04
颯太は目を覚ますと日の光が差し込む、白塗りの天井が最初に目に入った。
颯太は起き上がり、周りを見渡すと周囲をカーテンに仕切られたベッドの上だった。
「……此処は…?」
此処が何処か分からずにいるとカーテンが開いた。
「此処は医務室です」
そこには会長の楓と副会長の弥生がいた。
「僕は…」
「あなたは中央広場で倒れていたんです」
「広場で…………!」
颯太は意識を失う前の事を思い出した。
「そうだ!篠は!?もう一人、倒れていませんでしたか!」
颯太は楓に詰め寄る程の勢いで聞いた。
「落ち着いて下…さい」
楓は言葉に詰まるとふらつき倒れそうになった。
「楓」
「大丈夫…」
倒れそうになった身体を踏み止どめ、手を差し伸べる弥生に手を翳した。
「後は私がやりますから会長は生徒会室へ」
「すみません…」
「レイ、頼みますよ」
カーテンの陰からレイが現れた。
「あんたに頼まれなくても、そのつもりよ」
楓の両肩に手を置いた。
「さっ、会長行きましょう」
レイは楓を連れて医務室から出て行った。
「あの!?」
「あの場には君以外、他に誰もいなかったよ」
颯太はもう一度聞こうとすると弥生はすぐに答えた。
「そんなはずありません!」
「本当だ、君には他にも聞きたいことがあるけど、気が動転しているようだから今は止めておきます」
「そんな…あれは夢だったとでも言うのか…」
颯太はそう思い、両手で頭を抱えた。
「落ち着いたら生徒会室に来て下さい」
動揺する颯太にそう言い残すと弥生はカーテンを閉め、医務室から出て行った。
弥生が医務室の外に出ると結菜がいた。
「彼は?」
弥生は歩きながら結菜に聞いた。
「会長の力で何とか、今は機関に搬送中」
「こちらの被害は?」
「新入生と二年を合わせて三十人程、未帰還者になって先程の新入生と同様に機関に、でもこちらも陽光の執行部の一人を未帰還者したわ」
「だとしてもこちらの被害は甚大だ」
二人はその後、沈黙した。
「ふん、決闘馬鹿が逝ったか」
悟は未帰還者となった小十郎を嘲笑った。
「あまりそんな言い方、皆の前では控えておいた方が賢明だよ」
荘司は悟に忠告した。
「何も知らない連中には充分だ、それより奴はどうしている?」
「相変わらずだよ」
「動きを見せたら俺が送ってやる」
「それは楽しみだ」
荘司は軽く笑った。
「わいが執行部に入るとはびっくりやな」
薙は教室で驚いた表情を見せずに笑顔で言った。
「明日はきっと雪が降るね」
その事を信じれないかのように飛嵐が突っ込んだ。
「おいおい、フェイちゃんそりゃないわ」
「そうよ、例え覗き魔だとして実力が認められたんだから」
「かりんちゃん、それフォローになってへんってゆうか、誰が覗き魔じゃい」
薙は言葉を逃さず、透かさず突っ込むとかりんは笑った。
「そういえばりりんちゃんの姿が見えへんけど」
「りりんは斎と一緒に書庫にいる」
「あんな旧館になんのようや、何か心配やな」
「心配?りりんが?」
「斎がりりんに襲われてへんかや」
「それどういうことよ!」
薙は逃げるように出て行き、かりんはその後を追った。
「待つね」
飛嵐も二人の後を追い、三人は学園の北側、斜面に面して建っている旧館のある書庫に向かった。
「りりんさん、見つかりましたか?」
朽ち落ちた書棚が乱雑に並ぶ書庫の中で斎とかりんは何かを探していた。
「何にもないよ」
りりんはいつになく冷静な語気で言った。
「やっぱり残っていないか…」
斎は書庫に近付いてくる足音に気付いた。
「誰か来たみたい…だっ……」
斎は誰かの気配に気を取られ、躓いて本の山に頭から突っ込んだ。
「大丈夫?」
りりんが斎に声をかけ、手を差し延べると書庫の扉が開いた。
「遅かったか」
薙は倒れている斎を見て言った。
「りりんがまさか…」
「これは間違いないね」
「何を言ってるの?」
三人が何を言っているか分からず聞いた。
「皆さんはどうして此処に?」
斎は立ち上がると聞いた。
「何と言われてもな…」
薙は言葉に詰まると飛嵐が答えた。
「りりんを捜しにきたね、それより斎は何してるね」
「僕達は生徒会資料に必要な書籍を探しに来たんですが、見つからなくて」
「よっしゃ、執行部の初仕事や、手伝おうやないか」
「仕方ないね、私も執行部ね」
「りりんが手伝っているのにかりんが手伝わないわけにはいかないわね」
