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第114話 『VS『異端と王道』①』

『異端と王道』戦は話数が少し長くなったので毎日投稿にしたいと思います。つまり②は明日投稿します

まぁジャジャ戦とか程のアホみたいに長くはないのでご安心ください


そして今回感想欄で頂いたアイディアを使用させていただきました、アイディアをくれた方、ありがとうございます

 

『さぁさぁさぁさぁ!やって参りました2回戦!第1試合は1回戦にて史上最速タイムを叩き出した『カグラ』と、ほぼ全ての敵を一撃で葬った『異端と王道』との対戦になります。解説のリーリアさん、この試合……どう見ますか?』

『うーむ。『異端と王道』の課題は『カグラ』の強力過ぎる初手ブッパをどう凌ぐかですね。凌げたとして『カグラ』はまだそれ以外の動きを本戦では見せていないので、そこからの動きにも随時対処していく必要がある。やはり対策が練れないという点において未知ほど恐ろしいものはありませんねぇ』


 俺たちチーム『カグラ』の面々が闘技場の手前で見えない壁が解除されるのを待っていると、そんな掛け合いが聞こえてきた。

 エボ君と妖精ちゃんによる実況ごっこ(れっきとした実況なのだが、2人の子供っぽい容姿やこれまでの掛け合いなどでどうしてもごっこ感が拭えないと掲示板ではそう呼ばれているらしい)だろう。


 正直1回戦の時の【白龍砲】は想像以上だったからな。

 俺とカレットのMPを全て持って行ったとはいえ、あそこまでの火力が出るのは予想外だった。

 カレットなんかは状況が飲み込めた後は自身の放った超強力な一撃に対してテンション爆上がりでやかましいくらいだったが。


『っと、ではそろそろ登場していただきましょう!2回戦第1試合、『カグラ』対『異端と王道』ッ!』


「いっちばんのりー!」

「あっ、リーシャこのっ!」

「遅れるなカレット!この距離ならまだ間に合うぞ!」


 壁が解除されるのと同時に駆け出していく3人を微笑ましげに見守りながら、残りの3人も後を追って闘技場内に入っていく。


 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!


「うわっ、歓声が凄いな」

「うん、耳が痛くなっちゃいそう」

「まぁそれだけ盛り上がってるって事だ。いい事じゃないか」


 第1試合のインパクトが強過ぎたからだろうか、『カグラ』の6人が出揃うと、会場が揺れる程の歓声が巻き起こった。

 先に出ていった3人は楽しげに観客に手を振っていたりなどもして、その度に更に歓声が強くなっていく。


 サービス精神旺盛というか、エンターテインメント性に溢れていると言うか。普通これだけの数の人間に注目を浴びせられたら戦闘中はともかく普段なら萎縮してしまいそうなものだか……そこは個人の感覚なのかね。


「さて、カレット。予定通り頼むぞ」

「さっき言っていたアレか。任せておけぃ!」


 3人に追い付くと、カレットにボソリと声をかける。事前に打ち合わせは入念にしたが、今回は動きが少し細かくなるからな。

 確認のしすぎということはないだろう。


『両者準備はいいかな!?それでは!レディー……』


 エボ君が手を手刀の形にして天高く振り上げる。


 ここから試合が開始する極わずかな時間で、この場にいる12人全員が直ぐに戦える姿勢を整える。それは、もう体に染み付いた形であり、構えるだけならそう時間はかからない。


 超集中状態にあるからか、やけに緩やかに感じる時間の中で、チラリと相手の様子を伺う。ルーティは戦棍を構えて姿勢を低くして直ぐに動けるようにしており、リトゥーシュは重戦士のタンクの影でリラックスした様子で佇んでいる。

 彼ならば【白龍砲】の開幕ぶっぱでさえ平然と対処してくる……そう思わせるだけの重みがあった。だからこそ、その勘に従って動きを変えた。


 随分と長く感じたが、実際は1秒も経っていないことだろう。

 ついに、あるいはようやく、エボ君の腕が振り下ろされた。


『ファイッ!』


「【拡散型白龍砲】ッ!」


 試合開始とほぼ同時に、カレットの【白龍砲】が『異端と王道』目掛けて放たれる。視界を純白に染め上げる破壊の本流に『異端と王道』の面々は避ける間もなく飲み込まれて……


 全てを破壊せんと荒れ狂う純白の咆哮が晴れ、彼等の姿が顕になる。1回戦ではこれ1発で試合を決めた【白龍砲】を真正面から受けて、だが全くの無傷で立っている『異端と王道』の面々の姿がそこにはあった。


