エピローグ 斯くして殺人鬼は黄昏に嗤う
【前回のあらすじ】
バジ「バトルが終わってホッとしてるわ……どうしてこう、モザイク必須なバトルになるのかしらね」
「……ルバルドの阿呆が、死んだようですぜ。ゼギアの旦那」
暗く狭い洞窟の中、剽軽な声はキンキンとよく響いた。
群青色に輝く岩々が、微かな光を受けて深海のように輝いている。ぽたり、ぽたりと規則的に垂れる雫。徐々に岩をも穿つそれは、幾星霜もかけて洞窟に独特の景色を作り出す。
「…………なに?」
そんな自然の摂理が――――一言で、崩れ去った。
筋骨隆々、髭を生やした大男が、唸るように言う。すると、声に怯えたかのように、周囲の岩がぱぁんっ、と弾け飛んだ。
「なんの冗談だ。我をおちょくる気か、『断罪神』イスリフォ=マドホルン」
「怒んないでほしいですねぇ。某ぁ嘘は吐きませんて」
イスリフォと呼ばれた男は、軽妙な調子で答える。
ぎょろぎょろと、彼の身体中で眼球が蠢いている。どれがなにを見ているのかさえ、定かではない。イスリフォは、かたかたと手元の石を並べながら言う。
「それにほれ、旦那だってよぉっくご存知でしょう? 某の神器【死命念令】は、この世に生きる全ての命を映し出す。…………まぁ『火山神』の嬢ちゃんみたく、力が弱まり過ぎてっとそうもいきませんがねぇ。人間とか小動物とかに、紛れっちまう。けどまぁ……ルバルドほどの奴を見逃すヘマ、某ぁしませんよ」
「ルバルド=サムリッグ。死亡。納得。妥当」
獣の皮を纏う少女が、単語だけで頷く。
「ルバルド=サムリッグ。弱小。我々。強靭。比較。結果。邪魔」
「チャルちゃんったら冷たいなぁ。同じ釜の飯食うた仲間やん。死んだ聞いたら、少しは感情も動きそうなもんやけど」
「情動。無駄。価値。皆無」
「……あっ、そ」
チャルちゃん――――『洪水神』チャルロッテ=チュレイントリックの言葉に、和装の少女は小さく溜息を吐く。
「それが事実ならば――――僥倖と言えよう」
「は? なにがです? ゼギアさん」
「分からぬか。『太陽神』アマネ=リラ=テラ=メイス」
低い声で、ゼギア――――『雷霆神』ゼギア=ライズリッツが言う。
声音の奥底に、彼は、微かに笑みを含ませていた。
「我々が今まで、離反した神族を殺せずにいた、その理由はなんだ? ひとえに、神族が死んだ場合、この【神有界】になにが起こるか分からない。その不確定性のみが問題だったのだ。今は、違う」
「違うって……なにがです?」
「光を司る『光明神』ルバルド=サムリッグが落命した。にも拘らず、見ろ、この世界から光は失われてなどいない」
「……とぉ、言いますと?」
「殺してもいいのだ。神族だろうと、関係なく、な」
言うと、ゼギアは濃い髭を蓄えた顔をくしゃくしゃに歪めた。
まるで解き放たれた獣だ。ばちんっ、ばちんっと小さな雷鳴が轟き渡り、今この瞬間さえ、周囲を破壊するのを止めようとはしない。
酷く嬉しそうに、ゼギアは言った。
「制裁が生温い、我は常々そう考えていた。我々を裏切った者共には相応の罰を、死を持って償わせるべきだろう。各神、即刻『七柱ノ大罪』の処刑に移れ。殺し方は問わん。どんな神族も、完全に消滅してしまえば、蘇生は不可能だ」
「承知」
チャルロッテ=チュレイントリックが、きびきびと動き出す。
「んじゃ、某も行きますかぁ」
イスリフォ=マドホルンが、目の焦点を一ヶ所に集める。
「……しゃーないかぁ」
アマネ=リラ=テラ=メイスが、億劫そうに立ち上がる。
「さぁ。我らの敵を滅ぼしに行こう。この素晴らしき箱庭のために」
ゼギアが芝居がかった口調で、高らかに宣言する。
その瞬間――――洞窟に集まっていた神族は、ふっ、とその場から消え失せた。
†
