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第97話『隠しルート』

 

「えーっと、3つ目の十字路を右で……中央に穴が空いた岩を目印にそこから2つ目の曲がり角を曲がって……」


 戦闘をリーシャに全て任せることで目の前の事だけに集中出来るようになったメイは記憶を探るようにぶつぶつと呟きながら洞窟を進んで行く。

 リーシャはというと、完全に自分の世界に入って進んでいくそのメイの後ろに続いて、時折現れるモンスターをあしらっては矢を回収して一喜一憂している。


 そんな事をしながらの洞窟探検もすでに2時間ほど経過している。

 洞窟とは言ってもそこまで広くも深くもないこの『出涸らしの空洞』ならば、普通に進んでいればそんなに時間はかからないはずなのだが、メイが何かを探しているようで変則的なルートを通っているためこんなに時間がかかってしまっているのだ。


『グロロロ……』


「あーはいはい、また蜥蜴さんですか。土へお還り」


 本来ならそこそこの強敵であるはずの洞窟蜥蜴(ケイブ・リザード)の両目を一息で居抜き、洞窟蜥蜴が視界が奪われて混乱している隙に『縮地』で真後ろに回り込み、弓にしては異常とも言えるほどの鋭さを持つ尖った先端で脊髄を貫いてから念入りに捻って確実に仕留める。


「うーむ、正面戦闘が苦手だから効率よく倒せるように戦ってるのに……『非道』とは、全く失礼しちゃうわ」


 この口振りから分かる通り、リーシャもトーカと同じく『非道』の称号を所持しているのだ。そして、取得理由はつい先程リーシャ自身が言っていた通り、正面戦闘が苦手な弓術士にも関わらず『弓闘術』という近接戦闘スキルを入手しているためである。

 本質は遠距離職である弓術士はいくら『弓闘術』という手札があろうと近接戦闘の本職を相手にしては分が悪いため、どうしても首や目などの弱点部を狙って戦う必要がある。その結果、このスタイルで戦っていく以上嫌でも『非道』までは取得してしまうのだ。


 とはいえ、口ではそういうものの、光に変わっていく洞窟蜥蜴に見向きもせずそうボヤやいて元の場所に戻って行くリーシャの顔からは『非道』に関する不快感は全く見受けられない。

 トーカもそうだが、口ではどうこう言っても“与ダメージ1.5倍”と言う純粋に強力な効果には相当助けられているので、そこまで嫌な訳では無いのだ。ただ他人に言い難いだけなのだ。


 ちなみに、トーカが『非道』のさらに上位称号である『外道』を取得しているのは、必要以上に『非道』の効果が発動するような攻撃を短時間に連続で意図的に使用し続けたからという理由があったりする。

 この“短時間に連続で意図的に”というのが『非道』を取得している人はそこそこいても『外道』まで取得しているプレイヤーが少ない最大の理由となっている。


 プレイスタイルの関係上『非道』の効果が発生する類の攻撃をせざるを得ないようなプレイヤーでは、この条件を満たす事はなかなかできない。そういったプレイヤーは大抵がヒットアンドアウェイを主軸に置いた戦法を取っているため、どうしても攻撃に間隔が空いてしまうからだ。

 なら『非道』を『外道』に昇格させるにはどうすればいいのかと言うと、『非道』を発動させようと意図的に狙って攻撃を続ける…… それこそ動けない相手の弱点部ーーと言ってもシステム的に設定された箇所ではなく、頭部や四肢などの生物として共通している弱点の事だがーーを執拗に攻撃し続けるなどの普通ではしないような外道戦法的な行為がトリガーとなっているのだ。


 閑話休題


「ってあれ?メイは?」


 リーシャがやれやれと首を振りながら元の場所に戻ると、そこにメイの姿はなかった。パーティーメンバーのHPも視界上に表示されているので、リーシャが離れているうちに殺られてしまった訳じゃ無い事は分かるのだが……


「メイー?メイいないと私は道分かんないわよー?」

「リーちゃん、こっちこっち」


 リーシャが呼びかけると、返事が返ってくる。こっちこっちと言うからには既にメイは先に進んでいても近くに……それこそ視界に入る場所にいるはずなのだが、辺りを見渡してもメイの姿は見つからない。


