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三話 第五章~捜索、二日目~葵vision

 クロエさんの恩人捜索、二日目の朝。

 いつも通り、孝太さんたちを孝太さんの家の前で待っているのだが、心情としてはいつも通りとはいかない。

 昨晩、生徒会の山吹先輩の依頼をしていた孝太さんたちだったが、電話の途中で切れたっきり、何度電話かけても繋がらなかった。

 お姉ちゃんにもメールの返事がきておらず、音信不通状態だったが、一応孝太さんの家には電気が点いていたので、人影はある。

 それが孝太さんたちであると願い、私たちは孝太さんの家の前で待ち続けていた。

 そして今日に限っては、お姉ちゃんも一緒だ。

「孝太く~ん……」

 そのお姉ちゃんは、この中で一番元気がなく、二言目には孝太さんの名前を呼んでいる。

「たかが、一晩連絡なかっただけで、三人とも落ち込み過ぎじゃない?」

「そりゃ心配するよ!だって柏木くん、死んでるかもしれないんだよ?!」

 何も知らない薫の一言に、光は声を荒らげ言った。

 すると同じく何も知らないお姉ちゃんが、目を剥き光へ詰め寄っていた。

「ねぇ、それどういうこと?」

 その姿は、いつもの緩くてふわふわとしたお姉ちゃんではなかった。

 始めてみるお姉ちゃんの姿に、私は驚きを隠せない。

「……実は昨日、葵が柏木くんに電話した時、柏木くんと一緒に生徒会のみなさんといたみたいなんですけど。突然電話の向こうで次々と生徒会の人たちが倒れていき、電話が切れる直前に有明さんが『この様子だと失敗か』って言ったんです」

