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R2  作者: Mislgi
5/10

05


夕暮れ時、西日が差し込む生徒会室に楓と弥生がいた。


「あの子の様子はどうなんですか?」


「いえ、まだ…」


「そうですか…」


扉を軽く叩く音が聞こえた。


「失礼します」


一人の男子生徒が扉越しから顔を出した。


「副会長」


「ああ」


弥生はその生徒の顔を見るなり、一緒に廊下に出た。


「何の用ですか?」


生徒は何かを耳打ちした。


「何だって!」


すると驚きのあまり声を出したがすぐに自制した。楓はその声を聞き、生徒会室の扉を見た。


「すぐに地下へ人を送れ」


弥生は声を抑えて指示をすると男子生徒は急いで駆けていった。


「あの部屋からどうやって……まさか、内通者が?」


そう思いながら生徒会室に戻った。


「何かあったんですか?」


楓は入ってきた弥生に聞いた。


「いえ、ただの連絡事項です」


「そうですか」


楓は弥生の返答に違和感を感じ、嘘だと気付きながらも表情や声色には出さなかった。


「今日はもう帰えらさせてもらうよ、楓」


「分かったわ」


弥生は生徒会室から出て行くと楓は咳込み、口を押さえた手に僅かに血を吐いた。


「まだ……」


手の平の血を見つめ、強く握り締めると楓は意識が遠退き、机に顔を埋めた。




「まるで迷路だけど…」


颯太は水路に脇にある黒い灰の山を見つめた。


「…これ見よがしに置いてある、これは目印なのか?それとも罠なのか?」


そう思っていると後方から向かってくる足音が聞こえてきた。


「抜け出したことがばれたようだな」


Kの声が聞こえた。


「そんなこと分かっている」


颯太は壁の窪みに積み上げられた木箱の陰に隠れた。すると水路を数人の装備を整えた生徒が現れた。


木箱の隙間から現れた生徒の様子を見ると颯太は言葉に出来ない程に驚いた。そこには小夜の姿があった。


「分かれ道か、お前はそっちの道に俺達はこっちに行く」


一人の男子生徒が小夜に言った。


「分かりました…」


小夜は他の生徒達を見送ると両太股の銃を引き抜き、木箱に銃口を向けた。


「出て来なさい」


颯太は言われる通り、木箱の陰から出た。


「僕だよ」


「颯太…そう、あなただったの…」


颯太に銃口を向けたまま引き金の指を引いた。


銃声は水路に木霊した。


「…余計な事をされては困るな」


Kが現れ、小夜の両手の銃を掴み、銃口の向きを変えていた。


「今の声、お前ずっと僕に喋り掛けてた奴だな」


「退け」


小夜は片足をKの顔を目掛けて蹴り上げた。しかし、Kはすぐに銃から手を離して蹴り上げられた足を躱すと颯太の手を掴んで走り出した。


小夜はリボルバーの残弾を撃ち切るまで引き金を引いた。その後、弾を装填して二人の後を追いかけた。


「離せ!離せよ!」


颯太はKに手を引かれながらも抵抗した。


「さっきの奴に撃たれたくなければ今は走れ」


「何で僕が撃たれるわけがないじゃないか!撃たれるならお前だろ?」


「現に撃たれかけただろうが」


「あれは何かの間違えだよ、親友が僕を殺そうとするわけがないじゃないか!」


「そうかい、そう思うなら戻ってみるか?」


後方から銃弾が飛んできた。


「どうして…」


「理由が知りたければついて来るんだな」


後方から放たれている銃弾が止んだ。


「やるなら今だな、SS(ダブルエス)スニーク」


Kは立方体の紋様が入ったリングの嵌めた手を前に翳すと前方の空間に波打つ水面の様な薄い円形状のものが現れた。


Kは颯太の手を握ったままそれに飛び込んだ。すると二人の姿は消え、それと共に円形状のものも円周を縮めながら消えた。


「…はい、予定通り彼らは地下から脱出しました」


小夜は耳に付けた通信機で連絡を交わしていた。


「連絡を感謝するよ、私の可愛い作品」


通信機の向こうには灰色の髪に白衣と眼鏡を身につけた中年男性がいた。


「事後処理を済ませたら戻っておいで」


「分かりました」


「やはり彼は完全な覚醒には至っていないようだな」


颯太の写真が添付された書類が机の上に置かれていた。




「何を…此処は…?」


颯太とKは廃墟の様な場所にいた。


