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第1話 「邂逅の霊都」〈7〉しがらみ

(^ー^)ノRPG要素追加。

第1話 「邂逅の霊都」〈涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない〉If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like


〈7〉草創歴0444年4月12日


俺はやっと、あらゆるしがらみから解放された。


全くもって晴れやかな気分である。


俺の相棒たる竜刀アムドゥシアスも、戦士の代名詞である鎧(真紅のハーフクロスアーマー)も戻ってきた。

これでようやく、いち傭兵として格好がつく。

内心、ハラハラしていたのは内緒だ。


結局のところ、あの面会は無難に乗り越えたようで、自分で自分を褒めてあげたいな。


『僕が褒めてあげるよ〜!』


それは、どうも…。


言い渡されたのは、この国に滞在を認める事と、その間は傭兵大隊の隊長コマンダー預かりとなる、と言うことだった。

つまり、身元保証人はラシャ・コウヤショウだよ、と。

問題を起こしたら、その責任はあの男が被るのだ。


となれば、あえて問題を起こすというのも一つの手だな。


『やっぱり、イケメンって得だよね〜。』


俺の努力をその一言で済ませるな(怒)。


常々言っているが、その方面で得をしようという気は微塵も無い。

怖がられた方が、傭兵としてはなんぼの物である。

だから素顔を晒すのは嫌だったんだ。


こうして俺達(俺とアムの2人)は「音無しの塔院カルシスト」を出ると、目前に広がる商業区画を目の当たりにした。


話は変わるが、少しだけ期待していたものの、ワガセ・グローリエス(巨乳さん)は待っていてくれなかった。


『ああ…僕の爆乳ちゃん…。』


そんなものだよね。


霊都「ジュライ」の南側(正面門側)はなかなかに活気に満ち溢れていた。


街並みは整然と整えられ、白亜の街並みとでも言おうか、建築物は白色セレナイトで統一されている。

この「藍白輝石アスプロイト」は、霊都近辺の「灰色の土地」の切り出し場から運び出されたものだ。


この白さに相まって、高くドーム状に都市全域を覆う霧の遮蔽が幻想的である。

ただ、常に湿気を感じるあたり、洗濯物が乾くのかな?なんて、主婦的な感想を抱いてみたりもした。


建築物の規格管理も徹底しているようで、中央を走る「商業市場広間通り」を中心に大小の横道、「食料品店グローサリー通り」や「食肉店ミートショップ通り」に沿うように主要建築物が並ぶ。

