第1話 「邂逅の霊都」〈11〉喫茶スタージョン
(^ー^)ノRPG要素追加です。
第1話 「邂逅の霊都」〈涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない〉If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like
〈11〉草創歴0444年4月13日
カランカランと門鐘が来客を告げ、思わぬ珍客を招き入れた。
この喫茶「スタージョン」は日々の癒しを求める人々に、一時の安らぎを与える空間たらんと生まれた。
主人はこの私、ルーク・アレグザンダーである。
たかだか40年の月日は、老舗と呼ぶには相応しくはない。
なにより、これは私の趣味のようなものだ。
だが、この仕事をしていると、時に予想外の客を呼び込むことがあるから面白い。
そして今回の珍客は、それに輪をかけて面白い。
あの淑女は顔なじみだ。
しかし、全くもってあの胸囲は目の毒だと思う。
危うく、茶漉器を持つ手が震えてしまう。
普段の彼女は、比較的に簡素な厚手の防寒衣裳で訪れるのだが、度々この甲冑姿で来店されると、その胸囲がより、あられもない姿となる。
どれだけ、茶葉抽出器に被害が出たことか…。
常に紳士である事を心掛ける私だが、本日に限っては計量匙が指からこぼれ落ちた。
続いて姿を現したのが、とかく氷層下で噂となっている人物。
「赤き竜人」その人であったのだ。
何とも言えぬ威圧感を持った青年だ。
私が掴んでいる情報によれば、普段の無骨で無愛想な態度や言動とは裏腹に、ライオネック煌太子との会見では、「巧みな常套句でやり過ごした」とか。
これは、ただの東方辺境流れの傭兵ではないぞ?と。
ましてや、あのシーヴァ族だと言う。
ほぼ亜人種ながら、その固有戦闘能力の異常な高さから、敵対するのは非常に危険であると、当時のアステリト王国と隣国のアスラルト王国が協議し、密約を結んだという曰く付きの一族。
そしてそれは、煌王家が試した暗殺者、あの「百面相の魔女」を退けた事で確定され、流布されている。
所持品の鑑定精査では、そのほぼ全てが特殊兵装級であったそうだが、あの仮面こそが彼の力の源では?と囁かれていた。
だが現在、ジ・ハド煌王國の社交界で、もっとも憶測を呼び、それを肴に囁き合うのがこれだ。
彼のその素顔が「絶世の花薫るほどの美貌である」と。
しかも180㎝を超える長身ともなれば、貴族の淑女御婦人方は、こぞって噂し想像する。
自らが、その恋模様の劇場舞台に上がる様を。
一部では「傾国の貴公子」とか。
にわかには信じられない、が。
話しは変わるが、現在、煌王家の居城「心座」では選定の儀が行われている。
「銀色の鷹騎士団」の誇る十二の銀翼家。
1位から順に、12人の騎士の適合接触が行われ、市内住民はそれに浮かれている。
未公表ではあるが、選定の儀は8位にまでズレ込み、「バイナ・ウッドペッカー準男爵」に確定したとの報告が今しがた届いた。
10番人気の最若手の騎士とは、予想を上回る結果だ。
それで一波乱起きそうな予感はある。
ところが、この「赤き竜人」はそれに匹敵するもう一人の主役。
それを快く思わぬ者も多い。
特に話題をさらわれた銀色の鷹騎士団関係者は不穏な動きを見せている。
そんな注目の的の人物が、これまたある意味で有名なお嬢さんに、嫌そうな雰囲気丸出しで引っ張られ、我が店に来客されたのだ。
「…いらっしゃいませ。空いているお席にお掛け下さい。」
私は内心穏やかではないが、平静を装いながらの接客を行う。
