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第110話 『開会式』

 

 時は第2回イベント、正式名称『《EBO》トーナメント大会』本戦開催日当日、時刻はイベント開催時間の直前。


 普段はプレイヤー入れない(イベント後にPvPコーナーとして解放予定らしい)ため閑古鳥が鳴いている闘技場も、この日ばかりは座席が足りず立ち見の客すらいるほどの超満員となっていた。


 なんでも予選期間中にあらゆるモンスターがドロップするようになっていた賭け用のコイン……『ベットコイン』を一定量集める事で『本戦観戦チケット整理券』なる物が交換できたのだとか。


 それに見事当選した幸運なプレイヤーは、たとえ『群狼』を討伐出来ていなくてもイベント期間中なら自由に【ララララ】に来て大会を観戦する事ができるらしい。


 そのおかげか、到達者以外にも多くのプレイヤーがトッププレイヤー達のガチバトルを一目見ようと闘技場に集結していたのだ。


『れでぃーす』

『『あーんど』』

『じぇんとるめーん』


 午後1時……つまりはイベント開催時刻ぴったりにその2人は現れた。

 黄髪緑眼のいたずら小僧風の少年と、同じく黄髪緑眼の小さな体躯の少女。第1回イベントの開催宣言も担当した、《EBO》公式マスコットキャラクターのエボ君と、その人気からGMコール対応からイベント進行も担当するようになった妖精ちゃんことリーリアである。


 そして、2人は闘技場の中で思い思いの姿勢で待機していた80名……今大会の本戦出場を果たした猛者達を一通り見渡すと、満足気に頷き口を開く。


『『やぁやぁ皆さん。まずは本戦出場おめでとうと言わせて貰おう』』


 前回の反省を活かしてか、個別に喋ること無く声を揃えて話すエボ君と妖精ちゃん。

 まだ声変わりもしていない少年風の声と、小さな体躯から精一杯絞り出される高めの声。その2つが混ざり合い、なんとも言えない不思議な声音となってその一言一言が闘技場全体に染み渡るように響く。


『今この場にいる人達はみんなトップクラスの実力かトップクラスの幸運の持ち主だよ、その事を忘れないで今日この日を精一杯楽しんでね!』

『あっ、ちょ……』


 と、思ったら早速妖精ちゃんが先に喋り出した。

 裏切られたエボ君があたふたしているが、妖精ちゃんはそんな事はお構い無しにどんどんと説明を続けていく。


『ゲームのイベントに長ったらしい挨拶なんぞ不要!という訳で開会式のラインナップはたった4つ!その1!大会における注意事項!その2!トーナメント表発表!その3!プレイヤー代表による選手宣誓!以上!』


 4つじゃねぇじゃん!というノリのいいプレイヤー達のツッコミを受けて満足そうに笑う妖精ちゃんと、その姿を恨めしそうに見つめているエボ君。前回も見たような光景だ。


『さ、さぁさぁ気を取り直して!大会の諸注意から始めようか!』


 今度はエボ君が妖精ちゃんに先んじて話し始めた。

 どうやら妖精ちゃんも今回は会話の邪魔をするつもりは無いようで、大人しくしている。


『本戦にまで来るほどの君達なら心配は無いとは思うけど、必要以上の罵詈雑言や試合放棄、試合内容への暴言や喧嘩などの選手や観客として恥ずかしい行為は禁止!』


 度を越えなければ試合を盛り上げたり自身や仲間を鼓舞するのに荒い口調はむしろ有効な手段だからね。と続けてエボ君は大会の注意事項を実に簡潔に言い終えた。


 現実世界の大会なら危惧すべき大抵の事はシステム上出来ないとはいえプレイヤー自身のモラルに大会のマナーを任せるのは、一見すると無責任にすら見える。だが、だからそこ逆にプレイヤー自身でそこを強く意識するようになるという考えあっての事だろう。


 最悪、この時の反応で今後のイベント時に調整すればいい話でもあるしな。


『そっのにー!トーナメント表の発表ぉー!』


 次に語り出したのは妖精ちゃん。どうやら交互に言っていくという事で二人の間で決着が着いたらしい。


『のーまーえーにー、ちょっと補足!第1回戦は全8試合!この大会では全部の試合をこの闘技場で行うよ!試合終了の5分後に次の試合が始まるからね!1回戦が終わったら30分の休憩と作戦会議時間を設けてから2回戦、2回戦が終わったらまた30分取って準決勝、また30分開けて決勝戦という流れになるからね!1回戦第1試合は開会式終了の30分後に始まるよ!大丈夫?理解した?』


 そう言って耳に手を当てる仕草をする妖精ちゃん。

 ノリのいいプレイヤー達の元気のいい返事を聞いてまたしても満足気だ。


『それじゃあお待ちかねのトーナメント表発表だよぉ!』


 ノリのいいプレイヤー達のおぉぉぉ!という声を受けて意気揚々と組み合わせの発表を始める妖精ちゃん。

 だらららららららららら〜と前回のようにセルフでドラムロールをする事も忘れない。


『1回戦第1試合!赤コーナーァ!開幕ブッパはご挨拶、生き残ったのなら戦いましょう。チーム『カグラ』!対する青コーナーはぁ!護るべき者のため、紳士道をいざゆかん!チーム『紳士連盟』!』


