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第96話『やりたい人がやりたい事を』

随分と久しぶりのメイとリーシャの登場だったので今回改めて描写してみました

 

 第2フィールドの端にある小さな洞窟。

 同エリア内に存在するもうひとつの洞窟エリア『巨大洞窟』の陰に隠れて息を潜めるようにひっそりとしているその洞窟は、名を『出涸らしの空洞』といい、存在を知っているプレイヤー自体が少なく、ほとんど誰も訪れない寂れた半ば秘境のような場所となっている。


 この《EBO》において、洞窟エリア最大の目的とされるのは鉱物資源だが、取れる鉱物の量も質も『巨大洞窟』に遠く及ばないという理由から知っていてもわざわざこちらまで来るプレイヤーはほぼおらず、そのくせ出てくるモンスターの質は『巨大洞窟』と変わらないため、それがさらにこの洞窟の過疎化に拍車をかけている。


 そんな閑古鳥の合唱隊が常在しているような『出涸らしの空洞』の前に、珍しくプレイヤーが訪れていた。


 とても防具とは思えないつなぎの作業服を身にまとった、鮮やかなオレンジの短髪に明るい茶色の瞳をした身長140cmあるかないかという小柄な少女と、普通の物と比べると全体的に鋭利で鋭い印象を与える異質な弓を背負った、少し伸ばした亜麻色の髪をポニーテールにしている深緑色の瞳をしている少女の2人組ーーメイとリーシャである。


「ねぇメイ」

「どうしたの?リーちゃん」

「お兄さんにイベント1位のお祝いとして装備を作って上げようってのはさ、私も南エリア1位のお祝いで美味しい料理沢山作ってもらったし賛成だよ?でもさ……だったらここじゃなくて別の所がいいんじゃない?」


 周囲には人っ子一人おらず、ひと目で不人気と分かる洞窟を前にして少しの間無言だったリーシャが、ここに連れてきた張本人……メイに問いかける。

 ここで言う別の場所とは『巨大洞窟』や『蜥蜴洞窟』と言ったもっと広い洞窟であり、この場所の不評を知っている身としては当然の反応である。


 しかし、親友(リーシャ)のその発言にもメイはあっけらかんとした様子でツルハシやヘッドライト(当然全て自作)を身に付けるなどして採掘の準備を着々と進めている。不人気NO.1のこの洞窟に入る気満々の様だ。


「あはは、確かに普通ならここには来ないよね」

「そりゃ意味も無くこんな辺鄙な場所に来ないよ。……って普通は?普通はって事は……なにか“普通”じゃない理由があるの?」

「さすがリーちゃん、ご名答」


 メイはそうとだけ言うと、「こっちだよ」とリーシャを先導して『出涸らしの空洞』の奥へと進んで行く。

 いまいち要領を得ないメイの言葉にリーシャは頭に疑問符を浮かべていたが、生産ガチ勢であるメイが『巨大洞窟』の良質な鉱物資源をパスしてまでここに来たのなら相応の理由があるのだろうと、素直にメイの後を追って洞窟へと入っていった。


 ◇◇◇◇◇


 最後に残った、他よりも一回り以上大きい蝙蝠ーー洞窟蝙蝠(ケイブ・バット)の上位種である大蝙蝠(ビッグ・バット)ーーの眉間をリーシャの放った矢が的確に撃ち抜くと、大蝙蝠は耳が痛くなるような高音の断末魔の叫びを上げてその身を光に変えて散って行った。


「ふぅ、一丁上がりっと。相変わらずコイツ(蝙蝠)らは最期うっさくて敵わないわ」

「ごめんねリーちゃん、ボク戦闘はからっきしだから……」


 戦闘が終わったタイミングを見計らってメイが申し訳なさそうにしながら岩陰から出てくる。


 2人が『出涸らしの空洞』に入ってから、既に1時間以上が経過していた。その間幾度となくモンスターに襲撃されたが、その全てをリーシャが1人で相手取り、メイはずっと隅っこで隠れていたのだ。

 メイが罪悪感を覚えるのも仕方ないだろう。自分が行っても助力になるどころか足でまといにしかならないと分かっていても、親友が1人で戦っているのに自分は隠れ続けると言うのはやはり精神的に堪える。