「…………っ、よう、っやく……着いた、か」
言いながら、ルキは盛大に長い溜息を吐いた。
鬱蒼と生い茂る森の、その中心部。石で囲まれた湧き水に、所々に焦げ跡の残る樹々。前日に寝床としていた場所に、ルキは戻ってきたのだ。
辺りは赤い夕暮れに染まっている――――夜も明け切り、再び夜に入ろうとしている。
アルルに摑まって、飛んでいる最中には気づかなかったのだが、徒歩だと意外と距離がある。陽の傾きを見るに、優に三時間は歩き続けていたのだ。泥と汗、そして血で濡れた額を拭うこともできず、ルキはまた溜息を吐く。
その背中には、ぐったりとしな垂れたアルルを乗せ。
左腕を巻き付けて、バジの身体を担いでいた。
「つっかれた…………っとぉ」
ぽいっ、と。
無造作に、バジの身体をその辺に放る。落ち葉が衝撃で舞い上がるが、バジの身体は、埋もれるように落ち葉に身を任せていた。
なんの反応もなく――――いや。
『ごっるぅぁああああああっ! あたしの身体になにしやがんのよバっカルキぃっ‼』
反応はあった。ただし、脳に直接。
耳を介さない甲高い声が、ルキの頭蓋でキンキン響いた。
「うるっせぇなぁ……人に身体任せて歩かせやがって。重いんだよ、邪魔だ」
『重くないですー! 女子に重いとか言う奴は須らく死ぬべきだと思いますーっ!』
「んじゃ重い女子は須らく殺すべきだな」
『アホ抜かしてんじゃないわよまた姉様に怒られるわよっ⁉ 大体、あたしはあたしで、ちゃんとやるべきことはやってんじゃんっ! 文句つけないでほしいんだけどっ!』
「あぁ……それについては、まぁ上々だな。バジ」
ルキは珍しく、自分の身体の中にいるバジのことを、素直に称賛した。
彼が、バジの身体を放った左手には、既に、小指が綺麗に生えていた。ビヴリに【信仰宗狂】で殴られた際に折れていた肋骨も、ルバルドとの最後の攻防の際に負った大火傷も、千切れた片脚も、全て治癒している。
死闘から僅か数時間で、ルキは傷一つない外見を取り戻していた。
「とはいえ、だ」
背負っていたアルルを下ろし、傍らに寝かせると、ルキは胡坐を掻きながら続けた。
「傷は治っちゃいるが、感覚で分かる。……チッ、流石にあの熱じゃ、内臓までは無理か。リアルに胸焼けがする。どうだ、治せそうか? バジ」
「――――どうだろうねぇ」
放られていた死体が、むくり、と起き上がる。
ごきごきと、体内から嫌な音を立てつつ、バジは立ち上がった。足元まで伸びる長い茶色の髪を振り乱し、気怠げに水の傍まで歩いていく。
「あたしは、あんたみたいに人間の構造にまでは、詳しくないんだ。その、ないぞー? の傷ついてる部分を、総取っ換えすることはできるよ。多分」
けど、中身だからねぇ。
顔を水の中に突っ込み、喉を鳴らして水を飲むバジ。ぷはぁっ、と顔を上げると、首を振って水気を払いつつ、難しい顔で続けた。
「そんなことを一気にやって、あんたの身体が耐えられるかは正直微妙……。まぁ別に、あたしはあんたが死のうがどうなろうが構わないけどね? ただ、あんたが死んだら姉様が悲しむからさぁ……」
「……どうかねぇ……」
「ん? なんか言った?」
「別に。…………バジ」
「なによ」
「薪、拾ってきてもらえるか?」
汗だくになった額を指で拭い、ルキは言う。
バジは直角近くまで首を傾げると、怪訝そうな顔で、隣に横たわるアルルを指差した。
「薪って、あんたバカなの死ぬの? 姉様がいるじゃない。姉様の【火天炎上】なら……」
「その姉様が、いつまで経っても起きねぇから言ってんだよ」
言われて、バジはしょんぼりと肩を落とした。
アルルは――――ルバルドとの死闘の後、仮死状態にあったルキを必死になって蘇生させた。バジに治癒を頼み、意識が戻るところまでを見届けた。