見た感じ、上下水道の設備も完備しているようだ。


公道も赤茶色のレンガ敷きで、適度に敷き直しているようで真新しい。

商業区とはその国の顔である以上、必要以上にこういった環境整備は効果的である。


それはさて置き、こうして歩いてるだけで、無意識に足が匂いのある方向へと引き寄せられていく。


ああ、腹減った。


とりあえず匂いにつられて市場広間まで来てしまったが、そこから分かれ道に繋がる寄り合い市場、通称、屋台通りに迷い込んでしまった。


いかん、後先考えずに歩いて来てしまったが、そもそも持ち金が無い。

無いわけでは無いが、換金出来る場所も知らない。

何ていう無計画だ。


って言うか、この国は不親切すぎるな。


『あれ?でも君、音無しの塔院カルシストから案内してくれる人を紹介してくれるって話、断ったよね?』


そうなのだが、考えても見て欲しい。

別に俺は御上りさんでは無いし、一つや二つの都市は渡り歩いて来た傭兵稼業だ。

いざとなれば、どうとでもなる。


これ以上、監視されるのは御免だな。


『そうだね〜。現状、僕の感知能力範囲では6人ぐらいかな?』


俺が把握している人数より、1人多いな。

着かず離れず、なかなか微妙なラインで警戒しているようだ。

まあ、アムが言うなら正解なんだろう。


良い意味でも悪い意味でも、どうやら注目の的らしい。


屋台を営む親父連中の俺を見る視線も好奇心と、よそよそしさの2択だ。


その横をバタバタと走って行く子供達。

遠目に見ながら、子供だけはどこの国も天真爛漫で微笑ましいな。


『ホント、子供は微笑ましいね〜。』


いや、お前もある意味、天真爛漫だがな。


◆ ◆ ◆


寒冷地であるこの国では、取引される食材は限られてくる。


「ジ・ハド煌王國ジ・ハド・トゥインコル・キングダム」の主力農作物の大半は「大麦」である。

この大麦から「麦粥オートミール」は作られているし、「大麦酒ビール」は庶民の生活に無くてはならない物である。


貴族の傾向としては、大麦を使用した「ブレッド(パン)」を好むらしい。

しかしこれはかなり硬い代物(無酵母)だそうで、煮込みスープ(シチュースープ)に浸して食べるのが一般的だそうだ。

庶民は口にできないと言うより、加工工房が貴族の管轄下にあるため、流通経路が厳しく制限されているらしい。


対しての庶民の主食は「ジャガイモ」である。

ジャガイモと新芽野菜キャベツなどを使ったスープが主流だ。

ジャガイモは寒冷に強く、繁殖力も強い。

麦粥オートミールと半々の消費量と言える。


それ以外となると、近隣に生息する回遊魚が食卓に並ぶ方であろう。

それは赤身のアニティモノス(サーモン)、イオエイド(ニシン)のような海水魚といった感じだ。

こちらは乾物スモークや塩漬けにして保存し、塩漬料理グラブラックスとして消費される。


これから分かるように、肉類の流通は更に細々としていた。


騎馬スタリオンとして調教テイムされる野生馬は神聖視されているし、蛇状の生き物は禁忌タブー視され、食べること自体、国が抑制している。


羊毛ウール用に改良されてきた「卯の花羊ウノハナシープ」は身が硬く、微小の神経毒を持ち食用には向かない。

代わって食用に改良されてきたのが「北欧山羊ノースゴウト」である。

しかしこの北欧山羊ノースゴウト、非常に気性が荒いことで有名であった。

身は筋肉質で淡白であり、脂が多く非常に旨い。

それと引き換えに高額ではあるが。


より一般的な肉類と言えばトルマリン鳥(飛べない鳥)であるが、国家の象徴が「霊鷹アルカノスト」の為、空を飛ぶ鳥類を食べることを厳禁しているせいもあり、このウズラに良く似た鳥もあまり好まれない。

食べれば美味しいのだが、市場では唯一の養鳥として産卵を主眼に育成されている。


鳥肉とは違い、このトルマリン鳥の卵は市場に多く出回り、売買され、日々の食卓に上がる貴重なタンパク源だ。


露天屋台の数少ない肉料理として提供されているのは、老衰間近のトルマリン鳥の肉かもしくは、北側の雪原に生息する「雪ウサギ」の肉である。


そんなわけで、俺の目の前には炭火で炙られ、滴り落ちる獣油がジュウジュウと音を立てる「雪ウサギの角切り串焼き」が並んでいた。


目が点になるほど見つめてしまった。


そんな俺を、売り子のお姉さんが不審(不憫)そうな眼差しで見ている。


だが、お客様であると割り切ったのか、営業スマイルで接客を再開し始めた。

商魂逞しいね。


「いらっしゃいませ〜。お兄さん、1本煌白銀貨1枚よ〜。美味しいよ〜。」


…銀貨1枚だ、と?


