはぁ!魔法合戦か!いいだろう、受けて立つ!【四重火弾】ッ!」
同じく4発の【ファイアーボール】を放つカレット。
カレットの放った【ファイアーボール】は、相手の魔道士の放った【ウォーターボール】を見事に撃ち抜き、小さな爆発と共に水蒸気が吹き荒れる。どうやら相殺したようだ。
「じゃあ僕はカレットのサポートだね、MPは気にしないでガンガン撃っちゃってね!」
「はっはっは!頼もしい限りだ!」
メイはこれまで通りカレットのすぐ側に控え、直ぐにポーションを手渡せる位置に陣取る。この体勢が完成するとカレットは本当に何も考えずに魔法を連打するだけだ。
「私は魔法と撃ち合うとか無理だからね、直接本体を叩かせてもらうとしようかな。もちろん全員の……ね!」
リーシャはと言うと、誰かひとりに固執すること無く満遍なくフォローを入れるスタイルで矢を放っている。
リベットの位置取りが悪くなってきたと思ったら軽戦士か騎士に向けて矢を放ち、カレットがMPポーションを飲む一瞬の空隙には正確に魔道士目掛けて矢を放つ。
地味だが決して無視できない正確さで手の届かない距離から他の仲間をサポートしている。
これがこのチームの最高の形なのだろう。6人全員でまとまって戦うのではなく、各々が最高のパフォーマンスを繰り広げながらそれを上手く噛み合せる。
お互いがお互いを助け合いながら自分の得意な形に相手を引きずり込む。結果、相手は見事に分断された形になり、上手くチームプレイを出来ずにいる。
チーム全体には既に【バフセット:カグラ】として設定したバフをかけてある。気兼ねする事はもう何も無い。
この状態ならば……俺も俺の敵に専念できるだろう。
俺と同じく異端の道を歩む、神官の少女との戦いに。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
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今後も当作品をよろしくお願いします!




