表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/33

三話 第七章~休息~

 目を覚ますと俺は、いつもと同じ天井を眺めていた。

 そしていつかと同じように、傍らには雪の姿があり手を握りしめていた。

「こうちゃん?良かった!」

 瞼を開くとほぼ同時に、雪が勢いよく横たわる俺の胸に顔を埋めた。

 大分心配をかけてしまったらしい。

 起き上がって雪に謝ろうと思ったが、力が入らずに起き上がることができなかった。

 それに雪がここまで心配していた理由がよくわからない。

「なぁ、雪。俺、どうしたんだ?」

「覚えてないの?」

 雪に手を引かれて家に帰ってきたところまでは、すぐに思い出せた。

 だがそれ以降の事は思い出せそうで、思い出せない。

「ごめん。家に帰ってきた後のことが……」

「こうちゃん。家に着いてすぐに自分の部屋に行ったんだけど、その途端に倒れたんだよ」

 雪に言われて、何となく思い出せてきた。

 確か部屋に入った瞬間に、意志とは別に体の方が限界を迎え、前のめりに倒れてしまい、慌てて駆けつけた雪の声で失いかけていた意識が戻り、意地でベッドに潜ったといったところだ。

 一日に二回も倒れる経験なんて初めてだった。

 自分のことなのに、まるで夢を見ている気分だ。

「そうだったな……ごめん。心配かけて」

 先程から見いる雪の顔の目の下には隈があり、それだけで雪が寝ずに診ていてくれたのはわかった。

 俺が独りよがりに無茶をして頑張ろうとしたせいで、雪にも大変な思いをさせた。

「ずっとこうちゃんの寝顔を見れるという、役得もあったし気にしないで」

 雪は俺の胸の上で嬉しそうに笑っている。

「お前はぶれないな……さてと、支度するか」

 雪の気遣いに心を痛めながら、学校へ行く準備をしようと無い力を振り絞って、起き上がろうとしたら、雪に胸を押されて立ち上がるのを制止させられた。

「こうちゃんは学校休まなきゃダメだよ。まだ熱も下がってないんだし」

 力が入らないのはそのせいだったようだ。

 普段はか弱い雪に力負けしている時点で、まだ回復しきっていないのを思い知らされた。

「それに今日は頼まれごとないんでしょ?」

 確かに雪の言う通り、昨日は誰からも依頼はされておらず、明日に備えるべきなのだろう。

 出来立ての部活なので、他に知っている人もいないだろうし、心配はなさそうだ。

「……わかった。でも、雪も寝てないんだろ?だったら」

 言葉を言い終える前に雪は首を横に振った。

「寝不足じゃ休めないよ。それに私がいたら、こうちゃんはゆっくり休めないだろうし。それとお義母さんには連絡しといたから」

「そっか。何から何までありがとな」

「妻の役目だからね。じゃあ、私準備しなくちゃだから」

 お礼を言うと雪は立ち上がり、俺の部屋から出て行った。

 場を和ませようとではなく、毎回雪は真面目に言っているので変に気遣わずに済んでいる。

 安心しきると自然に眠りについた。


 次に目を覚ましたのは午前九時となっており、当然家には雪の姿はないと確信していた。

 しかし耳を澄ますと廊下から、こちらに向かってくる足音が聞こえ、数時間前に比べ楽になった体を起こした。

 しばらく聞き耳を立てていると、俺の部屋の前で止まった。

「雪?」

 ドアの向こうにいる誰かに問いかけると、答えるより早くドアが開いた。

「よう。倒れたんだって?大丈夫か?」

 部屋に入ってきたのは意外にも父さんだった。

 すっかり俺と雪の二人暮らし状態だったので、両親の存在を忘れていた。

「……誰?」

 久しぶりにあったせいか、つい意地悪を言いたくなった。

 いつもは父さんの方が意地悪を言ってくるので、たまにはいいだろう。

「心配している父親にその返しはないだろ。まぁ元気そうだな」

「今は何ともないよ。てか心配して帰って来たんじゃなくて、着替えを取りに来たついでとかだろ?」

 父さんが帰って来る理由なんか、俺が今述べたことか、母さんと会ったりデートしたりする時くらいだ。

「可愛くない息子だな。実際その通りではあるんだがな」

 そちらこそ親としてどうかと思う。

 言い合いをする気力はなっかたので、言わないでおいた。

 すると急に真面目な話へ戻った。

「それで、原因は発作か?」

「うん。また雪に心配かけてしまった……」