「西都から少し離れた廃棄された研究所だよ」


Kと同じように顔を隠した背の低い少女、Jが現れて教えた。


「こんな所に連れてきて何をするつもりだ」


「やっぱりまだ…」


Jは悲しそうな声で言った。


「それより、お前だけか?」


「ううん、僕以外の皆も戻ってるよ」


二人に連れられて颯太は割れた硝子容器が並ぶ部屋に着いた。


「博士の玩具…」


これもまた同じように顔を隠した大きな体の男、Aが颯太を包み込む程の大きな手で颯太を掴んだ。


「何をするんだ!離せ!」


「やめろ、A」


黒い短髪に両目の上に包帯を巻いた男、QがAの行為を止めさせた。


「感覚醒はしているようだな」


「お前達は何なんだ、僕をどうするつもりだ!?」


「悪いようにはしないさ、君は仲間だ」


「どうして僕とお前達が仲間なんだよ」


颯太は反抗的な口調で言った。


「K、話していないのか?」


「博士の人形に邪魔されてそんな時間はなかった、それに話したところで意味はない」


「そうか、そうだな…手荒なやり方だが仕方ない」


Qは颯太に歩みよると一瞬でQの手が颯太の胸を貫いた。


颯太はあまりの衝撃で何が起こったのか分からないまま意識を失った…………。






容器の向こうに立つ二人の男がいた。


一人は手を後ろに組み、こちらを眺める白衣を着た老人ともう一人は老人より断然若く鏡を掛け、灰色の髪の白衣を着た三十代位の男が手に持つ資料に記入していた。


「これが……に成りうる素体かね」


「はい、他のサンプルに比べれば大幅に基準をクリアしています」


「入所資料を見る限りわしにはそうは思えんが…解凍はいつ頃かね」


「他のサンプルの後ですから、一週間位………」


目の前は暗闇に閉ざされた。




…そして、次に目を開いた時には白い部屋の冷たい台の上に枷を着けられた状態でいた。横には自分と同じように寝かされている者が数名いた。


「フェーズ2に残ったのはこれだけのようじゃな」


「引き続きフェーズ3に移行します」


硝子に仕切られた別の部屋に老人と眼鏡を掛けた男がおり、男は他の白衣を着た研究員達に指示をした。


研究員達は台の上に寝かされている者達に針のついた器具で溶液を体内に注入した。すると寝ていた数人が苦しみ藻掻き、枷を破壊した。


そして、炎や雷を手から放ち、研究員達や互いに攻撃をして殺していった。


その様子を見た老人は目の前のボタンを押した。すると部屋中が高温の炎に包まれ、全ての者を焼き尽くした。


「これで実験は振り出しじゃな」


「いえ、大丈夫です」


焼き払われた部屋の中で無傷のまま眠っている者が一人いた。


「だが、一人ではどの道この先はきつい」


「心配はいりません、フェーズ3まで終えたサンプルが他にもいますから」


「そんな話、わしは聞いておらんぞ!」


老人は男の話を聞いて激怒した。


「言ってませんから、それに貴方の役目はとっくに終わっているんですよ」


男は白衣のポケットから小型の銃を取り出し、老人の額を撃ち抜いた。


「私が此処へ来たときからね」




またの暗闇の後、次に目が覚めた時には窓一つない密室にいた。


部屋の中には体格の大きい男と小柄な少女、大きな胸の体つきのいい女、瞼を閉じた男がいた。そして、自分を含めた全員が上下無地の服を着ていた。


「君、名前は?」


黒い長髪の瞼を閉じた男が声を掛けてきた。


「俺は……」





颯太は目を開くとJが覗き込んでいた。


「うわっ!?」


颯太は驚きのあまり寝かされていた寝具の上から床に落ちた。


「何なんだよ…J」


「僕はただ見てただけだよ…」


二人は寝具が一つ置かれた小さな部屋にいた。


「…って今、僕の事…」


「どうしたんだよ、ジュエル」


「よかった…ゼロ、記憶が戻ったんだね」


Jは泣きながら抱き着いた。するとローブのフードが外れ、猫目で猫の耳が垂れ下がったような髪をした少女の姿が顕わになった。


「なんか雰囲気が変わったようだけど何があったんだ?」


「偽人格の時の事は覚えてないようだな」


Qが部屋に入ってきた。


「何があったかは俺が話そう…」


Qは部屋にある椅子に腰を降ろすと話し始めた。


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