 光もそんなお姉ちゃんに圧倒されて、昨日の電話の内容を口にした。

「そんな……」

 そして光が話終えると、お姉ちゃんは項垂れてしまった。

 私と光もお姉ちゃんと同じ気持ちだったので、つられるように俯いた。

 だがそんななかで、唯一人薫の反応だけは違う。

「ねぇ。それ、みんなの勘違いだと思うんだけど」

 薫が苦笑を浮かべながら、気まずそうに感想を述べた。

 そんな薫の言葉に対し、私は無意識に怒りを口にしていた。

「なんで、そんなこと言えるの?!」

「いや……だって」

 薫の視線は問い詰める私ではなく、その後方に向けられている。

 その違和感に薫を見ていた私たち三人は、ゆっくりと薫の視線を辿った。

「朝から、他人の家の前で騒がしいですよ」

 そこには殺気を含み上品な笑顔を浮かべる雪さんが立っており、私達は瞬時に距離をとった。

「それに人を殺人鬼扱いって……」

 雪さんが呆れながらの物言いに、恐怖心が徐々に失われていく。

 薫の言う通り、勘違いという可能性が濃厚だ。

「あの、孝太さんは?」

 私たちの代わりに薫が雪さんに訊くと、怖がっていた私たちがバカらしくなるほど、普通に答えた。

「もうすぐ来るよ」

 その言葉に私たち三人は安堵の息を漏らすと、雪さんはもうじき孝太さんが来るであろう玄関を見つめながら呟いた。

「もし私がこうちゃんを殺したら、私も死んでるから……」

 優しい笑顔を向ける雪さんだが、台詞は恐怖でしかなく、いつの間にか薫も私たち三人同様に雪さんから距離をとり、小さく震えている。

 言葉の後に『私が生きてるから、こうちゃんも生きてる』的なことを付け加えてくれれば、ここまで怖がることはなかっただろう。


「何朝から、物騒なこと言ってんだよ」

 気づけば、雪さんの後ろには孝太さんが立っていた。

 無事なのは分かっていたが、自分の目で確かめると気が緩み、涙が出そうになった。

 お姉ちゃんにいたっては、『孝太く~ん』と名前を呼びながら駆け寄り、抱きついている。

「暦さん!ちゃっかり、抱きつかないでくださいよ!」

 雪さんが必死にお姉ちゃんを引き離そうとするが、お姉ちゃんの抱きつく力の方が強く、珍しいことにお姉ちゃんの方が優勢だった。

「生きててよかった~。連絡ないから、心配したんだよ~」

「連絡できなくて、ごめんなさい。どうやら携帯忘れてしまったみたいで」

 お姉ちゃんが言って思い出したが、孝太さんからの連絡がなかったために、みんながここまで心配していた。

 ついさっきまで、お姉ちゃんに対して頬を膨らませていたが、今は孝太さんの発言に気をとられている。

「忘れたって、何処に~?」

「道に落としてなきゃ、多分山吹先輩の家に」

「え!柏木くんたち、昨日山吹先輩の家にいたの?」

 応えた光は気づかぬ間に雪さんと協力して、お姉ちゃんを引き離している最中だった。

 しがみつくお姉ちゃんといい、全力で引き離している光といい、会話と両立できているのが不思議だ。

 一度お姉ちゃんたちに気をとられたが、なんだかどうでもよくなり、孝太さんの話に集中することにした。

 孝太さんは徐々に引き離されていくお姉ちゃんを気にせずに、質問者の光に答えた。

「山吹先輩からの依頼ってのが、母親の誕生日を祝うための準備だったんだ」

 ようやく孝太さんの昨日の動向がわかってきたが、二つほどまだわかっていないことがあった。

 ついにここで私も口を挟まさせてもらうことにした。

「あの、生徒会の人たちもいましたよね?そんな大がかりで準備したんですか?」

「雫さんたちが勝手についてきたんだよ。『俺と山吹先輩を二人きりにできない』って理由で。雪もいたんだけどな」

 おそらく発信源は会長さんだろう。

 そこに西口さんと湖上さんが便乗している姿が、安易に想像できた。

 一つの疑問が解消されたところで、残る一つの疑問を問いかけることにした。

「生徒会の人たちがいた理由はわかりましたけど、どうして生徒会の人たちは次々と倒れていったんですか?」

 この質問こそが何も知らない私たちにとっては、本題にあたる。

 私たちが混乱を引き起こした原因だけあって、お姉ちゃんたちも孝太さんに視線を送り、興味を示しだした。

 雪さんが殺そうとしたわけではなかったので、安心してはいたが、考えてみれば次々と人が倒れていくシチュエーションなどホラー映画くらいでしか見たことなく、きっとただ事ではないはずだ。

