第2話 「亜人の森に住まう者」〈2〉蜂蜜酒(ミード)
(^ー^)ノRPG要素追加。
第2話 「亜人の森に住まう者」〈リスクを選ぶ勇気が無い者は、人生において何も達成することが出来ない〉He who is not courageous enough to take risks will accomplish nothing in life
〈2〉草創歴0444年4月14日
第2内壁によって囲まれた貴族区画。
とは言え、それはもっとも外周の二等貴族区画に過ぎない。
無論、その中心地は煌王家が住まう「心座」だ。
それを取り囲むように1等貴族区画あり、2等貴族区画もある。
俺達(俺とアムの2人)のような渡来人は、まあ、入れてこの2等貴族区画ぐらいが精々だろう。
それも、こうして招かれてようやくって感じだ。
しかしながら、開門の際の審査は驚くほどに簡素であった。
馬車の外から門衛さんがチラリと中を覗き込む程度。
顔パスかよ?って感じだ。
この馬車の持ち主でもある男装の貴族さんの効果なのか、2等程度の貴族対応なのか、まだ判断し難いな。
それでも、さすがは貴族区画の市内風景だ。
景色はガラリと一変した。
商業区画の一般市民の公道は、赤茶けたレンガ敷きで、それはそれで趣きがあったが、こちらの車道は全て藍白輝石を使用した白一色。
贅沢だね。
建物の規格も統一された現代風調の白。
厳かな印象とともに、寂れた静寂さが漂う。
『君が苦手な感じだね〜。』
俺はやっぱり、人があふれたガヤガヤ感が大好きなんだよな。そもそも、俺は白色が大嫌いなんだ。
『それは個人的なアレじゃないの?』
そう。個人的なアレだ(断言)。
それはともかくとして、女中さん番号2こと、アンリ・ヒヨシマが御者を務める馬車は、ゆっくりと御主人様(男装の貴族さん)が待つ屋敷へと向かうのであった。
◆ ◆ ◆
居間で待たされること、数分。
俺は女中さん番号1の出したグラスを一気にあおる。
グラスの中身は朱色の混濁した液体だ。
驚きと共に胸囲を震わせ、女中さん番号1はたおやかに微笑んだ。
「お代わりをお持ちいたしますわあ。しばしお待ち下さいねえ。」
この飲み物は味にクセがあるものの、喉越しはいい。
おそらく何かの果実を絞ったものだろう。
俺は次に渡されたグラスを、今度はゆっくりと飲み干す。
すり下ろした果汁が胃袋に優しい。
「ジ・ハド煌王國原産のコケモモの実ですわ。お気に入っていただけたようで嬉しいですわあ。」
ちなみに、この亜麻色の髪の女中さん番号1、その名をメアリ・カンタダと言う。今さっき紹介されたが、それなりの胸囲の持ち主だ。
しかし、もうちょっと酸味が欲しいな。
他の果実と混合すれば、もっと美味しくなるとは思うのだが。
となると、檸檬だな。だがあれは温暖地方でしか取れないか。
うーん。難儀だな。
と、コケモモの実を堪能していれば、応接間に続く扉が開き、この屋敷の御主人様が姿を現した。
本日の男装の貴族さん、襟布と飾内服だけの軽装だ。
まあ、自宅だしね。
形式ばった必要はないし、好印象ではあるが、それでも男装なわけである。
『って言うか、ご本人は気付かれたって思ってないんじゃない?』
えー?そんなまさか…どうでもいいけどね?
「本日は、我が屋敷においで下さり、まことにありがとうございます。昨夜は無礼を働き申し訳ありませんでした。」
私のことは昨夜通り、アーシアとお呼び下さい。と、男装の貴族さんは深々とお辞儀をした。
しかしながらだ、例のトーパチオって言う家名は、士爵を興した際に賜わったものだと言う。
アスラシア・トーパチオ士爵って言うのが正式な名前ではあるらしい。
それ以上踏み込むと面倒くさい事になりそうなんで、俺はウンウンと頷いて早急に話しを終わらせた。
そんな事より、約束の件はどうした?って感じだ。
「ああ、忘れていました。ちょうど正午になりますからね。メアリ、食材の準備に手抜かりはありませんね?」
「勿論ですわあ、アーシア様。ご要望の雪ウサギの食材を中心に、ポタージュのスープ、白野菜のサラダ、三ツ星のブレッド(パン)を予定しております。」
男装の貴族さん、女中さん番号1に調理の開始を命じると、メアリとやらはそそくさと走り出す。
彼女は炊事担当女中か?
代わって、女中さん番号2のアンリが接待役に回る。
栗毛の労働馬を厩舎に戻してきたのか、ちょっと馬の匂いがするぞ。
《ステリアス・シーヴァは能力〈察知〉(NEW)を獲得しました。》
『野生的だねえ〜。』
それはもういい。
そう言えば、この屋敷で見た女中さん、1号と2号しか見ていないのだが…まさかとは思うのだが。
『いやいや、これはどう考えても貧乏貴族っぽいですよ〜?』
嫌な予感しかしないな。
それでも、この屋敷はそれなりに大きいけどね。
装飾も外観もしっかりしているし、全長200mはあるんじゃないか?