『おおっと!?またまた決まった『カグラ』の初手ぶっぱ!しかし……『異端と王道』は誰一人欠けていない!それどころか僅かにすらHPも減少していない!完全に防ぎ切ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


 あぁ……カレットじゃないが【白龍砲】を完璧に防がれるのは自信なくすなぁ……


 まぁ、知ってたけど(・・・・・・)


「さっすがトーカ!予想通りだな!【貫通型白龍砲:双頭(ふたつがしら)】ッ!」


 カレットも自身の持つ最強の魔法である【白龍砲】を防がれたというのに、まるで気落ちした様子がない。

 それどころか、嬉々として2発目の【白龍砲】……【ブレス】ではなく【レーザー】を束ねた【貫通型】を放っている。


 というか、初手の【白龍砲】が防がれるのは予想通り……さらに言ってしまえば作戦通りだ。


 ◆◆◆◆◆


 試合直前の控え室にて、トーカとカレットの間でこんな会話があった。


「次の試合での開幕【白龍砲】だが、威力は最弱に抑えてくれ。各【ブレス】を1発ずつの【白龍砲】で、頭もひとつでいい」

「ん?それだと開幕ぶっぱにならないではないか。MPの心配ならメイがいるから大丈夫だろう?」

「あぁ、そこの心配はしていない。ただ、相手には神官として俺よりも数段格上のリトゥーシュがいるからな。『付与魔法Lv.10』に【プロテクション】っていうあらゆる攻撃を1度だけ無効化する魔法があるんだ。リトゥーシュならそれを一手で仲間全体にかける【エリアプロテクション】を使えてもおかしくない。というか、まず使えるだろう」

「つまり、どんなに高威力の一撃をぶつけても確実に防がれてしまうと?」

「あぁ、そういう事だ。だからこそ、最弱の【白龍砲】をあえて防がせる。そうすりゃバリアは剥がれるからな。そしたら【貫通型】の方でタンクを確実に潰して欲しい。まぁ【収束型】でもいいんだが、そこはお前の判断に任せる」

「ほぉ、なるほど。タンクが残っている状態でまた【拡散型】を撃っても、いつかの予選の時のようにタンクを影にして防がれそうだしな、確実に壁を剥がしに行くという訳か。了解した」


 ◆◆◆◆◆◆


「なぁ゛っ!?」


 囮の【白龍砲】を防いだ直後に顔面めがけて一直線で高速で襲い来る【貫通型白龍砲】を防げるはずもなく、予選から今に至るまでリトゥーシュを守り抜いたタンクの顔面が純白の光線に飲み込まれて消えた。


 【白龍砲】をもろに受けたタンクのHPが一瞬で空になり……すぐに半分にまで回復した。


「っあ……マジかよ。もう予約潰されたとか」

「うーん。これは嵌められましたね。バリア剥がすためにあえて弱くしてたってところでしょうか」


 さすがリトゥーシュ。細かいところに気付く。


 それに、タンクに予め蘇生魔法をかけていた所が抜け目ない。

 たしか、『回復魔法』の派生スキルである『治癒魔法』には、蘇生魔法である【リザレクション】を事前にかけておくことができるようになる魔法があったはずだ。それを使えば対象のHPが全損した際に自動で発動するように言ってしまえば予約する事ができるようになる。


 仲間全体に【プロテクション】をかけた際にタンクには追加で【リザレクション】を事前にかけておいたのだろう。


 ただでさえ硬いタンクが1度倒してもまた復活する……厄介なことこの上ない。あぁ、本当に厄介だ。


 だから……


 もう一度、ご退場願おう。


 コツンッ


 タンクの構える大楯にトーカが投げた小石がコツンと軽い音を立ててぶつかる。そして、次の瞬間。


「あ?いしこ……ろぉッ!?」


 小石が爆ぜた。


 爆ぜたというのはあくまで比喩だが、それほどの衝撃が発生したのは事実だ。

 間違いなく、その辺に落ちているような、フィールドで探せば苦労せずに見つかるレベルのアイテムで、防御に特化したタンクのHPを半分とは言え消し飛ばすダメージが発生した。


 あまりの衝撃に直撃を食らった大楯はひしゃげて跳ね上げられ、それを持っていたタンクも吹き飛びこそしない物の大きくのけ反った体勢を強制される形になっしてしまう。


 攻撃を放った側である『カグラ』以外には理解不能な攻撃を受けてHPを全て失ったタンクの体がだんだんと光に変わってく中で、戦場には似つかわしくない、チリンッという涼やかな鈴の音が聞こえた。