 孝太さん口が開かれると同時に、改めて聞く覚悟を決めた。

「え?なんで知って……もしかして、あの時保留にするの忘れてたのか」

 孝太さんの独り言に私は答えるように頷くと、孝太さんは納得してくれたようで、一度焦らしが入ったものの話は進んだ。

「まぁ、大した話じゃないんだけど……雪が作ってくれた料理を味見した人が気絶しただけなんだよね。でもみんなすぐに目を覚ましたし、問題なかったよ」

「……ってやっぱり、有明さんが原因じゃん!」

 透かさず光がツッコミのような口調で声を発し、雪さんを一瞥した。

 雪さんが料理をできないのは知っていたが、まさか人を気絶させるほどだとは思ってはいなかった。

 その事実に開いた口がふさがらない。

「そうだけど。殺人鬼扱いすることないじゃない」

 雪さんはというと、拗ねてしまっている。

 確かに今回のことについては言い過ぎたかもしれないが、普段が普段なので疑ってしまっても仕方ないと思う。

「だから、物騒な話をしてたのか……ごめんな。俺が携帯忘れなければ、連絡して誤解を解けたのに」

「こうちゃんは、悪くないよ。私が勘違いさせたのが原因だし」

「それを言うなら、そもそも誤解した私たちが悪いよ」

 孝太さんが謝ると、瞬時に雪さんと光はそれをフォローした。

 二人が言うように原因は私たちにあり、孝太さんに非はない。

「う、うん……」

 二人の勢いに圧され、孝太さんは黙ってしまった。

「と、とにかく、無事も確認できたんだし、学校に行こうか!」

 薫が空気を読み話を終わらせたことで、気まずくならずに学校へ向かうことができそうだ。

「え~!もう学校行っちゃうの~?」

「はい。暦姉も学校に行こうねー」

 孝太さんに対してだけ見せる我が儘なお姉ちゃんに棒読みなセリフを言い、薫も雪さんや光に混ざりお姉ちゃんを引き離し始めた。

 三人がかりということもあり、お姉ちゃんの抵抗は空しく、呆気なく引き離されてしまった。

「あ、暦さん。後でメールするんで落ち込まないでください」

「うん!楽しみにしてるね~」

 まるで恋人同士の会話だ。

 嫉妬して引き離したはずなのに、孝太さんがお姉ちゃんを宥めるために言った言葉にますます嫉妬した。

 孝太さんの言葉が嬉しかったのか、お姉ちゃんはそのまま家へ帰って行き、私たちも既にいないお姉ちゃんに嫉妬しがら学校へ向かうことになった。


 学校に着く頃には嫉妬心もなくなっていた。

 そして学校に着くと校門前には山吹先輩が立っている姿が目に入った。

 登校中の生徒はドンと構えている山吹先輩に挨拶しつつも、その迫力に少し距離を置いて歩いている。

「おーい!柏木!」

 いったい何事かと思ったが、私たちに気づくと大きく手を振り駆け寄ってきた。

「昨日はありがとな。それと、これ」

 私たちの下に着くと孝太さんにお礼を言いながら、孝太さんに制服のポケットから何かを放り投げた。

 急に投げられたのにも関わらず、孝太さんはいとも簡単にそれを捕った。

 それを見ていた周りの生徒は、歓喜の声をあげている。

 だが当の孝太さんは、そのことに全く気付いていない様子だ。

「これ、俺の携帯……やっぱ忘れてたんですね。ありがとうございます」

「いいって。それより、着信が多かったけど、一人だけ知らない名前もあったな……」

「え?」

 そう言われて孝太さんは自分の携帯の電源を入れ、確認を始めた。

 知らない名前というのは、おそらく前の学校の友達や親のことだろうと思い、そこまで気にはならなかった。

「それじゃあ、用は済んだしアタシは行くよ。また後でな」

「後で?」

 孝太さんは携帯から目を上げ山吹先輩に訊いていたが、それに答える前に山吹先輩は立ち去ってしまった。

 疑問を解消するのを諦めると、再び携帯に視線を落とした。

「……知らない名前って……みんなごめん。先に行く」

「ちょっと。こうちゃん?!」

 雪さんが呼びかけたが、孝太さんも山吹先輩に続いてその場から立ち去った。

 きっと着信があったという相手に電話をかけにいったのだろう。

「行っちゃった……私たちも行こうか」

 走って行った孝太さんとは対照的に、私たちはゆっくりと歩き出した。

 いつもは孝太さんを見つめる他の生徒からの視線も、今日は全く感じない。

 むしろ、孝太さんがいないことガッカリしている生徒すらいる。

「あ、薫ちゃん。それに先輩方」

 私たちが昇降口へ差し掛かったところで、女子生徒に声をかけられた。

 振り返るとそこには宮本さんとクロエさんの姿があった。

「二人ともおはよう」

 挨拶しながら嬉しそうに薫は二人の下へ向かって行った。

 そんな薫たちを見つめ、雪さんが話しかけてきた。

「ねぇ、葵ちゃん。宮本さんの隣にいる娘誰?見たところ外国人っぽいけど」

「薫の友達のクロエさんって娘で、私たちに依頼してきたのが彼女です」

「そういえば、依頼ってでんな依頼なの?」

 昨日、孝太さんには簡単に説明はしたが、どうやら孝太さんから聞いていないようだ。

「簡単に言うと人探しなんですけど、相手の名前も知らずに、クロエさんだけが顔を知ってるって状況なんです」

「なんだか凄く大変そうだね。手伝ってあげたいんだけど……こっちも湖上さんからの依頼があるらしくて」

「え?!」

 申し訳なさそうにしている雪さんの言葉に私は驚いた。

 せっかく孝太さんと一緒にできると思っていたのに、残念だ。

 昨日孝太さんが最後電話越しに何か言おうとしていたのは、この事だったのかもしれない。

 私が気を落としているなか、クロエさんたちが雪さんの視線に気づいて、こちらへ近寄ってきた。

「あの、もしかして有明先輩ですか?」

 雪さんに話しかけたクロエさんは、昨日私たちと初めて会話した時と比べ、恐る恐ると言った感じだ。

「そうだけど……初対面だよね?」

「はい。その、薫ちゃんからお話は聞いてます」

 いったい薫からどういう風に雪さんのことを聞いているのだろうか。

 怖がっているのは明白だった。

 そのことに気づいていないのか、雪さんは話し続けている。

「なるほどね。それにしても日本語上手だね」

「はい。ワタシハーフで、父親が日本人だったので」

 二人が少しぎこちない会話をしている横で、薫や宮本さんは別の話をしていた。

「薫ちゃん。柏木先輩は?」

「孝太さんなら、先に行っちゃったよ」

「そっか……」

 どうやら孝太さんの話をしているようで、宮本さんは孝太さんがいないと知ると肩を落とした。

 当然、孝太さんの話となれば、それに反応する人物もいた。

「ねぇ。なんで宮本さんは、こうちゃんがいなくてガッカリしてるのかな?」

 今の今までクロエさんと話していた雪さんだった。

 今日の雪さんは朝から悪い意味で絶好調だ。

「べ、別に深い意味はないですよ」

「それならそれで、いいんだけどね」

 さすがに雪さんを前にして『好き』とは言えないようだった。

 一方で初めて見た雪さんの姿に、クロエさんが震えているのが尻目から見えた。

「やっぱり、薫ちゃんが言ってたみたいに、柏木先輩のこととなると怖い人なのかな」

「そうだね。私も慣れる気がしないよ」

 クロエさんの呟きに返した光の言葉は私も同意見だ。

 雪さんと孝太さんの間にあった過去の一部を知っている私でも、恐れてしまう。

 ただ雪さんは根がいい人なので、私と光はクロエさんが雪さんに抱いている印象を変えておくことにし、薫は雪さんを落ち着かせるために、登校時間ギリギリまで時間を費やした。



