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R2  作者: Mislgi
7/10

07


斎達は何処かに向かって学院の敷地内を急いでいた。


「今さらながら気になっているんやけど、いつもならDFF(フィールド)が展開しててもええはずや」


薙はそう言うと斎が答えた。


「それは機関もこの戦いに終止符を打つための何らかの思惑があると思います」


「機関?」


「聞いたことがあります、公には存在しない組織でこの戦いを裏で取り仕切っているとか…」


明日葉が答えた。


「はい、いっ…」


斎は荘司につけられた傷を押さえた。


「大丈夫?」


りりんが心配そうに聞いた。


「傷は塞がっていますから…機関はこの戦いを利用して…」


走る斎達の目の前にある建物から雷電が屋根を突き破った。


「悪いけど効かないわね」


凜は飛嵐の拳を鉄甲を着けた拳で受け止めながら言った。


「まだまだ行くね」


「待ってください」


二人は横目で斎の声がした実技演習場の入口の方を見た。


「それは聞けないね」


「同じく」


飛嵐は凜に向かって次々と雷撃を纏わせた拳で打ち込んでいく。

それを凜は反撃の機会を窺いながら受け流していく。


「止めるんは無理な話や、なにせ家同士の争いで飛嵐は兄を、凜は父親を失のうとるからな」


「どうして貴方が凜の家ことまで知ってるんですか?」


明日葉は薙の異様に詳しい口ぶりを変に思い聞いた。


「さあ、なんでやろうなぁ」


薙は笑ってごまかしたが、明日葉は疑いの眼差しで見た。


「…分かりました…」


斎はその事柄を了承し、飛嵐と凜の攻防を脇目に皆を先へと案内した。

斎達は実技演習場を抜け、渡り廊下を渡った。


「うぅ……此処は…」


楓は薄暗い何処かの地下の開けた場所で目を覚ました。


「漸く起きたか、月峰楓」


「…貴方は陽備悟、私に何の用ですか?」


「墓所の扉を解放してもらう」


「墓所?何の事ですか?」


「白を切っても……いや、本当に知らないようだな」


悟は楓の様子を見て、問い詰めようとしたが止めた。


「悟様」


夜湖が現れ、肩に担いでいた荘司を地面に降ろした。すると悟は夜湖に近付きながらリングから刀を引き出し、荘司の首に突き刺した。


「敗残者など捨て置けばいい」


「酷い…貴方はそれでも陽光の頭首ですか…」


楓は声を荒げたがすぐに咳込み地面に蹲った。


「大人しくしていろ、身体に差し支えるぞ」


悟は冷たいほど穏やかな声で気遣った。


「…貴方などに心配される謂れはありません」


「まあ、いい」


「悟様」


悟の名前を呼ぶか細い声が聞こえ、悟の陰から仮面を着けた後ろ髪を一つに結った女(草羽)が現れた。


「彼等が迷宮に足を踏み入れました」


「そろそろか…」


悟は荘司に刺さったままの刀を引き抜き、リングに納めた。


「待っていたわ」


第二校舎一階、端の地下への階段がある袋小路で結菜が斎達を待ち構えていた。


「上野さんがどうしてここに?」


明日葉は聞いた。


「さあ、何故でしょう」


結菜は全員をヴィンバインドで拘束した。


「なにを…」


蔦から花が咲き、胞子を排した。


「貴方達に手に負える事象じゃないわ」


斎達は強制的な眠りについた。


「すみません、蓑井さんがまた勝手にいなくなったので…」


結菜の前に姫が現れた。


「彼女なら心配ない……たぶん…」


結菜と姫は地下へ階段を降りていった。


「ここ…どこ?」


春翠は学院地下の迷宮で一人、迷子になっていた。


西都の地下、三角形の机がある部屋で一人の女と三人の男がその頂点にあたる場所に置かれた椅子にそれぞれ座っていた。


「どうやら終着の時が来たようだな、竜源よ」


和服を着た盲目の高年男性(陽備影虎)が言った。


「………」


竜源は何も言わなかった。


「娘が心配で言葉もでないか、然も有りなん話じゃ」


影虎は嘲笑った。


「……実に人間らしい醜く慈しい方々だ…」


眼鏡を掛けた白衣の男(夜神凰璃)が言った。


「口を慎め、お前は獅浦の代役に過ぎない事を忘れるな」


「自分の子息を制御出来ない貴方に言われたくはありません」


「あやつのお陰で輝桜の満ちる時期が早まってよいではないか」


「貴方は今回の招集について何も分かっておられないようですね…」


凰璃は影虎の言葉に呆れた。


「まだ輝桜の脅威となる破壊者が見つかっていないのですよ」


「それはお前の領分だ、わしはわしの役割を果たしているに過ぎん」


「わしは夜神の意見には賛成じゃ」


二人の掛け合いに入り、凰璃の意見に賛同した。


「お前は娘の心配をしているだけだろうが!」


影虎は立ち上がり声を荒げた。


「だとしても、この場は多数決で判断されるはず」


「ふんっ!付き合いきれん!わしはわしでやらせてもらう」


影虎は憤慨し、部屋から出て行った。


「勝手なやつだ、我々の役割を分かっておらんな」


「放っておいて構いませんよ、彼の策は潰える…三枝」


「はい」


凰璃の斜め後ろに立っていた白衣を着た金髪の女(三枝瑠那)が返事をした。


