第102話 『フィーバータイム』
今回で洞窟組は終了ですね
この章ももう少しで終わりそう
今度こそ死霊鉱夫長は復活する様子もなく、どこか悔しげに溶けて消える光の粒達を不審な挙動は僅かたりとも見逃さないとばかりに光の粒達を睨み付けるように観察し続ける。
《称号『秘境鉱床の主』を入手しました》
光が完全に溶け消えた頃に流れてきたこのインフォメーションが決着を確定的なものにし、ようやくリーシャは肩に入れた力を抜いて一息吐くことが出来た。
ふぅっと大きく息を吐くと、リーシャはインベントリから2本目のHPポーションを取り出し、豪快に飲み干す。
メイ特製のHPポーションとはいえ、レッドゾーンまで落ちたHPはさすがに1発じゃ全回復させることは出来なかったらしく、まだHPは3割以上が減少したままだ。
このままだと次にまた同じようなダメージを受けた時に耐え切ることが出来ないので、念には念をとHPを全回復させておく事にしたようだ。
「うぅ……不味いよぉ……」
リーシャは泣き言を言いながらもしっかりとHPポーションを飲み干し、死霊鉱夫長戦で減ったHPを全回復させる。
今回の敵はなかなかに高レベルだったのか、死霊鉱夫達と死霊鉱夫長を合わせて2つもレベルが上昇したので、入手したSPを忘れることなくDEXとAGIに半分ずつ割り振る。
途中「うーん……今回結構やばかったしVITにも割り振った方がいいかな……」などと葛藤していたようだが、当たらなければノーダメージ教を貫く事にしたようだ。
「さてさて、まだメイの採掘は続いてるようだし……まだ完全には気は抜けないわね」
そう言っていつでも臨戦態勢に入れるようにして待機していたリーシャだが、採掘音は未だに鳴り響いているのに一向にモンスターが襲って来ない。
不審に思い原因に想像を巡らせていたリーシャは、死霊鉱夫長を倒した時に入手した称号の事を思い出し、その効果を確認すべく周囲の警戒は続けつつもステータスメニューを表示し、内容を確認するために目を向けた。
「たしか……あったあった。えーっと?『秘境鉱床の主』かぁ。名前からしてもう凄そうな称号ね」
そう言って称号の効果欄に目を通したリーシャは……
「なぁんだ。そういう事か」
そう言って一気に脱力した。当然弓も直ぐに構えられる状態にないし、周囲警戒も完全に解いている。この状態ではもしモンスターが襲って来ても対処出来ずに殺られてしまうが……
リーシャはそんな事は知るかとばかりに手頃な岩に腰掛けて休憩を始めた。
警戒度MAXだったリーシャが一瞬でこうなった理由は、当然いまさっき入手したばかりの『秘境鉱床の主』にある。
この称号は端的に言えば『忘れ去られた廃坑』の奥にあるこの『秘境鉱床』のかつての主である死霊鉱夫長を下したことでリーシャが新たな主になった事を示すものであった。
そして、その効果は『秘境鉱床』内での採掘効率と採掘結果に大きな上昇補正が付くこと、そしてこの称号の所持者が『秘境鉱床』にいる限り、その場に限ってはモンスターが採掘音に引き寄せられる事はなくなるというものだった。
つまり、リーシャがいる限りこの『秘境鉱床』内に限ってはどんなに採掘音を立ててもモンスターがやって来ることは無いという訳だ。
それ以前に、リーシャとメイはパーティを組んでいるのでもしかしたらメイにもその称号が与えられているかもしれない。
と言うよりは先程からメイが「うわっ!急にいい鉱石が沢山出てくるようになった!?なにこのフィーバータイム!絶対無駄にしない!」と普段見ることの出来ないようなはしゃぎようでより一層採掘に熱を出し始めたことからメイも取得していると思われる。
「もう危険は無いっぽいし……私はちょっと休憩させて貰いますかね」
そう言うと、リーシャはメイに『1時間位で戻るけどそれより前に終わったら呼んでね〜』とメッセージを送り、美味しい物を食べるためにログアウトするのだった。
◇◇◇◇◇◇
「メイ〜?そろそろ切り上げた方がいいんじゃない?」
週末だからと母親が買ってきたコンビニのケーキに舌鼓を打ち、お風呂に入ったり部屋のベッドでごろごろしたりして存分に体をほぐしてから《EBO》に再びログインしたのは宣言した1時間を30分程過ぎた頃だった。
未だに飽きず採掘を続けているメイを見てメイにもしっかりと『秘境鉱床の主』の称号は与えられたようだと判断し、メイに『ちょっと探検してくる』とメッセージを残して廃坑探索をすること同じく1時間と30分ちょっと。
幾許かの成果を引っさげてリーシャが帰還しても、メイは飽きること無く採掘を続けていた。
時刻は既に12時を回っており、翌日は休みとはいえ花の女子高生がゲームを理由に夜更かしするにはなかなかに遅い時刻になってきたからと、採掘が一区切り付いたタイミングを見計らってリーシャがメイに声をかける。
「あ、リーちゃん!ここ凄いんだよ!なんかもう……本当に凄いんだよ!」
声をかけたリーシャに語彙力を失ったメイが興奮を抑えきれないといった様子で詰め寄る。それをリーシャは「はいはいすごいすごい」と聞き流し、ちょいちょいと何も無い空間……プレイヤーの視覚的には時計がある位置を指で指し示す。
「ん?時計がどうしたの……ってもうこんな時間!?」
「本当に気付いてなかったのね……」
既に12時を回っている時計を見てあわあわしているメイをリーシャは呆れ顔で宥める。
「それで……素材は集まった?」
「うん。必要分はとっくに集まってたんだけど……ちょっと前から急にいい鉱石が立て続けに出るようになって、すごい熱中しちゃった」
「そう、集まったならいいわ。カレット達も明日には集め終わりそうって言ってたし……今日はもうお開きにしましょ」
「うぅ……付き合わせちゃってごめんね……」
「大丈夫よ。ちょっと休憩挟ませて貰ったし、廃坑の探検も出来たしね」
ええっ!?私の護衛は!?死んじゃったらせっかく集めた素材パーだよ!?と『秘境鉱床の主』の事には気付いていない様子のメイの顔を見てリーシャはイタズラっぽく笑うと、それ以上は何も言わずにひらひらと手を振ってログアウトするのだった。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
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今後も当作品をよろしくお願いします!