「それが分かってるなら、俺からは何も言うことないな」

 この言い方だと、父さんの心配していたのは発作よりも、俺が雪のことを思いやれているかだ。

 本当は発作の事を心配しているくせに、素直じゃないところは父さんらしいと言えば父さんらしい。

「ならもう仕事に戻ったら?俺ももう少し寝てたいし」

 俺も素直にお礼を言えないところは、やはり親子だと痛感する。

「そうか。だったら、仕事に戻るが……一つだけ雪ちゃんのことで訊いていいか?」

 立ち去ろうとした足を止め、父さんは改めて俺に確認をとってきた。

「ん?何?」

 父さんの確認事というのは、さっきまでの話とは全く違った。

「雪ちゃんって、お前のことになると周りが見えなくなったり、お前に関わろうとする他の女の子に対して殺気を放ったりしないか?」

 父さん達の前では極力、俺にべたべたと接して、俺と恋人関係になれるようアピールしているので、父さんや母さんは雪のヤンデレになった姿を、見たことがないはずだ。

 それなのにどうして父さんは、そのことを知っているのだろうか。

「まさしくその通りだけど。どうしてそう思ったの?」

「さっき雪ちゃんの話に一瞬だけなった時、もしかして寝ずにお前のこと診てたんじゃないかと思ったんだ」

 何も話していないはずだが、父さんは父さんの考えは当たっている。

 このことに、俺は素直に驚いた。

「確かにそうだけど?」

「前々から雪ちゃんは、お前の母さんと似ている感じがしたんだ。俺と母さんの実体験を言ってみたんだが、親子揃って同じ道をたどるとはな……」

 言われてみれば、母さんも似たような性格をしている。

 むしろ今まで気づかなかったのがおかしい。

「いろいろと苦労すると思うが、頑張れよ」

 何となくだが、母さんとのことで父さんも大分苦労したのだろうと思った。

 父さんは息子を労いの言葉で励ますと、今度こそ部屋から去っていったので、俺はまた体を横にし、目を閉じた。


 それから二時間近く目を閉じ続けたまま、過ぎ去っていった。

 眠れなかったのは、父さんと少し話す前までずっと睡眠をとっていたからだ。

 だが、目を閉じていただけで身体は楽になり、いつものように動けるまで回復していた。

 せっかくなので汗を掻いた体を洗い流すために、一度シャワーを浴び部屋に戻り数秒後に携帯が鳴り響いた。

 着信は母さんからだった。

 もしかしたら心配してかけてきてくれたのだろう。

「もしもし」

 待たせるわけにもいかなかったので、すぐ電話に出た。

『あ、孝太?声色からして、もう大丈夫そうだね』

「あぁ。大分良くなったよ」

 俺が電話に出ると母さんは安堵の言葉を漏らした。

『それは良かったわ。なら大至急、私が家に忘れていった書類を持ってきてくれないかな?』

「…………は?」

 母さんが安心したのは、俺の身を案じてのことではなかった。

 一度頭で考えた後、母さんの発言を理解すると、思わず母さんの言葉に聞き返した。

『だから、仕事に必要な書類を、家に忘れちゃってね。それを持ってきてほしいのよ』

「そうじゃなくて。具合が悪くて学校を休んだ息子に、頼むことじゃないだろ」

 母さんの言葉に呆れる他ない。

『だってもう大丈夫なんでしょ?それに暇してるんじゃない?』

「確かにそうだけど、だからってそういう問題じゃ……」

 俺がいくら反論しても、それを聞き入れてもらえずに、母さんのペースで会話が進んでいく。

 どれどころか、俺の発言は全く意味を成さない。

『同僚の娘達も、孝太の話をしたら会いたがってたわ~。きっとモテモテになるしょうね』

「いや、それで俺が行くとでも?」

『そうよねぇ……既にモテモテだもんね。でも、つべこべ言わずに来てくれるわよね?』

 電話越しで母さんの顔こそ分からないが、確実に怒っている。

 気は全く乗らないのだが、今後のことを考えたら今回もまた母さんの言われた通りにしないといけなさそうだ。

 母さんが俺を脅すためのネタを持っている以上、仕方ない。

「……わかったよ。行きますよ」

『そう言ってくれると思ってたわ。それじゃ、今からメールで地図送るね』

 そう言って母さんは一方的に、電話を切った。

 間もなくして、母さんが言っていた通り母さんからのメールが届いた。

「……はぁ」

 一度ため息を吐き、改めて携帯とにらみ合った。

(そこまで遠くないけど……行くの面倒だな)