庭もぴっちり手入れされているしな。
しかし、静か過ぎてちょっと怖い。
「申し訳ないのですが、昼食の準備が整うまで、少しお時間を頂いてもよろしいだろうか?」
ほら、きた。
男装の貴族さんは神妙な面持ちで、俺を応接間に案内する。
まあ、ここで断るわけにもいかないか。
俺は買ったばかりの黒色の外衣を外し、その後に続いた。
「お掛け下さい。」
勧められるままに、俺は瀟洒な木彫りの椅子に腰掛ける。鎧姿の俺を乗せてもビクともしない丈夫さ。
この材質には強固性の付加が付けられているのだろうな。
そして応接間は所狭しと書棚が並び、様々な書物が収められている。
調度品も逸品揃いだぞ。
これだけ見ると、貧乏とは程遠いだろ。どうなってんだ?
『あれ〜?僕の推察失敗かあ。それにしたって、使用人が1人もいないってのはおかしいよね?』
だから、そう言うのに関わるとロクでもない目に遭うんだろうが。
アステリト王国然りだ。
「…まあ、話しだけは聞いてやってもいいがな?」
「ありがとうございます。」
そう言って、男装の貴族さんは口火を切った。
そこからはもう、止まらない、止まらない。
ほとんど俺は、右の耳から入って左の耳から抜けて行った感じ。
「ステリアス殿と呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか?」から始まり、現在の「ジ・ハド煌王國」の内情を切々と語ってくれたね。
そこら辺は割愛するぞ。
《ステリアス・シーヴァは能力〈聴き流し〉(NEW)を獲得しました。》
「ステリアス殿はご存知でしょうか?現在、銀色の鷹騎士団が亜人の森を侵略しようとしている事を?そもそも、小競り合いはあったものの、我々は共存関係であったのです。」
国の貴族さんの口から「侵略」って言葉が出ちゃったよ。
『あっ、でもこの人、亜人種擁護派だったよね〜?』
ああ、そうだった。忘れてたね(笑)。
「既に国としての機運は、もはや亜人の森侵略に傾いているのです。これはもう、覆しようがありません。止めようがないのです…。」
で、それでもどうにか止めたいと、傭兵大隊の隊長であるラシャを突っついていたわけだ。
無理があるだろ、どう考えても。
「私は戦争になり、双方が傷付く様を見たくはないのです…。」
ん?その口振りは何だ?
話しを聞く限り、銀色の鷹騎士団ってやつの圧倒的な蹂躙って展開になるとばかり思っていたのだが。
「…その亜人の森ってのは、一筋縄ではいかんって感じなのか?」
貴族さんは俺の言葉に顔を曇らせる。
「はい。確かに、亜人の森に住む魔物は強靭な個体が多いのです。炎獣や半馬半山羊がそれに当たりますが…。」
俺の欲しい外衣の材料の炎獣だな。
これは機会があれば狩るしかないでしょ?そうでしょ?
「…だが、それだけじゃないって顔だな?」
「はい…問題は、亜人の森を統治する亜人種の1種族、闘種です。」
闘種?聞いた事がない亜人種だな。
ん…アスラ?アスラ…ああ、アステリト王国の隣国がアスラルトって名前の王国だったな。
その種族が他の亜人種を治め、強固な防御網を構成していると言う事か。なんか強そうな名前だな。
ん?…アスラ…あれ?この男装の貴族さんの名前、アスラシアだっけ?
◆ ◆ ◆
一旦、ここでお開きだ。
女中さん番号1のメアリが、静々と昼食の準備が整いましたと申し出た為だ。
ナイスタイミングだよ、女中さん番号1。
俺達は会食室へと向かった。
彼女に案内されて入室すると、大型の暖炉が煌々と明かりを灯していた。
白い麻製の卓布が清潔さを醸し出し、銀色に輝く真銀鉱製の燭台も好印象で、グングン期待が高まるばかりだ。
「ささやかですが、本日お会い出来た幸運を祝い、乾杯の盃をご用意させて頂きました。」
面倒くさいな。
面倒くさいとは思いつつも、俺は女中さん番号1が配る食前酒?と思われる蜂蜜酒のグラスを受け取った。
そんな事より、早く肉を出せだ!
俺は1人、食卓の前でヤキモキする。
「乾杯っ!」
グラスとグラスが重なり、カラーンと乾いた音が響いたその瞬間、扉が勢いよく開かれた。
開かれたと言うより、殴り飛ばされた的な?
