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第1話 「邂逅の霊都」〈5〉音無しの塔院(カルシスト)へ

第1話 「邂逅の霊都」〈涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない〉If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like


〈5〉草創歴0444年4月12日


その日の正午、俺達(俺とアムの二人)は港区画の留置施設から解放される事になった。

あの若い技術士官は手をブンブン振って送り出してくれた。

満面の笑顔で、だ。


彼に再び会う事は…無いんじゃないかな。


『そうとも言えない。』


「…だよね。」


諸事情により、これで「はい、さようなら」という都合の良い展開には、勿論ならない。


俺達を護送する「軍装馬車」は、霊都「ジュライ」の西側通行門ゲートから入る予定だ。

これを牽引するのは獄炎馬ガミジンである。

強靭な筋肉繊維が胸筋、足回りで躍動しつつ、獰猛そうな嘶きを轟かせている。

血汗が噴き出す様が、その名の由来らしい。


正確には魔物の範疇に分類される獄炎馬ガミジンを、ここまで調教テイムするとは、大したものだ。


それにしても、この霧は凄いな。

こう霧が深くては、御者も脱輪しないか気が気ではないだろうに。


肌に纏わり付いてくる、と言えば分かりやすいだろうか?


『これは僕達に害意は無いけど、多分、都市そのもの内包するような大規模結界の類だと思うよ?』


アムの説明によれば、この系統の結界は「結界種セフィラー」として固定概念(思考)まで持ち、地震や洪水と言った天変地異の災害クラスに対応するものらしい。

規模とか形状は違ったが、東方辺境の古い都市の幾つかで、同じような話を聞いた。


その霊都「ジュライ」は直上から見ると十字の形状を成し、縦25km、横20kmの規模となっている。


通行門ゲートは東西南北、それぞれに存在しているが、通常の一般市民が自由に(語弊があるが)出入り出来る通行門ゲートは南側の「正面門」のみである。


正面門から真っ直ぐ、商業市場広間通りが10km続き、中央区に聳え立つものが「煌王城」にして、煌王家ブライネッスの住まう純白の「心座ルアック」。


その手前にあるのが今日の目的地、「音無しの塔院カルシスト」である。

その名の通り、高さ200メートルにも及ぶ、見上げる程の石造城塔タワーだ。


「しかし、霧が濃いな。こんなんで生活出来ているのか?」


「あら、ご安心はいりませんわ。都市内部に入れば、この霧もだいぶ薄くなりますよぉ。」


ニコリと、今回の案内役を隊長コマンダーラシャから仰せつかりましたと、同席する女性騎士がふわりと疑問に答える。


金色ブロンドのセミロングストレートヘアで、何とも独特なフワフワした印象を与える女性だった。

どう答えていいかも分からず。


「…なるほど。」


「ステリアス様、機会があれば私が案内しちゃいますよ、ウフフフ。」


そして、もう一つ問題点があった。


どうしても、ある一点に視線が集中してしまうのだ。


『キターーー!これが噂の天然系の爆乳ちゃんだ〜っ!?』


「…大喜びかよ。」


「えっ?」


「いや、こちらのひとり言だ…。」


しかし、傭兵大隊の隊長コマンダー麾下直轄の「大隊隊長マーセナリーキャプテン3名の内の1人」が、そんな弾きれんばかりの巨乳とは、そんなことが許されて良いのだろうか?

その胸で、まともに剣が振れるのか(それが重要だろ)?


あっ、アイドル的な立ち位置なのか…なら、配下の傭兵隊の隊員(約450名)は大喜びなんだろうな。


なら、納得か(自己完結)。


『クソ〜っ。指があれば、指があればツツいてみたいぜっ〜。』


それでも彼女、ワガセ・グローリエスの特注品らしき「女性用甲冑プレート・メイル・アーマー」は、希少価値の高い「妖銀鉱ミスリル」製であるらしく、鈍い霊気に覆われているものの、胸部装甲はやはりと言うか、申しわけ程度に下から支えているばかりであった。


って言うか、お前はおっさんか…とにかく落ち着け。

大体、「竜種ドラゴン」の実年齢ってどうなってるんだ?