 重い腰を上げると、着替えなどの準備をし、母さん達の部屋にあった封筒に入っていた書類を持ち、渋々家を出た。


 実際歩いてみると、大分良くなったとはいえ、まだ多少ふらつきが残り本調子ではない。

 それでも日常生活を送ったり、今から母さんの下に行ったりするのには大丈夫そうだ。

 歩くこと二十分強、ようやく母さんの勤めている会社のビルへたどり着いた。

 平日の昼間ということもあり、ここへ来る途中にいつも程注目を集めることも、声をかけられることもなかった。

 だが、いざビルの中に入るとそんな穏やかな雰囲気は破られた。

 受付嬢をはじめとした、一階にいる社員達の注目を独占している。

 突然部外者のそれも私服の高校生が入ってきたら、こういう反応になるのは当然だろう。

 取り敢えずは、俺を見てヒソヒソと何かを話している受付嬢の下へ行き、話しかけた。

「あの、すみません」

「は、はい!な、何でしょうか?」

 二人いたうちの片方が応じてくれたのだが、何故か緊張している。

 もう一人も喋ってはいなかったものの、ガチガチだ。

「ここに『柏木幸』って四十代の女性が勤めてると、思うんですが、呼んでもらえませんか?」

 俺が用件を伝えると、思っていた答えと違うものが返ってきた。

「えっと、どういったご関係で?」

 そこは『どういったご用件で?』と聞く場面ではなかろうか。

「母です。お遣いを頼まれたんですけど」

「そ、そうですか!今、お呼びしますね」

 俺に対応していた受付嬢が、俺の言葉にほっと息を吐くと、俺の手を握り甘い声を出してきた。

 片手は俺の手を握りながら、もう片手は器用に電話をかけている。

 その一方で手が空いているもう一人は、俺に話しかけてきた。

「ねぇねぇ。今度飲みにいかない?」

「いや、俺未成年なんで……」

 高校生に見られなくて、少し落ち込んだ。

「なら、デートでもいいんだよ?」

 魅力的な誘いではあるのだが、そんなことしたら雪に何をされるかわからない。

 やんわりと断ろうと思い、口を開こうとしたら電話を終えた一人が口を挟んできた。

「仕事中にナンパなんて、どうかな?」

「あなただって、手握ってるじゃない」

 目の前で喧嘩が始まってしまった。

 一刻も早く俺がこの場から去れば、喧嘩も止めるだろう。

「あの、呼んでくれました?」

「うん!三階のオフィスに来てだって。はい。入館証」

 俺が話しかけた途端、喧嘩は収まり社内に入れるよう入館証を渡してくれた。

 収まったというよりは、興味の対象が俺に戻っただけだ。

「ありがとうございます。それでは」

『あ!ちょっと』

 入館証を受け取り、これ以上いざこざが起きる前に、颯爽とその場を後にした。

 逃げるようにしてエレベーターに乗り込み、言われた三階に着きエレベーターが開くと、目の前に母さんの姿があった。

「お!やっと来たか」

 具合が悪くて学校を休んだ息子に、お遣いを頼んでおいて、そのセリフはないと思う。

 反射的にエレベーターの『一階』へのボタンを押して、ついでに扉も閉めようとした。

「待ちなさいよ!」

 そう言うなり母さんは、もの凄い速さで俺の腕を掴み、扉が閉まる前に力任せに俺を引き寄せた。

「何、さらっと帰ろうとしてんの?」

「いやぁ……なんかイラッとして」

 せめて第一声はお礼か謝罪の言葉を聞きたかった。

「ごめん。ごめん。無茶言って悪かったわね」

 俺の呆れ顔を見ると、すぐに謝ってはくれた。

 こういうところは、父さんよりも柔軟な対応をしてくれる。

「はぁ……最初からそう言えばいいのに」

「まぁまぁ。硬いこと言わないの。それで例の物はちゃんとあるのよね?」

 別に硬いことではない気がする。

 それに母さんのその言い方だと、まるで闇の取引だ。

「はいはい。これでしょ?」

 手に持っていた封筒を母さんに渡すと、嬉しそうにそれを受け取った。

「助かったわ……もし違うの持って来てたら、去年の夏休みにあったあの事を雪ちゃんに言いかねなかったわ」

 母さんが言っているのは、俺を脅すネタであり、雪にも話せていない秘密であり、桜さんとの大事な思い出だ。

 俺が雪にその事を話してしまえば、脅されることもないのだが、話せないのにはそれなりの理由は勿論ある。

「それは理不尽だろ。ま、頼まれた物はちゃんと届けたし、俺はこれで」

「せっかく来たんだし、西口に会っていきなさいよ」