そこでぷつりと、糸が切れたように気を失ったのだ。
そして、未だに目を覚まさない。
時折、荒く呼吸をするくらいだ。びっしりと脂汗を浮かべ、胸を激しく上下させる様を見て、バジは幾度か、ルキの治療を中断したくらいだ。
「……起きる、わよ。もうすぐ。姉様が、死ぬ訳ないもん。身体だってほとんど元に戻ってるし」
「俺も切実にそうであってほしいがな。けど、時間も時間だ。悠長に待ってる訳にもいかねぇだろ。さすがに森ん中、夜に火がないのはキツい」
「……分かったわよ。明かりがないと、姉様の顔も見えないしね」
言うと、バジは小さな足で落ち葉を掻き分け、森の奥へと歩いていった。
がさがさと、歩く音が聞こえていたが、やがて、それも小さくなる。
湿った土の臭いに包まれた樹の下。
ルキとアルル――――二人だけが、無言で残された。
「…………」
すぅ、と。
ルキは静かに、懐からナイフを取り出した。
アルルの身体を、仰向けに小さく転がした。一時は半身が焼失していたアルルだが、今やその名残はほとんどない。回復の瞬間を目撃してはいないが、いつの間にか治っていた。
尤も、それは身体だけの話だが。
衣服はすっかり焼き払われており、襤褸切れという言葉さえ上等に過ぎる有様だ。左半身は、完全に露出していると言っていい。胸などあられもなく露わになっており、形のいい乳房が柔らかく外へ凭れている。
その、胸の中心。
ルキが【邪血暴虐】で刺し貫いた痕だけが――――何故か綺麗に、痛々しく残っている。
「…………死ね」
鈍く、銀色に輝くナイフを掲げ。
ルキは、残ったアルルの傷跡めがけて――――鋭い刃を、振り下ろす。
瞬間、アルルの胸がぱっくりと開き、噴き出した炎がナイフを呑み込んだ。
「っ!」
「…………本っ当、懲りないね。君は」
咄嗟に手を引っ込めたルキに、怪我はない。
しかし、ナイフは柄の僅かな部分を残し、消し炭も出さずに焼失した。ぼすっ、と落ち葉の上に落下した残骸も、やがて灰になり、風に吹かれて消えていった。
もし、ほんの一瞬でも手を引っ込めるのが遅れていたら――――。
ぞくり、と胸の奥が冷える。しかし、痛いくらいに高鳴る鼓動に、ルキは思わず唇を吊り上げていた。
「……ひははっ。下手な狸寝入りだな、アルル」
「…………ずっと、考えてたんだ」
仰向けに寝転がったまま、アルルは首だけを動かして、ルキの方を見る。
――――冷たい、瞳だった。
紅蓮色が、いやに静かに凪いでいた。出会ってから一週間以上が経過しているが、少なくとも、ルキが見たことのない目であったのは確かだった。
表情も感情も読めない。
能面みたいな無表情が、淡々と言葉を紡ぐ。
「私は人間が大好きで…………誰にも、死んでほしくない。人間にも、神族にも。…………それは、偽らざる私の本心だよ」
「…………」
「けど…………私の我儘が、ビヴリ=メサイエリを殺した。ルバルドも…………私が神族じゃなく、人間を選んだから……だから、死んじゃった」
「…………」
「君が、殺したんだよ。ルキ=リビングデイ」
「……だったら、なんだ?」
「たくさん考えたんだよ。苦しくなるくらい、嫌になるくらい、考えて考えて考えて考えた。考えて、さ…………ねぇ、ルキ」
「だから、なんだって――」
その続きを、ルキは口にすることができなかった。
突如、弾けるように跳びかかってきたアルルに、完全に虚を突かれたのだ。気が付けば地面に組み伏せられ、アルルに見下ろされていた。
首の辺りを椅子代わりに、尻で固定され。
アルルの細足が、ルキの肩を踏みつけて。
喉を押さえる左手と――――爪のように鋭く炎を噴き出す右手が、ルキの目に映った。
「…………!」
「人間が好きなのは、本当だよ。嘘じゃない。君も人間で、だから、死んでほしくはないよ。けど――」