 放課後になり私たちは昨日に引き続き、クロエさんの恩人を探すために再び駅前に赴いていた。

 メンバーも昨日と同じだったが、今日は昨日よりも明確な目的がある。

 しかし一つだけ問題があった。

「お姉も光ちゃんも、そろそろ機嫌なおしてよ」

『別に機嫌悪くないよ』

 私たちが声を合わせて言った事は、はっきり言ってただの意地だ。

 自分でも頬を膨らませ、眉間にしわを寄せているのがわかる。

 そもそもこうなったのには、それ相応な理由があり、その原因が今日の昼休みにあった。

 いつものように部室で昼食をとっていると、生徒会の湖上さんが訪ねてきた。

 今日孝太さんたちが湖上さんのお願いを聞くのは分かっていたが、孝太さんにその詳しい内容を話すのに昼休みのほとんどの時間を拘束し、そのうえ昼休みが終わる頃に孝太さんがこっそり発作を抑えるための薬を飲んでいるのが見えた。

 せっかく孝太さんと話せる貴重な時間を奪われたのもそうだが、何も知らないとはいえ孝太さんに辛い思いをさせたことが許せなかった。

 きっと薫は私たちが単に嫉妬しているだけだと、思っているはずだ。

「はぁ…もう機嫌悪くてもいいけど。捜索はきちんとやってよ」

「そんなのわかってるって」

「薫ちゃんも葵先輩も喧嘩はやめてください」

 私たちのやりとりを見て、クロエさんに気を遣わせてしまった。

 クロエさんや宮本さんに心配かけたり、迷惑かけないたりしないためにも、ここは私や光が先輩として大人にならなくてはいけない。

「ごめん。クロエさん。もう大丈夫だから」

「そ、そうですか」

 私の変貌に戸惑っているが、取り敢えずこの話はここで終わった。

「それで、これから聞き込むんだけど。二手に別れた方がいいよね?」

「そうだね。なら、葵と私の組と薫ちゃんたち三人の組合わせがいいかな」

 光も気持ちを入れ換えてくれて、私と光が中心となって話を進めた。

「お姉たちが、頼りになるなんて信じられない……」

 そんな私たちを見て、薫は何気に酷いことを言っていた。

 確かに普段は頼りないが、こういう時くらい素直に褒めてほしいものだ。

「でも、お姉人見知りなのに大丈夫なの?」

「うっ……」

 薫の一言に返す言葉もない。

 意気揚々としていたものの、これから初対面の人たちと話す自信は全くなかった。

「大丈夫。そのために私がついてるんだから」

 そう言って光は自分の大きな胸に私の顔を埋めた。

 こうされると、何だか光が私よりも年上に感じてしまう。

「光ちゃんがついてるなら、心配はなさそうだけど……」

 事実を言われているので仕方ないのだが、どんどん自信がなくなっていく。

「わかった。それじゃあ、光ちゃん。お姉をよろしくね。昨日と同じ午後六時に、ここに集合でいい?」

「うん。じゃあ、私たちは向こうに行くね」

 テンポよく会話が進むと、光は私の腕を多少強引に引きその場から離れた。

 足を歩めながら薫たちの方を向くと、三人は私たちとは反対方向に歩き出していた。

「ねぇ。葵」

「何?」

 薫たち三人から私たちが見えなくなるくらい歩くと、光は立ち止まり声をかけてきた。

 おそらくだが、光が早く話を終わらせたのは、私と話をするためだったのかもしれない。

「葵は葵のペースでいいんだよ。葵の気持ちもわかるけど、すぐにどうこうって問題でもないと思うんだ」

 光には私の気持ちも何を考えていたのかも、わかっていたみたいだ。

 きっと孝太さんも同じようにして、同じような言葉をかけてくれていたと思う。

 つまりは光の言葉に大分心を救われた。

「ありがとう。光。少し肩の力抜くよ」

「そうしなよ。さてと、早速聞きこもうか?」

「そうだね」

 応えたものの主に聞きこむのは光の役割になるだろう。

 私が少しでも役立つためには、頭を使うのが仕事のはずだ。

 そうと決まれば誰に聞くかを決めるところからになる。

 放課後のこの時間、駅前ということもあり学生や主婦の方は勿論、多くの若者もおり賑わっていた。

 いくらでも人はいるが、聞きこむのなら毎日この近くを通る人や、昨日孝太さんに言われた店員に訊くのが得策だ。

「それなら、この近くにあるお店の人に訊こうか?」

「柏木くんもそう言ってたよね。そういった指示は葵に任せるよ」

 光の許可もとれ、取り敢えず手始めに私はすぐ傍にあったクレープ屋台に向かった。

「いらっしゃいませー」

「えっと……チョコバナナ、一つ」

「って、葵。何普通に注文してるの?!」

 店員さんに笑顔で迎えられ、つい普通に注文してしまった。

 でも注文しないのもそれはそれで、失礼な気がする。

 だとしたら光は、私だけ注文したことに怒っているのかもしれない。