「ありがとうごさいます」
斎はお礼を言うと書籍の名称が掛かれたメモを見せた。そして、総出で荒れた書庫内を手分けして探した。
「こんな所にいたんですね、蓑井さん」
姫と春翠は旧館の時を告げる鐘突き塔の最上部にいた。
「昨夜の戦いから少し変ですけど何かあったんですか?」
春翠はただ眼下を見下ろすだけで何も答えなかった。
「あの、蓑井さん?」
春翠は指を少し動かすと吊り下げてある鐘が大きな音を響かせた。
突然、響いた大きな音に姫は俯き耳を塞いだ。
「何?…」
視線をあげると春翠の姿はなかった。
「もう、また勝手に…」
いなくなった春翠に文句を言った。
「なんや今、音は」
春翠の鳴らした鐘の音が書庫に聴こえた。
「おっ、これやな」
床に置かれた一冊の書籍を拾うと斎の元に向かった。すると皆も書籍を探し終え集まっていた。
「皆さん、有難うございました」
斎は集めてもらった書籍を持つと斎達は書庫から出て行った。
「少しは落ち着いたようだね」
弥生は一人、生徒会室にいると颯太が入ってきた。
「聞きたい事っていうのはなんですか?」
「昨夜の事について」
「………覚えていません」
暫しの沈黙の後に答えた。
「そうか、話はそれだけだ」
弥生は他にも言いた気だったが何も言わずに終えた。すると颯太は突然、何かで視界を奪われ、後ろ手に拘束された。
「なっ!何をするんだ!」
「君には大人しくしていてもらうよ…」
口も塞がれ、生徒会室から連れ出された。
「…彼女の為にも」
その一部始終をKは生徒会室の入口、脇から無言のまま見ていた。
颯太は連れられてかび臭い暗室に入れられると後ろ手にされた拘束具を外された。
颯太は自らの手で視界を奪っていたものと口を塞いでいたもの外すと暗闇に目を凝らして周囲を見回した。
すると次第に幾重にも線が刻まれた模様が暗闇に浮かび上がった。
「ここはどこだ、それにこれは魔法陣のようだけど…」
「対指輪用魔法科学式陣」
部屋の隅からKの声が聞こえた。
「誰?」
颯太は声が聞こえた方に向かって問い掛けた。
「誰でもいい、君を此処から出してやる」
「どうして僕を」
「理由はない…」
暗室の扉が開き、Kの気配が消えた。
暫くしてから颯太は恐る恐る暗室から出ると地下水道の様な水路に出た。
部屋の外には颯太を連れてきたと思われる人物が倒れていた。
「これは人なのか…?」
倒れていた人物のローブのフードから覗く顔は暗闇に覆われており、全く顔が見えなかった。
颯太はよく見る為、覗き込もうとした瞬間に倒れていた人物の形が崩れて衣服の隙間から灰の様な粉が漏れ出た。
「な、なんだこれ…」
颯太は驚いていると声が聞こえた。
「そんな愚者に見取れていても、愚者は無益なものしか語らない」
「またこの声、姿を見せたらどうなんだ!?」
「その価値に値するならな…」
「……一々煩い奴だな」
颯太はそう思うと地下水道を流れに沿って進んだ。
「まさか、こんな!」
斎は書籍が積み上げられた机を叩くように椅子から立ち上がった。
「頭が良すぎるのも考え物だな、斎くん」
抜き身の刀を持った荘司が月明かりの照らす部屋に現れた
「副会長」
そういうと同時に刀が目に留まり、斎はリングから小型の刃物を幾つも出して宙に浮かべた。
「悟には、悪いけどこんなに早くそれにたどり着くとは思わなかったよ………」
刀の柄を握り直すと荘司の表情が変わり、目付きが鋭くなった。
「……だから消えてもらう」
斎は宙に浮かべた刃物を全て、机越しから荘司に向かって飛ばした。荘司はそれをわずかな動きで躱すと逆手に持った刀を下方から上方に振り上げた。
「真影流剣術・逆さ炎」
机とその上に書籍に一筋の線が現れるとその筋に沿って炎が走り、机は二つに割れて崩れた。
「これで終わりにしよう、真影流剣術・小手返し…」
荘司は振り上げた刀を順手に持ち替えると手を返し、斎に向けて振り下ろした。
「…炎熱」
斎はすぐにリングから双振りの短刀を出し両手に構えた。
荘司の刀は切っ先が赤く染まり、短刀を豆腐を切るかのように軽々切り落とした。そして、斎は斬られた勢いで後ろにあった窓を突き破り、三階程ある高さから落ちていった。
「始末は着いたな」
刀を数回、振り回し鞘に納め、部屋を出ると突然、部屋中から炎が燃え上がった。