ルキは、そこでやっと思い出す。
アルルの、いやに静かな瞳が、なにを意味しているのかを。
散々、嫌になるほど経験した筈なのに――――忘れていた。
「――君のことは例外に、殺しちゃった方がいいとも、思うんだよ。ルキ」
冷たい視線に、ぞくりと身体が冷えていく。
ルキに対する殺意を存分に秘めて――――アルルは、紅蓮の瞳を煌めかせた。
†
「…………ひははっ」
ルキは、己の記憶力の悪さに、思わず失笑した。
前世でも現世でも、とにかく好き勝手に他人を殺してきた男だ。恨みの種には困らなかったし、殺意を向けられたことは一度や二度じゃ利かない。家族を、身内を、仲間を、友人を。殺された人間は精神をすり減らし、死んだ魚のような目で自分を睨む。
そのことを、ルキはつらつらと思い出していた。
走馬燈みたいだ、とも思ったが、笑えるようなレベルではない。
「……いいのかよ。アルル」
「っ……よくは、ないよ。よくないに、決まってんじゃん……!」
絞り出すように言うと、アルルは目からぽろぽろと雫を流した。
ルキの頬に落ちてくるそれは、温かくて、少し塩辛い。止め処なく流れるそれを拭おうともせず、アルルは、凶器である炎の爪を構えたまま言った。
「嫌だよ、こんなの……私はもう、誰にも、死んでほしくなんか、ないんだよ……! でも…………っ、君は、殺し過ぎだよ……! いくらなんでも――」
「……アルル」
「――っ、いくらなんでも、殺り過ぎなんだよっ! 私は、人間に酷い目に遭ってほしくない、誰にも死んでほしくないっ‼ でも…………っ、同じくらい、ルバルドにだって、死んでほしくなかったよぉっ‼」
「……おい、アルル」
「知らない、もう知らない君のことなんか知らないからっ‼ 君で、君で最後にする! 私の前で死ぬのは、君で最後にするから、だから――」
「人の話を聴けよ、アルル。俺は別に、そんなことはどうでもいい」
「……っ? そんなことって……っ、私は――」
「お前が俺を殺したら、次の瞬間、お前も死ぬぞ?」
まるで、何気ない世間話に話題を投じたような。
そんな気軽さで、しかし、聞き捨てならないことをルキは平然と言った。
「……なに、を……?」
「お前の【火天炎上】なら、俺を殺すのなんざ造作もねぇだろうよ。だが、死ぬと決まりゃ普段はできないこともやれる。今の俺には、捨て身ってものができるんだ」
「…………?」
「【邪血暴虐】で、俺のことをぶっ刺せばいい。血の刃で、お前をミクロン単位まで刻んでやるよ。俺一人分の血を使えば、その程度ならいくらでも可能だ。生き続けることが前提の普段なら、それこそ死んでもやらない手だが――――どうせ死ぬなら、躊躇なく取れる一手だ」
「……本気で、言ってるの……? そんなことをしたって――」
「本気だ。それに、この方法なら確実に、お前を殺せる」
声に、ブレは一切なかった。
震えてさえいない。怯えていない。寧ろ、アルルを殺せるという状況に際して、喜んでいるようにさえ見える。
その顔を見て、アルルは、思わず離れたくなるほどの戦慄を覚えた。
――――アルルは、火山という大地に連なる物体を司る性質上、人並みならぬ神並外れた存在性――不死性と治癒力――を有している。
だが、それが果たしてどの程度まで有効かを、試したことは勿論ない。
危険性の高過ぎる、不可逆的な実験だからだ。
だが、直感で言うなら恐らく、細胞一個からアルルを完全に復活させる、ということは不可能だ。アルルは、自分の能力にそこまでの自身はない。
ミクロン単位、というのがどこまでかは判じかねるが。
例えば森中に撒き散らされた血と、見えないほど細かく刻まれた肉片になってしまったら――――果たして、復活はできるのか?
