表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/90

第1話 「邂逅の霊都」〈6〉拝顔式

(^ー^)ノRPG要素追加です。

第1話 「邂逅の霊都」〈涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない〉If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like


〈6〉草創歴0444年4月12日


霧立ちのぼるなんとやら。

アム曰く、水の都の風情がなかなかに情緒があるとか何だとか。


そこら辺は良く分からなかった為、いつものスルーで聞き流してみた。


俺達(俺とアムの2人)は今、霊都「ジュライ」へと無事に(?)侵入を果たしている。

とは言え、都市の全景を楽しむ間も無く、そんな機会も与えられず、連行まがいに「音無しの塔院カルシスト」へと軍装馬車は横付けされた。


「じゃあ、あたしはここまでね、ウフフフ。ステリアス君、頑張ってね〜。」


目を覆わん程にフワンフワンと胸を揺らしながら、ワガセ・グローリエスが小躍り(声援?)している。とりあえず、俺の君づけは確定したらしい。


『ああ、さようなら、僕の爆乳ちゃん…。』


別にお前のじゃないし。


ああ、そんな事より、ここは社交辞令だな。


「また会える事を期待する。」


「あら、お姉さんを狙ってるの、ウフフフ。」


『お姉さんは僕の物だい!』


何なんだ、こいつらは…。


しかし、そんな妄想(?)を中断させる展開が強制執行された。

まさに天の助けだ。


もっとも、これも事前に計画を対策済み。

情報源は、あの若き技術士官君だ。


彼は事細かく熱心に、情熱的(?)に説明してくれた。

ちょっとと言うか、かなりドン引きだったが、悪意が無い分、始末が悪い。

若くて、覇気があって、それはそれで可愛いんだけどね…。


いや、勘違いしないように。

俺にそんな趣味は、今の所は無い。


『この浮気者っ〜!僕と言う美少年が側に居ながら〜!』


もはや何でもありか…と言うか、この自称美少年は、本当に美少年であるかも怪しいのだが。

美少年だとしても、元の種族が元の種族だからな…。


『……。』


静かになった。

証拠が無いなら黙っていてもらおう。

第一、顔の良し悪しで人を判断する奴は信用できない(怒)。


さて、この「音無しの塔院カルシスト」だが、入る際には、所持している武器はおろか、鎧にいたるまで、全ての所持品を提出しなければならないらしい。

無論、没収されるわけではないが、これは入国審査の際、対象者の無力化は当然、所有する武器類の素性調査をも意味している。


それは分からない事もない。


もし、侵入した者が「聖痕武器スティグマ級」以上の武器を所有する「国家守護級エトナルク」に匹敵する者であれば、それが問題を引き起こした際、これを抑えられるのもまた「国家守護級エトナルク」以上しか存在しない。

ところが世界情勢から見ても、各国家の「国家守護級エトナルク」占有率は2〜3名が精々のところ。

その希少価値と育成資金は、国庫を圧迫していた。


そんな背景から入国を拒否され、国外追放を受ける可能性も無きにしも非ず…か。


「申し訳ありません。塔への出入りに際し、所有武器を預からせて頂きます。」


さっそく、衛兵達が軍装馬車から降り立ったばかりの俺に群がった。


ちょっとうざい。

成人男性の平均身長が160㎝前後の「ジ・ハド・煌王國ジ・ハド・トゥインコル・キングダム」に於いて、比較的長身の俺が無言で威嚇すると、皆一様に怯んだ。


そんなに怖がらなくても良いものを…分かっているな、アム?