「おおっ!いきなり俺らか!」

「初PvP大会の初戦か!これは熱が入るな!」


 早々に名前が呼ばれた事でチーム『カグラ』の面々が沸き立つ。

 対する『紳士連盟』はと言うと、実に落ち着いた様子で「ほぉ、いきなり我等が仇敵とですか……これは運がいい」などと呟いて、作戦会議だろうか、仲間内で何か話し合っている。

 その時、『紳士連盟』の面々から殺意すらこもった鋭い視線が『カグラ』のある人物に向けられていたことに気付いた者はいなかった。


『第2試合!赤コーナーァ!視界を奪え景色に紛れろ意識を逸らせ、探しても見つからなければそれはもはや遭難だ!チーム『雪山遭難隊』!対する青コーナーはぁ!癒して付与して殴りつけて、元は同じ神官さ、元だけはなぁ!チーム『異端と王道』!』


 ついで名前を呼ばれた2チームも早めの試合とあってやはり浮き足立っているようだ。その中で『異端と王道』の内の1人が仲間を鼓舞している様子がチラリと視界の隅に映った。遠目からでも分かるほどの相当なやる気だ。絶対に負けたくない相手だったのだろうか。


『第3試合!赤コーナーァ!戦闘中でも宣伝は忘れない。商魂たくまし過ぎる彼らは豆腐ブームを巻き起こせるのか!?チーム『豆腐屋EBO支店』!対する青コーナーはぁ!全世界のみかん好きを敵に回してりんご好きを味方につけろ、まぁ結局どっちも美味しいんだけどね!チーム『O<A(蜜柑より林檎)』!』


『第4試合!赤コーナーァ!燃やせ濡らせ揺らせ吹き荒べ、近付く間もなく敵を飲み込む極彩色の魔法乱舞!チーム『魔道研究会』!対する青コーナーはぁ!もこもこコートに身を包み、灼熱地獄を顕現せよ!チーム『常夏の冬休み』!』


「おおっ!ノルシィ達だぞ!ふむふむ……準決勝まで行けばノルシィと戦えるのだな!」


 ライバルにして憧れの魔道士であるノルシィ率いるチーム『魔道研究会』の発表にテンションをはね上げるカレット。

 第1目標は優勝だが、カレットの中では間違いなくノルシィとの対決も優勝と同じくらいの重要度だったのだろう。その真剣さが伺える程の剣幕で「絶対に、何がなんでも準決勝まで行くぞ!」と決意を固めている。


『第5試合!赤コーナーァ!確実に、堅実に、時には大胆に、尖ったところはないけれど、それゆえの万能性をとくと見よ!チーム『コロッケ』!対する青コーナーはぁ!今大会出場チーム唯一の予選無敗とかいうぶっ飛んだ記録を叩き出してくれちゃった生ける伝説(レジェンド)!チーム『クラウン』!』


 隣でリクルスが「兄貴のチームだ!予選無敗とかやべぇ!」とか言って興奮しているが、俺個人としては興奮よりも恐怖が先に来た。

 なんだ予選無敗って……強いなんてレベルじゃ無いぞ……


 観客は盛大に沸き立ち、選手達が(リクルスのような一部を除いて)みな戦々恐々としている中でも組み合わせの発表は続いていく。


『第6試合!赤コーナーァ!縦横無尽に動き回り、閃く刃よ遍くを刻め!チーム『ミミランド』!対する青コーナーはぁ!それは古来より受け継がれた名前の伝統、誰もが1度は付けるであろう名前を冠していざゆかん!チーム『ああああ』!』


『第7試合!赤コーナーァ!悲しい事を言うんじゃないよ、全力で今を生きればその時が青春さ!チーム『俺らの青春はどこじゃ』!対する青コーナーはぁ!一念岩をも通すとは言うけれど、昆布だけ食べてれば良い訳じゃないらしいから頑張ってね!チーム『昆布食べても髪生えない』!』


『第8試合!赤コーナーァ!かける派とかけない派の仁義なき戦いに決着は付けられるのか!チーム『タルタルソース』!対する青コーナーはぁ!正月ならば餅を食え、正月じゃなくとも餅を食え、餅好きの餅好きによる餅好きのためのチーム!チーム『嘘と餅はついたことがない』!』


 どこもかしこも本戦に出場するだけあって強者独特の雰囲気を纏ってはいたが、それすらも霞ませる《クラウン》の圧倒的強者としての風格に最高に盛り上がった会場の空気はいかんともしがたく、最後の3つの組み合わせの発表はイマイチ興奮に欠ける結果となってしまった。


『最後に、プレイヤー代表による選手宣誓だよ!代表者は予選最高勝率のチーム『クラウン』のリーダー、アッシュだ!』


 エボ君がそう言うと、第1回イベントの結果発表時にも出てきたマイクを取り出し、アッシュに向けて放り投げる。


 アッシュはそのマイクを受け取ると、ん゛っんんと1つ咳払いをし……


『司会進行に習って手短に。勝利を目指して全力で戦うことをここに誓う!』


 果たしてマイクが必要か疑問になるほどの声量で宣言通り手短に宣誓を終えると、アッシュはマイクをエボ君に投げ返す。


『わぁお!ドシンプルで最高の選手宣誓だったね!』

『ひゅーひゅーかっくいー』

『『それでは!第2回イベント【《EBO》トーナメント大会】の開催をここに宣言する!』』


 エボ君と妖精ちゃんはそう言ってから、選手観客含めたプレイヤー達の盛り上がりが最高潮に達するのを待ってからそう宣言した。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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[一言] チーム名がふざけてて草
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