「一之瀬。今、私を呼ばなかった?」

 会うか会わないかを答える前に、偶然雅さんが俺達の近くを通りかかった。

 たまたまだと思うが、狙って登場したように思える。

「呼んだわよ。良いタイミングね」

「タイミングは良いんだろうけど。平日なのになんで孝太くんが、ここにいるのよ?」

 うちの母さんに比べて、かなり真っ当なご意見だ。

「昨晩から今朝まで、発作の症状が酷くて学校休ませたのよ。それで昼になって体調も大丈夫そうだったから、忘れた書類を持って来てもらったの」

「は?!孝太くんが、可哀想じゃない」

 母さんに怒鳴りながら今度は雅さんが、俺の腕を引き自分に寄せると、怒鳴りながら守るようにして抱きしめた。

 明らかに母親として、俺の母さんよりも勝っている。

「私の息子に!私達の愛の結晶に、何してるのよ!」

 そこまで怒るなら、普段からもっと優しくすべきだと思う。

「だったら、うちの萌と結婚させて私の息子にさせるわよ!」

「そうはさせないわ!孝太には既に、雪ちゃんという婚約者がいるのよ」

 こんなところで、俺達が本当に許嫁関係にあることを初めて確認できた。

 だが今はそんなことより、本日二度目の喧嘩がいつ終わるのかが気になった。

 その矢先、この会話に入ってくる人物がまたしても現れた。

「二人とも楽しそうだけど、どうしたの?」

(どう見たら楽しそうに見えるんだ?)

 お気楽な口調とともに登場した声の主を見ると、またも見覚えのある人物だった。

「あ!この間の……」

「ん?あー!久しぶりね。どうしてこんな所にいるの?」

 以前、葵さん達の誕生日パーティーの買い出しに行った時に、意地を張って困っていた外国人女性だ。

 俺だけではなく、向こうも予期せぬ再開に驚き、母さん達は首を捻っている。

「ちょっと、母さんに頼まれて届け物を」

「へぇ~。もしかして、雅の子供なの?」

 雅さんに抱かれているこの状況を見て、完全に勘違いしていた。

 俺も母さんに当てつける意味で『そうです』と答えようとしたが、雅さんを睨みつける母さんの目に黙るしかなかった。

「もうサラったら!美形なんだから、私の子に決まってるじゃない」

 まだ母さん達の言い合いは続行中のようだ。

 息子として、母親が雅さんをイラつかせたのは申し訳ない。

「大丈夫ですよ。俺にとっては、雅さんの方が綺麗だと思ってますから」

 確かに母さんは美人ではあるが、あくまで母親なので女性として見た場合、圧倒的に雅さんの方が上だ。

「孝太くん……やっぱり私の息子にする~!旦那さんでもいいよ!」

 俺のフォローに目を輝かせると、雅さんの抱きしめる力は強くなった。

 少々苦しい。

 一方で母さんは『酷いわ』と口にして顔を両手で覆い、悲しんでいるふりをしている。

 四十代とは思えないテンションだ。

「あなたも大変ね~」

 唯一外国人女性だけは、この状況を見て楽しんでいた。

「そう思うなら、助けてくださいよ」

「ハハハ……そういえば自己紹介もまだだったわね」

 俺の言葉を笑って流された。

 本当に、この人に日本語が通じているのか疑問に思う。

 確かに二度と会うとは思っていなかったので、自己紹介はしておらず、今日も変なタイミングでの再開だったため、お互いに名前を知らない。

 それでも、もう少し状況を見てほしい。

「サラ・ビュテーユよ。よろしくね。孝太」

 有無も言わさぬ速さで、一方的に自己紹介をされた。

 そして今回もまた、俺は名前を名乗ることなく、周りが散々俺の名前を連呼していたので、いつの間にか知られていた。

 ポジティブに、自己紹介をする手間が省けたと思えばいいだろう。

「さっきから気になってたんだけど。孝太とサラってどういう知り合い?は!もしかしてサラも孝太を息子にしたいの?!」

 母さんの頭の中には、もはや息子どうこうという問題しかないようだ。

 最初に質問した『どういう知り合いか』なんて、どうでもいいのだろう。

「母さん落ち着けって。生憎と今のところは、母さんの息子なんだから大丈夫だから」

「うぇぇん!孝太~」

 仕方なく母さんを慰めると、俺を抱きしめていた雅さんをはじき飛ばし、次は母さんが抱き着いてきた。

 何故俺は学校を休んで、母親達のお守りをしているのだろうか。

「……一応だけどサラさんとの出会いは、スーパーで買い物中に……」

「そんなのは、どうでもいいよ」

(自分で訊いたんだろうが……)