『大丈夫、大丈夫!僕の竜絶壁オーバーマインドの隠蔽能力を甘く見ないでよね〜。』


なら計画通りに行こう。


それより問題は、アムと引き離される事により、俺自身が「竜絶壁オーバーマインド」の支配下から外れてしまうと言う事実だ。


そこはちょっと頼りないが、この付き合いの長い竜面マルティコラスに頼る他無いか。


「おい、そんなに怯えるな。剣を渡せばいいのだろう?」


思いの外、あっさりと背中の大剣を預けた俺に、彼等は拍子抜けしたようだ。


『怯ませてから〜の、器の大きさを見せ付けることにより〜の、ギャップ萌えってやつですね、これはっ!?』


よく分からんが、男共に萌え(?)られても困る。って言うか断るが、な。


◆ ◆ ◆


扉を進むと、そこは何とも重々しい雰囲気に飲み込まれていた。


石造城塔タワーの中央階層。


この広大な広間フロアーこそ、今回の舞台となる(非公式とは言え)「拝顔式の間」である。

入国審査とは名ばかりの、取り込み作業の渦中に俺は放り込まれたわけだ。


随分、待たされたせいもあり、天鵞絨ビロードの絨毯を無造作に歩む俺は、交差する視線も何のその、居並ぶ重鎮達(大抵は魔道院に従事する教職者)を通り過ぎた。


それにしても、人様の武器防具を没収しておいて、自分達(衛兵)は重装備とは畏れ入る。

やむなく俺は、着の身着のままの「リネン」製のブリオー(シャツ)と、どちらも着古したブレ(ズボン)だけの姿だ。


リネン製の衣類などの植物繊維は、この国でも下層住民が使用する程度の、最下級の品物だ。

もっとも、傭兵稼業を生業とする俺にとっては、貴族達が好む動物繊維(この国では羊毛が主体)などは、戦場では動き難い事この上無い。

この国が寒冷地だと言っても、そのかぎりでは無い。


彼等の中には貴族階級と思われる者達も混ざっていて、俺を見る嘲りの色がありありと浮かんでいた。

彼等は一様に、この国の特産品である「卯の花羊 (ウノハナシープ)」の高級そうで重厚な羊毛ウール製の防寒具オーバーフロックに身を包んでいる。

羨ましくなんか無いぞ。

…でもちょと暖かそうだな。


《ステリアス・シーヴァは能力スキル〈寒耐性〉(NEW)を獲得しました。》


その視線に奇異の眼差しが含まれているのは、俺が頑として預ける事を譲らなかった、この素顔を隠す竜面マルティコラスのせいだろう。


そんな視線に我関せず、ズンズンと突き進んで行く。


そうこうする内に、壇上に近づきすぎたのか、そこで制止が入った。


「そこで止まれ。煌太子の御前であるぞ。」


案外、気が小さい奴らだ。どこまで近付けるか試してみたのだが。


俺を止めたのは、眩いばかりの銀色メタリックの髪を背に束ねた、冷淡な表情を一切崩さぬ青年であった。

一見すると、真面目すぎる優等生が故の、全く融通の利かないタイプに見える。

甲冑は身に付けていないが、彼の腰に帯びた帯剣から発する攻撃的な気配がただ事では無い。


しかし、その口から煌太子と言う単語が出たからには、その青年の背後に立つ二人のうち、壇上の再奥に控えるどちらかが、この国の次期王位継承者と言う事だ。

全く、面倒な奴等である。


「ミリオン卿、今日はあくまで非公式の面会。そう、格式張る必要もあるまい。」


おや、苦言を挟んだからには、彼が煌太子か?


