4の話
そうして、試練が始まりました。ここは、ルナサファイアにとって初めての外の世界。一面真っ白で寒くて仕方ありませんでした。
「寒いわ。こういう時は物を奪えばいいのよね」
ルナサファイアは近くにいた村人に声をかけました。
「そこの方? 私用のコート、頂くわね」
「何を言ってる? 私も寒いんだぞ」
「何をおっしゃってるの? あなたは私のもの。当然、あなたのコートも同じよ」
ルナサファイアは怒ったように言うと、みすぼらしいそのコートを村人から剥ぎ取りました。
「においが気になるけれども仕方ないわね」
ルナサファイアは路地の奥深くへと歩いて行きました。
「そこのお嬢さん」
近くを歩いていた男性がルナサファイアに声をかけました。紳士のような身なりで、どうやら貴族のようです。
「何かしら。貴方はどこの方なの? 見たことないのだけれども」
「それは大変ですね。私、かなり有名だと存じますが。シュジェ神と申します」
彼――シュジェ神――は優しく甘い声でそう言った。
「まぁ、そうなの。どうぞよろしく」
シュジェ神は、興味のなさそうなルナサファイアに驚き、少しばかり目を見開きました。
「それで……貴女に結婚を申し込みたいのですが」
ルナサファイアはシュジェ神に忌々しそうな視線を向けると、
「私には貴方より素晴らしい方がいまして。心に決めた方なのでお譲りすることはできないのです」
と吐き出すかのように言いました。
「わ、私に何が足りないというのですか!? 金も名誉も思いのままですよ」
「貴方には美の女神エハルナがいらっしゃるのでしょう?」
ルナサファイアは冷たく言い捨てると、もっともっと奥へ歩いて行きました。
ルナサファイアはさらに貧しい者たちが住むエリアへと入っていきました。道端に孤児とみられる少年が座っています。
「きれいなお姉ちゃん、お金ちょうだい。のどがカラカラだよ」
その少年は擦れた声で言いました。
「ここにあるものは私のもの。きちんと管理しなくてはだめよね」
ルナサファイアはそう呟くとその少年に五百円程あげました。
「なんか、くらくらするわ……」
ルナサファイアは少年のお礼の言葉を聞いているうちに倒れてしまいました。
次で最終話~!