紅茶の一覧表と、常温水の入ったグラスを音も立てずに置く。
「主人、今日は鎧でごめんなさいね、ウフフフ。どうしても、ステリアスちゃんにこの店を紹介したくて〜。」
ワガセ嬢が楽しげに微笑む。
しかし、既にちゃん付けとは手が早い。
とは言え、彼女はヘンド辺境伯家から出向しているグローリエス士爵家の長女。
生半可な貴族が手を出したら、こっぴどい目にあうこと請け合いだ。
賢い貴族の子女は、そんな彼女を無視するのが慣例となっている。
彼女の事は置いておいて、「赤き竜人」殿の話しに戻ろう。
彼を狙い、既に各勢力で熾烈な争奪戦が繰り広げられていようとも、しかし、ここで目の上のタンコブが傭兵大隊の隊長ラシャ・コウヤショウだ。
その彼が身元引き受け人になっているのが始末が悪い。
彼は煌王家直轄の傭兵大隊にありながら、煌王家派に属するわけでもなく、無論のこと貴族派に属するわけでもない。
立場としては微妙な立ち位置にいる人物である。
そして、ラシャと共に入国したソラト・パワーもまた、煌王家お抱えの錬金術士と言う立場になっているものの、同様の扱いであると言えよう。
「…いえ、お構いなく。ご注文が決まりましたらお呼びください。」
備え付けの軽食表とにらめっこしながら、一方の「赤き竜人」殿は固まっている。
どうしたのだろうか?
しかし、ここで老婆心から尋ねるのは失礼にあたるため、私はクルリと身を翻した。
それが当店の心づくしだ。
ちなみに当店の主人である私が、事細かく国内情報に精通している理由は…今はまだ告げる時に非ずを了承されたい。
情報屋であるとか、そんなつまらないオチではない事だけは伝えておこう(笑)。
◆ ◆ ◆
凄い紳士がいたものだ。
こんな身なり(真紅のハーフクロスアーマー着用)の俺を、喫茶「スタージョン」の主人は何ら動じる事なく接待してくれた。
喫茶ってやつには初めて入ったが、燕尾服の良く似合う「白髪の老紳士」風の主人である。
オールバックの髪型は、主人と言うよりも執事の鑑という雰囲気。
穏やかな顔だ。
しかして、燕尾服に隠されたしなやかな筋肉と、時折、見せる鋭い眼光は只者ではない…気がするな。
《ステリアス・シーヴァは能力〈看破〉(NEW)を獲得しました。》
「主人、今日は鎧でごめんなさいね、ウフフフ。どうしても、ステリアスちゃんにこの店を紹介したくて〜。」
巨乳に対する耐性も兼ね備えているようで、全く動じない。羨ましいな。
「…いえ、お構いなく。ご注文が決まりましたらお呼びください。」
俺は手元に置かれていた軽食表をジッと見つめ、次いで常温水の入ったグラスをジッと見つめる。
『飲んでもお金は取られないと思うよ?』
それを早く言え。
俺はグラスを掴むと、それを一気に飲み干した。
しかし、ここの客席は小さいな。木製の椅子から体がはみ出てしまう。
巨乳さんは巨乳さんで、紅茶の一覧表とやらを上機嫌で見ており、俺の不満に気付いた様子もない。
まあ、いいや。俺はこっちだ。
俺は軽食表を開く。
さあ、読め!
『あ〜い。まず1行目。イオェイド(ニシン)載せの焼菓子とジャガイモの付け合わせ。』
魚の塩漬かよ。
『2行目は、アニティモノス(サーモン)載せの焼菓子とキャベツの付け合わせ。』
ほとんど同じじゃねーか。
『3行目。大麦粥菓子と、きのこのスープだって〜。』
だから…それの中身は大麦粥じゃねーか(怒)。
『え〜と、だいたい似たり寄ったりのメニューだよ?』
このやろう。騙された。
雪ウサギどころか、あのトルマリン鳥(飛べない鳥)すら無いだと?
