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1の話

―注意―

この世界の神は長い間信じられ続けることで発生します。

覚えておいて損はありませんよ?

 昔、あるところに女の子が産まれました。「ルナサファイア」と名付けられたその女の子は大変美しかったのでした……。

 ある日、シュジェ神という心の神様が冬の国を訪ねました。神託をするためです。

 冬の国は悪政なことで知られていましたが、国王は心優しい人でした。ですから、シュジェ神はその国を気に入っていました。

 シュジェ神が王の夢に現れると、どこからか赤子の産声が聞こえてきました。どうやら、王に子供が産まれたようです。

「お前の性悪妻にも子ができたか。見に行ってやろう」

「ありがたく存じます」

冬の国で本当に悪いのは、妃でした。国王もそのことは知っていましたが、妃に惚れこんでしまっていたので、止めることができませんでした。

 シュジェ神は地上に降りてきました。降りた先は王宮の祭殿です。煌びやかに飾られた王宮内を見渡しながら、カーペットの敷かれた廊下を歩いて行きます。

 シュジェ神は、乳の匂いのする部屋の前で立ち止まります。

「ここか」

そう独り言ちた後、ゆっくりとドアを開けました。

 その先にはとてつもなく美しい女性が優雅に座っていました。妃です。その姿は、美しいものを見慣れているシュジェ神でもとても美しく感じられました。

「まぁ、シュジェ神ではいらっしゃいませんか。来てくださるのなら先におっしゃってくださいませ」

妃はうっとりするような笑みを浮かべて椅子を勧めました。

「毒婦メノウ。お前の本性なんっとっくに知ってるぞ」

「ご存知でしたか。まあ、何か変わるわけでもございません。先に私の御子をご覧くださいな」

妃は何事もなかったかのように微笑みます。

シュジェ神はしばらくの間、いらだちを抑えつけるかのような表情をしていました。しかし、渋々と口を開きました。

「そうだな。お前の自慢の娘を見てやろう」

そして、窓辺の揺りかごへと近付きました。揺りかごの側には何人かの乳母が侍されています。

 シュジェ神が揺りかごの中を覗き込むと、可愛らしい女の子が見えました。一歳ぐらいでしょうか。青い絹のような髪の毛と、真珠のような銀色の瞳がとても印象的です。女の子はシュジェ神を見ると、

「きゃはは」

と笑い声をあげました。その笑いは、宝石のように輝いており、麗しいものでした。

 シュジェ神はこの女の子に一目惚れしてしまいました。どうしても手に入れたい、そう思ってしまったのです。

 そんなシュジェ神の様子を妃は後ろから見つめていました。妃メノウにとって、シュジェ神が自分の娘に惚れ込むであろうことはすでに織り込み済みでした。ですから、どうやってうまく自分の娘を使おうか、と思案していました。

 少しの沈黙の後、シュジェ神が妃のほうを振り返りました。

「この娘を嫁にくれないか」

「嫌ですわ」

妃は鋭く即答します。妃の顔に笑みが浮かんでいることに、シュジェ神は気付いていないようです。目を見開いて固まっています。

「なっ……何故だ? 私にはお前の求めている権力も財もある。娘の好きなように暮らしてやる」

「そんなものは大前提ですわ。あなた以外にもそんな方はいらっしゃいますでしょう? あなただけの特別なところはございませんの?」

妃は頬杖をつきながら答えました。つまらないものを見るかのような目でシュジェ神を見ています。

「そうだな。私は心の神だ。そのことも特別なことに入るだろう。それに、お前の娘に好かれるように生きてやる」

今度こそ妃は満足げな顔をしました。

「では。こう致しましょう。私はルナサファイアに幸せになってほしい。ですから結婚相手はルナサファイアに選ばせます。よろしくて?」

「あぁ。勿論だ」

 シュジェ神はルナサファイアに好かれる方法を考えながら天に戻りました。途中からは何か思いついたらしく顔が綻んでいました。

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