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第111話 『初戦直前の控え室にて』

あっれ、おっかしいなぁ……

試合開始前のちょっとした雑談のはずが1話丸々使ってるぞ?

という訳で本戦は次回からとなります

 

「あー……緊張してきたな」


 どこか落ち着かなさげに屈伸やら腕のストレッチやらをしているリクルスが、それでも緊張を解せなかったのかそう呟く。


 1回戦第1試合……つまり今回の大会の本戦最初の試合に出場する俺達チーム『カグラ』は現在控え室にいる。

 控え室は一般的な教室程もある結構な広さだが、軽く体を解したり動きの最終調整をしたりするように少し広くなっているのだろう。


 開会式終了後に直ぐに控え室に集まり、動きの確認や作戦会議を終えたのだが、それでもまだ試合開始までは10分程残ってしまっている。


 話している間はよかったのだが、何もやる事がないただの空き時間というのは良くも悪くも色々と考えてしまうものだ。そのせいでトップバッターという事への緊張がじわじわと『カグラ』の面々を蝕んでいるのだ。


「よ、よし。改めて動きの確認だ。基本は予選と同じで、必要に応じて俺が前線に出る。メイも同じく後衛組のサポートで秘策は温存の方向で、ただし一応できる限りの準備だけはしておいてくれ」

「1回戦から出すとなるとやっぱり対策はされちゃうからね。抱え落ちは避けたいけどできるだけ温存するよ」

「まぁまっかせなさいな。メイに近付く不届き者はみんな私とカレットで蜂の巣焼きよ!」

「そうだぞ!メイには指一本触れさせないから安心して私達のサポートに徹してくれ!」

「うん!2人とも……ボクの事は任せたよ!」


 ……1字1句変わらぬという訳では無いが、このやり取りも既に3回目である。それだけ動きが予選のあいだにしっかりと固まったと思えばそれはいい事なのだが、緊張を紛らわすといった点ではそこまで効果的とは言えない。


「あーなんか話してないと緊張するな……なんか話題あるか?」


 準備運動では限界が来たらしいリクルスがついに腕立てを始めながらそんな事を言い出した。たが、そんなにすぐ話題が出てくる訳でも……


「あ、そう言えばさ、みんなはどこに賭けた?私はもちろん『カグラ』(自分のチーム)に全額ぶっ込んだけど」


 出てきた。


 確かにこの予選期間のあいだはあらゆる敵から今大会専用アイテムの『ベットコイン』がドロップし、動きの確認も合わせて3桁近い数の『群狼』やロッ君を光に変えてきた俺達は意外と手持ちが豊富なのだ。


 今回は複数賭けは出来ないが1位と2位の2枠に賭けることは出来るようになっている。どちらか片方だけ当てても当選金自体は貰えるが、1位2位どちらも的中させるとその倍率は跳ね上がるとかなんとか。その事を言っているのだろう。


「もちろん俺もセルフ全賭けだぜ!2位は兄貴の『クラウン』だな!兄貴のチームと優勝争いがしてぇんだ!あわよくば勝ちてぇんだ!」

「ほぉ、気が合うな。私は当然1位は私達で2位はノルシィ達……にしたかったのだが、組み合わせ的にそれは有り得なかったからな。私も2位は『クラウン』に入れたぞ。決勝で彼等(予選最強)に勝つ!という一種の意思表示だな」


 予選で新たな動きを試す時等ならともかく、せっかく出場権を勝ち取った本戦で負ける前提で試合に挑む者はいないだろう。

 既に証言してあるリーシャ、リクルス、カレットの3人を除く、俺を含めた残りのチームメンバーも1位は自分に入れていた。


 それだけならまだ分かるのだが、2位も同じく『クラウン』に入れたそうだ。それだけ予選無敗の肩書きは凄まじいという事だろう。


 賭けの話で興が乗ったのか、リクルスが腕立てを止めて何かウィンドウを操作し始めた。何をしているのかと思ったが、どうやら配当表を見ているようだ。


「さすが兄貴だな……『クラウン』1位の時の配当は1.2倍だったぜ。次いで『魔道研究会』が1.7倍だな」

「うっはぁ……さすが予選無敗というかなんというか、みんな賭けるなら『クラウン』って感じなのね」

「まぁここまで分かりやすく優勝候補だとな、友人のチームとか自分のチームとか言った理由が無い限り他に賭けるにも勇気はいるだろう。それでもあたりはずれに関係無く賭けた分の1割は景品引き換え用のコインが貰えるらしいから意外とほかの所に賭ける奴もいるんじゃないか?」