「部隊は既に迷宮内部へ潜行しています」


三角形の机の中心に地下迷宮の地図と部隊の配置が表示された。


「始めから全ては折り込み済みというわけか…だが、それ程でなければ機関長の座は務まらない」


凰璃の異常なほどの手際の良さに竜源は思った。


「始めて下さい」


「了解」


地下迷宮に潜行している黒色の防具を顔と身体に纏った者達の一人が瑠那の通信に答えると地下迷宮全体に灰色の世界が広がり、部隊が展開した。


「親父も使えないな」


悟は目の前が灰色の世界に変わったことで機関の動き出したことに気付いた。


「…悪いがお前には此処と共に消えてもらう」


悟は再びリングから刀を抜き出し、切っ先を楓に向けた。そして、刀を逆手に持ち直すと胸を目掛けて振り下ろした。


しかし、刃は楓に触れる前に消え去った。


悟は振り下ろした体勢から元に直ると視線を移した。そこには悟の刀を持った春翠が立っていた。


それを見た夜湖と草羽はすぐ様、物凄い速さで春翠へと向かったが途中で突然、身体が横へ引っ張られるように壁へと衝突し動かなくなった。


「うちの生徒がどういうつもりだ?」


悟は落ち着いた声で聞いた。


「これは仕事…」


「仕事?どんな仕事か教えてもらいたいものだな」


突然、悟の姿が消え、春翠は身体に衝撃を感じたと思ったら壁に衝突し地面に倒れた。


「教えてもらおうか、誰の指示で動いている」


悟は春翠が先程まで立っていた付近に立っていた。


春翠は手を突き立ち上がった。すると口元から血が流れ出た。


「咄嗟に急所は防いだか」


春翠は流れ出た血を手で拭き取ると悟の足元に落ちている刀を見た。刀は静かに浮かび上がり、切っ先を悟に向けて飛ぶと悟を貫いた。

だが、刀は空を切るように悟の身体を貫き、悟の姿は消えると春翠は腹部に痛みを感じた。


気付くと目の前には腹部に拳を突き当てる悟の姿があった。


「お前に俺は殺れない」


春翠は腹部の痛みに咳き込んだ。


「仕事の内容を吐けば、苦しまずに逝かせてやる」


春翠は咳き込みながら悟の服を掴んだ。


「……言え…ない…」


悟は春翠の手を払いのけると手に刀が現れた。


「ならば逝け…」


逆手で握った刀を切り上げた。


「そこまでだ!」


部隊が開けた場所に突入すると誰居らず、壁には血の跡と大きな刀傷が残されていた。


「目標、確認出来ず逃げられたものと思われます」


部隊の一人が凰璃達に通信した。


「これ以上、此処に留まる意味はないな」


すると凰璃は立ち上がり、瑠那を引き連れて部屋から立ち去った。


瑠那は凰璃の後を歩きながらまだ通信が繋がっている部隊と連絡を交わしていた。


「ええ、作戦に変更はありません、引き続き所定の命令に従って行動してください」


「了解」


部隊は少人数に別れ、その場を後にした。


「三枝、あれの所在は?」


「把握済みです、でも放っておいてもよろしいのでは時が来れば向こうから…」


「それではつまらない、踊れる人形には踊ってもらわないとその為の布石に必要なのですよ」


「ですが…」


「それ以上、何か言うならば…」


更に意見をしようとした瑠那に凰璃は意味ありげ言い回しをした。


「…す…すみません…」


すると瑠那の顔から血の気が引き、すぐに頭を下げて謝った。


「まあ、いい」


凰璃はそう言うとそれ以上は何も言わなかった。


数分後、西都から灰色の世界が消えた。その直後、神月学院と陽光学園が爆発し、黒煙を上げて炎が広がった。


「どういうことだ!?」


竜源はセントラルタワーの自室から学院と学園が燃える様を見つつ凰璃に通信を繋いだ。


「何のことです?」


「どうして学院と学園が…!」


「ああ、そのことですか…あれはもう必要ないので生徒達と共に処分したまでのこと」


凰璃は淡々と答えた。


「なんて事を…」


「用件はそれだけですか?そんなことで直通回線を開かないで頂きたい」


「おい待て……」


通信は一方的に切られた。


「…何なのだ!」


竜源は地面に通信機を地面にたたき付けた。


「陽備といい、夜神といい、勝手な行動を………楓…」


竜源の怒りは楓を失った悲しみに変わり、地面に座り込み項垂れた。


「娘を奪った者の住むこの世界を消し去ってしまえば、その悲しみは晴れるよ」


竜源の頭の中に声が聞こえた。


突然、ローブのフードを頭から被った者が竜源の背後に現れ、竜源の肩に手を置いた。


すると竜源の瞳から生気が消えた。


「そうか、世界を消し去れば全ては等価値となる…」


竜源の左手の甲に黒い石が体内から浮かび上がるように現れた。


「世界よ、消えろ、消えろ」


竜源の精神は狂気に包まれた。


そして、タワーの一つの階層が一瞬で吹き飛んだ。その影響でタワーの上層部が傾き、そのまま下界に崩れ落ちた。


ローブのフードを頭から被った者は空中でその様子を眺め、不適な笑みを浮かべていた。


「まだ足りない」


その手には先程、竜源の左手の甲に現れた石が握られていた。


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