 つくづく父さんが言っていた通り、性格もだが甘え方まで雪にそっくりだ。

 むしろ母さんの影響を受けて、ああなってしまった可能性もある。

 だが今問題視すべきところは、雪の人格形成よりも母さんに抱き着かれ、通路を行き来する他の社員の注目を集めていることだ。

『ねぇ。柏木さんって結婚してたよね?』

『まさか、あんな若いイケメンの子と不倫』

 何も知らない人から誤解されるのは慣れているが、どうしても母さんとの関係については我慢ならない。

「違いますよ!息子です。息子!母さんも離れてくれ」

『なんだ。びっくりした』

『もしかしてあの子が、柏木さんが自慢していたカッコいい息子じゃない?』

 この様に誤解される度に、わざと大声で周りに言いふらすようにするのも慣れている。

 その甲斐あって他の社員の誤解は解けたが、反応を見る限り母さんが変なことを言っていないか、不安になった。

「母さん。マジで離れてくれ。もう帰るから」

 これ以上疲れが溜まる前に、逃げてしまいたい気分だったので、願望を口にした。

「えー。来たばかりじゃない」

 ふくれっ面になられても、こちらの用件も済んだので残る理由はない。

 それに休みをとっているので、明日の事を考えるともう少し休んでおきたかった。

「遊びに来たわけじゃないんだけど。それに俺がいたら仕事にならないだろ」

「孝太くんの言ってることが正しいわね。一ノ瀬、もう少し大人になれ」

 俺の要望を援護してくれたのは、雅さんだ。

 口を挟んだのが雅さんということもあり、ますます不服そうな顔をしていた。

「……わかったわよ。なら孝太一つだけ約束して」

「約束?」

 要望を聞き入れてくれたが、母さんは母さんで俺に要望があるようだ。

 小首を傾げて聞き返すと、母さんは先程までとはうってかわって、真面目な眼差しで俺を見つめてきた。

「薬を飲みなさい」

「っ……」

 声色も先程と違い、冷徹に言い放たれ、俺は返す言葉がなかった。

 一緒にいた他の二人も母さんの異変に、ただ黙って見守っていた。

「雪ちゃんが電話くれた時に言ってたわ。『薬の過剰摂取の時と症状が違う』って。それって発作本来の症状ってことでしょ?」

「それは……」

 言葉に詰まり続ける俺に対し、母さんは畳みかけるように問い詰めてきた。

「そんなに私が作ってる薬が信頼できない?きっと薬を飲まなかったんでしょうけど。どうしてそんなことするの?」

「……決まってるじゃん。少しでも早く克服するためだよ」

 考えて何かを言おうとするのは無駄だと判断し、俺は自分の気持ちを正直に言うことにした。

 おそらく母さんは、俺と直接話すために、わざわざここに呼んのだろう。

「だからって無茶して倒れたら、意味ないじゃない。克服したいなら徐々に薬の量を減らすって方法が一番のはずよ」

 そんなことは母さんに言われなくても、わかっている。

 勿論、それが正論であることもだ。

 しかし俺は母さんへの反論は止めなかった。

「そんなちまちまやってたら、薬の効き目だってそのうちなくなる。結局速いか遅いかの違いだ」

「言い方を変えるわ。ゆっくりやれば、昨日みたいに倒れることがないの。お願い孝太。あなたはたった一人の私達の子供なの……」

 珍しく母さんが感情的になり、しまいには涙を流しそうになっていた。

「……ずりぃよ……」

 こういう時、父さんなら俺の気持ちを察して後押ししてくれるのだろうが、母さんは違った想いなのだろう。

 その想いを知ると、何も言い返せなかった。

 先程まで言い争っていたのが嘘かの様に、俺も母さんも黙り込んでいる。

「はーい。孝太ー!笑って」

「……え?」

 静寂を破るようにして、サラさんがこの場に合わない陽気な声で、俺に話しかけてきた。

 振り向くと『カシャッ』という音が聞こえたと思ったら、携帯で写真を撮られた。

「あー。ぶれちゃった」

「そうじゃなくて。なんで急に撮ってるんですか!」

「……だって空気が重かったから」

 母さんの同僚とはいえ他人に気を遣わせてしまった。

 手段が『写真を撮る』と少し変だったが、おかげで頭は冷やされた。

「そうですね。すみませんでした。笑うんで、撮り直してもらえません?」

 俺の発言が予想外だったのか、サラさんは目を大きく開いて驚いている。

 それはサラさんだけでなく、母さんや雅さんも同様だ。

「なんで驚いてるんですか?写真撮ってきたのはサラさんですよ。さっきの顔じゃ間抜けすぎて、恥ずかしいですよ」

「だからね。別に写真を撮りたくて撮ったわけじゃ……もしかして、わたしの日本語間違ってた?」

 そんなことは分かっている。

 何も説明しなかったら、俺が馬鹿だと思われかねない。

「あってますよ。だからこそです。重い空気嫌だったんですよね?くだらない親子喧嘩で迷惑かけて、すみません」

「くだらないって……私、本気で孝太のことを心配して」

