第1話 「邂逅の霊都」〈8〉種子(セミナー)の矢
(^ー^)ノRPG要素追加。
第1話 「邂逅の霊都」〈涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない〉If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like
〈8〉草創歴0444年4月13日
時刻は深夜の零時を迎えんとしていた。
俺逹(俺とアムの2人)は今、とりあえずの満腹感に満たされ、まどろみの中にあった。
おっと、アムのやつは剣のため、食事は必要としないんだった。
便利なものだが、そこら辺ってどうなっているんだ?
今まで聞いた事が無かったけど。
『え〜と、君から霊子力を美味しく頂いてますよ〜。』
やっぱりかっ!?
最近、腹が急激に減るのは、そのせいか。
『だけどねぇ〜。僕だって食欲あるのよ?君の食形態を今まで見てきたけど、ほぼレアの生肉に喰らい付くのはどうかと思うよ。この世界は寄生虫対策とか、どうなってんの?』
更には、感染症とか広まってないのが全くもって不思議だよ。と、相変わらず聞いたことのない単語を羅列する。
その感染症と言うのが何なのか分からないが、寄生虫ってのは聞いた事があるぞ?
種子(卵)が脳幹に寄生しながら成長し、骨格と外皮以外、いつの間にか別物に変わってるって言うあれだろ。
『何それ、チョー怖い(汗)。それ、病気とは別物じゃん。』
病気って言うと、破傷風ぐらいじゃないか?
治癒系の術式で大抵の怪我や体調不良は回復されるのだ。
相当の僻地や辺境で集団社会がない限り、病で死ぬことは珍しい世の中だ。
まあ、戦争でバンバン、人は亡くなるけどね。
『う〜ん。多分だけど、この世界の住民自体、個体耐性が強いんだろうな〜。』
なんか、1人で納得したようだ。
もっとも、シーヴァ族の血を引く俺は、劇薬程度なら苦い「蜂蜜酒」と同じだがな。
俺の事はさて置き、久し振りの肉を食べれて個人的には満足だ。肉団子だけどな。
お支払いは後払いだけどね…あと、質素ながらも借宿としては十分だ。
外壁は「藍白輝石」の石積みだが、内部は総木造の簡素な酒場。
気取った瀟洒な雰囲気もなく、荒くれ者がたむろするでもない。
この庶民的で良心的で落ち着いた酒場、「好奇なる知己」亭は稀に見る環境にあった。
その時点で、既に灰色ではあるが…。
まあ、ただ一つ不満を言わせてもらえれば、肉は肉でも鳥肉で、例の「トルマリン鳥(飛べない鳥)」ってやつだったことだ。
それは陶磁製の大皿に山と積まれた状態でガツン!とテーブルに置かれた。
俺は今か今かと、待ちに待った「カシスシロップ和えの肉団子」に
齧りついた。
このトルマリン鳥(飛べない鳥)ってやつは、肉質はボソボソしているらしいが、挽肉にすることによって肉汁が内部に溜まり、弾けんばかりの歯応えを生み出す。
これがカシスシロップと絡まり、口腔内で味覚の共鳴を奏でる。
もはや、単純に旨い。
一心不乱にフォークを突き刺し、次々に喉の奥へと落としていく。
無言だ。無言で食べ続ける。
「赤い人、ごめんなさいねっー。雪ウサギの素材が足りなくて、合い挽きで大部分がトルマリン鳥になっちゃって…。」
赤毛の巻き毛さん、ハムコちゃんは申し訳なさそうに言った。
いや、別に旨いぞ。
旨すぎて無言で食べてただけだからね。勘違いさせたか?
ちなみに合い挽きの割合は2:8。2割の方が雪ウサギだとか。
「ん…雪ウサギ、食べたかったな…もぐもぐ…でもこれはこれで旨いぞ…もぐもぐ。」
『話すか食べるかどっちかにしてよ〜。はしたないよ〜。』
お前は俺の母親か?