アム…お前何歳だ?


『僕は永遠の12歳だからっ!!』


へ〜(華麗にスルーしてみる)。


彼女の帯剣もなかなかに高級品のようだ。

刀身は鞘に仕舞われて見ることは叶わないが、どうやら「魔鉱石アガメムノン」製の「特殊兵装レア級」のようだ。


『…無視しないで。』


ちなみに、何の変哲も無い武具は「通常ノーマル級」と呼ばれる。

階級が上がる毎に「特殊兵装(レア•ユニーク)級」「秘跡武具サクラメント級」となり、「王権威レガリア級」と「聖痕武器スティグマ級」は基本、同階級ではあるが、聖痕武器スティグマ級から上は「教皇会プロヴェデンティア」の認定が必要となってくる。

それ以上となると、もはや伝説に語られるようなもので「聖遺物レリクス級」と、最高階級の「ディヴァイン級」だ。


『無視しないでよっ!』


そして今回、俺達が西側から入る事になった理由を彼女の口から聞かされる事となった。


東と西側の通行門ゲートは軍部専用のものであり、厳重な管理下に置かれている。


東側の区画は「煌王家派」の首魁である「メーカー公爵デューク家」が騎士団長グランドマスターを務める「銀色の鷹騎士団アルカノスト」の所有区域だ。


対して、西側区画がラシャ・コウヤショウが隊長コマンダーを務める傭兵大隊の本拠地、その所有区画である。その名を「西中枢院ウェストセントラル」と言う。


「ステリアス様に対する交渉権が我々、傭兵大隊にあると言うことを、行動を以って知らしめているんですって。だからお願いしますね、ステリアス様?ウフフフ。」


「…とりあえず、その、様っていうやつは止めてもらいたいな。」


「あら、じゃあ、君?ステリアス君?ウフフフ。」


悪女だな。


これはアムの言う、天然系ってやつじゃなければ、かなりの悪女に違い無い。

このフワフワした雰囲気に騙されると、とんでも無い事になりそうだ。

いろんなところがフワフワしてるしね…。


危ない、危ない。


『でも目が泳いでるけどね。』


うるさい、黙れ。


◆ ◆ ◆


「音無しの塔院カルシスト」の最上階に位置するテラス広間フロアーは、必要時には貴族用の貴賓室としても使用されていた。


現在の使用者は、モダンな座椅子に身を任せ、こんな時でもなければ得られぬ一時の安らぎを味わっていた。

日々、雑務に追われる忌避感からの開放感だった。


室内に焚かれているのは、彼が好みとしている伽羅(沈香)の一種で、西方辺境由来の大変高額なものである。

柑橘系の健やかな香りが鼻腔を抜けて行く。

この見事な装飾が刻まれた香炉も、あの手この手で、苦労してようやく入手出来たものだ。


個人的には、一刻も早く西方辺境との交易設備に国費を全投入(?)したいところだが、やれ西方は蛮族だ、魔境だと、毎回「選帝爵位院(議会)」で却下されている。


全く、口惜しい。

ラシャを見れば、蛮族だなんて言葉は出てこないだろうに(?)。

思えば奴らはいまだに、ラシャ・コウヤショウが男爵バロン位を得た事を快く思っていないのだ。


かなりの女性好きなのは否定しないが…。

いや、あれはかなりどころのレベルでは無いか。


ヘンド辺境伯マーグレイヴ家から出向しているワガセ嬢が気の毒だが、彼女は彼女の役割(傭兵大隊内部の煌王家派の牽制)があるし、あの性格の為、それなりに楽しんでいるようだ。