相場では銅貨(煌赤銅貨)10枚でコケモモのリンゴを1つ買える。

銀貨(煌白銀貨)1枚と言うのは、銅貨100枚の換算レートである。

つまり、この串焼き1本が、コケモモのリンゴの10倍の価値があると言うことか。

異国の物価に衝撃カルチャーショックを覚える。


『…ぼったくりじゃね?』


だが、背に腹は代えられんだろう。

何より、もう野菜は食べたくない。ああ、食べたくない。


俺が持っている「東方主計紙幣」は、一枚でおおよそ銀貨10枚の換算レートである。

使用出来れば、十分に買い占められるだけの貯えはある。

いや、ここで買い占めねば後(?)がない。


「すまんが、これを使えないか?」


願いを込めて、そっと差し出した紙幣を見て困惑する売り子のお姉さん。


「お兄さん、ごめんなさいね。東方辺境の紙幣は使えないのよ。今は国からのお達しで禁止されてるのよ。」


「…何だと。」


脳裏にガビーンと音が響く。


『ガビ〜ン(笑)』


と言う事は、ちょっと前までOKだったとなれば、この原因は「アステリト王国」で成功した革命クーデターに端を発していると思われる。


グローリーの奴、革命クーデターをやったはいいが、流通経済がグタグタになって、東方辺境の周辺都市に悪影響を及ぼしているらしいな。あの馬鹿め将軍め。


「と言うわけだからお兄さん、換金するなら商業ギルドに行った方がいいよ?」


ソバカスのある顔で、売り子さんがその通りだと教えてくれた。


現在、換算レート換金できる施設は商業ギルド「エノシクトン」しかない。

この「エノシクトン」は、霊都「ジュライ」のあらゆる個人経営から大規模商工組合を含めて、全てを包括する相互自営幇助団体の総称である。


基本的に国家の流通経済は「レグ侯爵マークィス家」が管理しているが、その分家である五脚の一つ、「サイ伯爵カウント家」が「エノシクトン」の後見総括管理をしている事が、また問題をややこしくしている。

自営団体ではあるが、独立は出来ずと言ったところか。


更に問題を複雑にしているのが、貨幣鋳造から金融機関までを独占運営しているのが「レグ侯爵マークィス家」であると言うことだ。


あ、なんか嫌な予感がしてきた。


◆ ◆ ◆


案の定だ。


門前払いされてしまった。


場所は寄り合い市場(屋台通り)のちょうど反対通り。

建物は一際大きく目立つ「壁城建設物アンサント」である。


その落し扉門マルボルクの前で俺はポツンと立ち尽くしていた。


ああ、寒い…。


『懐もね〜。』


上手いこと言うな、この野郎。


そもそも「傭兵大隊の隊長コマンダー預かり」と言う事実をしっかり失念していた。

身元保証人ラシャが同行していなければ換金には応じられませんよ?と、事務的な笑顔を浮かべた眼鏡嬢は、やんわりと完全無欠(冷酷非情)に拒否してきた。目が怖かった。


更には換算レート暴落の危機を突き付けられる。

踏んだり蹴ったりだ。


『いやあ〜、ああいうクールビューティーもいいよね〜。』


否定はしないが、今はそれより一気に危機感が高まってきた。


全く、このままじゃ野宿だぞ?