 しかし、当のリーシャは全く気にした様子も無く、気にするなと言わんばかりにヒラヒラと手を振って使用した矢を回収して行く。

 その反応に、正負問わず色々な感情が混ざりあったようなモヤッとしたような表情を浮かべながらメイもリーシャと同じように使用されて生き残った矢を回収して行く。


 この《EBO》では『矢』などの遠距離攻撃の弾にされるアイテムが完全な消耗品ではなく、折れたりなどの破損がなければ使用後に回収することで再使用できるというシステムになっている。

 それでも、どんなに丁寧に扱っても使う度に確率で破壊され、使用回数を重ねる事に破壊される確率は高くなったり、その『矢』の作成に使われた素材などによっても破壊確率は上下したりはする。


 だが、それでも、攻撃した分だけ残弾が減っていく訳では無いので、近接武器と違い事前に準備した数を使い切ったらほぼ何も出来ない弓使いからしてみれば相当助かる救済になっているのだ。


 ちなみに、『調合』や『錬金術』などの方法で作成した“特殊な効果のある矢”は通常の矢とは違い、破壊判定は無いが使う度にその効果が薄まり、最終的には使用回数は引き継がれて普通の矢になる。


「ひーふーみーよー……あらら、6本も折れちゃったわ。メイが作ってくれた店売りとは比較にならない性能とはいえ壊れる時は壊れちゃうか」

「あはは……ボクもより多く使えるように頑張ってはいるけど最終的には運だか「そう、そこ!」ふぇ?」


 やはり戦闘を任せっきりなのが引っかかっているのか、メイが自虐的に笑いながら言った言葉をリーシャが両手でメイの頬を挟んで遮る。


「矢がより多く使えるように頑張ってるって言ったでしょ?」

「う、うん……」

「メイは私に戦闘を任せっきりだって言ってるけど、そんな事言ったら私はメイに装備とかポーションとか戦闘以外の事を任せっきりにしちゃってるじゃない」

「で、でも……それはボクがやりたくてやってる訳だし……」

「うん、それは知ってる。ゲーム内(こっち)に限らず何か作ってる時のメイは本当に楽しそうだしね」

「あはは……」


 メイは照れくさそうに顔を背けようとするが、両頬をリーシャにがっちり挟まれているためそれは叶わなかった。

 そんなメイの目をしっかりと見ながら、リーシャは言葉を続ける。


「でも、それと同じように私も戦闘を楽しんでるの。メイは生産、私は戦闘。私達はこの世界でそれぞれ別の場所に最大の楽しみを見出してるんだからさ、それ以外はそれを好きでやってる人に頼る方がいいに決まってるじゃない。適材適所ってやつ?だからさ、メイが気に病む必要は全く無いの。分かった?」

「う、うん……」


 普段はおちゃらけている……とまでは行かないが、そこそこ気楽に生きているリーシャの珍しく真剣な瞳に見つめなれながらメイは今言われた事を噛み締めるように何度か小さく頷いた。


「分かればよろしい!私はこの後も採掘もプレゼントの作成も、なんならこの洞窟出た後の装備のメンテナンスも全部メイに頼る気満々だから、覚悟しといてよね」

「もちろん!その代わり……道中とか採掘中とか帰り道とかの護衛は頼んだよ?」


 リーシャの言葉でメイの中で何か吹っ切れたのだろうか、戦闘以外の全てを二つ返事で引き受けると、今度は逆にわざとらしいくらい図々しく今後の戦闘の一切合切をリーシャに押し付ける。


「まっかせなさいな!」


 当然リーシャの答えはYESだ。

 ビシッとサムズアップを決めて戦闘の全てを引き受けるとリーシャが宣言する。


「「……ふふっ」」


 そして、どちらからともなく笑い声が零れだし、しばらくの間2人で笑い合う声が洞窟内に溢れていた。


キャラが勝手に動く動く

やりたいようにやらせてあげたいけどそれのつじつま合わせがなかなかに大変……

いや、それも含めて楽しいんですけどね


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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