私から言わせれば、無駄な派閥争い、ご苦労様と言う他無い。


その時、到来を告げる鈴の音が鳴った。


「太子、よろしいでしょうか。かの者が参上いたしました。」


迎えに現れたのは、この「音無しの塔院カルシスト」の責任者でもある「サイレント公爵デューク家」の党首、直々の足運びである。

その党首が厳かに案内するとなれば、この太子と呼ばれる人物の立場も知れよう。


「叔父上、それで噂の赤き竜人殿の鑑定精査アナライズはどうか?」


「それですな…装備品一式、何故か仮面の着脱だけは執拗に拒否したようですが…軒並み特殊兵装ユニーク級程度と判明しております。想定外ですが。」


それに加え、極めて高純度の「賢者の核石ワイズマン」を数種類、持ち込んでいるとの事。

可能ならば、バディ侯爵マークィス家の「魔道師団ヤトラアーミー」で買い取りたいところだと言う。

あの価値ならば、1個でも「煌皇トゥインコル金貨」30枚は惜しく無いらしい。


だが、そういった基本的な交渉権は、今回は傭兵大隊に権利がある。

煌太子として、どちらかの勢力に加担する訳にはゆかない。


ところで、叔父上とは言っても私と彼の年齢差はそれほど離れていない。

確か5歳程度の筈で、叔父上は今22歳だ。再従兄弟に当たる。

結婚適齢期であるが、奥手の為に婚約者は未だにいない。


「むう…仮面を外したがらないと言うのは、顔を見られたくないと言う意味か?」


「報告ではそう聞いていますな、ただ…。」


言わずとも分かる。

まあ、実際に会ってみれば判明するに違いない。


既に、ミリオン・メーカー公爵デュークも到着しているとの報告を受けている。


「では叔父上、参ろう。」


「御意。」


今回の面会にラシャ・コウヤショウは欠席している。


非公式の拝顔式の為、傭兵大隊の責任者であるラシャも出席する権利があるのだが、爵位が違いすぎる為、出席を自主辞退した形だ。

公けには体調不良(腹痛)との事。何だ、腹痛って?


何食わぬ顔をして、自分には毒は効かないと豪語していたのを思い出す。


立ち上がりながらも、この面会が、そのラシャ以来の慣例になっている事を思い出し、懐かしくも思える。


ともかく、その実力のほどを見定めようではないか、と。


◇ ◇ ◇


ステリアス・シーヴァ【竜絶壁オーバーマインド発動中】

種族〈シーヴァ族〉

階級〈傭兵〉

所属国〈無し〉


カテゴリー〈8.5-〉

戦闘力 57

防御力 52

生命力 77

回避値 53

知能値 47

器用値 34

魔力値 58


相生相剋〈火気〉属性 43

相生相剋〈木気〉属性 31

相生相剋〈金気〉属性 25

相生相剋〈土気〉属性 28

相生相剋〈水気〉属性 32


竜技ドラゴニックアーツ

九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎かくえん〈火気〉

九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐せいひつ〈水気〉

九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉

九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉


戦技バトルアーツ

一刀両断

十文字斬り


固有能力パーソナルスキル

竜の血眼(竜眼第1位階)

轟炎ピュラリスフィールド


能力スキル

大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了

毒耐性


魔力系マグス術式

下位(基本三原理)火属性イグニス付加ギフト

下位(基本三原理)火属性イグニス魔道弾ブリッド

下位(基本三原理)火属性イグニス誘導波動ソリュード

下位(基本三原理)水属性アクア付加ギフト

下位(基本三原理)光属性ルーメン付加ギフト


称号

赤き竜人

傾国の貴公子


装備

竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁オーバーマインド発動中】

属性:暴君LV820〈聖遺物レリクス級〉

付与効果:暴君の加護〈第1位階〉

剣撃物理破壊力ソードアーツ増幅

竜技ドラゴニックアーツ増幅

所持者固定契約〈魂〉

耐久値:980/∞


竜面マルティコラス〈仮面〉

属性:竜面の者LV250〈聖痕武器スティグマ級〉

付与効果:竜因子アデック封印

自己再生

耐久値:200/∞


朱鎧ハーフクロスアーマー〈皮鎧〉

属性:朱虎の皮LV15〈通常ノーマル級〉

付与効果:物理抵抗〈皮〉

耐久値:85


携帯用小刀フォールディングナイフ〈小剣〉

属性:雷鉱石ブロンティアLV30〈特殊兵装ユニーク級〉

付与効果:物理特化

雷属性トニトルス付加ギフト

耐久値:150


所持金

東方主計紙幣100枚


所持品

賢者の核石タリスマン×5

岩塩

獣油オイル

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