「……?どこー?」

「上だよ上。右側の壁の上側に横穴があるでしょ?」

「上……?いないじゃない。横穴なんてどこにもないわよ」

「あっれぇ?」


 どうやらメイはその横穴にいるそうなのだが、肝心のリーシャにはその横穴が見つからない。リーシャも『弓闘術』で近距離戦が出来るとはいえ狙撃を主軸に戦う弓術士だ。もちろん暗所での戦闘にも対応出来るように『暗視』は習得している。

 そのため、暗い洞窟内でも明かり無しで苦労しない程度には視界を確保出来ている。にも関わらずメイの言うような横穴は見つからない。


「なんか条件でもあるんじゃないの?採掘のレベルが一定値以上とかさ」

「うーん。そうかも……あっ、そうだ!」


 メイには見えてリーシャには見えない謎の横穴という怪現象にしばらくうんうんと唸っていた2人だが、メイが何かを閃いたように声を上げる。


「おっ、何か思い付いた?」

「うん。もしかしたらだけど……ボクが渡したヘッドライト使ってみて」

「へ?えーっと……これ?明かりなら『暗視』があるからいらな……あれぇ!?」


 どうせ『暗視』があるからとインベントリに死蔵されていたメイお手製のヘッドライトに照らされた壁に、先程までは何も無かったにも関わらず横穴が出現しているではないか。さらにその横穴からメイがひょこっと顔を出している。


「さっきまで何も無かったのに壁に横穴が空いてるぅ!?なんでぇ!?」

「多分あれじゃないかな、『暗視』を使用して視界を確保してたら見えない隠しルート的な」

「へぇ……そんな仕掛けもあるんだ……」


 このメイの予想は大正解であり、この横道は『暗視』を使用しているプレイヤーにはただの壁にしか見えないという仕掛けが施されているのだ。


 人気のない『出涸らしの空洞』に来るような物好きなプレイヤーは、大抵は何らかの理由でそこまで質の高くない鉱物が必要になった生産職あるいはその生産職に依頼を受けたプレイヤーであり、そういったプレイヤーは必ずと言っていいほど『暗視』を取得している。

 既に『暗視』によって十分な視界が確保出来るにも関わらず、自ら『暗視』の効果を切って松明などの明かりを使用する可能性など無いに等しい。

 そのため、『出涸らしの空洞』に存在するこの横穴の存在に気付いているプレイヤーは現時点でメイだけしか存在しないのである。


 ちなみに、何故メイがこの横穴の存在に気付いたかと言うと、自作のヘッドライトの性能を試す為に人気のない『出涸らしの空洞』で『暗視』をオフにしてヘッドライトの性能確認がてら錬金術で使用する粗悪な鉄鉱石を採掘している時に、偶然見つけただけだったりする。


「ほっほっと、『登攀』さまさまね。リアルじゃこんな壁スムーズに登るなんて絶対無理だわ」

「うーん、リーちゃんなら意外と行けるんじゃない?」

「何言ってんの」


 リーシャが壁を登り終え、メイが見つけたという横穴までたどり着く。そこは入口こそ狭く『暗視』を使用していなくても見つけにくい事には変わりないと思えるくらい壁の上の方にひっそりとあるだけだっが、1度中に入ってしまえば今までの通路と大差ない程度には道が開けている。


「へぇ、中は意外と広いのね」

「うん、目的地まではあと少しだよ。ここからはモンスターも少し強くなるから……リーちゃん、よろしくね?」

「まっかせなさいな。ちょうど敵が弱くて辟易してたところだからね、難易度上昇ばっちこいよ」


 リーシャが自信満々に胸を叩く。事実、リーシャに較べて『出涸らしの空洞』のモンスターの強さは数段劣り、物足りなく感じていた所である。それが少しは歯ごたえとある敵になるというのだからテンションも上がろうと言うものである。


 少し休憩を挟んだ後、2人の少女は横穴のさらに奥へと進んで行った。


おっと……?この後に戦闘も控えてるのにまだ目的地にすらついてないぞ……?


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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