寝床を探すにしても、宿場も酒場も入れない。


何より、腹が減りすぎておかしくなりそうだ。


『眼鏡さん言ってたじゃん?あの隊長コマンダーさん連れてくるか、傭兵大隊の本拠地なら換算レート関係なく換金してくれるって、さ〜。』


奴に借りを作ると、後々面倒くさい事になりそうなんだよね…。


こうなれば最後の手段に出るしかないな。


『バカだなあ〜。君、今から雪ウサギ狩りに行く気だろう?』


バカとはなんだ(怒)。


アムが言いたいのはこうだ。

換金同様、都市内外への移動も勿論、何だかんだ難癖付けられて禁止されるだろうとのこと。

無理やり突破する事を候補に上げるが、ここで騒ぎを起こすのは得策では無い。

この監視の包囲網はなかなか厄介である。


「そんな事言ったら八方塞がりじゃないか。」


やっと、しがらみから解放されたと思ったのに、これじゃ元の木阿弥だ。

ましてや、初めて訪れた国に知り合いがいる筈も無く、俺を探してくれる人物がいる筈もない。


と思ったのだが、ふと見ると、向こう側から凄い勢いで走ってくる人物がいる。


あれは女性かな?あっ、凄い速いぞ。


おっと、あっと言う間に目の前に滑り込んできた。

結構、凄い体術だぞ、これは。


「あれれれー?奇遇ねー。もしかして、あなたが噂の赤い人かしらー?」


偶然を装っているが、ハアハアと呼吸がかなり荒い。


この子、そうとう俺を探したんだろうな…。


『そうそう、この赤毛の巻き毛ちゃん、ずっと僕達を付けてたよ〜。』


じゃあ、この子が俺に感じられなかった1人か。

そりゃ、こんな監視(緊張感が無い)の仕方じゃ気配を探れない訳だ。

かなりのドジっ子で残念な子だ。


「…どちら様ですか?」


「あたい、ハムコ・キュリオシティよ。ハムコちゃんって呼んでね。「好奇なる知己」亭の看板娘よっ!」


「…そうですか。では、さようなら。」


立ち去ろうとした俺の手を、逃がさんとばかりに彼女がムンずと掴む。


予想以上に力強いな。


「待って、待ってー。お金無いんでしょー?うちの酒場なら後払いで良いわよー?ねっ?ねっ?」


赤毛の巻き毛さん、必死の形相だ。


『うおー。積極的なお姉さんだね〜。平凡な服装(平胸)に対しての活動的なギャップが良いよね〜。』


アム、お前って奴は…範囲が広いな。


だが残念ながら、俺は興味が無い。


ズリズリと引きずりながら、俺は道を突き進む。

ああ、時刻はもう夕暮れ近い。

憂鬱だ。


「うちはラシャ隊長もお得意さんなのよっ。」


ズンズン進む。


「ホント!ホントに、後悔するわよっ。」


更に進む。


《ステリアス・シーヴァは能力スキル〈虚言耐性〉(NEW)を獲得しました。》


「うちの肉団子ミートボール食べないと後悔するわよっ。」


…ピタリと止まる。


赤毛の巻き毛ちゃん(ハムコちゃん)は、自分が凝視されている事に気付いてビクっと震えるのだったが、もはや後の祭り。


俺にはもはや、この獲物をどう料理して…もとい、ご馳走になろうかと、それだけが頭を駆け巡るのだった。


◇ ◇ ◇


ステリアス・シーヴァ【竜絶壁オーバーマインド発動中】

種族〈シーヴァ族〉

階級〈傭兵〉

所属国〈傭兵大隊預かり(NEW)〉


カテゴリー〈8.5-〉

戦闘力 57

防御力 52

生命力 77

回避値 53

知能値 47

器用値 34

魔力値 58


相生相剋〈火気〉属性 43

相生相剋〈木気〉属性 31

相生相剋〈金気〉属性 25

相生相剋〈土気〉属性 28

相生相剋〈水気〉属性 32


竜技ドラゴニックアーツ

九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎かくえん〈火気〉

九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐せいひつ〈水気〉

九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉

九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉


戦技バトルアーツ

一刀両断

十文字斬り


固有能力パーソナルスキル

竜の血眼(竜眼第1位階)

轟炎ピュラリスフィールド


能力スキル

大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了

毒耐性 寒耐性 虚言耐性(NEW)


魔力系マグス術式

下位(基本三原理)火属性イグニス付加ギフト

下位(基本三原理)火属性イグニス魔道弾ブリッド

下位(基本三原理)火属性イグニス誘導波動ソリュード

下位(基本三原理)水属性アクア付加ギフト

下位(基本三原理)光属性ルーメン付加ギフト


称号

赤き竜人

傾国の貴公子


装備

竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁オーバーマインド発動中】

属性:暴君LV820〈聖遺物レリクス級〉

付与効果:暴君の加護〈第1位階〉

剣撃物理破壊力ソードアーツ増幅

竜技ドラゴニックアーツ増幅

所持者固定契約〈魂〉

耐久値:980/∞


竜面マルティコラス〈仮面〉

属性:竜面の者LV250〈聖痕武器スティグマ級〉

付与効果:竜因子アデック封印

自己再生

耐久値:200/∞


朱鎧ハーフクロスアーマー〈皮鎧〉

属性:朱虎の皮LV15〈通常ノーマル級〉

付与効果:物理抵抗〈皮〉

耐久値:85


携帯用小刀フォールディングナイフ〈小剣〉

属性:雷鉱石ブロンティアLV30〈特殊兵装ユニーク級〉

付与効果:物理特化

雷属性トニトルス付加ギフト

耐久値:150


所持金

東方主計紙幣100枚


所持品

賢者の核石タリスマン×5

岩塩

獣油オイル

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