『うん。無いねえ〜。』
「ウフフフ。ステリアスちゃん、やっぱりお姉さんはいつもの注文するね〜。」
唐突にそう言うと、巨乳さんは俺の批判がましい視線も意に介さず、主人を呼び出そうと手を振る。
あっ、ちょっと待て、このやろう!
「主人、私はラフル島原産の茶葉、三色菫をお願いしま〜す。それと、いつもの大麦粉卵包みね〜。」
他の客(3組程度だが)の視線も気にせず、甲冑をガチャンガチャンさせながら巨乳さんは注文した。
まあ、俺も竜面の異様な風体ではあるが、どう見ても迷惑この上ないものの、彼等はそっと視線を逸らす。
男は相方の視線に怯え、女性は敗北感からの逃避ゆえに。
ともあれ、それを許す主人の器の大きさに感服だ。
『あ〜。僕も気が効く執事欲しいなあ。ここの主人を複製できないもんかなあ〜?』
…俺達(俺とアムの2人)は運命共同体だからな。
『は〜い。分かってま〜す。逃げられないで〜す。』
本当に分かってるのか怪しいもんだ、この竜刀アムドゥシアスは。
「確かに承りました。そちらの御仁は如何致しましょう?」
「主人!ステリアスちゃんにはジ・ハド煌王國産の茶葉、焔火草をお願いね〜。」
コラ。巨乳さん、お前はまた勝手に!
俺は雪ウサギが食べたいんだよっ。
『あ。この北欧山羊の…腸詰ってのはどう?』
それだ!
その「北欧山羊」ってのは、確かジ・ハド煌王國産の食用改良種、だった筈。
その食肉は貴族の間でしか流通していないとか、何とか。
「ソ、ソーセージを俺にくれ!」
俺の形相に面食らった主人だったが、すぐさまに気を取り直して注文を確認。
結局俺は、巨乳さんお勧めの紅茶と北欧山羊の腸詰とやらを頼むことになった。
これで一安心。
一気に気が抜けた。
グダ〜っと萎びた。
「ねえねえ、ステリアスちゃん。お姉さんの頼んだ三色菫も甘酸っぱくて美味しいのよ〜。色々飲み比べれば、きっと好きなの出来るわよ。また来ましょうね〜。」
あえて断る。
『君も妥協しない男だね〜。』
褒め言葉として受け取っておこう。
「ここのマスターとは仲良くなっておいた方がいいのよ〜。ウフフフ。」
何だ、その意味深な発言は?
そうこうしているうちに、複雑な芳香が漂い始める。
対面台越しの主人が、茶葉保管瓶から茶葉を計量匙で取り出す。
茶葉保管瓶は種類、産地ごとに棚に並び、それだけでも壮観だ。
沸騰用薬缶からは蒸気が流れ出ている。
中央大陸で広く使用される砂糖は、南部内陸で取れるナツメヤシから抽出される椰子糖が一般的である。
しかし、対面台テーブルに並ぶ砂糖棚には、希少品の東方辺境産「てん菜糖」、西方辺境産「甘蔗糖」までもある。
茶葉に合った砂糖を主人が選ぶこだわり。
のみならず、沸点の確認と炒り時間の同時調整までもやってのける。
豊満な香りが嗅覚を駆け抜ける。
『鼻が欲しいよ〜。』
琥珀色の輝きが茶葉抽出器に広がってゆく。
「お待たせいたしました。こちらのラフル島産のカエデ糖を御使用ください。」
無彩色のカップ&ソーサーが差し出される。
上質な陶器製もラフル島からの直輸入。
何しろ、紅茶の一大産地は中央大陸のまさに中心、ラフル島を治める「聖ラムサ王國」である。
ともあれ、出されたものはとりあえず口にする派の俺は、それを一気に飲み干す。
ゴクッ。
喉ごし、サッパリだー。
「どお、どお、ステリアスちゃん?美味しいでしょ〜?」
それはそれで置いておこう。
俺が求める物はただ一つ。
「お待たせいたしました。北欧山羊の血液で固めた大麦の腸詰です。熱いのでお気を付け下さい。」
…俺の聞き間違いか?