血相を変えて飛び込んで来たのは、女中さん番号2のアンリだ。
国家存亡の危機かってぐらいの形相。
「た、大変ですー!アーシア様!」
「何事ですか、こんな時に!?」
全くだ。何事だよ、だ。
早く雪ウサギを持って来い、だよ(怒)。
「そ、それがー。たった今、銀色の鷹騎士団が出立したとの事でー。」
「な…な…何ですってーー!?」
おいおい、男装の貴族さん。思わず素が出てるぞ?
もっとも、すぐに気を取り直し、俺を置き去りにして談合を開始する男装の貴族さんと、その女中さん1号、2号。ヒソヒソやり始める。
まあ、俺の耳にはダダ漏れだけどね?
《ステリアス・シーヴァは能力〈聴覚〉(NEW)を獲得しました。》
『あれ?これ既視感?』
っうか、貴族としてどうなのよ、これ?
「…第一、英霊級になったバイナ卿は、まだ昏睡状態の筈でしょう?」とか。
「…その通りですがー。聴いた話では、約半数の6翼家がバイナ・ウッドペッカー準男爵様の覚醒を待たずに出撃したとー。」とか。
「…戦場で先に手柄を立てる気満々なのですわあ。」云々。
あー。盗み聞きしたかぎり、どうやら見通しが甘かったって感じか。
『聖遺物級と同期すると、英霊級としての肉体進化に一定以上の昏睡状態が必要だからねぇ。目が醒めるのは1週間後かなぁ?1年後かなぁ?』
そいつには手柄はやらんって寸法だろうな。
仲間割れ、万歳だ。
お前等が徴収した肉(雪ウサギ)の恨みだ(怒)。
『君もしつこい男だね〜。』
ええいっ、当たり前だ。
食い物の恨みだぞ。そのおかげで、やっとありつけるのだ。
さあさあ、早く肉を…持って…こい…おや?
男装の貴族さんと女中さん1号、2号ともにガタガタやり始めた。
「お…おい?」
いや、これはガタガタどころじゃない。バタンバタンと走り始めた。
「おいっ!俺の雪ウサギはどうしたっ!?」
数十分後、俺の前に息急き切った男装の貴族さん、駆け込み土下座をして見せた。
器用なものだな。
で?
「申し訳ありません!我々はただちに亜人の森へと向かいます。ご所望の肉料理については、道中にて準備をさせていただきます。どうか、どうかご同行を…。」
ああ、そうなっちゃうのね…なんか読めてたけどね。
そして、俺の口の中はボソボソのブレッド(パン)でカラっカラだ。
不味い。喰えた代物じゃない(怒)。
俺は土下座する男装の貴族さんを見下ろしながら、この逃れられぬ雪ウサギの螺旋に眩暈を覚えるのだった。
『お腹空いてるだけでしょ?』
うむ。そうとも言う。
◇ ◇ ◇
ステリアス・シーヴァ【竜絶壁発動中】
種族〈シーヴァ族〉
階級〈傭兵〉
所属国〈傭兵大隊預かり〉
カテゴリー〈8.5-〉
戦闘力 59
防御力 54
生命力 77
回避値 55
知能値 47
器用値 38
魔力値 58
相生相剋〈火気〉属性 43
相生相剋〈木気〉属性 31
相生相剋〈金気〉属性 25
相生相剋〈土気〉属性 28
相生相剋〈水気〉属性 32
竜技
九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎〈火気〉
九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐〈水気〉
九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉
九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉
戦技
一刀両断
十文字斬り
固有能力
竜の血眼(竜眼第1位階)
轟炎の気
能力
大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了
毒耐性 寒耐性 虚言耐性 邪眼耐性 敵意耐性 脚力 看破 打撃 軽業 殺気
嗅覚 追跡 鑑定 察知(NEW)聴き流し(NEW)聴覚(NEW)
魔力系術式
下位(基本三原理)火属性付加
下位(基本三原理)火属性魔道弾
下位(基本三原理)火属性誘導波動
下位(基本三原理)水属性付加
下位(基本三原理)光属性付加
称号
赤き竜人
傾国の貴公子
装備
竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁発動中】
属性:暴君LV820〈聖遺物級〉
付与効果:暴君の加護〈第1位階〉
剣撃物理破壊力増幅
竜技増幅
所持者固定契約〈魂〉
耐久値:980/∞
竜面〈仮面〉
属性:竜面の者LV250〈聖痕武器級〉
付与効果:竜因子封印
自己再生
耐久値:200/∞
朱鎧〈皮鎧〉
属性:朱虎の皮LV15〈通常級〉
付与効果:物理抵抗〈皮〉
耐久値:85
携帯用小刀〈小剣〉
属性:雷鉱石LV30〈特殊兵装級〉
付与効果:物理特化
雷属性付加
耐久値:150
フード付き外衣(黒色)〈服〉
属性:麻製LV4〈通常級〉
付与効果:物理抵抗
防寒
耐久値:6
所持金
煌皇金貨9枚
煌白銀貨38枚
煌赤銅貨20枚
所持品
賢者の核石×5
岩塩
獣油
下着〈服〉×5