 サラさんに言ったつもりが、言葉を返してきたのは母さんだ。

 もう少し言葉を選んで発言すればよかった。

「わかってる。全面的に俺が悪かった。ごめん」

「え?」

 俺の態度が正反対に変わったことで、母さんは首を捻り戸惑っていた。

「でも、母さんにも俺の気持ちはわかってほしい。年上や年下の人が大丈夫になってから、半年以上経っても何一つ変われてないんだ」

「孝太……」

 母さんの俺を見る目が変わった。

 それは俺が母さんに向けている目が、きっと強い眼差しに変わっていたからだろう。

「焦りや不安はあるけど。それよりも変わりたいと思う気持ちや、きっかけを得て決意のうえで無茶したんだよ」

「……だからこれからも無茶するって言いたいの?」

「あぁ。無茶は俺の特権だから……けど、母さんの気持ちを知ったいじょう、今回みたいに倒れるようなことはしない。母さんを悲しませたくないから」

 恥ずかしいセリフにも関わらず、俺は自然と胸を張って言えた。

 俺のエゴで心配をかけたくないという、新たな決意でもある。

 自分の気持ちを言い終えた瞬間、再び『カシャッ』という人工的なシャッター音が聞こえてきた。

 見ずともサラさんが犯人であるのはわかった。

「笑顔よりも良い、ベストショットだよ」

 声をかけられサラさんに視線を移すと、サラさんは携帯を片手に持ち、もう片手は親指を立てている。

 空気が変わったのを見計らっての行為だろうが、写真に残されるのは恥ずかしい。

「……孝太のバカ……でも好き!」

 そして母さんはというと、どっちつかずのことを言いながら、さっきよりも勢い強く俺に抱き着いてきた。

 突然のことに加え、強さのあまり『うっ……』と短い苦悶の声を漏らしてしまった。

 一応、俺の決意が伝わったということでいいだろう。

「結局この中で一番大人なのは、孝太くんか。でもだからこそ、萌の旦那にしなくては!」

 一人、会話に参加していなかった雅さんは、まったく違ったことを口にしていた。

 それも雪の両親がよく口にしていたことと同じものだ。

 この雅さんの一言で、ひと段落ついたと実感できた。

「お二人とも、ありがとうございました」

『いえいえ』

 ここでようやくお礼を言えた。

 二人も俺に笑顔で対応してくれている。

「俺、そろそろ帰りたいんですけど……これ剥がしてもらえませんか?」

「孝太には、お母さんが必要なんだね~」

 話も済みとっとと帰ればよかったのだが、母さんが離れる素振りを全然見せない。

 雅さんとサラさん、二人の力を借りて母さんを引き離してもらうことにした。

 結局、母さんの勤める会社での滞在時間で一番長かったのは、この母さんを引き離す作業だった。


 母さんの勤める会社から家に戻り、俺は一旦ベッドに横になると、母さんの相手をした疲れも積み重なり、眠りについていた。

 そして次に起きた時、時刻は午後三時半だった。

 目を覚ましたきっかけが、俺としては珍しく空腹によるものだ。

 今考えてみれば、昨日の昼食以降何も口に入れていなかった。

 作るのも億劫だったので、近くのコンビニに弁当を買いに赴いた。

 母さんの勤めている会社に行き来した時と比べたら、学校の下校時間と重なり人の行き来は多くなっている。

 なので知っている人と出くわす前に、急いでコンビニへ向かった。

 念のため雪の分も適当に買い、帰路へつき家が見えてきた辺りで、自宅の前に女生徒が一人立っていることに気づいた。

 遠くからでよく見えなかったが、雪が鍵を忘れて入れずに困っているのだろう。

 そう思い、弁当の中身が混ざらない程度に走り、家が近づくにつれ、その人物が雪の後ろ姿とは異なるものだと考えを改め直した。

「こんな所で、何してるんですか?雫さん」

 ここ数日何回も見ている雫さんの姿を、この至近距離で見間違えるはずがない。

 俺が話しかけると、雫さんは振り向き答えた。

「お見舞いに決まってるじゃない。でもインターフォンを押しても返答がないと思ったら、学校を休んで遊びに行ってるなんてねー」

 コンビニ袋を見れば、俺が遊びに行っていたわけではないことをわかったうえで、俺に意地悪を言ってきた。

 いつも通りといえば、いつも通りだ。

「俺が遊んでたわけじゃないのは、見ればわかるでしょ?取り敢えず、上がってください」

「はーい!」

 雫さんは元気よく返事をすると、俺に続いて家の中に入った。

 部屋に通すか悩んだが、家の中に入った途端に周りをキョロキョロし始めたのを見て、リビングに通すことにした。

 部屋に入れたら、物色されるのは間違いないだろう。

「ここが柏木くんの家かぁ……」

 リビングに入るなり、雫さんが勝手にソファーに座った。

 そんなことで怒りはしないが、本当に自由な人だと思う。

「何か飲みます?」

「さすがにそこまで図々しくないよ。一応見舞いに来たわけだし」

 雫さんが来たことで、弁当はお預けだ。