付け合わせは「キャベツの漬物」に「キノコの大麦粉卵包み」。
そしてお決まりの「大麦酒」だ。
それなりにバランスはいい。
厨房の奥でバタンバタン激しくやっていたが、予想を上回る繊細さ。
ハムコちゃん、恐るべし。
「雪ウサギの肉って、今は市場にあんまり流れてないのよー。銀色の鷹騎士団が食料を徴収してるらしくてね。ホント、仕入れに困ってるのー。」
これはあれか?暗に俺に狩って来てくれって意思表示だな。
「ほら、雪ウサギってかなり大きいし、凶暴だし、北の雪原迷宮に生息してるでしょ。個体知能がかなり高い魔物で武器を装備してるから、捕まえるのがすごい大変らしいよー?」
『待て、待てっ、それってウサギなの?違うよね?おかしいでしょ?』
アムが混乱している。
大きければ大きいほど、食いでがありそうじゃないか。
困る要素は何も無い。
『僕の価値観が…。』
お前の価値観なんか知らん。
ふう、腹が一杯になった。皿はほぼ空だ。
次々にハムコちゃんが皿を下げていく。
だが冷静になってくると、俺から雪ウサギを奪った(?)、その何とか騎士団ってやつは許せんな。お高く止まっていそうな名前だ。
「で、その何とか騎士団は食料(肉)を徴収して何をやる気なんだ?」
「えーとね、あくまで噂によると、ついに亜人の森を本格的に攻めるらしいのよー。」
ハムコちゃんの言う「亜人の森」とは、この島の北西部に広がる広大な森林未開地帯の俗称である。
その範囲は北に90km、西に150kmにも及び、島の3分の2を占めていた。また、豊富な水源と資源の宝庫であるともされる。
「ジ・ハド煌王國」の建国から400年余り、その領土の拡大が島の半域で留まり、「ヘンド辺境伯家」が据え置かれている原因がそれだ。
「名前からして、その森に亜人種が住んでいるってことに間違いないみたいだな?」
『僕から言わせれば、亜人種の範疇って微妙だけどね〜?』
ほんの100年ほど前まで俺の所属する集団社会、シーヴァ族自体が亜人種に分類されていたのだ。
その偏見は今も多少なりともあるが、畏怖の対象でもあるのが幸いした。
人は何より分類したがるし、劣る種族を卑下しながらも、労働力としての「奴隷」として活用してしまう。
人のさがってやつだ。
余談だが、中央大陸の大半の奴隷は先住民族の「低頭種」であり、それ以外は東方辺境に出自を有する「野人種」である。
この「亜人の森」に住むのは野人種の方だ。
そしてこの期に及んで、侵攻を控えていた「亜人の森」を視野に入れ始めたのは、背に腹に変えられぬ切迫した理由があった。
こんなところでも、俺が後にしてきた「アステリト王国」の影響があろうとは感慨深いものがあるな。
「アステリト王国」の混乱で、東方辺境との流通がほぼストップ。
仮想敵対国とは言っても、そこは色々あるものだ。
だがこうなってしまうと、北側ルートの公国領航路の流通に限られてしまう。
西側ルートの航路も存在するが暗礁地帯が続き、「亜人の森」が壁となって、大回りになり経費がかさむ。
ここで一気に「亜人の森」を確保出来れば、資源も奴隷も獲得でき、一挙両得というところか。
まあ、そんなに上手くいくとは思えないけどね。
◆ ◆ ◆
今宵の月明かりは波乱万丈の開始点か。
「アム、起きてるか?」
『君、よく気付いたね。』
この鍵穴を抜けて刺すような殺意を見落とす俺では無い。
満腹感と共に心地いい眠りについていたと言うのに、無粋な真似をする奴がいたもんだ。
とは言え、非常に良く練り込まれた殺意だな。
殺意はあっても、その出どころを察知させないとは一流以上だ。
『僕の竜顕現で捕捉してみる?』
いや、無駄に刺激したくないな。
あっちが手を出さなければ、このまま寝てたいし。
欠伸が止まらんし。
『もう、やる気ないなあ〜。』
しかしながら、ここで相手にとってすれば、ひとモーション欲しかったのは言うまでもない。
この殺気を感じ取れるかどうかが、一つの関門であったわけだが、そんな都合は俺には関係ない。
俺の安眠を邪魔する奴は、例え誰であろうと許さん。
と言っているそばから殺意が膨れ上がり、炸裂音が窓硝子を突き破る。
つん裂く音が後から聞こえた。
ガシャャャーーーン!!
その射手は、はるかに離れた位置から、一般家屋の屋根の上に陣取っていた。
距離にして3km弱。
この距離を狙い違わず、とある平凡(?)な酒場の2階、借宿の一室を狙撃。
弓につがえるのは、胎動する緑色の「種子の矢」。
それは寸分の狂いもなく、仮面の人物の眉間を貫いて…しまった。
どうやら、今回の被験者はハズレのようだ。
煌太子は期待していたようだが、な。
眉間から侵入した種子は宿主の脳幹に寄生し、徐々に成長しつつ、立派な「原生種」に変貌させる。
この寄生虫の特徴は、寄生者の意識が継続し続け、更に隷属を強制できる事に意味がある。
もうこの時点で、その意識は支配下に置かれている筈だ。
割れた窓硝子から苦もなく侵入し、標的を見下ろす黒衣の暗殺者。
見上げる側からすれば、これはなかなか良い景色ではあるが(深い意味で)。
そう、俺はただ普通に寝ているだけだった。
矢?そう言えば、確かに突き刺さっている。竜面に突き刺さって貫通し、俺の皮膚の上で止まっている。
こいつ、防御力はホント、紙だな。
《ステリアス・シーヴァの防御力が+1強化されました。》
なんか額がちょっとくすぐったい。なんだ、これ?まあ、いいか。
それにしても、どこかで見た顔だな。月明かりだから、ちょっとハッキリしないが。
あれ?この黒髪眼鏡の美人さん、昼間に会わなかったっけ?