「ごめん。光は何にする?」

「なら、私はこのティラミスってのにしようかな」

「かしこまりました」

 私たちの会話を聞いて、店員さんが光の分も作り始めた。

「って、そうじゃなくて!聞き込み!」

「わかってるよ……」

 そう言われても、注文した時ですら緊張して、この店員さんがよく聞き取れたと言ったレベルだ。

 私が光に目配せすると、光は嘆息を吐きながらも店員さんに話しかけた。

「あの、すみません」

「何ですか?」

 クレープを作りながらだったので店員さんと顔を合わせはいなかったが、話は聞いてくれていた。

「普段この近くで十代くらいのイケメンな男性見かけませんか?」

「うーん……残念ながら見てないですね」

「そうですか……でしたら、昨日の午後六時半頃にはどうですか?」

「そちらも見てませんね」

 どうやら最初の一件目ははずれのようだ。

 最初から上手くいくとは思っていなかったので、大した問題はない。

「はい。お待たせしました」

「ありがとうございます」

 私たちはクレープを受け取り、お金を払った。

 光がお礼を言い、その場から立ち去ろうとした時、店員さんに呼び止められた。

「ちょっと待って。そう言えば、昨日その後に来たお客さん方が『あの人、カッコよかったね』って言ってたような」

「そのお客さんってどんな人ですか?」

「君たちと同じくらいの子だよ。あ、そうそうあの子」

 店員さんが指さした方向を見ると、そこには他の学校の女生徒が歩いていた。

 偶然通りかかったのは有り難いが、全く知らない人なので話しかけるための一歩が踏み出せない。

 対照的に光は迷いなく近づいて行った。

「あの、すみません」

「え?何ですか?」

 光が話しかけると彼女は振り向き立ち止まったので、私は店員さんに頭を軽く下げ、光の下へ向かった。

 私が光の下へ来たことで、私たちをみる女生徒はますます警戒している。

「別に怪しい者じゃないです。ちょっと人を探してて」

「人ですか?」

「うん。それで、昨日この辺りにいたイケメンの男の子を探してるんだけど。何か知らない?」

 光の質問に対し、さっきまで警戒して堅くなっていた女生徒の表情が緩んだ。

「見た見た!でも、どこの誰かは知らないなぁ。私、駅前にはよく通ってるんだけど、彼を見たのは昨日の一回だけだから」

 彼女の言葉で私の頭の中に一つの新しい考えが生まれた。

 もしかしたら私たちは、根本的なところで勘違いしているのかもしれない。

 取り敢えず、彼女との話を終えたらこの事を光に話そう。

「そっか。何か見た目の特徴とかはなかった?」

「特徴って言われても……顔はイケメンで、暗くてよく見えなかったけど、どこかの学校の制服を着てたくらいしか」

 彼女にとっては情報が皆無なのだろうが、私たちにとっては前進した。

 クロエさんの話と合わせると、彼が高校生であることが確定だ。

「ありがとう。それと急に話しかけて、ごめんね」

「ううん。誰かわかったら私にも教えてね。それじゃあ」

 そう言って、女生徒は私たちの前から去っていった。

 たった一言二言会話をしただけなのに、ここまで打ち解けられるのは、流石光といったところだ。

 次に行く前にまずは、彼女との会話中に気づいたことを光に話すことにした。

「光」

「ん?何?」

「あの憶測なんだけど、私たち前提が間違ってるのかもしれない……」

 私の言葉に光は手に持っていたクレープを齧りながら、首を傾げた。

 今すぐ私も食べたいが、先に話すのが優先だ。

「光も分かってると思うけど、イケメンの孝太さんが歩いただけで目立つじゃん?」

「まぁそうだね。でもそれがどうしたの?」

 光は一言話す度に、クレープを一口食べている。

 甘いもの好きの私としては、この光の行動にイライラしてしまう。

「要するに、その人も同じくらい目立つってこと。なのによくここにいる二人から聞いた話だと、普段は見ないってことだから……」

「葵が言いたいことって、つまり私たちが勝手に結論付けてた、クロエさんの恩人がこの近くにいるってのが疑わしいってこと?」

 私の言いたいことを理解してくれたようだ。

 我慢の限界を迎え、光が話している間私もクレープを口にしつつ頷いた。

「クロエさんの話だけで、それも簡単にしか聞いてなかったから」

「じゃあ、今からそのこと話に行く?」

 光の言葉に今度はクレープを食べながら、首を横に振った。

「それは後で合流した時にしよう。あくまで一つの意見だし。今は捜索を続けようか」

「わかった。でも葵。なんだか柏木くんみたいだね」

「そ、そんなことないよ」

 言葉では否定したものの、内心では凄く嬉しかった。

 照れを隠すために残っていたクレープを、一気に口へ入れた。