その人物は、まさに容姿端麗を絵に描いたような青年である。

しかし、どこか陰を持つ、神秘めいた存在感を示していた。

その姿から、剣を持って振るう事は想像し難く、貴族と言うよりも生粋の魔道士マグスと言った線の細い印象だ。

先のミリオン卿とやらとは対照的である。


ところで、一般的な魔道士を「マグス」と呼ぶが、これは中央大陸全域で通る名称ではあるが、その国毎で呼称が異なる場合が多々ある事は明言しておく。

この地、「ジ・ハド煌王國ジ・ハド・トゥインコル・キングダム」では、それを「官主ヤトラ」と呼ぶ。

魔道士ヤトラと言った感じだ。


「カーズ卿、黙っていてもらおう。これは非公式であろうと何であろうと、太子に無礼を働く輩を許すわけにはゆかぬ。」


おや、不正解だったか。


互いに卿扱いとなると、立場は互角と言ったところか。


「ミリオン卿…あなたと言う人は、太子の前で事を荒立てる気ですか?」


「貴卿のその態度が、この国を弱体化させるのだと、いい加減気付いてはどうか?」


周辺がザワザワとし始めていた。


これが噂の、派閥争いの足の引っ張り合いである事を、俺が知ったのは後日のことである。

事の発端が俺である事は、この際置いておこう。俺は無実だ。


不穏な空気を知ってか知らずか、立ち尽くす(俺的には現状を堪能していたが)俺をおかしく思ったのか、最後の一人が突如に笑い出した。


「た…太子?」


「そなたら、無礼も何も、客人を前に言い争いを始めて、その客人を放置する以上の無礼があるとは思えぬぞ。」


そう言うと、腹を抱えて笑い始めたのである。


何とも朗らかな笑顔で笑うものだと感心する。

その場から一斉に潮が引き、穏やかな雰囲気に満たされた。


「余が、この国の煌太子であるライオネック・ジ・ハドXⅣ世だ。配下の者が無礼を働いた。許せ。」


躊躇いなく謝罪する若き煌太子に、俺は膝を突いた。


礼には礼を以って応えるのが戦士の慣わし。

礼を失する訳にはいかない。


なら何故、最初に無礼を働いたかと言われれば、戦士から剣を奪うなど作法としてあるまじき行為であるからだ。

ちょっと悪戯してみたまでだ。


「殿下、お気遣いなく。先に失礼な所業を行ったのは、このステリアス・シーヴァの不徳とするところ。これを以って、他心が無いこととしましょう。」


「そう言ってもらえると助かるぞ、赤き竜人殿。」


「しかしながら、その名で呼ばれる事は不本意でありますな。貴国としても、敵対していた国で持て囃されていた、ふたつ名で呼ぶ事に抵抗が無ければ構いませんが…。」


周囲が少し騒めいた。


「これは失礼した。では、ステリアス殿でよろしいか?」


「有り難く存じます、煌太子殿下。」


頷く俺を、辺境出身の蛮族を迎え受ける気であった重鎮達が色醒める。


俺を甘くみてもらっては困る。


常日頃、アムに鍛えられているのは言うに及ばず、普段あまり喋らないのは、アムの相手だけで精一杯(?)の為だ。

それが講じて、無口で人当たりが悪く、眼光鋭い無愛想な傭兵と見られてきた。

全く不本意である。


「して、ステリアス殿。そなたのその仮面は、何か由来あっての事か?」


煌太子がそこに喰らいついて来た。


「いえ、この竜面マルティコラスに何か由来があるかと聞かれれば、さほどの価値も無いものですが、人前で素顔を晒す事に幼少時より抵抗がありまして。」


「何と、それは我ながら不躾な質問であったな。許せ。」


「何を仰る。殿下を前にし、思えば一介の戦士が素顔を隠そうなどと、礼節に欠ける浅慮。ただ1つ許して頂ければ、この竜面マルティコラスを外すにあたって、手元に我が愛剣を置かせていただける温情を。」