あの冷めた目線で、事務的な口調で責められると逆に興奮する人も多いんじゃないかな?なんて、デジャヴか。
だが、それよりも何よりも、アムの興奮がうるさい。
確かに、この眼鏡嬢の暗殺者さんの黒衣はちょっと変わってるな…とは思ったが。
『キターーー!ゴスロリ(ゴシック&ロリータ)メイド服がキターーー!』
女中の服?
確かに給仕服の一種に見えなくもない、黒い刺繍模様の少女趣味的な構成と、それを彩る華美な飾り袖に目が奪われる。
そこからスラリと伸びる手脚の細さと白さが好印象だ。
窓硝子から侵入の際には、その奥の奥も拝見できた。
それは不可抗力だ。
ちなみに黒色だった。
『いや〜、この世界にもメイド喫茶が出来る可能性が…無きにしもあらずって事だよねっ!?』
何を言っているんだ、お前は。
しまいには、ゴスロリメイド服?を普及させるにはどうしたらいいか、なんて事を口走る始末。帯状の髪留は外せないらしい。
『僕の世界の、あの刺繍を再現するには、やっぱ絹糸が必要不可欠だよね〜。どっかに蚕さん飛んでないかな〜。』
付き合いきれないので、ここは無造作に竜刀アムドゥシアスを軽く横薙ぎしてみた。
「そんなっ!?私の種子は???」
驚愕に打ち震えながら、眼鏡嬢の暗殺者さんは剣閃をギリギリで避け、後退する。
「ん?この矢か?」
俺は額の矢を左手で抜き取り、床にポトリと落とした。
なんか、落ちた途端にウネウネと気持ち悪く動いたと思ったら、呆気なく萎れてしまった。
「…では、やはりその仮面こそが、あなたの力の源なのねっ!?」
眼鏡嬢の暗殺者さんは、何か根本的な勘違いをしているみたいだが、否定するのも面倒くさいな。
面倒くさいし、割れた窓硝子から吹き込んでくる風が寒い。
いや、寒すぎる。
「とりあえず言っておこう。俺に関わるな。」
俺は壁をぶち抜き(蹴り飛ばし)、堂々と夜空へと身を任せた。
その後の事は感知しないし、壁の補償も知らん。
一目散に退避だ。
《ステリアス・シーヴァの戦闘力が+1強化されました。》
一方、失敗知らずの暗殺者にて、「百面相の魔女」と称された、シーズ・エニシングは途方に暮れていた。
「師匠おーー!なんて事してくれるのよー!!ちゃんと弁償してもらいますからね(怒)。」
追い討ちをかけるように、この未熟者の弟子、ハムコ・キュリオシティが半壊した部屋に怒鳴り込んで来た。
ああ、煌太子になんて説明しようかしら…そんな物思いも、このうるさい声に邪魔されてイライラしてきた。
「聞いてるの、この若作り師匠おー!!」
プチンと血管が切れるのだった。
◇ ◇ ◇
ステリアス・シーヴァ【竜絶壁発動中】
種族〈シーヴァ族〉
階級〈傭兵〉
所属国〈傭兵大隊預かり〉
カテゴリー〈8.5-〉
戦闘力 58(↑1)
防御力 53(↑1)
生命力 77
回避値 53
知能値 47
器用値 34
魔力値 58
相生相剋〈火気〉属性 43
相生相剋〈木気〉属性 31
相生相剋〈金気〉属性 25
相生相剋〈土気〉属性 28
相生相剋〈水気〉属性 32
竜技
九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎〈火気〉
九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐〈水気〉
九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉
九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉
戦技
一刀両断
十文字斬り
固有能力
竜の血眼(竜眼第1位階)
轟炎の気
能力
大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了
毒耐性 寒耐性 虚言耐性
魔力系術式
下位(基本三原理)火属性付加
下位(基本三原理)火属性魔道弾
下位(基本三原理)火属性誘導波動
下位(基本三原理)水属性付加
下位(基本三原理)光属性付加
称号
赤き竜人
傾国の貴公子
装備
竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁発動中】
属性:暴君LV820〈聖遺物級〉
付与効果:暴君の加護〈第1位階〉
剣撃物理破壊力増幅
竜技増幅
所持者固定契約〈魂〉
耐久値:980/∞
竜面〈仮面〉
属性:竜面の者LV250〈聖痕武器級〉
付与効果:竜因子封印
自己再生
耐久値:150(−50)/∞(貫通)
朱鎧〈皮鎧〉
属性:朱虎の皮LV15〈通常級〉
付与効果:物理抵抗〈皮〉
耐久値:85
携帯用小刀〈小剣〉
属性:雷鉱石LV30〈特殊兵装級〉
付与効果:物理特化
雷属性付加
耐久値:150
所持金
東方主計紙幣100枚
所持品
賢者の核石×5
岩塩
獣油