 一度、買ってきた弁当を冷蔵庫にしまい、雫さんと向き合う形で床に座った。

「それで雫さん。今日は一人なんですか?」

「いつもセットってわけじゃないよ」

 実際そうなのかもしれないが、俺が生徒会と会う時はほとんど最低二人以上でいる。

 そのため自然とその質問が出てしまった。

「ちなみに今日は、他のみんなを出し抜いて、二人きりになるために来たの」

 きっと今頃、他の生徒会メンバーは怒っていそうだ。

「二人きりって……あ、そういえば俺も雫さんに大事な話があったんで、二人きりになれてよかったです」

「え?!それって、あれかな?私に、その……こ、こ、こく……」

 雫さんはどうしてか突然慌て始め、普段は本当の感情が掴めない雫さんが、一文字先輩に指摘された時と同じように動揺している。

 呂律もまともに回っていない。

 何か誤解をあたえる様なことを言ってしまっただろうか。

「雫さん。落ち着いて。話っていうか、雫さんに訊きたいことがあるんです」

「……へ?訊きたいこと?」

 どこかがっかりしているようにも見える。

 やはり何か誤解をあたえていたようだ。

「はい……雫さん、何か最近、俺の事で気づいていることあるんじゃないんですか?」

「はぁ……確かにこのタイミングで告白されるわけないか」

 距離が近いので雫さんの独り言は、全部聞こえていた。

 だが雫さんの言葉は空を切っている。

 話の流れ次第では、発作の事を告白するかもしれない。

「雫さん。聞いてます?」

「聞いてるよ。訊きたいことって何かな?」

 雫さんに限って、確認をとるだけ無駄だった。

 さっき動揺していたのが嘘の様に、雫さんは少し顔が赤く思えたが冷静にいつもの余裕ある笑顔で聞き返してきた。

「俺の気のせいかもしれないですけど。最近、雫さんって俺を観察してるように見てません?」

 俺の意見は、自意識過で言ったわけではなく、ちゃんとした根拠があってのことだ。

 ここ数日、特に昨日、よく会話に入ってくる雫さんがほとんど喋らず、俺のことを見つめ続けていた。

「やっぱり気づかれてたかぁ……実はその事も話したくて、私一人で来たの」

 まるで雪が言いそうなことを言われた。

 でも、これで雫さんが何かしら感づいているのは、わかった。

「やっぱり、誤魔化してたのバレバレでしたか?」

「私にはね。まぁ他の人達は気づいてないだろうけど。でもさ、どうして誤魔化す必要があったの?それにただの風邪でもなさそうだったし」

 発作持ちという結論には、さすがに到達していなかったが、雫さんにはもう隠しておけない段階まできている。

 雫さんの質問に答えなくては、いけないだろう。

「誤魔化したのは、雪達を心配させないためです。それと確かに風邪の症状じゃなくて、あれは発作の症状です」

「なるほどね……柏木くんって発作持ちだったんだ。それで今日も休んだのね」

「えぇ。まぁ」

 俺が発作持ちだと知って、驚かなかったのは小林先生に続いて雫さんで二人目だ。

 そのおかげで俺も不思議と落ち着いて、話を続けられた。

「ねぇ。発作ってことは、何か発症した原因があるんだよね?」

「俺のは精神的なものなので、原因は確かにありますけど。昨日はたまたまなんで、気にしないでください」

 萌さんの時と同じで、発作持ちなのは告白したが、発症条件が同い年の女の子と関わることは言えなかった。

 それとこれとは話が別ということだ。

 やはり過去の事は極力、話したくはない。

「柏木くんがそう言うなら、大したことはなさそうだし、それ以上は聞かないよ」

 事情があって嘘をついてしまったが、その嘘が心苦しく感じる。

 相手が雫さんであるいじょう、俺が何かを隠しているのは絶対にバレているだろう。

 罪悪感に飲まれ、出来る限り自然に話題を変えた。

「……ありがとうございます。それにしても、よく俺が隠してることに気づきましたよね」

「当たり前じゃない。好きな人の異変は見逃さないよ」

 雫さんのような美人に『好き』と言われるのは嬉しいのだが、相変わらずそれが本音なのかはわからないままだ。

 話の逸らし方を間違えたかとも思ったが、二人きりなので丁度良い機会かもしれない。

「好きな人ですか……以前に『そういう話は二人きりの時』って言ってましたよね?この機会に、雫さんの本当の気持ちを聞かせてもらえませんか?」

「何だか今日の柏木くん。いつになく積極的だね」

 恋愛関係に自ら首を突っ込むのは、雫さんの言うように確かに俺らしくはないだろう。

 ただそういう事に疎い俺だからこそ、二人きりのこの状況で聞いておきたかった。

「……なら私も……積極的になろうかな」

 そう言って雫さんはソファーから立ち上がり、俺の横に座ると腕を組んできた。

「あの、雫さん……ち、近いです」

「だって近づかないと、教えられないじゃない。だから、柏木くん。こっち向いて」

「……はぁ」