「葵はわかりやすいな~」

 全く隠せていなかったようで、光に言われたことで顔が赤くなっているのが、理解できた。



 捜索開始から一時間以上経ったが、私たちは甘いものが売ってあるお店を巡りながら情報を集めていた。

 だが返ってくる答えはどれも『昨日見た』というものか『見ていない』の二通りしかなかった。

 こうなってくると、私が思いついた考えの証明をされているようだ。

 きっと薫たちの方も苦戦を強いられているだろう。

 もしこのまま何の進展もなかった場合、明日のやるべきことは一つだった。

 それでも今は捜索に専念だ。

「次は何処にしようか?」

「そうだねぇ……あ、このお店」

 駅前にあるアーケードを歩いていると、光が一軒のお店の前で立ち止まった。

 今まで飲食店ばかりだったが、そこは時計屋で、高校生の私が入るのは躊躇ってしまうような場所だ。

 それなのに光はどうして立ち止まったのだろうか。

「このお店がどうしたの?」

「柏木くんが私たちにくれた誕生日プレゼントの時計を買ったのが、このお店なんだよ」

 私は自然と光の言葉に釣られるように、着けている時計へと目を落とした。

 少し物思いにふけていると、横目から時計屋の店員さんがこちらへ向かってきているのが見えた。

 今更になって気づいたが、店前に立ち止まっていたら迷惑のはずだ。

「光。移動しよう?」

「そうだね」

 私たちが移動しようとした時、店員さんは慌てて私たちに声をかけてきた。

「ねぇ。待って」

 呼び止められたことで退散することを諦め、怒られることを覚悟していた。

 だが、私たちの前に立った店員さんからかけられた言葉は、それとはまったく違うものだった。

「やっぱり!君、前に柏木孝太くんと一緒に買いに来てた子でしょ?」

「あ!あの時の態度悪い店員さん!」

 どうやら光とこの店員さんは知り合いのようで、私のプレゼントを買いに来た時に知り合ったのだろう。

 光は店員さんのことを『態度悪い』って言うが、話しやすいだけの感じだ。

「態度悪いって失礼ね。あれ?君は?」

「ま、牧瀬葵です」

 目を合わせる前ことなく咄嗟に、名前を言い頭を下げた。

「牧瀬ちゃんね。ちなみに私は、佐々木。そういえば、君の名前も聞いてなかったっけ?」

「坂田光です。名乗ってませんでしたね。あれ?だとしたらどうして柏木くんの名前を?」

 名前を知らなかった間柄とはいえ、二人の会話には入れない部分があり、二人の話を何となく聞いていることしかできなかった。

「彼が二回目に来た時に話したからね。それに君たちの学校の先生の小田切夢とは従姉妹なのよ」

『えー!』

 まさかの人間関係に私たちは驚きを隠せないでいた。

「かっしーと同じ顔をするのね」

『かっしー?』

 誰のことかは大体想像はついたが、そのせいで小田切先生との関係よりも、孝太さんとの関係の方が気になってしまう。

「柏木孝太くんのことだよ。やっとメールもらえてね。そう呼ぶことにしたの。本人許可ももらってるわ」

 孝太さんも今の私と同じように、メールを見ながら苦笑いしていたに違いない。

 光も呆れており、額に手をおき首を横に振っている。

「……あの時、さりげなく連絡先渡してたのか」

「そうよ」

 佐々木さんは何故かドヤ顔で胸を張っていた。

「私ですら、連絡先知らないのに……」

 意外にも佐々木さんの言葉は光に大ダメージを与えた。

 言われてみれば光が孝太さんに連絡をとっている姿を、見たことなかった。

 連絡先を訊くくらい光なら容易そうだが、孝太さん相手だと別ということなのだろう。

「でも、ちゃんとプレゼントはもらってるじゃない」

「え?」

 落ち込んでいた光に、佐々木さんは光の腕を指しながら言った。

 正確には腕につけてある時計だ。

「私なんかまだメールしかしてないんだから」

 まるで子供のようにいじけているその姿は、素なのかそれとも演技なのかは分からなかったが、おかげで光は慰められていた。

「私も高校生だったらなぁ……」

 その一言で、光を慰めるための演技ではないことが分かった。

 哀愁がもの凄く伝わってき、見るに堪えない。

 今度は光が気を遣って、話を変えた。

「それより、私たち今、人を探していまして。特徴としましてはイケメンの高校生なんですけど」

「それなら、か……」

「あ、柏木くん以外でです」

 言葉を遮られて不服そうだ。

「それなら、知らないわ。そもそも二人にはかっしーがいるのに、他の男を探す必要ある?」

「私たちは探すのに協力しているだけですよ」

「なーんだ」

 まだ話して間もないのに、私たちが孝太さんのことを好きなのが、ばれてしまっている。