唖然としながらも、煌太子と俺の会話に耳を傾ける重鎮達。

その間抜け面を眺めているのは心地いい。


それにしても、この腹の探り合いはいつまで続くのか。


ただ単に素顔を見たいのか?それとも、この竜面マルティコラスの価値を疑っているのか?それならこちらの読み通りだが。どちらにせよ、タイムリミットは近い。


「太子、それはいかがなものかと…。」


ミリオン卿とやらが、またしても口を挟みやがった。


だが、そこはアムの「竜絶壁オーバーマインド」の偽装で、俺の竜刀アムドゥシアスは「特殊兵装ユニーク級」程度と鑑定精査アナライズされた筈だ。


悩む必要は無いだろうに。


「これ以上、客人に無礼を働くのも失礼ですし、構わないと思いますよ、太子。」


「カーズ卿、貴卿はまたっ!」


また始まった。


やれやれと思ったのは煌太子も同じようで、視線が合い、互いに思わず苦笑を漏らしてしまった。


なかなか気苦労が絶えなさそうだね。


「ここは叔父上に従うべきであろうな。誰ぞ、ステリアス殿の剣を持ってまいれ。」


鶴の一言、煌太子が命じるや、誰も反対することなく我が竜刀アムドゥシアスは、俺の傍に据え置かれた。


『お待ちかね…愛剣、登場ですよ〜。』


聞いていたのか。このやろう。


まあ、いい。ちょうど竜面マルティコラスの久し振りに使用した「竜因子封印アデック」も限界ギリギリだった。かなり危険だった。


そんな俺を、良い感じで「竜絶壁オーバーマインド」が全身を包む。


《第1位階・竜絶壁オーバーマインド、発動。ステリアス・シーヴァは隠蔽虚像化されました。》


衆目に晒されながら、俺は静かに竜面マルティコラスの封印を解除し、両手で額から外した。


《ステリアス・シーヴァから竜因子アデック封印の効果エフェクトが消失しました。》


おおお、と、どよめきが広がってゆく。


海深紅玉アメロウズ色の赤い髪が揺れ、紺碧色アレキサンドライトの瞳とまなじりには強い意志と生命力が満ち溢れ、見る者を魅了する。


その造詣は気品と繊細さに彩られ、非の付け所なく、艶やかな唇も艶かしい。


まあ、想定内の反応だなと思いつつ、俺は近頃続いていた(不味い)麦粥オートミールと、グダグダに野菜を煮込んだ原型の無い煮込み料理から、これで脱出できるかな?と、そんなことを考えたり考えなかったりするのだった。


『君が不味いって言うなら、相当だよね〜。』


だよね…。


◇ ◇ ◇


ステリアス・シーヴァ【竜絶壁オーバーマインド発動中】

種族〈シーヴァ族〉

階級〈傭兵〉

所属国〈無し〉


カテゴリー〈8.5-〉

戦闘力 57

防御力 52

生命力 77

回避値 53

知能値 47

器用値 34

魔力値 58


相生相剋〈火気〉属性 43

相生相剋〈木気〉属性 31

相生相剋〈金気〉属性 25

相生相剋〈土気〉属性 28

相生相剋〈水気〉属性 32


竜技ドラゴニックアーツ

九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎かくえん〈火気〉

九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐せいひつ〈水気〉

九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉

九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉


戦技バトルアーツ

一刀両断

十文字斬り


固有能力パーソナルスキル

竜の血眼(竜眼第1位階)

轟炎ピュラリスフィールド


能力スキル

大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了

毒耐性 寒耐性(NEW)


魔力系マグス術式

下位(基本三原理)火属性イグニス付加ギフト

下位(基本三原理)火属性イグニス魔道弾ブリッド

下位(基本三原理)火属性イグニス誘導波動ソリュード

下位(基本三原理)水属性アクア付加ギフト

下位(基本三原理)光属性ルーメン付加ギフト


称号

赤き竜人

傾国の貴公子


装備

竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁オーバーマインド発動中】

属性:暴君LV820〈聖遺物レリクス級〉

付与効果:暴君の加護〈第1位階〉

剣撃物理破壊力ソードアーツ増幅

竜技ドラゴニックアーツ増幅

所持者固定契約〈魂〉

耐久値:980/∞


ブリオー(シャツ)〈服〉

属性:麻製リネンLV5〈通常ノーマル級〉

付与効果:物理抵抗

耐久値:5


ブレ(ズボン)〈服〉

属性:麻製リネンLV6〈通常ノーマル級〉

付与効果:物理抵抗

耐久値:5


所持金

東方主計紙幣100枚


所持品

賢者の核石タリスマン×5

岩塩

獣油オイル

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