 かと思うと、ほわほわと光の粒が集まってタンク姿を象って行く。後からリーシャに聞いた話だが、なんとなくタンクが蘇生される光景が死霊鉱夫長が復活する時に似ていたらしい。


「なんだ今の……!?もう“鈴”まで使わされたぞ!?」

「【フルヒール】。さっきのは恐らく【ダメージギフト】を小石に付与したんでしょう。まったく……どんな攻撃を込めればこんな威力になるんだか、想像もつきませんよ」


 HPを全回復させる、ある意味『回復魔法』の切り札である【フルヒール】を使ってタンクのHPを全回復させながらリトゥーシュが冷静に分析している。


 今彼が言った【ダメージギフト】とは、『付与魔法Lv.8』で使用可能になる魔法であり、『付与魔法』では数少ないプレイヤーやモンスターではなくアイテムを対象とした魔法だ。


 使用する事でダメージを発生させうるアイテムに対してのみ使用可能なその魔法は、『この効果がかけられたアイテムを所持しているプレイヤーの攻撃を1度だけ無効化し、その時発生するはずだったダメージと同値の追加ダメージを与える効果を自身に付与する』という効果を持つ魔法である。

 

「あぁ、正解だ」


 そして、その推測は当たっている。【ダメージギフト】をかけた小石を持った状態で、高所からの【グラビトンウェーブ】を使用し、その際発生するはずだったダメージを小石に付与したのだ。


 当然、無策でそんな事をすれば辺り一体地獄絵図では済まないが、【ダメージギフト】の効果によって【グラビトンウェーブ】によって発生するはずだったダメージや影響は全てキャンセルされ、その威力だけが小石に付与された。


 なお、【ダメージギフト】のCTは付与するダメージに比例するという性質を持っている。

 この小石を作ったのが本戦出場が決まってすぐだと言うのに未だにCTが明けていないと言えばその威力の程が伝わるだろうか。


「そして、こっちも概ね予想通りだな【アースクラッシュ】」


 相手チームの起点は間違いなくリトゥーシュだ。そして、そのリトゥーシュを守るタンクに蘇生手段を用意していたと言うなら『回復魔法』とは別枠でもうひとつくらい蘇生手段を用意している可能性も十分に考えられるだろう。


 だからこそトーカは【グラビトンウェーブ】を付与した小石を投げると同時に『透明化(インビジブル)』を発動し、『縮地』を利用してタンクのすぐ側に移動していた。


 そして、盾を失ったタンクの腹部をすくい上げるように殴り付ける。そうすれば、当然足場の無い空中に放り出されたタンクは遠くに吹き飛ばされーー


「がはッ!」


 なかった。


 見えない壁に当たったように不自然に空中で停止するタンク。だが、その表情に驚愕よりも理解の表情が浮かんでいたのを見て、トーカは確信する。


 トーカがイベントに備えて手に入れた新たな力。


 タンクを受け止めた不可視の壁を生み出した、物理魔法どちらにも効果のある魔法的障壁を『スキルレベル』枚生み出す事が出来る神官専用の防御魔法である『結界魔法』を、当然の如くリトゥーシュも使えると。


「だがまぁ、殺る事は変わらん。トドメだ。【リトルメテオ】」


 だからこそ、全力で潰しに行く。


 空中で制止したタンク目掛けてメイの手によって釘バットから生まれ変わった新たな相棒を振るう。タンクに直撃する寸前に僅かに抵抗があったが……それも折り込み済みだ。だからこそわざわざ【リトルメテオ】(最強威力のアーツ)を使ったのだから。


 パリンパリンパリンパリンパリンッ!


 ガラスを割ったような音が5回ほど響く。リトゥーシュの張った障壁だろう。だが、それでもなおトーカの振るう戦棍の勢いは止まることなく突き進み、流石と言うべきか【グラビトンウェーブ】直撃クラスの衝撃を受けても手放さなかった大楯を不安定な姿勢で構えたタンクの体を、ひしゃげた大楯ごと叩き潰した。


「がぁ……っ!すま、ねぇ……!」


 トーカの生み出した障壁とトーカの放った【リトルメテオ】に挟まれ、押し潰されたタンクはそう言い残すと、今度こそその身を光の粒へと変えて空に溶け消えた。


今回の【ダメージギフト】&【グラビトンウェーブ】のコンボ、本当に実装させるかめちゃくちゃ迷ったんですよね。

小石投げるだけで大抵の敵が消し飛ぶとか展開としてつまらない事この上ないでしょうし……

妥協点としてCTがとんでもなく長い、ということで落ち着きましたが、【ダメージギフト】については調整が入るかもしれません


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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