「トーカの言う通りだな、さすがに倍率は高くなるがほかのチームに賭けてる奴もそこそこいるっぽいぞ。3番目が『コロッケ』で3.6倍。ここで一気に倍率が跳ね上がるのは……まぁそういう事なんだろ。『コロッケ』は初戦から『クラウン』と当たってるが……だからこそ逆にワンチャンあるんじゃないかって言われてるな」

「リクルス!私達の倍率は!?」


 リクルスはどうやら上から全部読み上げていくつもりだったらしいが、カレットが我慢できずに自分達の倍率を教えろと迫る。

 自分のウィンドウで確認すればいい話なのだが、どうやら他者から聞くという発表方式で聞きたいらしい。まぁその気持ちは分からなくもない。


「そうだな、俺達は『異端と王道』と並んで5番目に倍率が低いな。とは言っても『コロッケ』の次からは倍率が本当に跳ね上がるから……俺達は10.2倍だな」

「ほぉ!2桁行ったか!行ってしまったか!」

「驚くのはまだ早いぜ?『クラウン』との連番ともなると一気に51.2倍にまで跳ね上がる。というか『クラウン』が2位で1位が『魔道研究会』じゃない場合は大抵似たりよったりの倍率だ」

「「「「「51.2倍!?」」」」」


 マジか……俺達全員そんなにエグい倍率の所にかけてることになるのか……というか倍率50倍越えってなんだよ、ギャグかよ。


 確か『ベットコイン』のドロップはボスが一律で50枚、その他のモンスターは強さによって1〜10枚のどれか、『群狼』の取り巻きは一体につき10枚ドロップした。

 そんでもってドロップ品、特に今回の『ベットコイン』は正確に等分されて戦闘参加者全員に配られたから……『カグラ』全体で見れば約2万枚近くコインがあるはずだ。そして、全員が全員全コイン『カグラ』と『クラウン』の連番に入れているから……


「って事は俺ら優勝の兄貴達が2位で……100万ちょい!?やばくね!?」


 っと、リクルスも同じ皮算用をしていたようだ。

 そして負けた。なんでこいつこういう金額系の計算だけは早いんだ?たまに特定の条件下でのみ計算がめっちゃ早い人(割り勘の計算とか)はいるけど俺が出会った人の中でリクルス……瞬がこの手の計算は1番早いぞ。


「『カグラ』全員が自分と『クラウン』の連番に入れていた場合……だから今回だな。当たれば『カグラ』全体でのプラスはそうなるな。まぁそれをチーム資金として回収するならともかく個人個人なら20万行かないくらいか?それでも相当に多い……ってか今そんなこと考えても皮算用でしかないけどな」


 リクルスに暗算で負けたのがちょっと悔しかったので個人個人の取り分を計算してマウントを取りに行く。……虚しい。


「それでも十分過ぎるほどに十分だろ!景品のラインナップはまだ未公開だけど……20万あれば大抵の物は交換出来るっしょ!」

「おいおい、まだ貰えると決まった訳じゃ無いんだぞ?『クラウン』は普通に勝ち進むだろうが……俺達も勝ち続けて、最後には予選無敗を成し遂げた『クラウン』に初めて泥を付けないと行けないんだ。皮算用ばっかしてると後々辛いぞ?」


 あまりのコインの多さにリクルスが興奮しまくり、そこをリベットが冷静に諭しているが、その横ではリーシャとメイでも同じやり取りが行われていたりする。

 そして俺も今からカレット相手に同じやり取りをする予定だ。


『さぁさぁ!第1試合開始3分前!離席中の人は戻った戻った!』


 と、そんなやり取りをしている内にもうそろそろ試合の開始時刻が差し迫っていた。取らぬ狸の皮算用という、ある意味最も無駄な会話ではあったが、それでも緊張をほぐす程度の意味はあったらしい。


 もう誰の顔にも緊張の色は見られなかった。


「んじゃ、行くか。せっかく皮算用はしたんだ、後はたぬきを捕まえるだけってな。皮算用が無駄にならないようにまずは初戦、勝ちに行こう!」

「「「「「おーーーッ!」」」」」


賭けの仕様が少し分かりずらいかもしれませんので補足を

今回のイベントでは賭けられる枠が『1位予想』と『1位2位の連番予想』の2つのあり、賭けられるのはそのうちのどちらかひとつに1回だけという形になっています

作者がギャンブルとかやった事ないので仕様がよく分からないという理由が大きいのでこの仕様に疑問を持つ方もいるかもしれませんが、そこはご容赦ください


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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