 照れてしまって視線を逸らしていた俺だったが、雫さんに言われ顔を向けた。

 すると雫さんは何も言わずに、目を瞑りゆっくりと俺の顔へ、自分の顔を近づけてきた。

 月曜日に生徒会室の前で雫さんと二人きりになった時と、状況が似ている。

 まるでキスするかのようだ。

 もしかしたら、これが雫さんの気持ちであり、俺の質問の答えなのかもしれない。

 だとしたら、次にとる行動は一つだ。

「雫さん。待ってください」

「……柏木くん?」

 雫さんを止めると、雫さんは閉じていた目を開き首を傾げた。

 俺がやろうとしているのは、暦さんの想いに気づいた時と同じで、先程は言うのを拒んだ俺の過去のことを言うことだ。

 俺なんかのことをそう想ってくれているのなら、嫌われることがあっても、やはり話すべきなのだろう。

「雫さんには、話しておかなければいけないことがあります」

「どうしたの?改まって」

「実は……」

 意を決して、近くにある雫さんの顔を真剣に見つめながら、口を開いた。

 しかしたった三文字口にしただけで、それ以降の言葉は強制的に遮られた。

『へぇ~。ここが柏木の家か』

『ちょっと、何でついてきてるんですか?!』

『それは柏木くんのことが、心配だからよ』

『昨日、お店を手伝わせたのが原因かもしれないです。だから私がいるのも当然です』

『私もお見舞いの本を買ったから、届けたい』

 家の外から聞こえてきたのは、雪と雫さん以外の生徒会メンバーの声だ。

 それによって雫さんとの会話は打ち切られた。

「残念ながら、タイムオーバーみたいだね……え?」

 雫さんはみんなに見られたら面倒なことになると思い、俺から離れようとしたが、中途半端が嫌だった俺は咄嗟に雫さんを抱きしめた。

「雫さん。続きは明日の昼休みに話したいので、昼休みになったら屋上に来てください。それから、雫さんの気持ち、嬉しかったです」

「か、か、か、柏木くん?!そ、その、これは……?」

 今までにないくらい慌てる雫さんを見て、案外初心なことがわかった。

「今の俺にできる精一杯です」

 まだ雪にキスすることもできない俺ができる数少ない、愛情表現だ。

 それに俺の事をほとんど知らない雫さんと口付けするのは、もっての外だった。

『ただいまー』

『何で『ただいま』なのよ。普通は『お邪魔します』でしょ』

『あれ?言ってませんでした?私、こうちゃんの家に住んでるんですよ』

『は?!』

 そして先程外から聞こえた雪達の声が、家の中から聞こえたこともあり、用件は伝えたので俺は雫さんを解放した。

 一方で雪達の会話はというと、どうやら雪が余計なことを口にしたらしい。

 あれほど口止めしていたのに、よりにもよって生徒会の人達に言ってしまっていた。

 当然俺に聞こえるということは、雫さんにも雪達の会話が聞こえている。

「ねぇ。柏木くん。今、おかしなこと聞こえてきたんだけど……どういうことかな?」

「雫さん。なんか怖いですよ?それにさっきまで、テンパってたじゃなかったですか」

 話が聞こえた途端、いつもの雫さんに戻ったかと思えば、また俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。

 この時点で嫌な予感しかしない。

「それとこれとは、話が別……いやむしろ話の系統は一緒かな。まさか家でも有明さんと一緒だったとはね~。それならこれくらい許してくれるよね?」

 ようするに雪への当てつけということだ。

 先程までの素を表に出した可愛らしい雫さんは、どこへいったのだろうか。

『流石ストーカーだけあるな』

『ですから、ストーカーじゃないですって』

『柏木くん。可哀想です』

『湖上さん、それどういう意味かな?』

 聞こえてくる雪達の会話する声は、どんどんと近くなってきている。

 このままでは確実に雪達が、この状況を目の当たりにしてしまうが、それこそ雫さんの狙いなのだろう。

「雫さん。一応訊きますけど、この腕を放して雪達と口論しないという選択肢は?」

「もちろん、ないよ」

「ですよねー……」

 笑顔で否定され、早々に諦めがつき喧嘩の仲裁をする覚悟を決めた。

『ま、会長がいたらもっと大騒ぎになっていただろうな』

『確かにそうですね。けど会長の姿はどこにもありませんでしたよね?』

『もしかしたら、既に居たりしてな』

(その通りです……)

 そして遂にリビングの扉が開かれた。

 今まで大きな声で会話していた雪達は、俺と雫さんの姿を見て固まってしまった。

「あれ?みんな遅かったね。でもそのおかげで柏木くんとイチャイチャできたよ」

『ちょっと!どういうこと(です)』

 雫さんが挑発した途端、一斉に俺達の下へ全員が駆け寄ってきた。


 宥めるのに思っていたよりも骨が折れることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