 私ってそんなにわかりやすいのだろうか。

「それじゃあ、私はそろそろ行くね。仕事中だし」

「あ、はい。ありがとうございます」

 光の礼が聞こえてたかは分からなかったが、急いで店に引き返して行き、結局ここでも情報は得られなかった。


 佐々木さんと別れてからすぐ、引き続き歩いていると、すれ違いざまに誰かが気になることを言っていた。

『カッコよかったねぇ』

『う、うん』

 思わず私たちは足を止め、振り返ると、二人の女子中学生がそう話しながら歩いていた。

 声は年齢よりも幼く聞こえたが、制服はこの近くの中学のものだった。

 それにどこかで聞いた覚えのあるような声だったが、気のせいだろう。

 見失う前に私たちは急いで駆け寄った。

「あの、ちょっといい?」

「ん?」

「ひっ……」

 光が声をかけ振り向いた二人の顔は全く同じで、目を剥いてしまったが、冷静に考えればただの双子だ。

 一方で彼女らの一人は普通に振り向き、もう一人は振り向くと同時に怯えて、双子のもう一人に身を隠すようにしてしまった。

「なんだ?我らに用か?」

 普通に反応してくれた方の子だったが、口を開いた瞬間、普通という印象が払拭された。

「え、えっと。さっき『カッコよかった』って言ってたけど、何のことかな?」

 彼女の厨二病に光も戸惑っていたが、本題を口にすると、彼女は一瞬眉をしかめながらも口を開いた。

 いきなり見ず知らずの人間に、会話の内容について訊かれたら当然の反応だ。

「それはマスターのことだ。マスターは身を挺して、我が半身を救ってくれた」

「えっと。アニメの話?」

「現実だ」

 てっきり私もアニメや漫画の話だと思っていたが、現実ということは少しだが期待を持てる。

 しかし正直なところ話しづらい。

 もう一人の方がまともそうだが、完全に私たちに怯え怖がっていた。

「ごめんね。それで、その『マスター』ってどういう人?」

「全てがカッコいい男だ。姿も魂も」

 私の推測が正しければ、彼女は『イケメンで性格も良い』と言っているのだろう。

 だとすれば、この子たちなら知っているのかもしれない。

「そのマスターって人とどういう知り合いなの?」

「マスターとは昨日巡り遇ったのだが、我が半身共々、不思議と心を許せる存在だ」

 後ろに隠れているもう一人の頬がほんのり赤くなっているのを見て、『半身』というのが双子のもう一人を指しているのだと、ここでようやく理解できた。

 ただ、厨二病の子の方は『尊敬』という眼差しで、怖がっている方は『憧れ』という眼差しをしている。

 双子といっても気持ちまでは違うのかもしれない。

 そして彼女は『昨日』と口にしたということは、クロエさんが昨日見かけた恩人の可能性があった。

「いったい昨日、何処で知り合ったの?」

 光も私と同じことを思ったらしく、どんどんと質問を続けている。

「姉上が助っ人として召喚したのだ」

『姉上?召喚?』

「……お、お姉ちゃんが、つ、連れてきたってことです……」

 私たちが首を捻ると、小声だったが厨二病の子の後ろから、翻訳してくれた。

 私と違って人見知りではなく、ただ怯えてるだけなのだろう。

 それにしても、二人のお姉ちゃんの彼氏だったら、クロエさんには話しづらい。

「ところで先程から汝らは、質問ばかりしているが、マスターのことを探しておるのか?」

「ちょっと違うかな。探している人に特徴が似ているから、話を聞いていたんだよ」

「ふむ……ならばマスターの真名を訊いたほうがよかったのでは?」

 話し方は独特だったが、意外と鋭いことを訊いてきた。

 だがこちらにも事情があり、それをこの子たちにも話しておく必要がありそうだ。

 光ではなく、私が代わりにそのことを話した。

「じ、実は、私たちが探している人っていうのが、その……特徴しかわかんなくて、名前すら知らないの……」

「なるほど……だが一応、マスターの真名を教えておこう」

「是非教えて」

 彼女の提案に光が食いついた。

 今後のためには確かに必要な情報だ。

「マスターの真名は、柏木孝太だ」

『…………は?!』

「な、なに?」

「ひっ!」

 彼女の口から出た名前は、間違いなく孝太さんのものだった。

 理解するのに数秒時間を要したが、それでもなお驚くことしかできない。

 私たちが驚いたことによって、二人を驚かせてしまった。

「希。願、何か変なこと言ったかな?」

「大丈夫だよ。願ちゃん」

 驚いて、彼女の素が出ちゃっていた。

 それも涙目になっており、悪いことした気分になってきた。

「ごめんね。驚かせて……その知り合いの名前と全く同じだったから」

「ふぅ……まぁ汝らが姉上と同じ衣を羽織っているのを見ると、存じていても不思議ではないか」