いや、この湯気を上げる獣脂滴り照り返す、張りのある腸詰。
香りが食欲を誘う。
「ステリアスちゃん、それはジ・ハド煌王國の名物料理なのよ〜。ウフフフ。」
フォークを振り上げ、刺さると皮が弾け、プチッと汁が飛ぶ。
口に放り込む。
ジャリッ。
口腔に広がる血の匂い。
旨い…が…後味の違和感が半端ない。
このジャリジャリ感は大麦じゃないか、このやろう。
肉が入ってねー。
だが、それがこの国の名物であり、伝統的な血入り腸詰なのであった…。
それを見ながら、巨乳さんはチョビチョビと「木ノ実の大麦粉卵包み」をついばむ。
なんかイラっとする。
俺のこの怒りはどこにぶつければいいんだ(怒)。
《ステリアス・シーヴァの戦闘力が+1強化されました。》
『虚しいね〜。』
本日の出費追加。
「北欧山羊の血液で固めた大麦の腸詰」煌赤銅貨40枚。
「紅茶・焔火草の茶葉」煌白銀貨5枚。
一杯で銀貨5枚だと…気が遠のく俺だった…。
『輸入品とは言え、一杯で5000円はちょっと高いね〜。』
あ〜、何も聞こえん…。
◇ ◇ ◇
ステリアス・シーヴァ【竜絶壁発動中】
種族〈シーヴァ族〉
階級〈傭兵〉
所属国〈傭兵大隊預かり〉
カテゴリー〈8.5-〉
戦闘力 59(↑1)
防御力 53
生命力 77
回避値 54
知能値 47
器用値 36
魔力値 58
相生相剋〈火気〉属性 43
相生相剋〈木気〉属性 31
相生相剋〈金気〉属性 25
相生相剋〈土気〉属性 28
相生相剋〈水気〉属性 32
竜技
九十九式(下位)見えざる(ブリトマルティス)赫炎〈火気〉
九十九式(下位)束縛 (カリュプソ)の静謐〈水気〉
九十九式(下位)復讐 (エイレイテュア)の逆鱗〈土気〉
九十九式(下位)開闢 (アイオロス)の威風〈木気〉
戦技
一刀両断
十文字斬り
固有能力
竜の血眼(竜眼第1位階)
轟炎の気
能力
大剣 剣 手斧 槍 棍棒 小盾 軽装 隠蔽 偽装 物理抵抗 精神抵抗 魅了
毒耐性 寒耐性 虚言耐性 邪眼耐性 脚力 看破(NEW)
魔力系術式
下位(基本三原理)火属性付加
下位(基本三原理)火属性魔道弾
下位(基本三原理)火属性誘導波動
下位(基本三原理)水属性付加
下位(基本三原理)光属性付加
称号
赤き竜人
傾国の貴公子
装備
竜刀アムドゥシアス〈大剣〉【竜絶壁発動中】
属性:暴君LV820〈聖遺物級〉
付与効果:暴君の加護〈第1位階〉
剣撃物理破壊力増幅
竜技増幅
所持者固定契約〈魂〉
耐久値:980/∞
竜面〈仮面〉
属性:竜面の者LV250〈聖痕武器級〉
付与効果:竜因子封印
自己再生
耐久値:200/∞
朱鎧〈皮鎧〉
属性:朱虎の皮LV15〈通常級〉
付与効果:物理抵抗〈皮〉
耐久値:85
携帯用小刀〈小剣〉
属性:雷鉱石LV30〈特殊兵装級〉
付与効果:物理特化
雷属性付加
耐久値:150
所持金
煌皇金貨9枚
煌白銀貨39枚
煌赤銅貨90枚
所持品
賢者の核石×5
岩塩
獣油
下着〈服〉×5