「……どう、して……?」
ふと、口を衝いて出たのは。
そんな単純な、しかし根本的な疑問だった。
「どうして……どうして君は、そんなに、そんなにまでして、殺したいの?」
「殺したいからだ。理由なんざあるか」
強いて言うなら、俺の我儘だ。
アルルが、ルバルドに言った言葉をそのまま、ルキは繰り返した。
「『こちらの逃げたいという欲望の方が、奴らの捕まえたいという欲望より上だということを覚えておけ』――――シャルル=ソブラジって連続殺人犯の言葉だ。やりたいことが、我儘がぶつかったら、後はそれに対する執着だろ。お前は俺を殺したくて、俺はお前を殺したい。なら、俺は死んでもお前を殺すさ。避けられねぇなら、生きるよりも殺したい」
「…………狂ってる、よ。君は……おかしい。異常だ」
「よく言われる。で? だからそれがどうかしたか?」
「……言ったでしょう? たくさん、考えたんだよ」
ぐらぁ、とアルルの身体が揺れる。
そのまま、アルルはごろん、とルキの横へと寝転んだ。細く長い溜息を吐くと、細く目を開け、ルキのことを睨む。
「ルバルドと、ビヴリのことは…………私の、取り返しのつかない失敗だよ。だから、君を殺して、繰り返さないように、したかった。けど――――君を殺せば、私は、自分の目的も、我儘も、一緒に殺しちゃう。それは…………嫌、だった」
「…………」
「ルキ。私は、君のことを許さないよ」
「…………」
「許さないから――――だから、この場で誓う。もう君に、絶対、誰も殺させないって」
手を伸ばし、五指全てで指差すようにして、アルルは言う。
のっそりと起き上がったルキは、背を曲げた胡坐姿で、それをじっと聴いていた。
「どうせ君みたいな奴は、死んだって『人罰』にされるのがオチだもん。また生まれ変わって、人を殺して、恐怖を煽って――――そんなこと、絶対に許さない。君が死ぬまで、死んだってずっと、すぐ隣で監視してやるんだから。君が犯す殺しの一切を、絶対に、止めるから」
「…………」
「人間を守る。君から守る。君も守る。もう誰も、死なせない。それが――――今度こそ突き通す、私の我儘だよ」
「……やぁっぱ、お前は悦いわ。アルル」
べろり、と赤い舌を頬に這わせ、ルキは言う。
嬉しそうに、愉しそうに、悦ばしそうに――――顔を歪めながら。
「命を賭してでもっていう、気合の入った我儘がある奴は…………殺し甲斐が、あるんだよ。そういう奴を殺すのが、一番大変で、一番面倒で――――一番、快感だ」
「…………」
「お前を殺せば…………俺はやっと、満足できそうだ……!」
「……させないよ。絶対に」
そう言って、二人は各々、まるで違う表情で睨み合った。
ルキは凄絶な笑みを浮かべ、獲物を捉えた獣のような顔で。
アルルは厳然とした表情で、射殺しそうなほど険しい目で。
人間でありながら人でなし、人殺しを繰り返す神殺しの少年と。
神でありながら神を離れ、人間を救わんと欲する神との、これが。
【神有界】という箱庭における神話の始まりと、この時はまだ、誰も知らない――――。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
元々この話は、商業での出版を目指して書いていたものでしたが、その話が完全に無しになったため、こうして公表をさせていただきました。
全編公表するまでに、こんなにも時間がかかってしまい、申し訳ないです……。
詳しくは、この話の後に更新する予定の活動報告をご覧ください。
商業での出版を目的に据えていたため、2巻以降も話を展開させられるような材料は所々に配置しているのですが、現状、この話の続きを書く予定はありません。中盤に出てきた『七柱ノ大罪』や、最後に出てきた神族等も、活躍をさせてあげたい気持ちはあるのですが、現在はその願望に自分の身体や頭がついていかない状態です。
結果、こんな尻切れ蜻蛉のような状態で終わってしまうことも、重ねてお詫び申し上げます。
個人的には非常に気に入っている題材なので、いつの日か、自分の精神に余裕ができた時には、また続きを書いてみたいと思います。
現在、完全新作をなろうで連載するべく準備中です。いつになるか分かりませんし、待っていただける方がいるかも分かりませんが、少々お待ちいただければ幸いです。