 この子と話しているうちに、何だか簡単にこの子の言葉が理解できるようになりつつあった。

 昨日、孝太さんたちは山吹先輩の家に居り、そして私たちがこの二人のお姉ちゃんと同じ制服を着ているということは、この二人は山吹先輩の妹にあたる。

「ふ、二人は、山吹先輩の妹なの?」

「まさしく」

 確認をとると呆気なく認められた。

 でもこれで、二人が話していた『カッコいい人』というのが孝太さんであり、私たちが探している人物ではないことがわかった。

「そして今から、姉上が潜入している食事処にて晩餐を食してくる」

「昼休みの話だと、山吹先輩って確か湖上さんの家でバイトしてるんだよね?」

「うん。孝太さんも今日はそこにいるはず……」

 彼女の言葉で昼休み、孝太さんと湖上さんが話していたのを思い出した。

 孝太さんが湖上さんからお願いされたのが、湖上さんの家の手伝いだった。

 家といっても、お店の方だ。

「マスターがいるの?!だったら、早くいかなきゃ!」

「ま、待ってよ……願ちゃん」

「え!ちょっと」

 私たちの話を聞き、孝太さんがいることがわかると、あっという間に二人は去っていった。

 光が声をかけても聞こえておらず、光の声は無残にも周りの声にかき消された。



 結局、その後進展はあらず、本日もまた時間切れとなった。

 私たちが今日得たものは、孝太さんの顔は私たちが思っているほど広く、カッコいいということだ。

 収穫という収穫はない。

 手持無沙汰で待ち合わせ場所に向かうと、既に三人の姿があった。

「お姉~。こっち、こっち!」

 薫に呼ばれ私たちは三人の下へ急いだ。

「それで、お姉たちは何か進展はあった?」

 着いて早々、薫が進行状況を訊いてきたので、光がそれに答えた。

「全然なかったよ。わかったのは高校生ってことくらい」

「そっか。こっちも同じ感じだよ」

 やはり薫たちの方も何もなかったようだ。

 こうなれば、私が考え付いた事を三人にも話すことにした。

「ねぇ、聞いて」

「何?お姉?」

 急に話し出した私に、全員の注目が集まり緊張したが、意を決して口を開いた。

「もしかして彼ってこの近くにいないんじゃないかって、思ったの。昨日だって走ってたってことは、何かしら急用があったからだからだと考えられない?」

「でも、ワタシは『まだこの街に慣れてない』って彼が言うのを聞きました」

 それは初耳だ。

 クロエさんがこの近辺の捜索に積極的だったのには、それ相応な理由があったらしい。

 そうなると、私の考えはお門違いも甚だしい。

 でも、こういった初耳の情報があるということは、明日やるべきことについての考えの方は正しいはずだ。

「そっか。ねぇ、クロエさん。明日なんだけど、捜索はせずに詳しく彼と出会った日のことを聞きたいんだけど、いいかな?」

「葵の言う通り、もう少し情報があった方、いいかも」

 光も私の意見に賛同し、後押ししてくれた。

「それで、どうかな?クロエさん」

「……わかりました。中途半端はダメですよね。できる限り話します」

「ありがとう」

 クロエさんの許可を得られ、取り敢えず明日の方向性はこれで決まった。

 クロエさんが彼に悩みを相談したということは、そのことを聞く可能性もあるということで、こちらとしても覚悟は必要だ。

「それじゃ、今日はもう帰ろうか」

「そうだね。光ちゃん。二人もいいよね?」

 これ以上何もすることがなく、光の提案に薫も便乗し、その薫がクロエさんと宮本さんに訊ねると、二人も首を縦に振った。

 全員が賛成し、本日はこれで終了した。

「それでは、薫ちゃん、先輩方。また明日」

「うん。じゃーね」

 クロエさんたちに挨拶されたので、私と光は会釈し、薫は答えると、二人は私たちとは反対の方向に歩いていった。

「私たちも帰ろうか?」

 二人の背中が見えなくなると、薫はそう口にしたが、私たちには捜索とは別にやることがあった。

「悪いけど、薫。まだ帰らないよ」

「え?」

 私の言葉にすっかり帰る気満々だった薫は、間抜けな顔で聞き返してきた。

「今から、湖上さんの家のお店……孝太さんの所へ行くよ」

「何言ってんの?お姉」

「薫ちゃんこそ何言ってるの?さっさと行くよ」

 薫の意見は全く聞かずに、私たちは家に帰らず、そのまま孝太さんのいる湖上さんの家のお店へ向かった。

 後で何か言われるとうるさいので、親に連絡をいれると、どこから嗅ぎつけたのか、お姉ちゃんも合流し、四人で向かうことになった。

 孝太さんが密かに自分と闘っていたとも知らずに

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